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所得控除とは|基礎控除、扶養控除など全15種類をわかりやすく解説。改正後のポイントも
所得控除とは、所得税の額を算出する際、所得から一定の金額を差し引くことです。納税者の事情に合わせて「税額計算上の所得」を減らし、所得税を小さくすることで納税者の負担を軽減させます。所得控除は15種類あり、条件や控除される金額は、種類によって異なります。
- 所得控除とは
- 所得控除と給与所得控除は別物?
- 会社員が知っておきたいもう一つの控除「特定支出控除」
- 2020年から施行される税制改正とは?
- 住民税の基礎控除とは
- パート主婦の給与所得控除と基礎控除
- 次の税制改正はいつ?
- まとめ
所得控除とは
所得控除とは、所得税の額を算出する際、所得から一定の金額を差し引くことです。
所得が大きいほど税金もかかりますが、家計の事情はそれぞれ異なります。そこで、納税者の事情に合わせて「税額計算上の所得」を減らし、所得税を小さくすることで納税者の負担を軽減するための制度が所得控除です。「所得控除」には15種類があり、条件や控除される所得の金額は、その種類によって異なります。どんな所得控除があるのか、その種類を見ていきましょう。
・基礎控除
納税者の所得に応じた金額を控除する制度のことです。納税者の合計所得金額が2,400万円以下の場合、所得から48万円が控除されます。フリーランスや年金受給者を含め、すべての収入を得ている人が対象です。
参照元:国税庁 No.1199 基礎控除
・配偶者控除
納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合、一定の金額の所得控除が受けられる制度です。制度の適用には配偶者の年間の合計所得が48万円以下であることが条件になっています。配偶者控除は納税者本人の所得額で決まり、所得が900万円以下の場合は38万円(その年の12月31日時点の年齢が70歳以上になる老人控除対象配偶者の場合は48万円)が控除されます。
・配偶者特別控除
配偶者に年間48万円以上の所得がある場合、配偶者控除ではなく配偶者特別控除の適用が受けられる場合があります。こちらは配偶者の年間の合計所得金額が48万円以上133万円以下であることが条件です。配偶者と納税者の所得に応じ、控除の金額は細かく異なります。
・扶養控除
納税者に扶養親族がいる場合、所得控除が受けられる制度です。 控除額は扶養親族の年齢、同居の有無によって変わります。
参照元:国税庁 No.1180 扶養控除
・医療費控除
医療費支払った時に控除されるのが医療費控除です。医療費控除は確定申告を行うことによって受けることができます。
・寄附金控除
ふるさと納税 などの「特定寄附金」に対し、合計金額から2,000円を引いた額が控除される仕組みです。ふるさと納税での自己負担が2,000円と言われているのは、2,000円を除く寄附の全額が寄付金控除により控除されるためです。
・社会保険料控除
納税者が自身もしくは自身と生計を一にする配偶者、親族の国民健康保険や国民年金などの社会保険料を支払った際、支払った金額について所得控除を受けられる制度です。
・生命保険料控除
納税者が生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に所得控除を受けられる制度です。新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約など)と旧契約(平成23年12月31日以前に締結した保険契約など)のどちらに分類されるかにより、控除額の計算方法が異なります。会社員で年末調整がある場合、生命保険料控除は年末調整で申告が可能です。年末調整に間に合わなかった場合、自身で確定申告をすることで控除が受けられます。
・地震保険料控除
地震保険の保険料を支払った場合に適用される制度です。こちらも年末調整もしくは確定申告で申告が可能です。
・小規模企業共済等掛金控除
納税者が小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金などを支払った場合に受けられる控除です。iDeCo(個人型確定拠出年金) の掛金の控除はこれにあたります。
・ひとり親控除
令和2年分の所得税から適用になる新しい控除で、納税者がひとり親に該当するときは、一定の金額の所得控除を受けることができるというものです。受けられる控除の金額は一律35万円。ただし事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人物がいないこと、合計所得金額が500万円以下であることなどの条件があります。
・寡婦控除
寡婦控除とは、納税者が配偶者と死別、もしくは離婚した後に婚姻していない方、または生死が明らかでない人などが寡婦に該当します。控除される金額は一律27万円です。
参照元:国税庁 No.1170 寡婦控除
・勤労学生控除
納税者自身が勤労学生である場合、勤労学生控除の対象となります。該当する場合、受けられる控除は一律27万円です。
・障害者控除
納税者自身、もしくは同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合、障碍者控除が受けられます。控除額は障碍者、特別障碍者、同居特別障碍者のどれに当たるかによって異なります。
・雑損控除
災害や盗難などにより損害を受けた場合、雑損控除が受けられる場合があります。控除額は (差引損失額)-(総所得金額等)×10%か (差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円のどちらか多い金額になります。
所得控除と給与所得控除は別物?
所得控除の15種類に、給与所得控除が入っていないことを不思議に思う人も多いかもしれません。これは、所得控除は様々な要件に該当した場合「所得」を元に控除額が決定されるのに対し、給与所得控除の場合「給与等の収入金額(年収)」を元に控除金額が決定される点が違います。先に給与所得控除が優先され、年収から給与所得控除が差し引かれた金額が所得として所得控除の対象になるのです。
また、給与所得控除は金額も大きく重大な控除となりますが、該当するのは会社から「給与」をもらっている人だけです。たとえば個人事業主、不動産を所有して賃料を得ている人や、飲食店の経営者、フリーランスのデザイナーなどは、誰かに雇われているわけではないので、給与所得控除を利用することはできません。
二つは同じものだと思っていたけれど、実は違うのね!全員が対象だとばかり思いこんでいたわ
会社員が知っておきたいもう一つの控除「特定支出控除」
特定支出控除とは、会社員が仕事のために購入したスーツや書籍、交際費などの金額を経費として所得から差し引けるものです。
ただし、特定支出控除を利用するためには「本当に仕事に必要だった」ということを証明するための書類を会社からもらわなければなりません。また、特定支出控除が利用できるのは特定支出に該当する金額が給与所得控除の半額を超えた場合のみです。気軽に使えるものではありませんが、転居費や研修費、資格取得費、単身赴任の帰宅旅費などが対象になります。金額を計算の上、適用されそうな場合は会社に相談してみましょう。
仕事のための出費って、無意識に結構しているものね。全部足したらいくらになるのかしら…今度レシートを集めて計算してみなきゃ
2020年から施行される税制改正とは?
2020年には2018年の税制改正で決定した内容が施行されました。主に変わった点を見ていきましょう。
・ひとり親控除の新設
これまでは同じひとり親であってもひとり親である理由(離婚・死別であれば寡婦控除が適用、未婚の場合は適用なし)によって控除の適用が異なっていました。また、男性のひとり親と女性のひとり親でも寡婦控除の額は異なっていました。改正ではすべてのひとり親に控除が適用されるようになりました。
参照元:財務省 令和2年度 税制改正
・給与所得控除から基礎控除への振替
2020年度の改正で、給与所得控除が10万円ダウン、代わりに基礎控除が10万円分アップしました。
参照元:財務省 年度改正
給与所得控除の額は年収に応じて異なります。
たとえば年収400万円の人の場合、給与所得控除が10万円減少しても10万円アップする基礎控除と相殺ができ、損をすることはありません。しかし年収が850万円以上の会社員の場合、給与所得控除自体の上限が220万円から195万円に引き下げられたことから、給与所得控除自体が210万円-195万円=15万円に減少したことで、基礎控除のアップ分と相殺できず損をしてしまうことになっています。
これに対しては「年齢23歳未満の扶養親族がいる」など、一定の要件を満たす場合に年収850万円から1,000万円までの部分で10%を給与所得控除に加えられるという制度が新しくできています。これが、「所得金額調整控除」です。ただし条件を満たしていないと適用されないことに注意が必要です。
・公的年金等控除から基礎控除への振替
給与所得控除同様、公的年金等控除の額も2020年から10万円ダウンしました。こちらも給与所得控除と同じく新たに上限が設けられ、年金や年金以外の雑収入が1,000万円を超得る場合は控除額が少なくなり、税額が上がってしまいます。
・青色申告特別控除の引き下げ
青色申告特別控除は自ら事業を営んでいる人が受けられる控除です。この金額も2020年から、65万円から55万円に引き下げられました。ただし、確定申告をe-Taxを利用して電子申告した場合、従来通り65万円の控除が受けることができます。
実はこんなに変わっていたなんてビックリ!税金の世界、知ると奥深い世界ね…
住民税の基礎控除とは
所得税と同様、住民税にも基礎控除があります。住民税は自治体により異なりますが、これまで多くの自治体で住民税の基礎控除額は所得2,400万円以下だと33万円とされてきました。しかし税制改正にともない、所得2,400万円以下は43万円にこちらも変更になっているケースが多いようです。
住民税の決定通知書は、毎年5~6月くらいに会社を通して配布されます。これには所得控除の詳細も書かれているので、引かれるべきものがきちんと処理できているかをチェックすると良いでしょう。自分に節税できるポイントがないかチェックするのにも役立ちます。
住民税にも基礎控除ってあったのね!書類なんてすぐファイリングしちゃうから知らなかったわ!
パート主婦の給与所得控除と基礎控除
夫の扶養に入っているパート主婦がよく言われるのが「103万円の壁」です。103万円の壁とは、納税者が配偶者控除を受けられるか配偶者特別控除を受けられるかに関わってきます。
さらにこの金額には、給与所得控除と基礎控除が深く関わっています。年収103万円のパート主婦の場合、給与所得控除が55万円、基礎控除が48万円なので、課税所得は103万円-55万円-48万円=0円。つまり、所得税が全くかからないことになります。この場合、納税者である夫の方でも「配偶者控除」が適用され、税金が安くなるというメリットがあります。
ただしこれは所得税の場合で、住民税の基礎控除は自治体によって異なります。一概には言えませんが、所得税が0円であったとしても住民税がかかる可能性があることを覚えておきましょう。
次の税制改正はいつ?
こうして見ていくと、次の税制改正はいつ?」と不安になる人もいるかもしれません。実は、税制改正は毎年行われており、その時々に合った最適な税を行政が決定しています。ただし、様々な分野での税がある為、自分とはかかわりのない部分の改正であることも大いにあります。また、会社員であれば税金の計算は会社がしてくれますし、個人事業主であっても税理士などに頼む場合も多いでしょう。普段はあまり意識しない税金の内訳ですが、調べると色々なことが見えてきたりもします。改めて確認してみると面白いかもしれません。
へぇ、毎年少しずつ変わっているのね!調べてみたらこの辺も面白いのかも
参照元:財務省 税制改正の概要
まとめ
FAQ
- 所得控除とは?
所得税の額を算出する際、所得から一定の金額を差し引くことです。 - 所得控除の目的は?
納税者の事情に合わせて「税額計算上の所得」を減らし、所得税を小さくすることで納税者の負担を軽減することです。 - 所得控除の種類は?
基礎控除や配偶者控除など2021年現在、15種類があります。 - 基礎控除とは?
何らかの形で収入を得ているすべての人を対象に、納税者の所得に応じた金額を控除する制度です。 - 配偶者控除とは?
納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合、一定の金額の所得控除が受けられる制度です。 - 配偶者特別控除とは?
納税者の配偶者に年間48万円以上の所得があり配偶者控除が受けられない場合でも、条件のゆるやかな配偶者特別控除の適用が受けられる場合があります。 - 扶養控除とは?
納税者に扶養親族がいる場合、所得控除が受けられる制度です。 - 医療費控除とは?
医療費支払った時に所得が控除される制度です。 - 寄附金控除とは?
ふるさと納税などの「特定寄附金」に対し、合計金額から2,000円を引いた額が控除される仕組みです。 - 社会保険料控除とは?
納税者が自身もしくは自身と生計を一にする配偶者、親族の国民健康保険や国民年金などの社会保険料を支払った際に控除を受けられる制度です。 - 生命保険料控除とは?
納税者が生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に所得控除を受けられる制度です。 - ひとり親控除とは?
納税者がひとり親に該当するときは、一定の金額の所得控除を受けられる制度です。 - 寡婦控除とは?
所得税法上の寡婦とは、配偶者と死別もしくは離婚した後に婚姻していない、または配偶者の生死が明らかでない方を指し、そうした状況下で生活している人が寡婦控除の対象に該当します。 - 勤労学生控除とは?
納税者自身が勤労学生である場合に対象となる控除です。 - 障害者控除とは?
納税者自身、もしくは同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合に受けられる控除です。 - 雑損控除とは?
災害や盗難などにより損害を受けた場合に受けられる控除です。 - 所得控除に給与所得控除はなぜ含まれないの?
所得控除は様々な要件に該当した場合「所得」を元に控除額が決定されるのに対し、給与所得控除の場合「給与等の収入金額(年収)」を元に控除金額が決定される点が違異なっています - 給与所得控除の対象となる人は?
会社から「給与」を貰っている人が対象で、経営者や大家、フリーランスは利用できません。 - 特定支出控除とは?
A.会社員が仕事のために使った金額を経費として所得から差し引けるものです。 - 2020年からの所得税にかかわる税制改正は?
主なものではひとり親控除の新設、基礎控除の引き上げと給与所得控除の引き下げなどです。 - 税制改正はいつ行われている?
毎年行われています。
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※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。
こんなに種類があって、しかも新設された控除もあると混乱しそうだわ。ちゃんと適用されているか、何だか心配になってきちゃった…