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個人事業税とは?経費に計上できる税金や計算方法についても詳しく解説
個人事業主やフリーランスとして事業を営んでいる方に課せられる税金に、個人事業税があります。所得税や住民税と比べて聞き慣れない方も多いかもしれません。個人事業税は条件を満たすと副業収入にも課せられる可能性があるため、理解しておくと良いでしょう。
ここでは個人事業税が課される条件や計算方法、納付方法を解説します。経費計上の話題にも触れるため、ぜひ参考にしてみてください。
- 個人事業税とは
- 個人事業税が課される条件
- 個人事業税の計算方法
- 開業届を出していなくても個人事業税はかかる?
- 個人事業税は経費として計上可能
- 経費計上できる税金・できない税金
- 個人事業税の納付方法
- クレジットカードで個人事業税の納付はできる?
- 8月と11月、年2回の納付を忘れずに!
- 個人事業税の納付にクレジットカードを活用しよう!
個人事業税とは
個人事業税は、都道府県に支払う地方税の1種です。主に個人事業主・フリーランスといった、個人で事業を営む方に課せられます。
個人が事業で利益を得る際には、各種手続きや公共インフラといったさまざまな行政サービスを利用します。個人事業税は、それらの行政サービスにかかる経費を事業主に一部負担してもらう性格を持つものです。
個人事業税が課される条件
個人事業税は、以下2つの条件を満たす方に課されます。
- 70種の法定業種に該当する職業である
- 事業による前年度の所得が290万円を超えている
それぞれ詳しくみていきましょう。
70種の法定業種に該当する職業である
個人事業税が課される職業は法律で定められており、全部で70種あります。70の職業は第1 種事業、第2種事業、第3種事業の3つに区分けされ、それぞれ税率が異なります。
区分 | 事業の種類 | 税率 |
第1種事業 (37業種) |
物品販売業、保険業、金銭貸付業、物品貸付業、製造業、請負業、印刷業、出版業、写真業、旅館業、料理店業、飲食店業、遊技場業、不動産売買業、広告業、運送業、運送取扱業、倉庫業、席貸業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、公衆浴場業(むし風呂等)、演劇興行業、遊覧所業、興信所業、案内業、冠婚葬祭業、電気供給業、土石採取業、電気通信事業、船舶定係場業、両替業、商品取引業、不動産貸付業、駐車場業 | 5% |
第2種事業 (3業種) |
畜産業、水産業、薪炭製造業 (主として自家労力を用いて行うものを除く) |
4% |
第3種事業 (30業種) |
医業、歯科医業、薬剤師業、獣医業、弁護士業、司法書士業、公証人業、弁理士業、税理士業、公認会計士業、計理士業、社会保険労務士業、コンサルタント業、設計監督者業、不動産鑑定業、デザイン業、諸芸師匠業、歯科衛生士業、歯科技工士業、測量士業、土地家屋調査士業、理容業、美容業、クリーニング業、公衆浴場業(銭湯)、印刷製版業、海事代理士業、行政書士業 | 5% |
あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業、装蹄師業 | 3% |
上の表を見ると、ほとんどの職業が該当するといってよいですが、文筆家、漫画家、作詞・作曲家、プログラマー、通訳など、当てはまらない職業もいくつか存在します。
このような職業に就いている場合は、個人事業主であっても基本的に個人事業税はかかりません。ただし、仕事の内容や契約によっては、第1種事業の請負業とみなされて課税対象になることもあるため注意が必要です。
自分の業種が個人事業税の対象になるかは、都道府県や県税事務所で個別に判断されます。気になる方は都道府県の窓口に問い合わせてみると良いでしょう。
事業や不動産による前年度の所得が290万円を超えている
個人事業税は所得税と同じように、前年の1月~12月に発生した事業所得や不動産所得をもとに計算します。この時、所得金額が290万円を超えていると、個人事業税の支払い義務が発生します。
個人事業税の計算上、事業主控除が290万円と設定されているためです。所得が290万円を超えない場合は課税所得がゼロとなり、個人事業税は発生しません。
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個人事業税の計算方法
個人事業税の納付金額は、以下の式で計算します。
(前年の事業所得金額-290万円-損失の繰越控除-事業専従者控除)×税率(3~5%)
前年の事業所得金額とは、事業の総収入から必要経費等を差し引いた金額です。
290万円は事業主控除で、原則一律に所得から差し引くことができます。ただし、年の途中で事業を開始または廃止するなどで経営期間が1年に満たない場合は月割りになるため、290万円よりも少ない控除額になります。
損失の繰越控除とは、過去に何らかの事情で事業に損失を被った場合に、損失金額を所得から控除できるものです。基本的には、過去年度の確定申告において申請した分が適用できます。主な損失の理由としては、「赤字の繰り越しをした」「火災や自然災害などの被害を受けた」「機械や車両を譲渡した」などがあります。
事業専従者控除とは、生計を一にする家族に給与を支払っている場合に、一定額を所得から控除するものです。主に家族でお店を経営しているケースが当てはまります。
なお、個人事業主が使える控除の代表格である青色申告特別控除は、所得税の計算において適用されます。個人事業税の計算では差し引くことはできないため注意しましょう。
開業届を出していなくても個人事業税はかかる?
個人事業主やフリーランスが課税対象なら、開業届を出さなければ税金を支払わなくて済むと思う方もいるかもしれません。
しかし開業届の提出有無は、個人事業税の課税に関係がありません。開業届を出していなくても、実態として事業規模の所得を得ていると見なされれば個人事業税が課されます。
近年では、サラリーマンをしながら副業で収入を得ている方も珍しくありません。副業収入であっても一定額を超えると確定申告の義務が生じ、所得の状況も税務署や地方自治体に把握されます。
事業規模や利益が相応のものと判断されれば、副業でも個人事業税が課される可能性があるため注意が必要です。
課税されるレベルまで事業が成長しているなら、開業届を出して青色申告者になったほうが所得税の面では有利ともいえます。会社の就業規則などで禁止されていない場合は、検討してみると良いでしょう。
個人事業税は経費として計上可能
個人事業税は事業を営むうえで必要になる支出であるため、経費として計上が可能です。仕訳時の勘定科目は費用グループの「租税公課」を使用します。
例えば30,000円の個人事業税を現金で支払った場合、以下のように仕訳します。
(借方)租税公課 30,000円/(貸方)現金 30,000円
経費計上できるのは、その年のうちに支払いをする個人事業税です。例えば、2023年の所得をもとにした個人事業税は2024年の3月15日までに申告し、原則2024年の8月と11月中に支払いを行い、2024年中に発生した経費として計上します。
個人事業税の経費計上を忘れると所得金額が大きくなり、翌年の個人事業税が余分に増えるため、気をつけましょう。
経費計上できる税金・できない税金
個人事業主が経費として計上できる税金は個人事業税だけではありません。ほかにも以下のような税金を経費にできます。
経費として計上できる税金(租税公課として仕訳)
経費として計上できる税金は、以下のとおりです。
- 消費税
- 自動車税(自己所有の車両を事業に使っている場合)
- 固定資産税(自己所有の物件を事業に使っている場合)
- 償却資産税
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 印紙税
など
家や車など、普段の生活と事業の両方に使っている資産にかかる税金は、家事按分をして事業分に相当する金額のみ経費計上ができます。
経費として計上できない税金
経費として計上できない税金は、以下のとおりです。
- 所得税
- 住民税
- 贈与税
- 延滞税・加算税などペナルティとして課せられる税
など
これらの税金は「事業をやっているから支払うもの」ではないため、経費計上はできません。
個人事業税の納付方法
個人事業税は、1年分の金額を年2回に分けて徴収します。支払い時期は第1期が8~9月、第2期が11~12月ですが、都道府県が徴収する税金のため地域によって多少前後します。
所得税の確定申告をしていれば都道府県が税額を計算して納税通知書が送付されるため、個人で別途計算や申請を行う必要はありません。ただし確定申告をしていない場合は、その年の3月15日までに個人事業税の申請書を提出する必要があるため注意しましょう。
納税通知書が届いたら、期日までに支払いを済ませます。基本的に、金融機関やコンビニ、役所の窓口などで支払う場合は、現金払いのみです。事前に口座振替の手続きをしておけば、毎年個別に納税する手間が省けて便利なうえ、払い忘れの防止にもつながります。
クレジットカードで個人事業税の納付はできる?
個人事業税はクレジットカードでの納付が可能です。ただし、コンビニや金融機関の窓口では原則カード払いができないため、クレジットカードを使いたい場合はインターネットを利用します。
クレジットカードで個人事業税を支払うには、まず「地方税お支払いサイト」にアクセスします。これは令和5年から地方税統一QRコード(eL-QR)が導入されたことでオープンした公的機関のサイトで、全国どこでもインターネットを利用した地方税のカード払いが可能です。
「地方税お支払いサイト」にアクセスしたら、トップページの「eL-QRでお支払い」をタップし、端末のカメラで納付書に印字されたQRコードを読み取ります。スマホのカメラアプリで直接コードを読み取っても支払いページには遷移しないため、必ず地方税お支払いサイトを経由してください。
納付書の情報が読み込まれたら支払いの画面へ進み、支払方法の選択でクレジットカードを選びます。その後は画面の案内に従って通知用のメールアドレスやカード情報を入力していくと支払いが完了します。
パソコンなどカメラが付いていない端末で操作している場合は、「eL番号でお支払い」を選択すれば、カメラを利用せずに支払い手続きが可能です。その場合は、納付書に記載されているeL番号(納付書番号)を画面の案内に従って入力すれば支払いできます。
注意点として、クレジットカードで個人事業税を支払うと所定のシステム利用料がかかります。また、領収書は発行されません。
個人事業税の場合は領収書がなくても経費計上に問題はありませんが、もし必要な場合はクレジットカードを使用せず、金融機関窓口やコンビニで現金払いをしましょう。
8月と11月、年2回の納付を忘れずに!
法定の70業種に該当する個人事業主・フリーランスで、年間の事業所得が290万円を超えている人は個人事業税の支払いが発生します。8月と11月の年2回にわたって徴収があるため、忘れずに納付しましょう。
また、支払った個人事業税は経費計上が可能です。きちんと帳簿を付ければ節税につながるため、これまで気にしていなかった方はぜひ正しく記帳して負担を減らしていきましょう。
個人事業税の納付にクレジットカードを活用しよう!
クレジットカードで税金を納付すれば、銀行窓口やコンビニに足を運ぶことなく、自分の好きなタイミングで支払いができます。クレジットカードのポイントも貯められてお得です。
このテーマに関する気になるポイント!
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個人事業税って何?
個人事業主やフリーランスなど、個人で事業を営んでいる人に課せられる地方税です。年間所得が290万円を超えると発生します。
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どんな職業の事業主にも課せられるの?
いいえ。個人事業税がかかる業種は法律で70種が定められており、それに該当しない職業であれば課税されません。
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個人事業税は経費にできるって本当?
はい。個人事業税は事業を営むうえで必要な支出であることから、経費計上が認められている税金です。
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個人事業税はいつ支払うの?
原則年に2回、8月と11月に徴収が行われます。
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