遺産分割とは?家族会議の前に知っておくべき遺産の分け方、決め方の基本を解説

リリース日:2021/10/01 更新日:2024/11/13

遺産分割とは、被相続人の死亡によって相続人の間に生じた相続財産(遺産)の共有状態を解消して、各相続人への分配を確定的に決める事を目的とする手続です。今回は、相続人が知っておくべき遺産分割手続についてご紹介します。

遺産分割とは?家族会議の前に知っておくべき遺産の分け方、決め方の基本を解説
  1. 遺産分割をする前に知っておくべきこと
  2. 遺産分割の手続き
  3. 遺産分割の方法
  4. まとめ

遺産分割をする前に知っておくべきこと

まず、遺産分割の前に知っておくべき基礎知識を説明します。

 

(1)遺産の共有状態とは?
相続人が複数いるときには、死亡した人の遺産は相続人の共有状態になります。
各相続人は、法定相続分の割合で全ての遺産についてそれぞれ共有状態として持分を取得します。
この相続分は他人に
譲渡することも可能です。

 

(2)遺産分割の効果とは?
遺産分割をすることで、共有状態が解消され、遺産の分配が確定します。
この効力は、相続開始時(死亡日)に遡って生じることになります。

 

(3)遺産分割はいつまでにすればいい?
遺産分割に期限はありません。

 

(4)遺産分割をしないことのデメリットは?
遺産分割をしないまま放置していることにより、その後さらに相続人が死亡して2次的相続が発生することで相続人の数が増え、結果として遺産分割が困難になることがあります。

遺産分割の手続き

遺産分割の手続き

(1)遺産分割協議
相続人は、被相続人が遺言で禁止している場合を除き、いつでも協議によって遺産分割をすることができます。
協議の内容を書面として残すことは協議の成立に必要不可欠ではありませんが、銀行や役所での各種手続の際に必要となるため「遺産分割協議書」として書面を作成することが一般的です。
また、遺産分割協議は相続人全員が合意すれば成立するので、一同に集まる必要は無く、持ち回りの方法で遺産分割協議書を作成することも可能です。

 

よくある質問

Q. 遺産分割協議書には実印を押印する必要がありますか?

A. 遺産分割協議の成立には実印の押印や、印鑑証明書の添付は求められていません。
ただし、不動産の名義変更の登記をする場合や、銀行預金の解約などの手続きで求められることがあるため、実印押印+印鑑証明書の添付が一般的です。また、後日の紛争を避けるためにも実印を押印することが望ましいと考えます。

 

Q. 遺産の一部についてのみ分割協議をすることはできますか?

A. 遺産の分割は、全ての遺産について一括して行うことが理想ではありますが、事情により遺産の一部について先行して分割協議をすることは可能で、実務上よく行われています

 

Q. 相続人の中に未成年者がいる場合はどうすればいいですか?

A. 未成年者が遺産分割協議の当事者となる場合は、その法定代理人である親権者が未成年者に代わって遺産分割協議を行います。
ただし、その親権者も同じく相続人である場合は、未成年者の代理人となることはできません。この場合は、未成年者について「特別代理人」を裁判所に選任してもらう必要があります。

 

Q. 遺産分割協議のやり直しはできますか?

A. 相続人全員の合意により遺産分割を解除してやり直すことが可能です。

 

(2)遺産分割調停
遺産の分割について、相続人の間で協議が整わないときは、裁判所に遺産の分割を請求することができます。
相続人同士の話し合いで平行線となってしまっているときは、裁判所が関与することで相続人の合意形成を図ります。
ただし、遺産分割調停は、あくまで当事者全員による話し合いの手続きであり、当事者の全員がその内容に合意しなければ成立しません。
当事者の中に納得できない者がいたり、欠席者がいたりすると、原則として調停を成立させることができません。その場合、遺産分割調停は不成立で終了することになります。

 

よくある質問

Q. 遺産分割調停は誰が、どこの裁判所に申し立てればよいのですか?

A. 申立人は次のとおりです。
①相続人 ②包括受遺者(包括遺贈を受けた人) ➂相続分の譲渡を受けた者 ④包括遺贈の遺言執行者
管轄裁判所は相手方のうちの1人の住所地を管轄する家庭裁判所、又は当事者の合意で定める家庭裁判所となります。

 

Q. 遺産分割調停はどのようにして進められますか?

A. 遺産分割調停の申し立てがあった場合、家庭裁判所は1名の裁判官と2名以上の家事調停委員による調停委員会を組織します。
次に当事者へ出頭すべき日時を郵送しますが、事件の概要を把握するために事前に質問事項を記載した照会書を送付することが通例です。

手続は原則として非公開ですが、裁判所が認める者の傍聴が可能です。おおむね1か月に1回程度の割合で調停を進めます。
当日は、申立人と相手方が交互に調停室に入室し、事情を申述します。

 

Q. 相手が呼び出しに出頭しないときはどうなりますか?

A. 正当な理由がなく出頭しないときは、5万円以下の過料に処せられます。 
調停がまとまらなかった場合は、遺産分割審判へ移行します。

 

(3)遺産分割審判
遺産の分割について相続人の間で協議が整わないときは、裁判所に遺産の分割を請求することができます。
家庭裁判所は、当事者の陳述を聞き、事実の調査や証拠調べを行います。
ただし、裁判所の調査にも限界があるため、当事者が自分に有利な事実を積極的に証明しない場合は、自己に不利な審判がなされる可能性もあります。
審判が確定すると、遺産の分割方法が確定します。

 

よくある質問

 

Q. 遺産分割審判は誰が、どこの裁判所に申し立てればよいのですか?

A. 申立人は次のとおりです。
①相続人 ②包括受遺者 ➂相続分の譲渡を受けた者 ④包括遺贈の遺言執行者
管轄裁判所は相続の開始地を管轄する家庭裁判所又は当事者の合意で定める家庭裁判所となります。

 

Q. 遺産分割審判はどのようにして進められますか?

A. 原則として裁判官が手続を指揮します。出頭日を郵送することなど審判手続きの開始前における取扱いは、遺産分割調停手続の場合と同様です。
手続は原則として非公開ですが、裁判所が認める者の傍聴が可能です。
家庭裁判所は、職権で事実の調査をし、必要に応じて証拠調べをします。
当事者は裁判所に協力し、積極的に自己に有利な事実等を証明する必要があります。
なお、遺産分割調停を経ずに遺産分割審判を申立てた場合、まずは調停に付されることがあります。

 

Q. 裁判所の審判の内容に対して不服があるときはどうすればいいですか?

A. 即時抗告(そくじこうこく)の手続きにより、高等裁判所に審理をしてもらうことができます。この手続きは審判の告知を受けてから2週間以内に審判をした家庭裁判所に提出する必要があります。ただし、全ての事件について認められるわけではなく、裁判所の判断で棄却されることもあります。

遺産分割の方法

遺産分割の方法

(1)現物分割
遺産分割の原則としてまず検討されます。
現物分割は遺産をそのままの形状で相続させることが望ましいとの考えから選択されます。
現物分割の例としては、複数ある不動産を各相続人に振り分けて相続させる方法などです。

 

(2)代償分割
特別の事情がある場合は、一部の相続人に法定相続分以上の財産を取得させたうえで、他の相続人に対して債務を負担させる方法です。
相続人の間で合意がある場合や、(1)の現物分割が物理的に不可能な場合等に認められます。
ただし、債務を負担する相続人に支払能力があることが前提となります。
この債務は支払の猶予期間を設けることや、分割払いにすることも可能で、その場合には利息を付けることも可能です。
なお、この債務の支払が行われない場合であっても、遺産分割協議を解除することはできません。
その場合は、遺産分割協議後の紛争調整調停や支払請求を申立てた後に強制執行等をすることで回収を図ります。

 

(3)換価分割(かんかぶんかつ)
遺産を売却し、現金化した後に相続人に分配する方法です。
現物分割に適さない場合で、かつ代償分割の支払能力が無い場合等に選択されます。
なお、相続人全員の合意によって最初から換価分割を選択することも可能です。

まとめ

遺産分割協議書にハンコを押すことは人生でそう何度もあることではありません。
全員がしっかり納得できるような話し合いをする必要があります。
もし話し合いがまとまらない場合は、積極的に裁判所を利用することで、冷静な話し合いができることもあると考えます。

 

財産は遺産として死後に相続することも可能ですが、時と場合によって生前贈与を視野に入れることも有効です。楽天銀行ならば家族間の振込は無料なので、手数料をかけずに財産の受け渡しができます。

 

最後に、遺産分割による紛争を回避する方法は、遺言書を作成しておくことです。
「財産が少ないから」とか「家族の仲が良いから」等の理由で何も対策をしていないことにより、予期せぬ紛争が発生し、家族がバラバラになってしまうケースもあります。
残された家族が不幸にならないようにするのも、財産を遺す側の責任でもあると考えます。

たしかに、事前に自分でできることはしておくのも、残された人間の負担を減らすことになるわよね

このテーマに関する気になるポイント!

  1. 遺産分割とは?
    相続の開始により、法定相続分で共有状態となっている遺産の分配を確定させることをいいます。

  2. 遺産分割の効果は?
    相続の開始時に遡って効力が生じます。

  3. 遺産分割協議のやり直しはできるか?
    相続人全員の合意によりやり直しが可能です。

  4. 遺産分割協議がまとまらない場合は?
    遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てることが可能です。

  5. 遺産分割調停がまとまらない場合は?
    遺産分割審判を家庭裁判所に申し立てることが可能です。

  6. 遺産分割の方法は?
    次の方法が予定されています。
    (1)現物分割
    (2)代償分割
    (3)換価分割

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市川俊介
この記事を書いた人
イントリム司法書士事務所 パートナー司法書士 一般社団法人日本財産管理協会 認定会員司法書士
市川俊介

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

2007年に司法書士登録 2010年に目黒区で開業 2018年にパートナ―司法書士として合同事務所を開設し現在に至る。金融機関や税理士、弁護士等から依頼を受け、不動産の贈与や相続、売買等の登記を多数取り扱う一方、民事信託、遺言書作成や死後事務業務等の登記以外の業務についても積極的に関わり、依頼者の要望に行き届くサービスを心掛けている。

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