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自筆証書遺言書の作成事例|特別な事情がある場合に気を付けることを解説
自筆証書遺言書とは、法律で定められた方法に基づいて自筆で作成する遺言書です。今回は 配偶者居住権の設定や、自分の死後、ペットの世話をお願いしたい場合の注意点を個別事例を参考に解説していきます。
注意事項
(1)遺言書記載例は一部抜粋で記載しているため、このまま作成しても自筆証書遺言書としての効力が生じない可能性があります。
(2)掲載日時点での法制度に基づき作成しています。
(3)個別具体的な検討を要する場合もあるので、あらかじめ専門家等に相談をするなど、作成者自身の責任において遺言書を作成してください。
事例1 配偶者居住権の設定
自分の死後も妻に自宅で生活をしてもらいたいが、先妻との間に長男がいる場合。
遺言書記載例
遺言書
第1条
遺言者は、その所有する下記に記載する建物(以下「自宅建物」という。)について、無償で使用収益することができる権利として、配偶者居住権を遺言者の妻である田中花子(昭和●年●月●日生)に遺贈する。
配偶者居住権の存続期間は、妻の終身の間とする。
第2条
遺言者は、自宅建物を配偶者居住権付きで遺言者の長男田中二郎に相続させる。
第3条
遺言者は、遺言執行者として、妻田中花子を指定する。
建物の表示
所在 東京都港区●●一丁目1番地1
家屋番号 1番1
種類 居宅
構造 木造瓦ぶき平家建
床面積 120㎡
記載に際してのポイントの解説
(1)配偶者居住権を「遺贈」する
相続人へは遺言書で「相続させる」という表現を使用することが一般的です。
ただし、配偶者居住権を設定する場合は「遺贈する」という表現を記載する必要があります。
この「遺贈」の場合は、これのみを放棄することができる事が理由です。
妻の事情が変わり、配偶者居住権が不要となり、受け取りたくない状況になった場合を想定しています。
「相続させる」の記載となると、これを放棄するには、配偶者居住権のみの放棄はできず、相続全体の放棄しか方法がありません。
(2)不動産は長男に相続させる
長男に不動産を相続させることで、配偶者が取得できるその他の財産(預貯金等)の割合が増えることとなります。
(3)遺言執行者として妻を指定する
妻は遺言執行者として、速やかに不動産の登記を進める必要があります。
配偶者居住権は長男以外の第三者に対しては、登記をしておかないと主張することができません。
例えば長男がこの不動産を売却してしまった場合、配偶者は登記をしていないと不動産の購入者に自分の居住権を主張できなくなってしまいます。
(4)建物の表示は住所ではなく、登記されている表示をする
建物の表示を「自宅」や「母屋」「住所記載」とした場合であっても、直ちに法的な効力が無くなるものではないと考えますが、配偶者居住権を登記する際に法務局から不動産が特定できないと言われる可能性があります。
登記されている表示は法務局で取得することのできる「全部事項証明書」、または毎年送付される「固定資産税納税通知書」に記載がありますので、そちらを確認しましょう。
事例2 自分の死後、ペットの世話をお願いしたい
自分の死後、愛犬の世話をしてもらいたい場合。
遺言書記載例
遺言書
第1条 遺言者は、次の財産を、知人である田中花子(昭和●年●月●日生・住所●●県●●市●●町1-1-1)に遺贈する。
(1)遺言者の飼育する犬
名前 ポチ
犬種 雑種
性別 オス
年齢 7歳
登録番号 ●●●●
(2)●●銀行●●支店にある遺言者名義の預金全て
2 田中花子は、前項に記載する財産の遺贈を受けるかわりに、下記に記載する負担内容に従い、前項(1)に記載した犬を適切に飼育しなければならない。
第2条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
佐藤次子(昭和●年●月●日生/住所●●県●●市●●町2-2-2)
負担の内容(例)
1. 飼育方法(餌の種類・持病のケア等)
2. かかりつけの獣医の指定
3. 遺言執行者への定期的な連絡
4. 犬の死後の埋葬方法の指定
5. その他
記載に際してのポイントの解説
(1)ペットは法律上「相続財産」
自分の死後、飼育しているペットの世話を任せる相手がいる場合は、「負担付遺贈」の方法によることができます。
ペットは相続財産ですので、これを贈与し世話をしてもらうかわりに、資金を贈与します。
(2)負担付遺贈は放棄することができる
相続開始後、田中花子さんは、負担付遺贈を自由に放棄することが可能です。
そのため、事前に本人と飼育方法等について詳細な打合せをしておくことが望ましいでしょう。
(3)遺言執行者の指定
遺言執行者を別に定めることで、田中花子さんが資金を受け取ったあと、ペットの飼育をしない場合は、これを是正するよう指導したり、裁判所に遺贈の無効を請求したりすることができます。
(4)負担の内容を設定する
ペットといってもさまざまな種類の動物がいるため、個別の状況が考えられます。
必ず守ってもらいたいことや、できればしてもらいたいことなどを細かく設定することで、負担付遺贈の受取人(田中花子さん)は自分で引き受けられるかどうかを判断しやすくなります。
細かい指定をする必要もあるため、遺言書作成前に具体的な相談や打合せをしておくことが望ましいでしょう。
(5)その他の方法
ペットの飼育を託す上記以外の方法としてペット信託等があります。
まとめ
配偶者居住権は遺された配偶者にとっても重要なことであり、かつ税務的な計算が必要なケースもあるため、事前に専門家も交えて夫婦間で話し合いをしておくことをおすすめします。
また、ペットの飼育を任せる遺言書を作成する場合は、付言事項でペットへの思いや、引き受けて下さる方への感謝の気持ちを遺すことで、より一生懸命お世話をしてくれる事になるかもしれません。
ペットも大切な家族として飼育されている方がほとんどだと思います。
自分にもしものことがあった場合の対策を準備しておくことも大事です。
このテーマに関する気になるポイント!
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配偶者居住権とは?
遺言等によって設定することができる権利です。この権利を取得した配偶者は終身、無償で自宅に居住することが可能となります。
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遺言書で気を付ける点は?
配偶者居住権を「遺贈する。」と記載する、不動産の表示を正確に記載する、などがあげられます。
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ペットの世話を任せたい場合はどうすればよいか?
「負担付遺贈」としてペットの世話と引換えに資金等を遺贈します。
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その際に気を付ける点は?
負担の内容を詳細に定める、可能であれば定めた負担の内容を事前に相談しておく、遺言執行者を別に指定する、などがあげられます。
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負担付遺贈を受取りたくないときは?
いつでも自由に放棄することが可能です。
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その他の方法はあるか
【ペット信託】という方法もあります。
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※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。
ペットも大切な家族だから、自分にもしもの事があった時の事も考えておかないといけないわね!