「拝命」の意味や使い方は?任命との違いや例文、類語なども紹介
ビジネスシーンにおいて、「拝命(はいめい)する」という言葉を耳にすることがあります。「拝命」は、昇進した際の所信表明や就任挨拶のスピーチなどでよく使われる言葉ですが、詳しい意味や正しい使い方がわからないという方もいるでしょう。
「拝命」は日常的に用いられる言葉ではないため、使い方が難しいかもしれません。しかし、正しい言葉遣いができないと、その人の印象を左右する可能性もあります。
ここでは、「拝命」の意味や使い方、類語を解説するとともに、例文も紹介します。
挨拶やスピーチをするときに困らないよう、「拝命」について理解しておきましょう。
- 「拝命」の意味
- 「拝命」と「任命」の違い
- 「拝命」の正しい使い方と例文
- 「拝命」の誤った使い方や注意点
- 「拝命」の言い換え表現が知りたい
- 「拝命」の意味や使い方を理解してマナーに沿った挨拶文をつくりましょう
「拝命」の意味
「拝命」とは、上司など目上の方から命令された役割や官職を謹(つつし)んでお受けするという意味の言葉で、「任命される」の謙譲語(へりくだった表現)に該当します。
「拝」は「うやまう」や「あがめる」など相手に敬意を示す謙譲語であり、「言いつけ」や「仰せ」という意味のある「命」と合わせて、命令を受けることをへりくだった表現になります。
「拝命」と「任命」の違い
「拝命」と似た言葉に「任命」があります。いずれも役割や官職に就く命令に関する言葉ですが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
「拝命」は前述のように、目上の方からの命令をお受けするという意味の謙譲語で、命令を受けた側が用いる言葉です。一方、「任命」は命令をする側が用いる言葉で、「役割や官職に就くことの命令」という意味があります。
つまり、「拝命」と「任命」は、命令を受ける側・命令をする側それぞれが用いる言葉として、違いがあります。
【「拝命」と「任命」の使用例】
- 拝命:プロジェクトの責任者を拝命した
- 任命:〇〇課長を新部署の部長に任命した
なお、「拝命」の具体的な例文については、後半で解説します。
【参考】そのほかの言葉との違い
「拝命」と間違って使われる言葉に「就任」「新任」「着任」がありますが、いずれも「拝命」とは、意味も使い方も異なります。間違えて使用しないように、それぞれの意味の違いや使い方を理解しておきましょう。
就任
就任には、「任務や職務に就くこと」という意味があり、「代表取締役に就任する」などの使い方をします。
新任
「新任」は、「ある職務や地位に新しく任ぜられること。また、新しく任ぜられた当人」を指す言葉です。「新任の〇〇です」のように使います。
着任
「着任」には、「新しい任地に到着すること、または、新しい任務に就くこと」といった意味があり、「A支店の店長がB支店の店長に着任した」という使い方があります。
このように、「就任」「新任」「着任」にはそれぞれの意味があり、使い方も異なりますが、いずれも謙譲の意味は含まれていません。謙譲語である「拝命」とは異なる言葉です。
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「拝命」の正しい使い方と例文
「拝命」は、新たな役割や官職についての命令を受けた際に、社内や赴任先の方などへの挨拶で用いられる言葉です。具体的には、所信表明や就任挨拶などが挙げられます。また、ビジネスシーン以外にも使われることがあります。
マナーに適した使い方ができるよう、例文をもとに、正しい使い方を確認していきましょう。
「拝命」を用いた例文1 :ビジネスシーン
ビジネスシーンにおける「拝命」の例文を、以下に紹介します。
- 今般(こんぱん)、営業部部長を拝命しました、〇〇です。会社の発展に尽力する所存でございます。
- 新プロジェクトのリーダーを拝命しました。プロジェクトの成功に向け、全力で取り組む所存です。
- このたびの定期異動により、4月1日付けで総務課課長を拝命しました。
- クライアントとの会議の司会を拝命しました。
- 先日拝命しました案件は、順調に進んでおります。
- 支店長を拝命した経緯を、ここにご報告いたします。
「拝命」を用いた例文2:ビジネスシーン以外
「拝命」がビジネスシーン以外で使用される例をいくつか紹介します。
- 子供が通う中学校のPTA役員を拝命しました。
- 夏祭りの運営委員長を拝命した〇〇です。
- サッカーチームのキャプテンを拝命しました。
「拝命」の誤った使い方や注意点
「拝命」は、日常生活において用いる機会が少ないため、使い方が難しいケースがあります。へりくだったつもりが逆に、相手に不快な思いをさせないよう、使い方の注意点について解説していきます。
二重敬語にならないように気を付ける
「拝命」は謙譲語のため、もともとへりくだった表現ですが、より丁寧な気持ちを添えようと二重敬語になることがあります。二重敬語を使うと「マナーを知らない」と思われたり、過剰な丁寧表現が「相手から見下されている」という気持ちを持たれたりする恐れがあります。
「拝命」を使用する際によくある二重敬語は、以下のとおりです。
拝命の二重敬語
拝命いたしました | 拝命<謙譲語>+いたす<「する」の謙譲語> |
拝命承りました | 拝命<謙譲語>+承る<「受ける」の謙譲語 > |
拝命させていただきます | 拝命<謙譲語>+させていただきます<「させてもらう」の謙譲語> |
ご拝命 | ご<尊敬の意味(または謙譲の意味)の接頭語+拝命<謙譲語> ※接頭語「ご(お)」は、文脈により尊敬語・謙譲語・丁寧語のいずれにもなる。 |
【「拝命」の誤った使用例】
「拝命いたしました」と「拝命承りました」は、いずれも謙譲語+謙譲語で、二重敬語です。
「拝命させていただきます」も謙譲語+謙譲語で二重敬語ですが、文化庁によると、そもそも「させていただきます」が使用できるのは、以下の2つを両方満たす場合に限るとされています。
- 相手側や第三者の許可を受けて行う場合
- それを行うことで自分が恩恵を受ける場合
なお、上記の2つを満たしていても、満たしている度合いによって適切な場合と不適切な場合があるため、使い方が難しい表現のひとつといえます。
ほかにも、「拝命される」という表現を見聞きすることがありますが、日本語として不適切です。「拝命」自体に「命令を受ける」という意味があり、そこに「される」を付けると「命令を受ける」という意味になるためです。二重敬語だけでなく、意味の重複にも気を付けましょう。
社外の人には使用しない
「拝命」は、命令を下した目上の方に対して、へりくだることで相手を立てる表現のため、社外の取引先や顧客などに対して使用するのはマナー違反です。社外の方に「プロジェクトリーダーを拝命しました〇〇です」などと挨拶すると、自社や自分のポジションを敬っているように捉えられる可能性があります。
身内の上司などに対する敬意を他社の方に使うのは不適切なため、この場合は、「プロジェクトリーダーを命ぜられました〇〇です」または、「プロジェクトリーダーを務めます〇〇です」などと挨拶するのが適当でしょう。
ちなみに、履歴書の職歴欄などを記載する際に「拝命する」を使用するのも不適切です。
「拝命」の言い換え表現が知りたい
「拝命」と同じシーンで使用できる言葉には、いくつか種類があります。「拝命」の使い方は難しい場面もあるため、状況に応じて使い分けられると良いでしょう。
任される
「拝命」の言い換え表現として、「任される(まかされる)」という言葉があります。「任す」の未然形「任さ」と、受け身や尊敬などの助動詞「れる」を組み合わせた言葉で、「権限などを人から委ねてもらう」という意味です。
上司などの目上の方から任務を受ける際に使用されます。
<「任される」の使用例>
- 希望していた役職を任された
- プロジェクトリーダーという大役を任された
引き受ける
「引き受ける」は、相手からの要望や命令された役割・仕事について、責任をもって受け持つという意味の言葉です。人から頼まれたときや任されたときに、接頭語「お」をつけて、「お引き受けします」と使用することが多いです。
<「引き受ける」の使用例>
- 町内会の会長を頼まれたので、引き受けることにした。
- 「可能でしたら、お願いできませんか」「私でよければ、お引き受けします」
仰せつかる
「仰せつかる(おおせつかる)」は、上司など目上の方から命令や指示を受けるという意味の言葉です。役割などを命じられるという意味の「言いつかる」の敬語であるため、二重敬語にならないよう注意しましょう。
<「仰せつかる」の使用例>
- 身に余る役職を仰せつかり、より一層身の引き締まる思いです。
- 入社して5年目、初めて大役を仰せつかったので全力で取り組みます。
命ぜられる
「命ぜられる(めいぜられる)」は、目上の方から命令を受ける・命令されるという意味の言葉で、「命じる」の受け身表現です。拝命と同様に、命令を受けるという意味がありますが、拝命のような謙譲のニュアンスは含まれません。
また、拝命は社外の方に対する使用はマナー違反ですが、「命ぜられる」は謙譲表現ではないため、社内・社外の両方で使用できます。
<「命ぜられる」の使用例>
- 海外出張が命ぜられた。
- このたび、店舗責任者を命ぜられました〇〇です。
「拝命」の意味や使い方を理解してマナーに沿った挨拶文をつくりましょう
「拝命」は、「目上の方から命令された役割や官職を謹んでお受けする」という意味の謙譲語です。へりくだることで、命令を下した目上の方を高められますが、二重敬語にならないように気を付ける、社外の方には使わないなどの注意点もあります。
また、「任命」など混同しがちな言葉もあるため、意味や使い方を十分に理解したうえで使用することが大切です。もし「拝命」が使いにくい場合は、「任される」などソフトなニュアンスの言い換え表現を使用するのも良いでしょう。
なお、ここで解説した「拝命」のほかにも、ビジネスシーンで知っておきたい言葉やマナーがあります。より魅力的なビジネスパーソンになるためには、TPOに応じたビジネスマナーが必須です。
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※この記事は、2023年12月時点の情報をもとに作成しております。
このテーマに関する気になるポイント!
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「拝命」の意味は?
「拝命」とは、上司など目上の方から命令された役割や官職を謹んでお受けするという意味の謙譲語です。
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「拝命」と「任命」の違いは?
「拝命」は命令を受けた側が用いる言葉で、「任命」は命令をする側が用いる言葉です。
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「拝命」を使うときに気を付けることは?
「二重敬語にならないこと」や「社外の方に使わないこと」などに気を付けましょう。
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「拝命」の言い換え表現は?
「任される」や「引き受ける」のほかに、「仰せつかる」「命ぜられる」などがあります。
※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。
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役職に就く命令を受けるほうは「拝命」を、命令をするほうは「任命」を使うのね。どちらを使うか迷ったときは、主語が誰になるのかを考えるとわかりやすいわ!