暗号通貨
メタンハイドレートの実用化は?日本エネルギー大国化説の賛否両論
次世代エネルギーとして期待が集まるメタンハイドレート。現在は実用化に向けた調査や実験が行われています。メタンハイドレートが使えるようになれば日本のエネルギー問題が解決するという説もあれば、現状とあまり変わらないという説も。意見が分かれています。メタンハイドレートの実用化に向けては、どのような問題があるのでしょうか?
メタンハイドレートに期待される役割
近年では太陽光発電や風力発電など新しい取り組みが進められていますが、日本のエネルギー自給率は依然として低いままです。2016年の日本のエネルギー自給率は8.3%で、2014年の6.0%よりは高くなっているものの、他国と比べて低い水準です。エネルギーを他国に依存している状態はあまり好ましくありません。
そんなエネルギー問題の救世主としてスポットライトが当たったのは、日本の近海にたくさん埋まっていると言われているメタンハイドレートです。「燃える氷」とも呼ばれるメタンハイドレートは、メタンと水から構成される物質。火を近づけると勢いよく燃えて、水だけが残ります。
従来の化石燃料からは地球温暖化を引き起こす二酸化炭素や、酸性雨を引き起こす窒素酸化物・硫黄酸化物が排出されていました。メタンハイドレートは二酸化炭素・窒素酸化物の排出量が、化石燃料の約3分の2です。硫黄酸化物はほとんど発生しません。
日本国内で産出できるクリーンなエネルギーということで、メタンハイドレートには大きな期待が集まっているのです。
メタンハイドレートは現状日本にどのくらい埋蔵量があるの?
メタンハイドレートは特殊な構造を持っており、温度が低く、圧力が高い場所でしか固体として存在できません。そのため、深海や北極・南極の氷の下に存在しています。
日本の周辺海域では北海道周辺の海域をはじめ、本州、四国、九州の太平洋側、日本海側の一部に広く分布しています。2009年の調査時点で、総面積は約122,000キロ平方メートル。中でも渥美半島、志摩半島、紀伊半島のあたりに集中していると考えられています。
2018年6月14日付の国立研究開発法人海洋研究開発機構のプレスリリースによると、紀伊半島の南東から想定の10倍以上に及ぶメタンハイドレートが発見されたそうです。これは熊野海盆にある海底泥火山を掘削、内部の堆積物を調べたもの。分析したところ、山頂から590メートルの深さまでメタンハイドレートが存在していました。その量は約32億平方メートル。これまで試算されていた海底泥火山一つに含まれるメタン量の10倍以上に及びます。
メタンの90%以上は二酸化炭素と水素から微生物によって生産されたものでした。この研究によって、メタンハイドレートとして存在するメタンの量が想定以上に多かったことと、メタンの発生に微生物が大きく寄与していることの二つが結論として挙げられています。
実用化に向けた問題点
メタンが日本近海の海底にたくさん存在することまではわかっていますが、実用化までには長い道のりがあります。
まず、メタンハイドレートを海底から回収しなければなりません。天然ガスや石油のように海底から吹き出すものではないので、地上まで運ぶのが困難です。先ほども説明したとおり、メタンハイドレートが固体の状態で存在するには低い温度と強い圧力が必要に。地層内の圧力を下げることでメタンハイドレートをメタンと水に分け、メタンだけ回収する方法が検討されていますが、多大な費用がかかります。
メタンハイドレートのメタンガス採掘コストは1バレルあたり200ドル以上かかるのに対し、石油の採掘コストは1バレルあたり10ドルと言われており、その差は20倍。これなら石油を輸入したほうがいいと思われても仕方ありません。
また、メタンハイドレートの採掘が環境に悪影響を与える恐れもあります。海の生態系を乱す可能性や、メタンを大気に放出することで温暖化を加速させるリスクが考えられるのです。
これさえあれば日本がエネルギー大国になれる!?
エネルギー問題の救世主として期待されているメタンハイドレートですが、天然ガスの代わりにはならないと考えている専門家もいます。その根拠としては、メタンハイドレートがばらばらに存在していることや、実用化にコストがかかりすぎること。ガスに変換するためにもエネルギーが必要なので効率が悪いことも挙げられています。
別の専門家はメタンハイドレートが完全にガスと置き換わることはないとしながらも、現在ガスが行っている役割の一部を代わりに行うようになるのではないかと考えています。
いずれにしても実用化には数十年かかるという見方が強く、今の段階ではまだなんとも言えません。メタンハイドレートで日本がエネルギー大国になるというのはさすがに言いすぎでしょう。しかしエネルギー自給率を少しでも上げる方法としては期待できるかもしれません。
|
|
※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。