学童保育の現状と課題。新しい資格と30万人体制の改善策

リリース日:2018/12/05 更新日:2024/10/08

子どもが小学校に入ったら、少しは生活が楽になるかと思っていたところに打ち当たる小1の壁。保育所の待機児童問題に続き、待機「学童」問題も深刻な社会問題になりつつあります。共働き世帯やひとり親世帯とは切っても切れない関係にある学童保育の現状と課題を分かりやすく解説しましょう。

学童保育の現状と課題。新しい資格と30万人体制の改善策

もくじ

・待機児童解消へ。2019年までに30万人分の改善策

・学童保育士(学童保育指導員)とは

・学童保育に新しい資格ができた!?放課後児童支援員とは

・学童保育の今後の展望と懸念点

待機児童解消へ。2019年までに30万人分の改善策

2010年には1万件に満たないくらいだった学童保育を行う施設は、2017年時点で2.5万件に迫るくらいの数となり、急速に拡大しています。これでもまだ十分な数とはいえず、2016年時点で17,170人もの待機児童がいる状況です。こんなに不足が生じたままでは「人づくり革命」を掲げる政府の目標がクリアできているとはいえませんよね。小学生児童がいる世帯でも親が安心して働けて、児童が安全に放課後を過ごせるスペースの確保が議論されてきました。

待機児童解消へ。2019年までに30万人分の改善策

紆余曲折あってようやくたどり着いたのが、2017年12月公表「放課後子ども総合プラン」です。2019 年末までに約 30 万人分の新たな受け皿の確保を約束し、達成に向けた具体的な動きが本格化しつつあります。

学童保育士(学童保育指導員)とは

学童保育を増やそうとしても、担い手がいないことには進みません。単に児童を預かるだけではなく、安心・安全に過ごす時間を提供するため、専門人材が必要とされるからです。学童保育士・学童保育指導員など、もっともらしい名前で職員の求人がなされることもありますが、保育士や教師のように専門スキルを証明する明確な根拠がないままに運営が続いてきました。

 

学童保育では、障害を持った児童も受け入れます。障害を持った児童の中には、感情を制御するのが苦手な子・思ったことをそのまま発言して、ほかの子を傷つけてしまうおそれがある子もいますよね。専門知識を持った職員がいれば上手に配慮できても、すべての学童保育で一定の質をクリアできているとはいえない状態が続いてきました。国としても「きちんとしよう」ということで、2015年に「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」を制定、放課後児童支援員という専門資格を作って対応していくことになります。

学童保育に新しい資格ができた!?放課後児童支援員とは

学童保育に新しい資格ができた!?放課後児童支援員とは

放課後児童支援員とは、学童保育に関する専門的な知識を証明する資格です。保育士や社会福祉士、教員免許など一定の基準をクリアしている人が都道府県ごとに行われる研修を受けることで、学童保育に必要な知識を身に付けます。

 

今のところは、おおむね40人以下の支援単位に対して、最低1人は有資格者を配置しなくてはいけない決まりです。放課後児童支援員の主な職務は、以下のように決まっています。

 

・子どもの出席確認や状況把握

・家庭や地域、関係機関や団体との連絡窓口

・子どもの様子や育成支援を記録

・社会性や創造性を育むサポート

・子どもの安全管理と情緒の安定を図るサポート

・保護者との情報共有と家庭生活のサポート

・学童保育のイベントや支援内容の企画・検討

・清掃や衛生管理と安全点検

 

このほか、有資格者以外の職員を指導・管理する責任も生じます。虐待や個人情報の漏洩、不衛生な環境など運営上で起こるあらゆるトラブルを事前に予測、防止に努めることも大切な仕事です。児童を預かる以上は、思わぬトラブルがどうしても付き物。どんな状況になっても冷静に対処でき、子どもの安全・安心を守れる行動が求められます。

学童保育の今後の展望と懸念点

学童保育の今後の展望と懸念点

学童保育の増加スピードに専門人材の育成が追いつかなければ、保育士や介護職員と同じような人手不足の問題が出てきます。保護者としては、もっと遅い時間まで預かってほしい・子どもひとり一人をフォローできるくらい質が高いサービスを提供してほしいといった要望が生じるのは当然のこと。しかし、すべてをそのまま受け入れてしまうと、職員に対する負担は拡大する一方です。

 

大変な仕事に見合うだけの待遇を約束できれば違いますが、利用料が値上げされて家計の負担が大きくなるのは困りますよね。どこかで折り合いをつけなくてはいけないのですが、今後しばらくは試行錯誤で落ち着きどころを探る展開が考えられます。

 

学童保育に関わる費用の地域格差も、考えていかなくてはいけない問題の1つです。広島市のように学童保育を無料にする自治体がある一方、一部の地域では月額2万円以上の負担となり、子育てと仕事を両立するにあたって大きな支障になりかねません。保護者としても、放課後の過ごし方を学童保育まかせにしないで向き合っていく責任があります。国や自治体のにはサービス拡充を求め、「自分は無関係」という態度になってしまうのは考えものです。地域のイベントや保護者会で同じ立場の人たちと交流を図り、助け合いの精神を持って運営に関わることが生活しやすい街づくりの近道でしょう。

 

仕事や家事に追われて心の余裕がなくなってしまうと、環境を責めたくなるものです。便利なサポートが広がっていくことを願うと同時に、自分としてはどんな貢献ができるのかを考えて、より良い社会を目指していく気持ちが必要でしょう。

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