オーバーアロットメントの仕組みを理解するためには、IPO株についての知識が必要です。

・IPO株は上場前に公開される株

IPO株とは新規株式公開のことで、これから上場する株式という意味があります。上場済みの株式と異なり自由に売買できません。ブックビルディング期間と呼ばれる抽選期間に購入を希望して、当選した投資家のみ購入の権利を得られるのがIPO株の特徴です。

証券会社はブックビルディング期間に、仮の価格や発行条件を投資家に提示します。そして、どの程度需要があるのか調査した上で、公開価格（上場価格）を決めるのです。

・オーバーアロットメントは追加販売のこと

IPO株で購入者を募っても思ったほど投資家が集まらない場合もありますし、反対に多くの投資家が購入を希望するケースもあります。

そして、事前に予測していた需要を超える購入希望者が集まっている場合、需要と供給のバランスを維持するために、証券会社は株主（上場前の時点で株を所有している創業者など）から株式を借り、その株式をIPO株として追加で販売します。これがオーバーアロットメントです。

投資家にとってオーバーアロットメントは、どのようなものなのでしょうか。

・株価の乱高下を防いでくれる

オーバーアロットメントは、想定以上の需要による供給不足を改善するための措置です。オーバーアロットメント措置が株価の急騰・急落を抑えることになるでしょう。

・需要が高まっていることを確認できる

オーバーアロットメントが行われているIPO株は、多くの投資家が注目している銘柄です。投資家にとっては、注目銘柄を見つける目印としても活用できます。証券会社のHPでは、オーバーアロットメントについても情報発信しているので、手軽に確認できるのも嬉しいポイントです。

・IPO株の当選確率が上がる

IPO株の購入希望者が多い場合、抽選に当選した人しか株を購入できません。注目されている企業や成長中の企業のIPO株は、参加者数も増え当選確率は低くなりますが、オーバーアロットメントが実施されると、売り出される株式の数が増えるので当選確率が上がります。ただし、追加売り出しの株数には上限があるため、全員が購入できるとは限りません。

・上場後の売り圧力が高まる可能性

IPO株のオーバーアロットメントは、メリットばかりではありません。

オーバーアロットメントが行われると、公募価格（売り出し中の価格）に対して初値（上場時の価格）が数倍に跳ね上がることもあります。そして、そのような場合、多くの投資家は高騰した初値で売り抜けようとするため、上場直後に急落してしまうことも珍しくありません。

オーバーアロットメントのために株主から借りた株式はどのように返済されるのか、またオーバーアロットメントの株数に上限があるのかについて解説します。

・オーバーアロットメントによる返済期限は30日

証券会社がオーバーアロットメントを実行するためには、追加の株が必要です。そこで証券会社は株主から株を借りて投資家へ追加販売し、上場後に返済します。

返済には期限があり、申し込み期間終了後の翌日から30日後までと決められています。証券会社はシンジケートカバー取引やグリーンシューオプションといった方法で、株式の返済をするのが一般的です。

●シンジケートカバー取引:証券会社が市場でオーバーアロットメント分の株数を取得し、株主に返却
●グリーンシューオプション:公募価格と同一の価格で購入したものとして、証券会社が代金と手数料を株主に支払う

・オーバーアロットメントによる売り出し株数には上限がある

オーバーアロットメントで売り出す株数には、上限が設けられています。上限率は募集・売り出し株数の15％となっています。例えば10万株の売り出し株数であれば、オーバーアロットメントの上限は1万5,000株です。