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実質賃金とは一体何?日本の賃金・GDPからみる不況の流れとは
「賃金が上がった、下がった」というニュースが話題になることがあります。しかし、この「賃金」が、名目賃金か実質賃金かでその意味は変わってきます。統計上の賃金がどのようなものか理解して、景気を判断する目を養いましょう。
名目賃金と実質賃金
賃金が上がっているかどうかを調べるときに覚えておかなければいけないのが、「名目賃金」と「実質賃金」です。
100円の給料をもらっているAさんと、200円の給料をもらっているBさんがいた場合、給料の額は、Bさんの方がずっと高いですね。さて、Aさんが住んでいる地域では1カ月50円あれば十分暮らしていけるけれど、Bさんが住んでいる地域では、250円ないと余裕がある暮らしができないという場合、AさんとBさん、どちらが「生活に余裕の持てる十分な給料をもらっている」と感じるでしょうか。
このように、賃金について考えるときは、額面だけを見ていると実態とは異なる印象を受けかねません。平均賃金の微々たる上昇は必ずしも生活の余裕につながる訳ではないのです。
そこで役立つのが、実質賃金指数です。実質賃金は、実際の賃金の額面だけでなく、それに物価の変動を掛け合わせて求められます。そのため、そこで暮らす人の実感に近い数値を見ることができるのです。
・名目賃金
名目賃金とは、「現金給与総額」のことです。2019年9月は27万1,945円で、0.5%増でした。名目賃金を指数化したものを「賃金指数」と呼びます。
・実質賃金指数
実質賃金指数は、現金給与総額と消費者物価指数から算出されるものです。なお、消費者物価指数は消費税も含めた、実際に消費者が支払う物価から求められています。
・賃金指数と実質賃金指数の推移
引用先:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/27/2712r/dl/pdf2712r.pdf
2015年までの数値は2010年を100としたときのものです。これを見ると、賃金指数が順調に伸びているのに対し、実質賃金指数はそれほど伸びていないことがわかります。特に2014年は、賃金指数が伸びているのに反し、大きく下がってしまっています。
2014年というのは、消費税が5%から8%に上がった年ですから、実質賃金指数の低下もこれが原因なのでしょう。さらには消費税が10%に引き上げられた2019年、厚生労働省が発表した「令和元年8月の毎月勤労統計調査」によると2019年は全ての月で実質賃金指数が下落。消費税増加だけでなく、消費者物価とパート以外の一般労働者の賃金が下落の要因として考えられています。
「賃金の平均」とは
さて、ここで考えておきたいのが、名目賃金の算出方法です。名目賃金というのは、政府がアンケートをとった企業の給与額の平均値です。
たとえば、「30万、35万、40万」の給料をもらっている社員が3人だった場合、平均は35万円になります。このとき、「そもそも就職していない人」は含まれません。つまり、この企業の景気がよくなって、25万円の社員を新たに雇った場合、平均賃金は32.5万円に下がってしまうのです。
つまり、名目賃金というのは本当にひとつの目安でしかないということです。名目賃金と消費者物価指数から求める実質賃金についても同じことが言えます。ただし、そうだとしても、名目賃金と消費者賃金の推移の違いについては意識しておく必要があるでしょう。
日本のGDPからみる不況の予兆
国内の景気変動や経済成長を推定する指標となるGDP(国内総生産)。経済状況は全てが相互的に作用しあって生まれるため、生産、分配(所得)、支出どの観点から見ても同じ値であるこの指標を用いることで今の経済状況を鑑みることができます。
国内にも2月あたりから徐々に影響を及ぼし始めたコロナウイルスによる経済破綻とこれまでの消費税増加による消費活動の消極化が相まって、2020年の4~6月実質GDP予測は年率マイナス23.53%と報じられました。(2020年8月24日現在)これはリーマンショック期の2009年1~3月期に記録した年率マイナス17.8%を優に超える数値となっています。しかし、これは一時的な影響であるため後半での巻き返しも同時に予測されています。
それよりも国内経済の危機は、消費税増税の影響をもろに受けた2019年10~12月期における年率7.1%減、さらにはまだコロナウイルスの影響を受けていなかった上に、増税の反動で上がると予測されたGDPが、2020年1月~3月期において年率3.4%減だったというところから見て取ることができます。
過去十年間の国内GDPの成長は平均して年率1.1%であることを考えると、このペースでのGDP減は社会に致命的な影響を及ぼす可能性を示唆しているということが分かるでしょう。実際にGDPが下がったからと言って即座に経済的な打撃を受けるということではありません。しかし、GDPの下落は経済が成長していないことを意味します。すなわち投資がへり、仕事がへり、給料もへるという悪循環を生むのです。経済の成長が滞ることは、多くの人へ打撃を与えるということがわかります。
期間を限定しての消費税減額を検討しているとも報じられていますが、ドイツでは6月には減税が決定していたのに対して8月24日時点で、「慎重に考えていく」との発表があったのみ。
結局、日本人の生活は豊かになっているの?
年末に渡される「源泉徴収票」には、1年間の給与支給額の合計が記されています。「年収」と言った場合、この1年の給与支給額を指しています。年収が去年と変化してないが、なんとなく生活が苦しくなった気がすると感じる人もいるでしょう。それは、年収が変わらなくても手取りが変わったからなのかもしれません。
給与支給額というのは、社会保険料などの控除金額を反映させる前の金額です。そのため、控除される金額が高くなれば、手取り金額は下がり、実感としては「生活が苦しくなった」と感じることになります。また、たとえ賃金が上がったとしても、物価が高くなれば、人々の実感として生活は苦しくなったと感じられるでしょう。
さらに、法定の最低賃金が少しずつ高くなっていることから、アルバイト・パートの賃金は上昇しているものと推定できます。そうなると、アルバイトやパートを含めて賃金の平均を計算した場合、正社員の賃金はさして伸びていなくても、全体として「伸びている」という結果が出てしまうこともあると考えられます。
また、仕事を辞めて子どもを育てる人が減り、給料が下がっても時短勤務で働く人が増えれば、統計にも影響が出てくるでしょう。
統計や、実質賃金指数や名目賃金のように統計を元に算出される数字が、「景気の実感」とずれる理由というのは、このようにいくらでもあるのです。
ひとつの数字や割合、伸び率だけを見て現在の日本の景気を知ることはできません。単純に数値だけで政府批判をしたり、反対に政府を擁護したりするのではなく、労働者数や失業率、雇用形態、手取り収入、物価など、様々な要素を総合的に分析しなければ、景気の良し悪しを判断することはできないのです。
静岡経済研究所では、実際の景況感を知るための目安として、「主婦の消費動向アンケート調査」を取っています。2018年は「特に変わっていない」と答えた人が80.3%と最も多かったものの、「よくなっている」が2.0%に対し、「悪くなっている」は17.7%と8倍以上でした。案外、このような「実際に家計を預かる人の実感」が、実態に近いかもしれません。
参考先:http://www.seri.or.jp/news/news_20181221_3.pdf
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