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自筆証書遺言書の保管制度とは?相続人に遺言を届けるための新制度を解説
自筆証書遺言書の保管制度とは、法務局が2020年に開始した制度です。法務局に申請することで、自筆証書遺言書を一定期間保管することができるようになりました。今回は、自筆証書遺言書の保管制度の利用方法、メリットやデメリットをご紹介します。
自筆証書遺言書の保管制度とは
自筆証書遺言書の保管制度とは、2020年7月に法務局が開始した新サービスです。
このサービスにより、自筆証書遺言書を作成した遺言者は、これまでどおり自分で保管する方法のほかに、公的な機関である法務局に申請して保管することも選択できるようになりました。
【1】自筆証書遺言書の保管
遺言者の申請により、法務局は自筆証書遺言書の原本とともに、その内容を画像データ化して保管します。
保管期間
遺言書原本・・・遺言者死亡後50年間
画像データ・・・同150年間
【2】証明書の取得
遺言者の死亡後、相続人等は法務局で次の証明書の交付を請求することができます。
(1)遺言書情報証明書
遺言者の住所・氏名等の情報に加えて、自筆証書遺言の画像データが表示され、遺言書の内容を証明することができます。
従来は遺言書の原本を提出していた手続において、原本の代わりに使用することが可能です。
(2)遺言書保管事実証明書
遺言者を指定して請求することで、請求者自身を対象とする遺言書の保管の有無を証明することができます。
自筆証書遺言書保管制度のメリット・デメリット
つぎに、自筆証書遺言書保管制度のメリットとデメリットをいくつか説明します。
(1)メリット
・自筆証書遺言書を紛失することがなくなる。
これまで自筆証書遺言書は遺言者自らが保管していたため、相続人が見つけられないことや、遺言者自身が亡失してしまうケースもありました。
・公正証書遺言書の作成に比べ費用が安い。
1通につき3,900円。
公正証書遺言書を作成する場合は、財産の価額によりますが、一般的に数万円~10数万円の費用がかかります。
・遺言書保管事実証明書を取得することができる。
これまでは1通の遺言書の原本を金融機関や不動産の名義変更などの各種手続に際して順番に使用していたため、時間がかかっていましたが、証明書を複数通取得することで同時に進めることができるようになりました。
また、証明書は全国312か所の法務局で取得可能です。
何通でも取得できるため、手続の最中に遺言書の原本を無くしてしまうリスクもありません。
・通知が届く
遺言者が希望する場合、遺言者の死亡時にあらかじめ定めた相手先1名に遺言書が保管されていることを通知することができます。
戸籍担当部局と連携することで、遺言者の死亡の事実を把握することが可能です。
またこれとは別に、遺言者の死亡後に遺言書の閲覧や証明書の交付があったときは、必ず相続人の全員に対して、遺言書が保管されていることが通知されます。
・家庭裁判所による遺言書の検認手続が不要
自筆証書遺言書は家庭裁判所の検認手続を経る必要があります。
これに違反して封がされた遺言書を開封した場合や、遺言を執行した場合、5万円以下の過料になります。
一方、法務局での保管制度を利用した場合は、この検認手続を省略する事ができます。
※検認手続とは?
「検認」とは、封印されている遺言書の場合は、相続人の立会いの上、遺言書を開封し、検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するとともに全ての相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるための手続です。
遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
自筆証書遺言書は必ず家庭裁判所の検認手続を経る必要があります。
遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ遺言書の検認申立を行います。
検認の申立がされると、裁判所は全ての相続人に対し、検認を行う日を通知しますが出席は自由であるため、申立人以外の相続人が欠席であっても手続は行われます。
(2)デメリット
・遺言書の内容は保証されません。
法務局は遺言書の形式をチェックするのみで記載内容のチェックはされません。
そのため、次のような事態が生じる恐れがあります。
①誤字・脱字による遺言書の無効
②予期せぬ相続税の負担
③遺言執行者の指定漏れによる手続の複雑化
④曖昧な記載による相続人間の争いの発生
自筆証書遺言書保管制度の手続方法
自筆証書遺言書の作成、保管は主に次の手順で行われます。
【1】自筆証書遺言書保管の申請手順
(1)自筆証書遺言書を作成する
自筆証書遺言書は遺言者自身で作成する必要があります。
法務局で作成方法の相談をすることはできませんので注意しましょう。
(2)遺言書の保管先を決める
保管先は次の3つのうちいずれかを選択することが可能です。
①遺言者の住所地を管轄する遺言書保管所
②遺言者の本籍地を管轄する遺言書保管所
③遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所
(3)遺言書の保管申請書を作成する
「遺言書の保管申請書」に必要事項を記入します。
(4)予約をする。
遺言書保管の申請を行うには、法務局への予約が必要です。
予約方法
①電話予約 平日8:30~17:15まで
②インターネット予約 24時間365日利用可能
(5)申請
予約日に必要書類を法務局に持参のうえ、申請手続を行います。
必要書類
①本籍及び筆頭者の記載入りの住民票 1通
・3ヶ月以内に取得したもの
・マイナンバーや住民票コードの記載のないもの
②顔写真付きの公的な身分証明書 1通
・有効期限内のもの
・健康保険証などの顔写真の無い証明書で代用することはできません。
③手数料3,900円
・収入印紙で納付しますが、法務局で購入可能です。
(6)保管証の受領
受付が終了すると、遺言書を保管していることを証明する【保管証】を受け取ります。
次に、法務局に保管されている遺言書の閲覧手順を説明します。
【遺言書の閲覧手順】
遺言者の生前に閲覧をすることができるのは、遺言者本人のみです。
(1)閲覧の方法を選択する。
①モニターによる画像データの閲覧
②原本の閲覧
(2)閲覧する遺言書保管所を選択する。
①モニターによる画像データの閲覧
全国すべての遺言書保管所で閲覧可能です。
②原本の閲覧
保管されている遺言書保管所で閲覧可能です。
(3)閲覧請求書を作成する。「遺言書の閲覧請求書」を作成します。
(4)予約をする。
保管の申請と同様に予約が必要です。
(5)閲覧
必要書類
①顔写真付きの公的な身分証明書 1通
・有効期限内のもの
・健康保険証などの顔写真の無い証明書で代用することはできません。
②手数料
・モニター閲覧 1,400円
・原本閲覧 1,700円
・収入印紙で納付しますが、法務局で購入可能です。
【変更の届出手順】
遺言者自身の氏名・住所・本籍等に変更が生じた場合はその旨を届け出なければなりません。
(1)届出書を作成する。
「変更届出書」という所定の届出書を作成します。
(2)予約をする。
変更の届出書については、全国すべての遺言書保管所で手続可能です。
(3)変更申請
必要書類
①変更を証明する書面(住民票や戸籍謄本等)
②遺言者の住民票または身分証明書のコピー
③手数料 無料
【遺言書の保管の撤回手順】
遺言書の保管の撤回をすることができるのは、遺言者本人のみです。
なお、保管の撤回をしても、遺言書自体が無効となることはありません。
(1)撤回書を作成する。
所定の撤回書を作成します。
(2)予約をする。
撤回の申請ができるのは、遺言書の原本が保管されている保管所のみです。
(3)撤回申請
必要書類
①顔写真付きの公的な身分証明書 1通
・有効期限内のもの
・健康保険証などの顔写真の無い証明書で代用することはできません。
②申請時と撤回時で遺言者の住所氏名等に変更がある場合は、変更を証明する住民票や戸籍が必要となります。
③手数料 無料
(4)遺言書の原本の受領
まとめ
せっかく遺言書を作成しても、遺言書の保管場所を伝えなかったために、相続人に知られずそのままとなってしまうケースもあるようです。
今回ご紹介した自筆証書遺言書は本人の直筆で作成する必要があるため、本当の意味での最後のお手紙です。
せっかく思いを込めて作成した遺言書が、しっかりと相続人に届けられるために、法務局の自筆証書遺言書保管制度を積極的に利用することが大事だと考えます。
このテーマに関する気になるポイント!
- 自筆証書遺言書保管制度とは?
自筆証書遺言書を法務局で保管する事ができる制度です。 - メリットは?
・遺言書の紛失・亡失・相続人による隠匿・偽造等のリスクがなくなる。
・公正証書遺言書の作成と比べて費用が安い。
・遺言書の原本に代わる証明書を取得することで、複数の手続が同時に進行可能。
・遺言書が保管されている事実を指定した相手に通知する方法がある。 - デメリットは?
遺言書の内容まではチェックしてもらえないため、有効性の保証がありません。 - 保管の申請先はどこですか?
次の3つのいずれかを管轄する保管所を選択することが可能です。
・遺言者の住所地
・遺言者の本籍地
・遺言者の所有する不動産の所在地 - 相続人が行う証明書発行においての請求先はどこですか?
全国どこの保管所でも可能です。
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