上場企業が開示する決算短信のセグメント情報について解説
上場企業は決算の内容が定まった場合には、直ちにその内容を開示することが義務付けられています。この決算の開示方法が、決算短信・四半期決算短信と言われます。決算短信にはセグメント情報が開示されています。セグメント情報とは、会社の売上、利益・損失、資産その他の財務情報を事業単位などの単位(セグメント)に分解した財務情報のことです。事業単位毎の経営成績を確認することは、株式投資において有用です。
この決算の開示方法が、決算短信・四半期決算短信と言われます。決算短信にはセグメント情報というものが開示されており、会社の売上、利益・損失、資産その他の財務情報を事業単位などのセグメントに分解した財務情報のことを言います。株式投資において、事業単位毎の財務情報や経営成績を確認することは、どの企業に投資すべきかを判断するために有用と言えます。ここでは、そのセグメント情報について解説していきます。
はじめに
決算短信・四半期決算短信は、サマリー情報と添付資料にわかれています。
サマリー情報には、決算期の業績、配当の状況、次期の業績予測、注記事項などが記載されており、投資者の投資判断に重要な影響を与える上場会社の決算内容について、その要点の一覧性及び比較可能性を確保する観点から、簡潔にまとめられたものです。
添付資料では、経営成績等の概況、会計基準の選択に関する基本的な考え方、連結財務諸表及び主な注記などが記載されていて、サマリー情報の主要な決算数値を投資者が適切に理解することができるように開示されているものです。
ここで解説するセグメント情報は、添付資料に記載されている情報です。
セグメント情報の開示制度
上場企業は、有価証券報告書・決算短信で、セグメント情報を開示します。
企業が複数の事業を行ったり、海外展開をして事業を行ったり、製造会社と販売会社を分ける事業構造などの場合、財務諸表から事業ごとの収益性を確認することは困難と言えます。このため、セグメント情報を作成することで、事業単位の収益性、保有する財産、投資金額などを開示する必要があるのです。
詳細は後述しますが、セグメント会計基準は、2010年4月1日以降開始の事業年度から、セグメント情報の開示に際して従来採用されていたインダストリー・アプローチからマネジメント・アプローチへ変更になりました。しかしながら、当時、企業の2割近くが事業の種類別セグメントを作成しておらず、セグメント開示制度が十分に機能していませんでした。そのことから、各企業には経営者の視点で企業を理解できるよう財務情報を開示することが求められ、財務諸表利用者がより有用な情報を取得することが出来るようになりました。
また企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」の基本原則第4項には、以下の記載もされています。
セグメント情報等の開示は、財務諸表利用者が、企業の過去の業績を理解し、将来のキャッシュ・フローの予測を適切に評価できるように、企業が行う様々な事業活動の内容及びこれを行う経営環境に関して適切な情報を提供するものでなければならない。
マネジメント・アプローチとは
マネジメント・アプローチとは、経営上の意思決定及び業績評価のために経営者が企業を事業の構成単位に分別した方法を基礎として、セグメント情報の開示を行う方法です。
上述したように、セグメント会計基準は、2010年4月1日以降開始の事業年度から、セグメント情報の開示に際して従来採用されていたインダストリー・アプローチからマネジメント・アプローチへ変更になりました。従来のインダストリー・アプローチとは、財務諸表を産業別・事業別セグメントに分割して開示する方法です。
例えば、飲食業を経営している赤字の会社が、コロナ禍で宅配事業に進出し、その宅配事業が黒字となった場合をイメージしてみましょう。事業別に情報を開示していないと、飲食業の赤字とそれ以外の事業の黒字が相殺されてしまいます。
マネジメント・アプローチとは、経営者が、飲食業が赤字になったので店舗を閉鎖しようと意思決定するためや、コロナ禍で宅配事業の売上が伸びているので拠点を増やそうと意思決定するための構成単位を基礎とした情報の開示となります。
マネジメント・アプローチの長所と短所
マネジメント・アプローチに基づくセグメント情報には、次のような長所があると考えられています。
財務諸表利用者が経営者の視点で企業を見ることにより、経営者の行動を予測し、その予測を企業の将来キャッシュ・フローの評価に反映することが可能になる。
例えば、ある飲食業の企業に投資をしようとしている人が、「企業全体で見ると、コロナ禍が続いたことで経営が厳しくなっているものの、セグメント情報から宅配事業に進出していることを確認し、その宅配事業は売上が伸びそうなため、資金が得られる可能性がある」と企業の将来を評価することもできます。
一方、短所は次のようなことが考えられます。
企業の組織構造に基づく情報であるため、企業間の比較を困難にし、また、同一企業の年度間の比較が困難になる
例えば、飲食業のうち宅配事業を展開しているライバル企業を比較する場合、各企業の会計方針が違うと、同じ宅配事業を単純比較することが困難になります。
まとめ
セグメント情報とは、会社の売上、利益・損失、資産その他の財務情報を事業単位などの単位に分解した財務情報のことであると解説してきました。セグメント情報の内容を理解し、企業の将来のキャッシュ・フローの予測を適切に評価することは、株式投資において有用と言えます。マネジメント・アプローチに基づくセグメント情報の特徴と強みを理解したうえで、株式投資に活かしていきましょう。
このテーマに関する気になるポイント!
- 決算短信で開示されるセグメント情報とは、どのような情報ですか。
セグメント情報とは、会社の売上、利益・損失、資産その他の財務情報を事業単位などの単位に分解した財務情報のことです。 - セグメント情報におけるマネジメント・アプローチとは、どういうことですか。
マネジメント・アプローチとは、経営上の意思決定および業績評価のために経営者が企業を事業の構成単位に分別した方法を基礎としてセグメント情報の開示を行う方法です。
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及川浩次郎さん
株式会社スリーアローズ代表取締役 CFP認定者 税理士
20代後半からライフプランに興味をもつ。人生の3大資金といわれる教育資金、住宅資金、老後資金に必要なお金をどう準備するか、そしてどう運用するかにいつも頭を働かせているお金の専門家。いまは、ワクワクドキドキするようなライフプランをつくることを支援しています。
※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。
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