遺言とは|遺言書の種類、作成方法、作成上の注意点の紹介

リリース日:2021/05/24 更新日:2024/11/06

言書の作成を検討されている方等が知っておくべき基本的な情報をまとめました。近年は終活という言葉も広く知られるようになり、遺言書にネガティブな感情を持たれる方は昔に比べて少なくなったのかもしれません。いつか来るその時に備えて知識の整理をしていきましょう。

  1. 遺言書の種類
  2. 作成方法の注意点 メリット・デメリット
  3. 特別の方式による遺言
  4. まとめ

遺言書の種類

遺言書には次の種類があります。

 

普通の方式による遺言
・公正証書遺言
・自筆証書遺言
・秘密証書遺言 

 

特別の方式による遺言
・死亡の危急に迫った者の遺言
・伝染病隔離者の遺言 
・在船者の遺言
・船舶遭難者の遺言

作成方法の注意点 メリット・デメリット

作成方法の注意点 メリット・デメリット

普通の方式による遺言


◆公正証書遺言
公証人が証人2名以上の立会いの下、遺言者の面前で遺言書の内容を言い聞かせ確認する方法で作成する。  

 

注意点
・事前に遺言書の内容と関連資料を公証役場へ提供する必要がある。
・遺言書の内容が確定した後に公証人の予約をする必要がある。       

 

メリット
・公証人が遺言の内容を事前に確認するため、遺言者の希望するとおりに不備のない遺言書を作成することができる
・遺言書の原本は公証役場に保管され、相続人は相続開始後に遺言書の有無を検索することができる。 

 

デメリット
・公証人に対する費用がかかる。
証人や公証人に遺言書の内容を知られてしまう。(推定相続人は証人になることができないため、推定相続人に遺言書の内容を知られることはない。)
・遺言書の変更がある場合、その都度費用や時間がかかる。

◆自筆証書遺言
遺言者がその全文を自筆で記載し、署名、捺印、日付を記入する方法で作成する。ただし、財産目録は自筆である必要はない。  

 

注意点
遺言書の内容の加除や修正についても、以下のように形式が定められている。

 

民法968条第3項
遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。 

 

メリット
費用がかからない
・遺言書の内容を他人に見られることがない
・修正や撤回が自由にできる。

 

デメリット
・遺言書の形式が厳格に法定されているため、不備により無効となる可能性がある
・遺言書の内容を巡って相続人間で争いとなる可能性がある。
・遺言書の保管場所によっては相続人に発見されないことがある。※※
・相続人は家庭裁判所において検認手続を経たうえで開封する必要がある。 

 

※※令和2年7月10日より自筆証書遺言の法務局保管制度が開始しました。
自筆証書遺言を特定の法務局が保管し、相続人は遺言書の内容が記載されている証明書を請求することができます。
この証明書を遺言書の原本の代わりとして各手続に利用することが可能です。また、この証明書は裁判所の検認が不要です。
詳細は「法務省における自筆証書遺言書保管制度 」を参照

 

◆秘密証書遺言
署名・捺印済みの遺言書を封筒に入れ、捺印に使用した印鑑で封印する。
遺言書入りの封筒を公証役場へ持ち込み証人2名以上立会いの下、公証人が認証する。

 

注意点
遺言書の内容の加除や修正については自筆証書遺言と同様に法定されている。

 

メリット
・遺言書の内容を他人に知られる事がない。
全文自筆でなくてもよい。

 

デメリット  
公証人に対する費用がかかる。(1万1,000円)
・遺言書の形式が厳格に法定されているため、不備により無効となる可能性がある。
・遺言書の内容を巡って相続人間で争いとなる可能性がある。
・遺言書の保管場所によっては相続人に発見されないことがある。




特別の方式による遺言

特別の方式による遺言

◆死亡の危急に迫った者の遺言
疾病その他の理由によって死亡の危急に迫っている者は、証人3人以上立会いの上、遺言内容を口頭で伝える。
証人はこれを筆記して遺言書を作成し、全員で内容を確認し、各証人が署名・捺印する。
遺言作成から20日以内に裁判所で確認を得る必要がある。    

 

注意点
裁判所は遺言書の内容が真正であると判断できない限り確認することができない。  

 

◆伝染病隔離者の遺言
伝染病によって隔離された者は、警察官及び証人1名以上の立会いをもって遺言書を作成することができる。

 

注意点 
・自筆証書遺言の形式に従い全文自筆で作成する必要はない。
・遺言者、筆者及び立会人全員の署名捺印が必要。

 

◆在船者の遺言
船舶に乗船している者は、船長または事務員1名及び証人2名以上の立会いをもって遺言書を作成することができる。 

 

注意点
・自筆証書遺言の形式に従い全文自筆で作成する必要はない。
・遺言者、筆者及び立会人全員の署名捺印が必要。

 

◆船舶遭難者の遺言
乗船している船舶が遭難し、死亡の危急に迫っている者は、証人2名以上の立会いの上、遺言内容を口頭で伝える。
証人はこれを筆記して遺言書を作成し、全員で内容を確認し、各証人が署名・捺印する。
遺言作成から遅滞なく裁判所で確認を得る必要がある。    

 

注意点
裁判所は遺言書の内容が真正であると判断できない限り確認することができない。

まとめ

特別の方式による遺言書を作成することがないことを祈りますが、コロナ禍の時代には知っておいてもいい知識かもしれません。

 

なお、令和1年の年間死亡者数は138万1,093人です。
対して遺言書の作成数は次の通りです。

 

公正証書遺言 11万3,137件
自筆証書遺言 1万8,625件

 

死亡者数に比べてまだまだ遺言書の利用数が少ないと感じます。この記事をご覧になっている方も遺言書は必要と考えつつも作成まで踏み切れていないのではないでしょうか?まずは入口を理解し、あと一歩を踏み出すことが重要です。

このテーマに関する気になるポイント!

  1. 遺言書とは?
    財産をもつ人が自分の死後に財産をどのように処分するのかを指定する書面


  2. 遺言書の種類は?
    ・普通の方式による遺言
    ・特別の方式による遺言


  3. 公正証書遺言書作成方法の注意点は?
    ・事前に遺言書の内容と関連資料を公証役場へ提供する必要がある。
    ・遺言書の内容が確定した後に公証人の予約をする必要がある。 

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市川俊介
この記事を書いた人
イントリム司法書士事務所 パートナー司法書士 一般社団法人日本財産管理協会 認定会員司法書士
市川俊介

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

2007年に司法書士登録 2010年に目黒区で開業 2018年にパートナ―司法書士として合同事務所を開設し現在に至る。金融機関や税理士、弁護士等から依頼を受け、不動産の贈与や相続、売買等の登記を多数取り扱う一方、民事信託、遺言書作成や死後事務業務等の登記以外の業務についても積極的に関わり、依頼者の要望に行き届くサービスを心掛けている。

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