リスキリングとは。リカレント教育との違いやDX実現に向けた導入のポイントを解説

リリース日:2023/10/10 更新日:2023/10/10

時代の変化を表す言葉として近頃、DX(デジタルトランスフォーメーション)をよく聞くようになりました。クラウドサービスやビッグデータなど情報技術が社会で広く利用されるようになり、ビジネスモデルや仕事の方法にまで変化が求められています。

これまで使う機会が少なかったデジタル技術を活用できるように、能力やスキルを獲得していかなければなりません。デジタル時代に必要なスキルを新たに身に付けることが「リスキリング」です。ここでは、この新しい概念であるリスキリングについて理解を深めていきましょう。

  1. リスキリングとはどういう意味?
  2. リカレント教育、生涯教育、アンラーニングとの違いは?
  3. リスキリングが注目されている理由
  4. リスキリングでは実際何を学ぶの?
  5. 企業がリスキリングの取り組みを行うメリット
  6. 企業内でリスキリングを実施するための方法
  7. リスキリングを進めるうえでのポイント・注意点
  8. リスキリングの導入事例

リスキリングとはどういう意味?

リスキリングとはどういう意味?

リスキリングとは、新しい仕事に就く時や、現在の仕事で必要なスキルが大きく変わる時に、必要なスキルを獲得することです。とくにDX(デジタルトランスフォーメーション)という変化への対応という意味で使われています。

 

スキルというのは、さまざまな場面で使われる言葉で、技能や能力といった意味です。コミュニケーションスキル、ビジネススキルといった言い回しで聞くことがあるでしょう。リスキリングでは、必要となる新たなスキルの獲得を目指します。

 

リスキングはDXとセットで語られることが多くなっています。DXというのはもともと2004年に登場した言葉で、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面で変化させる」という認識でした。その後DXはビジネスや企業活動に結びつけて定義されるようになります。データとデジタル技術を活用し、ビジネスモデルや業務そのものを変革し、競争上の優位を獲得する、といった意味で使われています。

リカレント教育、生涯教育、アンラーニングとの違いは?

レアメタルの種類

リスキリングという言葉を聞くと、すぐに連想されるのが「リカレント教育」。リカレント教育も最近多く使われるようになった言葉で、仕事上の学習に関するものです。紛らわしいと感じている方も多いかもしれません。ほかにも学習や教育に関する、似た印象の言葉が多くあるので、1度整理しておきましょう。

 

これから企業をあげてリスキリングに取り組もうという時、リカレント教育との違いが曖昧になっていると、その意味を共有できない可能性もあります。

リカレント教育

まずはリカレント教育。言葉の定義としては、学校を卒業して社会人となったあとも、必要に応じて大学などの教育機関で教育を受けることを指しています。

 

これまでは教育というと、子供の頃から社会に出るまでの間に受けるもの、というイメージがありました。社会に出てからは、仕事を続けることになります。これに対しリカレント教育では、生涯にわたって教育と就労を交互に繰り返すイメージとなります。リスキリングと比べ、長期的な人生のあり方との関連が強い考え方といえるでしょう。

生涯教育

生涯教育は、リカレント教育と近い考え方です。年齢に関係なく、誰もが学びたいと思った時にいつでも教育を受けられるべきだという考え方につながります。現在では社会人から高齢者まで、仕事上必要なことだけでなく趣味に関するものまで、さまざまな場で学べるようになっています。誰でも利用できる通信教育やeラーニングなども普及し、その点では、生涯教育のための環境が整ってきていると評価できるのでしょう。

アンラーニング

アンラーニングは、英語では「unlearning」と書きます。日本語では「学習棄却」と呼ばれています。これまでに学習して獲得したスキルや価値観が、時代の変化により不要なものとなる場合があります。

 

例えばデジタル社会に適応する過程では、古い習慣やスキルが邪魔になる可能性もあるでしょう。アンラーニングは、そのような時にスキルや価値観の取捨選択をしていこうとする考え方です。DX時代への適応という場面では、リスキリングだけでなくアンラーニングも時として必要なのかもしれません。




リスキリングが注目されている理由

リスキリングが注目されている理由

リスキリングが注目されるようになったのは、DX時代への適応がより重要性を増したためだと考えられます。AI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングス)などデジタル技術の進展にともない、それを活用した新たなビジネスモデルが登場しています。例えばビッグデータの活用で需要予測の精度を高めたり、工場ではIoTの活用で不良品を減らしたりと、デジタル化が仕事を変えているのです。

 

以前の方法を続けていては、競争力を失ってしまうかもしれません。ビジネスをDXの時代へ適応させる方法のひとつが、リスキリングなのです。

 

また国の政策としても、リスキリングが大きく取り上げられています。2022年10月3日、岸田文雄首相が国会で所信表明演説を行いました。そこには、リスキリング支援に5年で1兆円を投じる計画が含まれていたのです。

 

人材・従業員のリスキリングは、イノベーションを生み出し、新たな価値の創造につながると考えられています。成長分野への労働移動をうながす作用も指摘されています。リスキリングにより生産性や収益力が高まれば、賃金の上昇も実現できるでしょう。

 

世界的にDXにより競争力を高める企業が増える中、日本の企業も適応することが求められます。そこで必要となるのが従業員を含めた、全社的なリスキリング。大きな変化の中で生き残るため、重要性が増しています。さらに国としても、企業の収益力を高め、従業員の賃金を上昇させる手段としてリスキリングに注目しているというわけです。

 

デジタル技術の発展は、これからも人々の生活や仕事を変える力となりそうです。

リスキリングでは実際何を学ぶの?

リスキリングでは実際何を学ぶの?

リスキリングは本来、仕事に必要なスキルに変化が起こった時、それに対応して新たなスキルを獲得することを意味します。しかし近年においては、とりわけDXへの対応、つまりデジタル化した時代への対応という意味で使われています。

 

デジタル化した時代への対応では、どのようなスキルが必要になるのでしょうか。ひとつの例を日本マイクロソフトが2020年12月から提供している「グローバル スキル イニシアチブ ジャパン(Global Skills Initiative - Japan)」で見てみましょう。

 

これは就労支援に向けて提供される、デジタルスキルの習得支援施策です。この中で紹介されている取り組みのひとつが、ITスキルを証明する資格の取得。そこにはWordやExcelを含む「Microsoft 365」、クラウドサービスの「Azure(アジュール)」、ビッグデータ解析やプログラミングができるビジネスプラットフォームの「Power Platform(パワー・プラットフォーム)」に関するスキルがあります

 

そのほかコロナ禍での仕事で広がったテレワークも、デジタル化した社会で定着しつつあります。必要になるのは、コラボレーションツールを利用するためのスキルです。そこにはZoomなどのビデオ会議ツール、チーム内のコミュニケーションを効率化するMicrosoft Teams、オンラインでの共同作業を行うために利用されるGoogleの各種サービスなどが含まれます。DXという変化へ対応するリスキリングにおいては、このようなスキルを学ぶことになるでしょう。

企業がリスキリングの取り組みを行うメリット

企業がリスキリングの取り組みを行うメリット

リスキリングが企業にもたらすメリットとしては、人手不足の解消があげられます。デジタル化に対応したスキルを見ていくと、生産性の向上につながるものが多くなっています。デジタル化のメリットのひとつは自動化です。日々のルーティーンワークが自動化されることで、時間の節約などが見込めるでしょう。確保できた時間で、必要な業務に取り組めます。

 

一般的な人手不足もありますが、とくに最近いわれているのは、デジタル技術を用いて企業やビジネスに価値を提供することができる人材「デジタル人材」の不足です。足りないデジタル人材を新たに外部から獲得するのは難しいかもしれません。しかしリスキリングによる取り組みを幅広く実施すれば、既存の従業員がデジタル人材としての役割を果たせるようになります

 

人手不足・人材不足への対応もありますが、もっとも重要なのは、デジタル技術を活用した新たな価値の創造が可能になるという点でしょう。時代が変化する中、企業が生き残るために必要なのは競争力です。従業員にリスキリングを行うことで、デジタル時代に通用する競争力を保持することができるのです。

企業内でリスキリングを実施するための方法

企業内でリスキリングを実施するための方法

【ステップ1】

まずはリスキリングの目的を共有し、そのために必要なスキルを特定します。企業ごとに、リスキリングによって目指す将来像は異なります。スキルの種類はさまざまあるため、目標に沿って従業員に必要となるスキルを具体化しましょう。

【ステップ2】

実際にスキルを習得します。スキル習得の手段もさまざまです。eラーニングや研修など、外部のサービスを利用することもあります。

【ステップ3】

従業員のスキル獲得が進んだら、今度は実際の業務に新たなスキルを導入していきます。従来の業務が単にデジタルに置き換わるだけでなく、さらに大きな枠組みでの変化が起こるかもしれません。

【ステップ4】

新たなスキルを獲得したうえで、企業が掲げる目標や、解決すべき課題に取り組みます。全社的な新たなスキルの獲得が、課題の解決や新たな価値の創造につながれば、リスキリングの成果があったといえるでしょう。

リスキリングを進めるうえでのポイント・注意点

リスキリングを進めるうえでのポイント・注意点

リスキリングは対象を一部の従業員に限定すると、その効果が少なくなる可能性があるようです。現在リスキリングで対応しようとするDXは、ビジネスモデルや企業戦略に変更を促すものです。企業全体の業務や意思決定のプロセスを変えるのであれば、リスキリングの対象は従業員全体に広げるべきということになるでしょう。

 

新しいスキルは研修やeラーニングなどで学ぶ場合が多くなると考えられます。しかし、それが実践で使えるレベルにできるかが重要なポイントです。学んだだけでは意味がないため、業務に導入し、実際の課題解決に活用できるような場所や仕組みが必要です。

リスキリングの導入事例

リスキリングの導入事例

Amazon

2025年までに、従業員10万人をリスキリングする計画を発表しています。その費用は7億ドルで、日本円にすると約1,023億円(2023年8月時点)です。「アマゾン・テクニカル・アカデミー」が目指すのは、非技術系の人材を技術系の人材にすること。さらに「マシン・ラーニング・ユニバーシティ」では、IT技術者が機械学習を学びます。

日立製作所

グループ企業で働く約16万人の全従業員を対象にDX基礎教育を実施しているのが日立製作所。日立アカデミーが「デジタルリテラシーエクササイズ」4講座を提供する形で行われます。(2020年9月時点)

住友商事

対象となるのは文系の従業員1,000人。研修でAIを使った市況予測などを学びます。(2020年11月時点)

デジタル社会の到来とともに仕事に必要なスキルは変化し、国や企業もDXに対応するためリスキリングに力を入れ始めています。そうした中、業績に注目が集まっているのが、リスキリング関連とされる企業。リスキリングを実施したい企業にAI人材育成などのトレーニングプログラムや、コンサルティングを提供している企業です。

今こそ新しい時代に向けた投資を始める時期だと考えるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。楽天証券などの証券会社では、スマホやパソコンを使って投資をスタートできます。国内外のリスキリングに取り組んでいる企業や、DXに力を入れている企業など、気になる銘柄を探してみるのも良いかもしれません。

 

※この記事は2023年10月時点の情報をもとに作成しております。

このテーマに関する気になるポイント!

  • リスキリングとはどういう意味?

    新しい仕事に就く時や、現在の仕事で必要なスキルが大きく変わる時などに、必要なスキルを獲得することです。

  • リカレント教育、生涯教育、アンラーニングとの違いは?

    リカレント教育は、社会人となったあとも就労と学習を繰り返すことです。生涯にわたって教育を受ける機会が備えられているべきだという考え方、すなわち生涯教育と近い関係にあります。一方、アンラーニングは、不要となったスキルを積極的に取捨選択していくことです。

  • リスキリングが注目されている理由は?

    DX時代への適応がより重要性を増したからです。

  • リスキリングでは実際何を学ぶの?

    ワードやエクセル、オンライン会議ツールなどの使い方、データ解析やプログラミングの方法などを学びます。

  • 企業がリスキリングの取り組みを行うメリットは?

    デジタル人材の不足を解消し、デジタルを使った新たな価値創造を可能にすることです。

  • 企業内でリスキリングを実施するための方法は?

    目的に沿って必要なスキルを選び、外部のリソースを利用するなどして学習を進め、実際の業務で実践していきます。

  • リスキリングを進めるうえでのポイント・注意点は?

    企業全体の仕組みに関わるため、一部の人々だけではなく全社的な取り組みが必要です。

  • リスキリングの導入事例は?

    さまざまな企業で全社的な取り組みとして、従業員によるDXの基礎知識や高度なAI技術の取得を進めています。

黒川ヤスヒト
この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー(AFP)
黒川ヤスヒト

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

証券会社でリテール営業を経験し、AFP資格を取得。現在ライターとして、パーソナルファイナンスに関する情報の発信を手がけています。 関心分野は、ライフプランに関する意識調査や最新の金融商品・サービスなど。

本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。なお、本コンテンツは、弊社が信頼する著者が作成したものですが、情報の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問等には一切お答えいたしかねます。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。あらかじめご了承ください。




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