金利と株価はどう関係する?株価変動の要因や金利上昇時に気を付けることを解説

リリース日:2022/08/08 更新日:2024/09/11

2022年前半、株式市場に大きな動きが出ました。アメリカに注目すると、これまでコロナウイルスの感染拡大における景気対策として金融緩和を続け、株価は上昇していました。しかし2021年後半から懸念され始めたのが、物価の上昇。2022年に入り、アメリカの中央銀行にあたるFRBは、物価が継続的に上昇するインフレの抑制を目的のひとつとして、政策金利の引き上げを決定しました。これを要因として、アメリカの株式市場が値を下げているのです。ここでは金利を中心に、株価変動の要因を詳しく見てみましょう。

  1. 株価を動かす要因とは
  2. 【外部要因1】金利
  3. 【外部要因2】為替
  4. 【外部要因3】景気
  5. 【外部要因4】海外市場
  6. 必ずしも「金利が上がると株価は下がる」ではない

株価を動かす要因とは

株価を動かす要因とは

・「内部要因」と「外部要因」がある
企業の株価は、上がったり下がったりと変動します。ある企業の株式を買いたいという投資家が多ければ株価は上がり、売りたいという投資家が多ければ株価は下がるといった具合です。こうした株式に対する需要と供給のバランスは、いくつかの要因から影響を受けます。株価を動かす要因は、大きく分けると2つあり、ひとつはその企業自身の業績や将来性といった「内部要因」、もうひとつが企業を取り巻く環境としての金利・為替・景気・海外市場といった「外部要因」となります

 

内部要因としての企業業績は、決算書などで確認できます。売上高や利益の動向を見て、企業の価値を判断します。そのほか企業が示す将来的な計画やビジョンもそこに入るでしょう。外部要因となる金利は企業の資金調達に、為替は輸出入における利益に影響を与えると考えられます。景気が良ければさまざまな取り引きが活発に行われ、これも業績に影響します。加えて、海外市場の動きが、日本の株価に波及することがあるので、海外投資家の動向にも注目が必要です。

 

ここからは金利を中心に、株価を動かす外部要因について詳しく見ていきましょう。

 

【外部要因1】金利

【外部要因1】金利

・金利とは
個人や企業、銀行、政府といった経済主体は、お金の貸し借りを行います。お金を借りた場合には、元金に利息を加えて返済します。このような場合において、利息の元金に対する割合が「金利」と呼ばれるものです。借り手から見ると、金利はお金を借りるためのコスト。経済活動に影響を与える数字といえるでしょう。個人であれば住宅ローンの金利などが気になるところです。現在の日本においては、金利は市場で決まります。

 

市場で決まる金利には、大きく分けて「短期(1年以内)」と「長期(1年超)」があります。短期金利の代表的な指標となっているのは「無担保コールレート翌日物」。銀行や証券会社、保険会社といった金融機関が、無担保で借りて翌営業日に返済するというものです。短期金利は身近なところだと、普通預金の利息や変動型住宅ローンの金利などに影響します。

 

長期金利の指標となっているのは「10年物国債」の流通利回り。国債は国が発行する債券です。発行された後、金融機関などが参加する市場で取り引きされることになります。この流通過程では国債の売買価格が変動することで、利回りが変化します。例えば100万円で国債を購入し、1年に1万円の利子が支払われるのであれば、利回りは1.0%。1万円の利子がそのままで債券の価格が200万円に上がると、0.5%まで利回りが下がります。長期金利は、長期の固定金利ローンなどに影響します。

 

・金利が低下すると
資金を借り入れる際のコストとなる金利。これが低下すると、企業は資金を借りやすくなり、設備投資など事業の拡大が可能となります。低コストでお金を借りることができるので、お金を借りて投資しても、利益を出せると判断できるケースが増えるのです。事業が拡大できれば、企業自身の売り上げが増えたり社会全体の景気が良くなったりする可能性があり、株価を上げる要因となるでしょう。

 

・金利が上昇すると
逆に金利が上がると、資金の借り入れに二の足を踏む企業が増えると予想できます。資金を借りて投資したとしても、金利以上の利益を出せる見込みがないと判断するケースがあるからです。事業拡大が見込めず、経済が全体的に不活発になり、株価を下げる要因と考えられます




【外部要因2】為替

【外部要因2】為替

為替レートの状況も、株価に影響を与えます。影響を受けるのは、輸出や輸入を行う企業の業績です。為替レートの状況は、円高ドル安・円安ドル高のように、円とドルの関係で表現することが多くなっています。

 

輸出企業の場合を見てみましょう。例えば1ドル100円の状況だと、1万ドルの商品を海外で販売し、売り上げを円に戻すと100万円になります。これが1ドル130円、つまり円安ドル高になると、同じ1万ドルの商品を売っても、円に戻すと130万円と30万円増えるのです。つまり円安ドル高の状況は、輸出企業の業績をあげる要因となり、株価を押し上げる可能性があるということです。海外で値下げをして、シェアを伸ばすという戦略も取れるかもしれません。

 

一方で、円安ドル高は、輸入企業にとっては不利な条件となります。1ドル100円の時、1万ドルの商品を輸入するには、100万円を1万ドルに変えて代金を支払います。これが1ドル130円になると、同じ1万ドルの商品を購入するためには、130万円が必要となります。円建てでの支払い代金が増えるため、業績にはマイナスに働き、株価を下げる要因となる可能性があります。逆に円高ドル安だと輸出企業にとっては不利に、輸入企業にとっては有利となり、業績への影響を通して株価に影響を与えます。

【外部要因3】景気

【外部要因3】景気

景気が良いというのは、生産が活発になるに伴って商取引も多くなり、経済全体が活発化している状態です。人々の収入も増え、消費が増えれば景気改善の好循環が続くでしょう。企業業績にはプラスに働き、景気が良くなる時は株価も上がりやすくなります。逆に、この先景気が悪くなりそうだという予測が出てくると株価にとってはマイナス要因となります。内閣府では「景気動向指数」を毎月発表しています。景気の動きを見ていくうえでの参考になるでしょう。

【外部要因4】海外市場

【外部要因4】海外市場

日本の株式市場で取り引きしているのは、日本の投資家だけではありません。取引額の6割以上は、海外の投資家によるものです。そのため、海外市場の値動きが、日本の株式市場での値動きと連動することが多くなっています。例えば前日の米国株式市場が大きく値上がりすると、日本の株式市場でも値上がりが見込まれるといった具合です。

 

海外市場が値上がりするということは、海外の投資家が積極的にリスクを取れる状況だということ。安全な債券よりも、株式への投資を選ぶ可能性が高いと推測できます。海外の投資家が日本の株式市場に参加する時も、同じ姿勢であれば、日本の株式を買い進めることになるでしょう。もちろん逆の場合も然りで、海外市場が大きく値を下げると、日本の株式市場でも値下がりから始まることが多くなります。

必ずしも「金利が上がると株価は下がる」ではない

必ずしも「金利が上がると株価は下がる」ではない

・「良いインフレ」と「悪いインフレ」
インフレとは物価、つまりモノの値段が全般的に上がり続けることです。物価は金利との関係も深く、例えば日銀は、2%の「物価安定の目標」を掲げて金融政策を実施しています。物価が下がり続けるようであれば金融緩和により金利を下げ、物価が高くなりすぎると金利を上げて、物価を調節しているのです。ただしインフレには、「良いインフレ」と「悪いインフレ」があるため、経済状況を注意深く見る必要もあります。

 

「良いインフレ」というのは、景気の改善をともなうインフレ。物価が上昇する中、企業業績の改善と賃金の上昇が起こり、さらに消費が拡大していく状況です。一方「悪いインフレ」では、景気が悪いままで物価が上がっていきます。企業は仕入れ価格の上昇を販売価格に転嫁できず、業績が悪化し、賃金や消費も伸びないという状況です。

 

一般的に物価の上昇は、金利の上昇要因になります。金利が上がるとお金を借りにくくなる企業は投資を控え、業績の伸びが見込めず、株価は下がるという考え方があります。一方、上述したように物価が上昇するインフレには物価が上昇する中、企業業績や賃金、消費も改善して景気が良くなるという「良いインフレ」もあり、その場合企業業績の改善が見込まれるため、株価の上昇につながります。

 

物価が上昇して金利が上がっていく局面では、株価の上昇と下落、両面のバランスを見ていく必要があるといえるでしょう。

・株式市場は「金融相場」から「業績相場」へ
最近まで各国では、新型コロナウイルスの流行にともなう景気の悪化を防ぐという目的で低金利・金融緩和政策が行われていました。例えば米国の場合、2020年3月からゼロ金利政策を実施していました。金融緩和政策が続く中では、大量の資金が株式市場に流れこみ、不景気の中、株価が上がるという現象が見られました。こうした状況は「金融相場」と呼ばれています。

 

金融緩和が続くと、その効果から企業業績は改善、景気が良くなり、賃金や物価の上昇が見られるようになります。想定以上に物価が上がれば、今度は金利が上がります。

 

米国では2022年3月に政策金利を0.25%引き上げて、ゼロ金利政策から転換。2022年5月にはさらに0.5%の大幅利上げを決めました。こうなると「金融相場」は終了となり、今度は業績の良好な企業の株価のみが上がっていきます。金融緩和の「カネ余り」による株価全体の上昇から、企業業績改善が見込める個別株価の上昇へと移行するのです。こうした状況は「業績相場」と呼ばれます。

 

ただし、現在ロシアによるウクライナ侵攻が世界情勢を悪化させ、原油価格の高騰を引き起こしています。原油価格の高騰は物価の上昇につながり、企業業績を悪化させるかもしれません。このような「悪いインフレ」が続けば、この先の金利と株価の行方に影響を与えることになるでしょう。

このような世界情勢(株式市場)の中で長期的な資産形成を行う場合、投資信託を毎月決まった額で積み立てることがおすすめです。この方法だと、それほど株価の値動きに神経質にならずにすみます。
これから資産形成を始めるなら、楽天証券での口座開設がおすすめです。つみたてNISAiDeCoを活用した資産形成もスタートできるため、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

このテーマに関する気になるポイント!

  • 株価を動かす要因とは?

    企業の業績や将来の見通しといった「内部要因」と、金利や為替、景気という「外部要因」があります。

  • 金利の株価への影響は?

    理論上は、金利が上がると株価は下がり、金利が下がると株価は上がる関係です。

  • 為替の株価への影響は?

    円高ドル安・円安ドル高など、為替レートの変動は、輸出入を行う企業の業績への影響を通して株価に影響を与えます。

  • 景気の株価への影響は?

    企業の生産や取り引きが活発になり、家計の収入や消費が増えると、企業業績の改善を通して株価が上がります。景気悪化の見通しがたつと、株価にはマイナスの影響があるでしょう。

  • 海外市場の株価への影響は?

    日本の株式市場には海外投資家が多く参加していて、海外市場での動向が日本の株式市場に反映されることが多くなっています。

  • 必ずしも「金利が上がると株価は下がる」ではない?

    金融緩和によるカネ余りからくる全体的な株価上昇が終わり、金利が上がる中で企業業績を改善させる銘柄が注目されるでしょう。このような、いわゆる「業績相場」が始まると考えられます。

本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。なお、本コンテンツは、弊社が信頼する著者が作成したものですが、情報の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問等には一切お答えいたしかねます。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。あらかじめご了承ください。




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黒川ヤスヒト
この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー(AFP)
黒川ヤスヒト

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

証券会社でリテール営業を経験し、AFP資格を取得。現在ライターとして、パーソナルファイナンスに関する情報の発信を手がけています。 関心分野は、ライフプランに関する意識調査や最新の金融商品・サービスなど。

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