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誤用が多い「すべからく」の正しい使い方|本来の意味や「おしなべて」との違いも解説
「すべからく」は、本来の意味と異なる使い方をしている人が多い言葉です。知らずに間違った使い方をしていると、恥をかく可能性があります。特に、ビジネスにおいては、きちんとした言葉を使えると上司や取引先から一目置かれる存在になれるでしょう。
ここでは、「すべからく」の正しい意味や使い方、「おしなべて」との違い、「すべからく」を言い換える表現について解説していきます。
- 「すべからく」の正しい意味と使い方
- 「すべからく」の例文
- 本来の使い方と異なることが多い理由
- 「おしなべて」との違い
- 「すべからく」に似た表現
- 「すべからく」の対義語
- 正しい言葉を使ってスマートに働こう
「すべからく」の正しい意味と使い方
「すべからく」の正しい意味を尋ねられたら、答えられますか?まずは、「すべからく」の正しい意味と使い方を把握しておきましょう。例文も紹介しますので、参考にしてみてください。
「すべからく」の正しい意味は?
「すべからく」は、漢字で書くと「須(すべから)く」または「須(すべか)らく」となります。「須」は「求める・必要とする」という意味を持つ言葉です。同じ意味合いを持つ言葉には「必須」・「須要」があります。
「すべからく」は元々、漢文を読み下す(言葉の語順に直して読むこと)ための表現から生まれました。漢文の「須」には「須く~すべし」と、多くは義務の助動詞「べし」をともなって読み下すルールがあり、その意味は「必ず~しなければならない」です。
漢文の「須」が元である「すべからく」は「当然そうしたほうが良い・ぜひともそうすべき」が本来の正しい意味です。
「すべからく」の使い方とは?
「すべからく」は、「やって当たり前」や「必ずすべし」といった義務や命令の意味合いを含む強い表現です。目上の人に対して使う場合や公の場での発言においては、失礼に当たらないよう使い方に気を付けましょう。
「すべからく」の例文
「すべからく」の意味と使い方を押さえたところで、例文を紹介します。「べし」「べき」と「~しなければならない」の2通りの言葉とセットで覚えておくと良いでしょう。
「べし・べき」とセットで使う
漢文の読み下しのように、「すべからく」のうしろに義務や当然の助動詞「べし」「べき」をともなった使い方ができます。
- 学生はすべからく勉学に励むべし。
- 任命されたのなら、すべからく力を尽くすべきだ。
- 問題が起こったのなら、すべからく解決に当たるべきだ。
「~しなければならない」とセットで使う
「べし・べき」と同様に、「すべからく」のうしろに義務や必要の意味「~しなければならない」をともなった使い方もできます。
- お金が欲しければ、すべからく努力しなければならない。
- こちらがミスしたのなら、すべからく謝罪しなければならない。
- 企業に勤める人なら、すべからく機密情報を漏えいさせてはならない。
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本来の使い方と異なることが多い理由
「すべからく」は本来の意味ではなく、「すべて」や「一様に」の意味で使われるケースが多く見られます。「すべからく」を「すべて」と同じ意味として使うのは厳密にいえば誤りです。なぜ本来の意味と異なる使い方が広まってしまったのか、その理由を考察していきます。
「すべて」と音が似ており、入れ替えても意味が通じるから
「すべからく」は、全部や全体を意味する「すべて」と音が似ていることが、意味を取り違える原因のひとつです。加えて「すべからく」を「すべて」に置き変えても、文脈上は意味が通じることが多いためだと考えられます。
例えば、先ほどご紹介した例文の「学生はすべからく勉学に励むべし。」で考えてみましょう。「すべからく」を、すべてを意味する「全員」に置き換えても意味が成立します。そのため、なかなか本来の意味と異なることに気づけません。
正しく「すべからく」を使っていない著名人やメディアによる影響
「すべからく」は、著名人の発言・メディア媒体・人気作品の中でも、特に「すべて・全体」の意で使われるケースが多く見られます。多くの人の目に触れる媒体で本来と異なる意味で用いられることも、このような認識が広まった原因と考えられるでしょう。
また、古い表現であるため、普段の会話の中で「すべからく~すべし」はめったに使いません。本来の用法を意識する機会が少ないうえに、本来と異なる使い方を目にする機会が多ければ、その認識が浸透してしまうのも無理はないでしょう。
文化庁によって行われた令和2年度「国語に関する世論調査」で、「すべからく」の意味を問うています。正解の「当然、是非とも」と回答した人の割合は54.8%、誤用である「すべて、皆」と回答した人の割合は32.1%(※)でした。
この調査からは、日本人の10人に3人は、「すべからく」に対して本来の意味とは異なる認識を持っていることがわかります。実際に使われている例を確認してみましょう。
例文①
上記は「すべて」の意味で使用していると考えられるため、本来の意味とは異なる使い方をされている可能性があります。
ほかにも以下のような使い方は、本来の意味とは異なるため注意しましょう。
- 業務はすべからく完了した。
- どのアイドルもすべからく美人だ。
- あの歌手のCDはすべからく持っている。
「おしなべて」との違い
「おしなべて」は「すべからく」と混同しやすいですが、両者はまったく違う意味を持つ言葉です。間違えて使わないように、意味と適切な使い方を例文とともに覚えておきましょう。
「おしなべて」の意味
「おしなべて」は「押し並べて」とも表記され、古典文学でも用いられています。意味は以下の2つです。
1つ目の意味は「すべて」「概して」「全体にわたって」と全体をまとめて指す表現で、現代ではこの使い方が一般的です。「すべからく」の本来と異なる意味と同じであるため、混同する人が多いと考えられます。
2つ目の意味は、格助詞の「の」をうしろにつなげて「おしなべての」と使う方法です。この場合は「ありきたりな」「平凡な」「普通の」といった意味になりますが、現代語ではあまり使われず、源氏物語などの古典文学に登場します。
「おしなべて」の使い方
「おしなべて」はまとまったものに対して使う表現ですが、まとまりに一貫性がないものに対しては使用できません。個々のものに対して使うことはできないので、覚えておきましょう。
また「おしなべて」は、ビジネスでの会議やプレゼンテーションなどで使用することはありますが、普段の会話ではあまり使われない言葉です。その場にいる全員が共通して理解できるかどうか、配慮したうえで使うと良いでしょう。
「おしなべて」の例文
「おしなべて」は、「すべて」の意味合いで以下のように使えます。
- この作者の本は、おしなべて好評だった。
- 今年のお米は、おしなべてできが良かった。
- 今年の新入社員は、おしなべて優秀だ。
また「ありきたりな・平凡な・普通の」の意味合いでは、以下の源氏物語で使われている文章が有名です。
「はじめよりおしなべての上宮仕へし給ふべき際にはあらざりき。(出典:源氏物語 桐壺)」とは「もともと平凡な天皇のそば仕えをなさるような身分ではなかった」と、訳すことができます。
「すべからく」に似た表現
「すべからく」と似た表現を5つ紹介します。ここで紹介する表現は「すべからく」を別の表現に言い換えたい時に使えるので、覚えておくと良いでしょう。
①当然
「当然」は「当たり前である・そうあるべき・道理にかなっていること」という意味です。「当然~するべきだ」や「当然~しなければならない」と義務や必要の表現をともなって、言い換えることができます。
例文の「すべからく」を「当然」に言い換えてみましょう。
- 任命されたのなら、すべからく力を尽くすべきだ。
- 任命されたのなら、当然力を尽くすべきだ。
②必須
「必須」は「必ず用いるべき・欠かせないこと」という意味です。
例文の「すべからく」を「必須」に言い換えてみましょう。
- 任命されたのなら、すべからく力を尽くすべきだ。
- 任命されたのなら、力を尽くすことは必須だ。
③ぜひ・ぜひとも
「ぜひ・ぜひとも」は、「どうしても・きっと・何とぞ・必ず」などのように、何としても実行しようとする様子や強く願う様子を強調する副詞です。ちなみに漢字での「是非」は名詞の「正しいことと正しくないこと」を意味するため、言い換えには適しません。
例文の「すべからく」を「ぜひとも」に言い換えてみましょう。
- 任命されたのなら、すべからく力を尽くすべきだ。
- 任命されたのなら、ぜひとも力を尽くすべきだ。
④無論
「無論」は、「言うまでもなく・もちろん」などのように、論じる必要もなく当然のことを意味します。
例文の「すべからく」を「無論」に言い換えてみましょう。
- 任命されたのなら、すべからく力を尽くすべきだ。
- 任命されたのなら無論、力を尽くすべきだ。
⑤自明
「自明」は、特別に証明や説明をしなくても、わかり切っていることや明らかなことを意味します。「自明」には「当然そうすると良い」という意味合いがあるため、言い換えが可能です。
例文の「すべからく」を「自明」に言い換えてみましょう。
- 任命されたのなら、すべからく力を尽くすべきだ。
- 任命されたのなら、力を尽くすことは自明だ。
「すべからく」の対義語
「すべからく」の対義語には「意外」「特異」「稀有(希有)」が挙げられます。
「意外」は、「予想していたことと非常に違っていること」という意味があり、思っていたことと違う状態を表す言葉です。「特異」は「ほかと特別違うこと」を意味し、「稀有(希有)」は「めったにない珍しいこと」を意味するため対義語に当たります。
正しい言葉を使ってスマートに働こう
「すべからく」は古い言い回しであるため、きちんと理解できていない人が多いとお伝えしました。「すべからく」のような言い回しをビジネスで使えると、印象が良くなることもありますが、本来の意味と異なる使い方をすると逆効果になりかねません。
ビジネスやプレゼンテーションの場では、情報や意見を正しく伝えられることが重要です。たとえ本来の「当然~であるべき」の意味で使っても、相手には「すべて・みんな」の意味で伝わってしまえば、誤解を招く可能性があります。
「すべからく」は難易度の高い言葉です。こうしたミスコミュニケーションを防ぐためには、無理に「すべからく」を使わず、伝わりやすい表現に言い換えたほうがスマートです。よく知らない言葉をなんとなく使うのではなく、正しく理解したうえで使うようにしましょう。
このテーマに関する気になるポイント!
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「すべからく」の正しい意味は?
「すべからく」は「当然そうしたほうが良い・ぜひともそうすべき」が本来の意味です。
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「すべからく」はどう使うのが正しいの?
「すべからく」は「そうあることが当然」という意味合いで使い、「べし・べき」や「~しなければならない」などと一緒に使うと良いでしょう。
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「すべからく」を言い換えるとどんな言葉になる?
「当然」「必須」「ぜひ・ぜひとも」「無論」「自明」に言い換えることができます。
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※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。
会話の中で「すべからく」を使ったことないけど、今度使ってみようかしら!