「金持ち喧嘩せず」ということわざには、経済的な余裕がある人は心にもゆとりが生まれやすいことや、利益や損失を冷静に判断して無駄な争いを避ける傾向があることなど、大きく分けて2つの意味があると考えられています。もう少し具体的に説明しましょう。

「金持ち喧嘩せず」ということわざの1つ目の意味は、金持ちは心に余裕があり喧嘩をする気持ちにはなりにくいというものです。

お金が不足していると、趣味やレジャーへの支出はもちろん、生活費まで切り詰める必要が出てくるため、焦りや不安感が増すでしょう。一方で、金銭的な余裕がある人は、お金に関する精神的な焦りやイライラ、不安などは比較的感じにくい傾向にあります。

貯金や使えるお金が多くあることが態度や性格にも影響し、お金持ちの心の余裕につながっていると考えられます。この心の余裕がコミュニケーションにも表れることで、「金持ち喧嘩せず」の状態になるのです。

2つ目の意味は、喧嘩をしても得をしないといったビジネス的なことです。富裕層の間では喧嘩が起こりにくいとすでに述べましたが、それは心の余裕とは別の面からも説明できます。

基本的に会社経営などで財を成した人の多くは、無駄や生産性のない行動や言動を避けようとします。ビジネスの取り引きを行う場で、些細なことで争っていては、お互いにとって利益になりません。お金持ちになる人の多くは合理的に物事を考え、より大きな成果のために行動を律します。些末な意見の不一致や感情で喧嘩をするのは、無駄と考えるでしょう。

単に「金持ちだから喧嘩をしない」というわけではなく、損得をしっかり考えて喧嘩を避ける人が、結果的に金持ちになりやすいという側面もあるといえます。

「金持ち喧嘩せず」が、ビジネスの場でどのように実行されるのか、想定されるケースをいくつか紹介します。

お金持ちの中には、合理的に考えるだけでなく、リスクを事前に察知する能力も高い人が多いといわれています。そのため、トラブルに巻き込まれそうなコミュニティや、自分と性格があわず、今後喧嘩に発展する可能性のある場とは関わらないことも珍しくありません。

喧嘩をする、しないという以前に、喧嘩とは無縁の場所に身を置くことで損失・リスクを避けながらビジネスを進めていることが考えられます。

経営者は自身の事業が失敗しないよう、常に未来のリスクを把握しながら先手を打つことを考えます。そして経営者にとって、リスクとはビジネスにおける取り引きや会議などでの喧嘩およびトラブルによる、無駄な時間や労力のことです。このような無駄の回避のために経営者は先手を打ちます。

その方法は人によってさまざまですが、自分の主義や主張を押し通すのではなく、お金などのわかりやすいメリットを上手に活用して、解決しやすい方法を選ぶ傾向にあります。

多くのお金を持っていれば生活費などの日々の金銭的な悩みからは解放され、心に余裕ができるでしょう。もちろんお金では解決できないこともありますが、お金で解決できることも多いでしょう。また、一部のお金持ちは時間や労力などを損得で考え、喧嘩は無駄な時間であり損失になると捉えています。

そのため、このような無駄な時間を避けるために、お金を有効に活用して問題を解決しようとすることもあります。十分なお金があれば、そもそも争いを避けやすくなり、争いを避けることでさらにお金が巡ってくるという好循環が生まれます。

また、世の中には喧嘩や争いごととは無縁の人生を送るお金持ちもいます。お金があり心に余裕のある家庭に生まれ、ストレスをあまり受けず穏やかに育った人はそもそも喧嘩を経験したことがない場合もあります。そのような人は、例えばビジネスや人間関係で多少理不尽なことがあっても穏やかに対応し、相手に強く自己主張して喧嘩をするという選択をあまり取らないかもしれません。

もちろん、同じような環境で育ったとしても、喧嘩をしてしまう場合もありますが、お金持ちの家庭に生まれ育った子供が温厚な性格に育つケースは珍しくありません。このような場合の「金持ち喧嘩せず」とは、環境の影響から、争いや喧嘩に関する経験や考えを持ちにくい人がいることを表しています。

このように、お金持ちが喧嘩をしないといわれるのには、それなりの理由があることがわかりました。合理的に物事を考え行動することで成功した人、もしくは喧嘩をする必要のない環境にいる人、に大きく分けられるでしょう。

「金持ち喧嘩せず」ということわざは、ある程度現実の傾向を反映しています。これからライフプランや貯金について真剣に考えている人は、お金持ちの思考や性格を参考にしてみるのもおすすめです。