ペットへのマイクロチップ装着の義務化|メリットやデメリット、費用を解説

リリース日:2022/07/08 更新日:2024/11/14

2022年(令和4年)6月1日から、犬や猫のマイクロチップ登録制度がスタートしました。これまでにも、民間事業者が個別に実施しているマイクロチップの登録制度がありましたが、今回始まった制度は、ペットショップやブリーダーなどで販売されるペットにマイクロチップの装着が義務化されるというものです。マイクロチップを装着したペットを飼っている方は、データを登録しなければならず、影響は広範囲になりそうです。ペットのマイクロチップとはどのようなものなのか、制度やメリットなどについて解説していきます。

  1. 犬や猫へのマイクロチップ装着義務化の経緯
  2. マイクロチップはどこで装着できる?
  3. マイクロチップ装着のメリット
  4. マイクロチップ装着に危険性、デメリットはあるの?
  5. マイクロチップ装着に必要な費用

犬や猫へのマイクロチップ装着義務化の経緯

犬や猫へのマイクロチップ装着義務化の経緯

飼い犬・飼い猫に取り付ける「マイクロチップ」。形は直径2ミリ、長さは12ミリほどの円筒形で、とても小さなものです。外側には生体適合ガラスが使われており、人間の歯や骨の治療にも使われることのある素材です。これを専用の注射器を使って、皮膚の下に埋め込みます。マイクロチップには15桁の固有の番号が記録されていて、専用の機器で読み取るという仕組みです。

 

個体識別番号は世界で1つだけしかない数字が割り当てられるため、飼い犬や飼い猫の管理に役立ちます。データベースには、飼い主の情報などが記録され、これにより、ペットが飼い主から離れてしまっても、ペット自身や飼い主に関するデータを知ることができるのです。首輪や名札に代わる、より便利な装置といえるでしょう。装着が義務化されることで、より多くの飼い犬・飼い猫に取り付けられることが期待されています。

・きっかけは阪神・淡路大震災
マイクロチップの装着は義務化される前から、民間で取り付けが行われていました。チップの埋め込みが広がるきっかけとなったのは、1995年に発生した阪神・淡路大震災。大規模な地震による混乱から、多くの犬・猫が迷子になってしまう事態となりました。首輪や名札は動き回るうちに外れ落ちてしまうこともあります。そこで議論がされるようになったのが、マイクロチップの装着です。

 

チップは皮膚の下に埋め込むため、落ちる心配がありません。仮に震災で飼い犬が迷子になっても、マイクロチップが埋め込んであれば、個体識別番号から飼い主が誰か分かります。大規模な災害が起こったときには、迷子になった飼い犬や飼い猫を探すのに役立つ存在となるでしょう。

 

こうしたことから装着を義務とするための議論が進められ、動物愛護管理法の一部を改正する法律が、2019年6月に成立しました。この法律が施行されるのが、2022年(令和4年)6月1日からというわけです。義務化されるのは、ブリーダーやペットショップなどで販売されている犬や猫です。またマイクロチップを装着したペットを飼う場合、データベースに飼い主情報を登録する義務が生じます。これからペットを飼う場合には、知っておくべき制度といえるでしょう。

マイクロチップはどこで装着できる?

マイクロチップはどこで装着できる?

装着が義務化されると、ペットショップなどから購入する犬・猫には、チップがすでに埋め込まれていることになります。しかし装着していない動物をすでに飼っている場合や、知り合いなどから譲り受ける場合では、マイクロチップの取り付けは必須ではなく、努力義務となっています。さまざまなメリット・デメリットを考慮しながら、装着を検討することになるでしょう。

 

装着は、動物病院などで、獣医師が専用の注射器を使用して施術します。埋め込む場所は、肩甲骨から首のあたりが一般的で、一度埋め込むと、半永久的に個体識別証として読み取り可能です。埋め込みができるのは、飼い犬や飼い猫の種類によって違いがありますが、犬の場合おおむね生後2週間から、猫だと生後4週間頃からです。

 

・制度の詳細
ペットを飼う方が知っておきたい、制度の詳細を見ておきましょう。マイクロチップを装着した犬・猫を新しく飼い始めたら、飼い主は30日以内に飼い主データを登録しなければなりません。すでに飼っている動物に、マイクロチップを装着した場合も同様です。新しく飼い始める場合では、動物と一緒に渡される「登録証明書」を用意して「所有者情報の変更登録」を行います。飼っているペットに装着したときは、獣医師から「マイクロチップ装着証明書」を受け取り、所有者情報などを登録します。

 

データの登録先は、指定登録機関となっている公益社団法人の日本獣医師会。登録のためのサイトは2022年6月1日にリリースされました。登録の手続きはオンラインのほか、郵送でも可能です。

登録する内容には以下のようなものがあります。

 

・マイクロチップの識別番号
・所有者の氏名
・住所
・メールアドレス
・電話番号
・ペットの品種
・毛色
・名前
・生年月日
・性別
・狂犬病予防法登録番号(犬の場合)

マイクロチップ装着のメリット

マイクロチップ装着のメリット

飼い犬や飼い猫に装着したマイクロチップが役立つ場面の1つは、ペットが飼い主と離れ離れになったときです。飼っている犬が迷子になったり、地震や水害などで行方が分からなくなったり、盗難にあったりとさまざまな場合が想定されます。埋め込んだマイクロチップから飼い主のデータを読み取れば、飼い主のもとへ届けるのも比較的容易です。飼い犬・飼い猫が迷子になってしまい見つからなくなる、というリスクへの対策といえるでしょう。さまざまなデータが入っており、紛失することがないこともメリットとなります。

 

・所有者不明のペット
環境省は、2020年4月1日〜2021年3月31日における、犬・猫の引き取りの状況について公表しています。数字を見ると、この期間に引き取られた犬・猫は、7万2,433頭。このうち所有者不明は、5万9,253頭です。チップを装着していれば、飼っていた人が分かり、飼い主のもとに帰れていた可能性があります。また飼っていた人が誰なのか判明しやすくなることで、安易な飼育放棄を予防する効果もあるでしょう。飼い犬や飼い猫にとってもメリットになる部分があります。

 

前掲のアンケート調査で「装着させたい」を選んだ理由も見ておきましょう。「ペットが家から逃げだしたときに見つからないと、かわいそうだし家族も辛い」、「家の中で飼っているが、ふとした拍子に外に出てしまった際、マイクロチップからの情報を頼りに探したい」、「飼育放棄をなくすため」といった声が見られます。飼い犬や飼い猫をかわいがる気持ちと同時に、飼育放棄による捨て犬や捨て猫が増えてしまう問題を解決したいという意識もあるようです。

マイクロチップ装着に危険性、デメリットはあるの?

マイクロチップ装着に危険性、デメリットはあるの?

ペットとして飼う犬や猫の体にチップを埋め込むことに、抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。安全性については、表面に副作用のない材質が使われていると説明されています。体内に入れたとしても毒性や発がん性はなく、長期的に劣化しないなどの特性を持っています。獣医師が施術することで、動物への負担は少ないとされています。

 

・飼い主の意向は
ただペットを飼っている方としては、複雑な気持ちがあるようです。ここで1つ意識調査を見てみましょう。株式会社NEXERの運営する日本トレンドリサーチが「犬猫のマイクロチップ装着義務化に関する調査」を行っています。調査期間は、2021年12月28日〜2022年1月12日、男女2,000名を対象に回答を集計したものです。これによると装着義務化の認知度は23.7%。またペットとして犬・猫を飼っている443人のうち、すでに全頭装着している割合は21.5%でした。

 

飼っているペットにマイクロチップを装着していない人、またペットの一部に装着している人、計340人を対象に「飼い犬・飼い猫に今後装着させたいと思いますか?」という質問をしたところ、「装着させたくない」が55.9%と高い数字になりました。「装着させたい」は17.6%、「悩んでいる」は26.5%。この結果からすると、積極的に装着させたいと考えている人は少ないことが分かります。

 

「装着させたくない」と答えた理由をいくつか見てみると、「手術を受けさせるのがかわいそう」、「生き物にチップを埋め込むのは倫理に反していると思う」、「災害で離れてしまう可能性は低い」、「お金がかかりそう」といった声があがっています。装着には、ペットを飼っている方の金銭的な負担とともに、心理的な負担がデメリットとして存在しているようです。

マイクロチップ装着に必要な費用

マイクロチップ装着に必要な費用

動物病院でマイクロチップを犬・猫に装着する際にかかる費用は数千円ほど。いくつかの動物病院で料金をチェックすると、3,000円〜5,000円となっているところが多いようです。

 

自治体によっては、飼い犬や飼い猫への装着に、補助金を出しているところもあります。横浜市の例では、1件につき1,500円(上限)が補助されることになっています。ペットショップやブリーダーが販売するペット以外は努力義務ですが、多くの自治体では補助金を出してマイクロチップの装着を推進しているようです。

 

装着する際にかかる費用のほか、データベースへ情報を登録する際にも料金がかかります。ペットショップなどで、すでにマイクロチップを装着した動物を購入した場合、所有者情報の変更手続きにかかる料金はオンラインだと300円、郵送だと1,000円です。

 

現在飼っているペットに新たに装着した場合は、マイクロチップの情報や所有者情報などを登録が必要ですが、こちらも料金は、オンライン300円、郵送1,000円です。

 

飼い犬や飼い猫へのマイクロチップ装着。さまざまなメリットがある反面、かわいそうと感じる人も多いようです。さらにマイクロチップによってペットの迷子や盗難などの対策はできても、避けられない不慮の事故や病気にかかってしまう可能性はあります。そんな犬や猫などのペットを大切にしている方に、おすすめなのが楽天ペット保険。「楽天ペット保険ずっといっしょ[もっと]」は、ペットの幅広い病気やケガが補償の対象となっています。全国の動物病院に対応していて安心。さらに保険料の1%が楽天ポイントとして貯まります。大切なペットに治療が必要という場合に備えて、保険を準備しておきましょう。

このテーマに関する気になるポイント!

  • 犬や猫へのマイクロチップ装着義務化の経緯は?

    阪神・淡路大震災で、迷子になった犬や猫が増えたことから議論が活発になり、動物愛護管理法が改正され、2022年(令和4年)6月1日から施行されることとなりました。

  • マイクロチップはどこで装着できる?

    動物病院で、獣医師が専用の注射器を使って施術します。

  • マイクロチップ装着に危険性、デメリットはあるの?

    生体適合ガラスを使用していて、安全性が高いとされています。ただペットへのマイクロチップ埋め込みには、心理的な負担を感じる飼い主も多いようです。

  • マイクロチップ装着のメリットは?

    ペットが迷子になっても、飼い主のもとに帰ってくる可能性が高くなることなどがあげられます。

  • マイクロチップ装着に必要な費用は?

    動物病院で装着すると、数千円費用がかかります。そのほかデータベースへの登録にオンラインの場合300円、郵送の場合1,000円がかかります。

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黒川ヤスヒト
この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー(AFP)
黒川ヤスヒト

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

証券会社でリテール営業を経験し、AFP資格を取得。現在ライターとして、パーソナルファイナンスに関する情報の発信を手がけています。 関心分野は、ライフプランに関する意識調査や最新の金融商品・サービスなど。

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