地震保険は必要?補償内容や火災保険との違いについてもわかりやすく解説
地震大国である日本では、地震による損害を受けるリスクが高いといえます。
地震保険は地震による建物や家財の損害を補償する保険制度であり、スムーズな生活再建に寄与します。
地震保険には補償内容や保険金額、免責事項など重要な注意点もあるため、加入前にしっかりと確認しておきましょう。
地震保険とは
地震保険は、日本に多い地震による被害を補償するために生まれた保険制度です。地震保険の主な目的は、地震・噴火またはこれらによる津波によって受けた住居や家財等の損傷をカバーし、生活の再建を図ることとされています。
地震保険の特徴は、民間保険会社が負う地震保険責任の一定額以上の損害を政府が担保している点です。地震大国といわれるほどの日本では、大規模な地震によって甚大な被害を受ける可能性があり、多額の保険金が必要となります。
大規模地震によるリスクは民間保険会社だけでは背負いきれないため、一定額以上の補償を政府が担保する形で成り立っています。これが再保険という仕組みです。
政府は毎年度国会の議決で大規模な地震による被害の補償として支払う金額の承認を得ています。2023年現在は約11兆7,700億円で、民間保険責任額と合計した1回の地震などによる保険金の総支払限度額はおおよそ12兆円です。また、政府は被害の実態に合わせて柔軟に対応するとしているため、今後も地震保険が安定的に運営されると考えられるでしょう。
地震保険の検討ポイント
今後も大地震が発生する可能性が高いという点を踏まえると、地震保険を検討したい方もいるのではないでしょうか。
地震保険を検討する際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 地震保険は火災保険とセットで加入しなければならない
- 補償内容を正しく理解する
- 保険金額について正しく理解する
地震保険は基本的に火災保険の付帯となっているため、地震保険に加入するには、火災保険に加入しなければなりません。火災保険に入っていれば、地震保険にも加入するかどうかを選択できます。
補償内容や補償金額などについて、以下で詳しく解説していきます。
地震保険の補償内容
地震保険を検討する際は、補償内容や支払われる保険金を正しく理解しましょう。
地震保険では、地震・噴火またはこれらによる津波によって引き起こされた火災・損壊・埋没または流失による被害が補償されます。
補償の対象は契約時に定めた対象物に限られるため、補償対象を建物のみにするのか、家財道具も含めるのかを十分に検討しましょう。
また、火災保険では地震・噴火またはこれらによる津波を原因とした火災や水害は補償されません。以下に地震保険による具体的な補償対象と保険金額を解説します。
地震保険の補償対象や保険金について
地震の主な補償対象は以下のとおりです。
地震保険の補償対象
- 住居部分がある建物(併用住宅含む)
- 住居部分に収納されている家財
店舗と住居が併設されている建物の場合、住居部分のみが補償対象です。
また、住居部分に収納されている家電製品や家具、衣服、貴重品なども補償されます。ただし以下のようなものは一般的に地震保険の補償対象外となるため、注意しましょう。
地震保険の補償対象外
- 自動車やバイク
- 現金・株券・債券
- 印紙
- 1個または1組の価格が30万円を超える宝石や貴金属など
- 工場、事務所専用の建物など、住居として使用されない建物
地震保険で支払われる保険金は、建物、家財それぞれの損害の程度に応じて全損、大半損、小半損、一部損の4段階に分けて支払われます。
地震保険における建物の支払基準
基準 | 保険金 | |
全損 |
または
|
保険契約金額の100% (時価額のすべてが上限) |
大半損 |
または
|
保険契約金額の60% (時価額の60%が上限) |
小半損 |
または
|
保険契約金額の30% (時価額の30%が上限) |
一部損 |
または
|
保険契約金額の5% (時価額の5%が上限) |
建物の主要構造部とは、土台、柱、壁、屋根等の部位をいいます。
続いて、家財の支払基準です。
地震保険における家財の支払基準
基準 | 保険金 | |
全損 | 損害額が保険対象となっている家財全体の時価額の80%以上 | 保険契約金額の100% (時価額が上限) |
大半損 | 損害額が保険対象となっている家財全体の時価額の60%以上80%未満 | 保険契約金額の60% (時価額の60%が上限) |
小半損 | 損害額が保険対象となっている家財全体の時価額の30%以上60%未満 | 保険契約金額の30% (時価額の30%が上限) |
一部損 | 損害額が保険対象となっている家財全体の時価額の10%以上30%未満 | 保険契約金額の5% (時価額の5%が上限) |
地震保険で設定できる保険金額は、火災保険の保険金額の30〜50%と決められています。また建物は最大5,000万円、家財は最大1,000万円までという制限もあります。
地震保険は被災者の生活再建をサポートするものであり、すべての損害を補償するわけではありません。そのため、保険金は生活再建資金の一部としての活用を考えておきましょう。
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地震保険と火災保険の違い
地震保険と火災保険は、どちらも補償対象が家屋や家財のため混同されやすいですが、内容は大きく異なります。
地震保険と火災保険の違い
項目 | 地震保険 | 火災保険 |
対象 | 建物と家財 | 建物と家財 |
補償内容 | 地震、噴火、津波による損害 (火災・損壊・埋没・流失) | 火災・水災・雪災などによる損害 |
地震による火災 | 補償あり | 補償なし |
補償金額 | 最大で火災保険金額の50%まで | ー |
注意点 | 地震による火災および倒壊などは、火災保険では補償されないため、地震保険が必要 | ー |
火災保険は火災だけではなく、水害や雪による災害も補償の対象になります。また、空き巣などによる盗難も補償対象となり、地震保険に比べて幅広くカバーできる点が特徴です。
一方、地震保険は火災保険に付帯する保険であり、火災保険でカバーできない部分を補償する目的があります。そのため補償内容は、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とした火災・損壊・埋没または流失による被害となっており、火災保険に比べて限定的です。
地震保険の必要性
地震保険の必要性を検討するうえで、以下のポイントを確認しておきましょう。
- 今後の地震発生率
- 地震による被害と生活再建のための費用
- 地震保険の世帯加入率と付帯率
それぞれ解説します。
今後の地震発生率
将来的に発生する確率が高い大規模な地震として、首都直下地震と南海トラフ地震が挙げられます。30年以内の発生確率は、首都直下地震ではマグニチュード7程度のものが70%程度、南海トラフ地震ではマグニチュード8~9クラスのものが70~80%です。(令和2年1月時点の推定)
首都直下地震や南海トラフ地震が発生した場合、東日本大震災をはるかに超える被害が想定されます。特に、南海トラフ地震における建物の全壊および焼失棟数は、推定約238.6万棟です。(平成25年3月時点)
死者・行方不明者数 | 住宅全壊戸数 | |
南海トラフ巨大地震 | 約32.3万人※1 | 約238.6万棟※2(東日本大震災の約20倍) |
首都直下地震 | 約2.3万人※2 | 約61万棟※2(東日本大震災の約5倍) |
(参考)東日本大震災 | 22,118人※3 | 12万1,768棟※3 |
※南海トラフ巨大地震は平成25年3月時点のもの、首都直下地震は平成25年12月時点のもの。
※1想定条件は「冬・深夜、風速8m/秒」
※2想定条件は「冬・夕方、風速8m/秒」
※3平成29年3月1日現在
また、発生確率が低いとされていても大きな被害をもたらす地震が発生することもあります。例えば、平成28年に発生した熊本地震のマグニチュードは7.0でしたが、その発生確率は30年以内に1%未満と予測されていました。
確率が低いから大丈夫と安心せず、日本は地震が多く大規模な被害を受ける可能性があると理解しておきましょう。地震への備えは、長期間にわたり安定した生活を送るために重要です。
地震による被害と生活再建のための費用
地震による被害を受けた場合、生活を再建するためには大きな費用がかかります。
内閣府の防災情報のページによると、東日本大震災によって全壊被害に遭った住宅の新築費用は平均して約2,500万円です。それに対し、政府による公的な支援や義援金によって見込める金額は約400万円となっており、2,100万円の開きがあります。
大きな災害からの生活再建は、住宅の新築費用だけでなく引越しや家財道具の購入も必要なことを考えると、さらに大きな費用が必要です。
「大規模な地震の発生確率が高い」「大きな被害が想定される」「公的な支援では不足する」という点を考慮して、地震保険の必要性を検討しましょう。
地震保険の世帯加入率と付帯率
地震保険の詳しい加入率や付帯率は、損害保険料率算出機構が公表しています。
2022年の世帯加入率は35.0%となっています。半分以上の方が加入していないことがわかります。意外に少ないと感じるかもしれません。
次に、火災保険に加入した件数のうち、地震保険にも同時に加入した人を表す付帯率を見ていきましょう。
2022年度の地震保険の付帯率は69.4%であり、約7割の人が地震保険に同時加入していることがわかります。また、付帯率は都道府県によって異なります。東日本大震災により大きな被害を経験した宮城県が1位、南海トラフ地震による大きな被害が懸念される高知県は2位、熊本地震を経験した熊本県は3位です。
2022年度の都道府県別地震保険付帯率ランキング
順位 | 都道府県 | 付帯率 |
1 | 宮城県 | 89.3% |
2 | 高知県 | 87.5% |
3 | 熊本県 | 85.9% |
4 | 宮崎県 | 84.3% |
5 | 鹿児島県 | 84.1% |
(中略) | ||
43 | 佐賀県 | 63.2% |
44 | 北海道 | 62.7% |
45 | 東京都 | 61.9% |
46 | 沖縄県 | 57.6% |
47 | 長崎県 | 54.8% |
最も付帯率が低い長崎県でも50%を超えている点を考えると、多くの方が地震への備えとして地震保険の必要性を認識しているといえます。
なお、損害保険料率算出機構のデータは、居住用建物および家財を対象として損害保険会社が取り扱っている「地震保険」のみの数値で、各種共済が含まれていない点にも留意する必要があります。
地震保険のメリットと注意点
地震保険によるメリットは、被害の補償だけではありません。以下の点も地震保険のメリットです。
地震保険のメリット
- 保険料控除により税金が還付される
- 耐震等級を有する住宅は割引を受けられる
- 政府による再保険の仕組みがある
年末調整や確定申告時に地震保険に支払っている保険料を申告すれば、所得税が年間最大5万円の保険料控除を受けられ、税金が還付される可能性があります。
また、耐震等級や建築年数などによって保険料の割引を受けられる制度もあるため、提出が必要となる建物登記簿謄本や建築確認書、住宅性能評価書などを大切に保管しておきましょう。
大きな被害に備えて、政府が再保険による保険金の支払いを準備している点も大きなメリットといえます。
一方で、地震保険には保険金が支払われない免責事項があるため、必ず確認しておきましょう。地震保険によくみられる代表的な免責事項は以下のとおりです。
地震保険の代表的な免責事項
免責事項 | 内容 | 具体例 |
法令違反や重大な過失がある場合 | 契約者などに法令違反や重大な過失がある場合、保険金は支払われません。 | 契約者本人が自宅に放火したなど |
紛失や盗難 | 地震保険の対象物であっても紛失や盗難による被害には保険金は支払われません。 | 地震によって避難している間に自宅にあった金品を盗まれたなど |
戦争や内乱による損害 | 戦争、内乱、デモ、暴動などにより損害が生じた場合、保険金は支払われません。 | 大規模なデモや戦争によって建物が破壊された、家財が強奪されたなど |
地震発生日から10日以上経過したあとの損害 | 地震が発生日から10日以上経過したあとに損害が生じた場合、保険金は支払われません。 | 地震発生日から、10日以上経過したあとに自宅が倒壊したなど |
地震で大きな被害を受けた場合、精神的にもつらい状況が続くと想定されます。少しでも負担を軽減できるよう、あらかじめ地震保険の内容や注意事項を把握しておきましょう。
万が一地震による被害にあったら、速やかに保険会社に連絡して状況を確認しておくことも大切です。地震保険の内容や保険料は大きく変わりませんが、いざという時の対応は保険会社によって異なる可能性もあります。
信頼のおける担当者がいたり、安心できる問い合わせ先があったりすると、いざという時の助けとなるはずです。
また、地震保険の保険期間は最長5年です。火災保険の加入と同時に付帯することが多いため、火災保険の保険期間と合わせる人もいます。支払方法は、最初に全期間の保険料を支払う一時払いが、1年契約の保険料を毎年支払う場合に比べて割安です。
このテーマに関する気になるポイント!
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地震保険とは?
地震保険とは、地震や噴火、それにともなう津波などを原因とする火災、損壊、埋没、流失によって、保険の対象である建物や家財が損害を受けた場合に保険金が支払われる制度です。
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地震保険の加入期間はどれくらい?
地震保険の加入期間は最長で5年です。単年での契約もできます。
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地震保険の補償の上限額はどれくらい?
地震保険の補償の上限は、建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限です。また、火災保険金額の50%までという制限もあります。
※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。
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地震保険は火災保険の補償外の部分をカバーする意味があるのね。