配偶者居住権とは|新設された配偶者居住権のメリットとデメリットを解説します

リリース日:2021/08/24 更新日:2024/11/13

配偶者居住権とは、自宅を所有していた配偶者が死亡した後も、残された配偶者がその自宅に住み続けることができる権利をいいます。相続により住み慣れた自宅を手放さなければならないこともあった配偶者を保護するために、この権利が創設されました。この配偶者居住権について、配偶者の目線と他の相続人の目線でメリットやデメリットをご紹介します。

配偶者居住権とは|新設された配偶者居住権のメリットとデメリットを解説します
  1. 配偶者居住権とは?
  2. 配偶者居住権のしくみ
  3. 配偶者から見たメリット・デメリット
  4. 他の相続人から見たメリット・デメリット
  5. 配偶者短期居住権とは
  6. まとめ

配偶者居住権とは?

配偶者居住権とは?

配偶者居住権とは、自宅を所有する者が死亡した時に、その自宅に一緒に住んでいた配偶者が、終身又は一定期間その建物を無償で使用することのできる権利です。

配偶者居住権って令和2年4月1日以降の相続から新たに認められた権利なのね!それまでは、配偶者が亡くなったら出て行かなきゃならない事もあったのね…

自宅建物の権利を【配偶者居住権付の所有権】【配偶者居住権】とに分けることで、残された配偶者が自宅に住み続けながら、預貯金等の財産も相続することができるようになり、その後の生活の安定を図ることができます。

 

例)
相続人   妻と子2名
遺産    5,000万円
      内訳 自宅 (2,000万円)
      預貯金(3,000万円)

法定相続分 妻   4分の2(2,500万円)
      子A  4分の1(1,250万円)
      子B  4分の1(1,250万円)

 

【配偶者居住権を設定しない場合】

妻が自宅に住み続けるために自宅不動産の所有権を取得することで、自宅以外に取得することができる法定相続分の残りは500万円となります。
自宅は確保できますが、今後の生活費としての現金を十分に確保することができなくなります

 

 

【配偶者居住権を設定した場合】

配偶者居住権を仮に1,000万円とした場合、妻が取得できる現金が1,500万円となり、自宅に住み続けながら、今後の生活費も確保することができます

 

※配偶者居住権の算定方法は不動産によって異なり、複雑な計算が求められることがあるため、税務署・税理士等への相談が必要です。

 

配偶者居住権のしくみ

(1)配偶者居住権の存続期間
配偶者が生存中は無期限で存続します。
ただし、遺産分割協議、遺言等で存続期間を設定することも可能です。

 

(2)配偶者居住権の成立要件

1. 配偶者の死亡時にその建物に居住している法律上の配偶者であることが求められます。
 自宅として利用していた建物が対象となり、別居中の場合や別荘は認められません。

2. 死亡した配偶者が他人と建物を共有していないことが求められます。
 死亡した配偶者が夫婦間以外の者と建物を共有している場合は認められません

3. 配偶者居住権を設定することが必要です。
 上記条件を満たしたうえで、次の方法により設定する必要があります。

 

(A)遺言
 不動産を所有する配偶者が遺言書において配偶者居住権を設定する事ができます。

(B)死因贈与契約
 生前に配偶者間で配偶者居住権を死亡時に贈与する契約を締結する事ができます。

(C)遺産分割協議
 相続人全員の合意によって配偶者居住権を設定する事ができます。

(D)その他家庭裁判所の手続
 遺産分割調停や配偶者からの申し出による裁判所の審判により設定できる場合があります。

 

上記(A)または(B)の方法によることで、他の相続人の関与を必要とせず配偶者居住権を設定することが可能です。

配偶者から見たメリット・デメリット

配偶者から見たメリット・デメリット

メリット

(1)自宅に住み続けることができる。
他の相続人との関係が良好でなく、相続財産の大半を不動産が占める場合に、自宅を売却することなく住み続けることができます。

 

(2)生活資金を確保しやすい。
自宅の評価を【配偶者居住権】と【配偶者居住権付きの所有権】に分割することで、自宅の所有権を取得することなく住み続けることができます。そのため、その浮いた相続分を預貯金等に振り分けることで、自宅に住み続けながら、今後の生活資金も確保することができます。

 

(3)登記をすることができる。
配偶者居住権の登記をすることで、建物の所有者が変わっても新しい所有者に配偶者居住権を主張することができる

 

デメリット

(1)建物の通常費(固定資産税・修繕費・損害保険料等)を負担する必要がある。
利用する上での必要な費用を負担する必要がある。
固定資産税の納税義務は所有者にありますが、負担義務は配偶者にあります。

 

(2)建物を所有者に無断で改築若しくは増築をし、又は他人に使用もしくは収益化をさせることができない。
当然ですが、所有者ではない為、無断でこのような行為を行うことはできません。
所有者は無断でこのような行為をしている配偶者へ、配偶者居住権の消滅を請求することができる為、注意が必要です。裏返すと、承諾を得れば当然可能です。

 

(3)登記費用の負担がある。
第三者へ配偶者居住権を主張するには、建物につき登記をする必要があります。
この登記の際に建物の価格の0.2%の登録免許税を納付しなければなりません。
また、登記手続を司法書士に依頼した場合、手数料がかかります。

他の相続人から見たメリット・デメリット

メリット

一定の条件を満たした場合、子や孫にとって相続税の節税となることがあります。
配偶者居住権は権利者の死亡により消滅するため、相続財産の対象となりません。

 

デメリット

(1)所有者は建物を自由に譲渡処分することができますが、配偶者居住権付の建物を売却することは、通常の取引上困難であると考えられます。

(2)不動産の使用収益ができない。
配偶者が存命中は、無償で無期限利用することが認められているため、相続した不動産を使用収益することができません。

(3)途中解除による不利益が生じることがある。
途中で配偶者居住権を合意により解除または放棄をした場合、所有者に贈与税が課される可能性があります。(配偶者居住権の価値に相当する利益を得たとみられることがあります)

配偶者短期居住権とは

これまで解説してきた配偶者居住権と次の点が異なります。
自宅から出ていくことを前提として時間的猶予を認めた権利となります。

 

(1)条件を満たしている場合は自動的に設定される。
死亡した配偶者が所有していた建物に、無償で居住していた法律上の配偶者は、自動的に無償で一定期間その建物に居住することが可能です。

 

(2)期限がある。
遺産分割が成立した日、又は、相続開始時から6カ月が経過した日のいずれか遅い日、
または、遺言等で建物を相続した相続人から請求がされた日から6カ月です。

 

(3)登記ができない
登記をすることができない為、建物が譲渡された場合には新所有者に主張することができません。 

※ただし、元所有者に対して、譲渡により居住権を妨害した責任を追及することは可能です。

まとめ

相続人間の関係が良好でないケースや主要な遺産が不動産のみである場合など、この権利を利用する場面も少なくありません。

 

高齢化が進み、パートナーを見送った後の人生も長くなりました。様々な家族の関係もあると思います。残されたパートナーが住み慣れた自宅で経済的不安もなく穏やかに過ごせるよう、メリット・デメリットを見極めて準備をしておくことも必要だと思います。

 

いつか自分が同じ立場になることもあるでしょう。そのときにどう思うのかを今から客観的に考える機会とすることで、人生を豊かにするヒントになるかもしれません。

このテーマに関する気になるポイント!

  1. 配偶者居住権とは?
    自宅を所有していた配偶者が死亡した後も、残された配偶者がその自宅に住み続けることができる権利

  2. 配偶者居住権の存続期間は?
    配偶者が生存中は無期限で存続します

  3. 配偶者居住権の成立要件は?
    ・配偶者の死亡時にその建物に居住している法律上の配偶者である
    ・配偶者が他人と建物を共有していないこと
    ・配偶者居住権を設定することが必要

  4. 配偶者から見たメリットは?
    ・自宅に住み続けることができる
    ・生活資金を確保しやすい
    ・登記をすることができる

  5. 配偶者から見たデメリットは?
    ・建物の固定資産税・修繕費・損害保険料等を負担する必要がある
    ・建物を所有者に無断で改築若しくは増築をし、又は他人に使用若しくは収益をさせることができない
    ・登記費用の負担がある

  6. 配偶者短期居住権とは?
    自宅から出ていくことを前提として時間的猶予を認めた権利

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市川俊介
この記事を書いた人
イントリム司法書士事務所 パートナー司法書士 一般社団法人日本財産管理協会 認定会員司法書士
市川俊介

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

2007年に司法書士登録 2010年に目黒区で開業 2018年にパートナ―司法書士として合同事務所を開設し現在に至る。金融機関や税理士、弁護士等から依頼を受け、不動産の贈与や相続、売買等の登記を多数取り扱う一方、民事信託、遺言書作成や死後事務業務等の登記以外の業務についても積極的に関わり、依頼者の要望に行き届くサービスを心掛けている。

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