企業年金とは|年金の種類や制度を整理しわかりやすくお伝え

リリース日:2021/08/24 更新日:2024/09/19

企業年金とは、会社の負担により、公的年金に上乗せする形で年金を支給する仕組みのことです。企業型確定拠出年金(DC)や確定給付企業年金(DB)などがあり、日本の年金制度における3階部分となっています。

  1. 企業年金とは?
  2. 企業年金の種類、企業年金のメリット・デメリット
  3. 年金の種類
  4. 企業年金に加入すると節税にお得になる?

企業年金とは?

企業年金とは?

企業年金とは、会社の負担で公的年金に上乗せする年金のことです。

 

日本の年金制度は「3階建て」になっています。1階は国民年金(基礎年金)。会社に雇用されているサラリーマンの場合、第2号被保険者として加入しています。2階は厚生年金。「被用者年金」と呼ばれる部分です。給料から天引きされるのは、国民年金と厚生年金の保険料のうち、本人負担分です。

 

国民年金と厚生年金は公的年金で、さらにその上の3階に企業年金があります。

企業年金の種類、企業年金のメリット・デメリット

企業年金の種類、企業年金のメリット・デメリット

・企業年金の種類
現在運用されている企業年金は、確定給付企業年金(DB)・企業型確定拠出年金(DC)・厚生年金基金の3種類。公務員の場合はこの企業年金にあたる部分に、退職年金給付があります。

 

このうち確定給付企業年金(DB)と企業型確定拠出年金(DC)は、それぞれ平成14年(2002年)、平成13年(2001年)にスタートした、新しい企業年金制度です。昭和41年(1966年)に始まった厚生年金基金は、代行返上や解散が進み、新しい企業年金制度へと移行する流れとなっています。

 

・企業年金のメリットとデメリット
人生100年時代といわれるようになり、老後の生活資金をどのように準備するかは多くの人にとって重要な問題になっています。老後の生活費として必要な金額よりも、公的年金として受け取れる金額が小さい場合、その差額を埋める形でお金を用意しなければなりません。

 

企業年金は公的年金に上乗せして受け取れるため、この不足分をある程度補うことができるというメリットがあります。加入しておくことでリタイア後の資金に余裕ができるでしょう。

 

企業年金のデメリットとしては、中途退職時の取り扱いの難しさがあります。企業年金は中途退職時には、一時金として受け取るか、転職先の企業年金へ持ち運ぶかを選択することができます。

 

一時金として受け取った場合、退職後に企業年金として受け取る金額が少なくなり、一時金を自分で運用する必要も出てくるでしょう。老後の資金計画に変更が生じることになります。

 

企業年金の「持ち運び」は「ポータビリティ」と呼ばれることもあり、法律上は基本的に、どの企業年金の間でも持ち運びが可能となっています。しかし、会社や基金が定める企業年金の規約によっては持ち運びができないケースが存在するのです。

 

またポータビリティの実態をみると、企業型確定拠出年金(DC)の間では、現実的に持ち運びが可能です。一方、企業型確定拠出年金(DC)から確定給付企業年金(DB)への持ち運びは、現実的には難しい状況となっています。




年金の種類

年金の種類

企業年金は年金制度の3階部分にあたります。それでは企業年金を含めた、年金制度の全体像をみていきましょう。

 

1. 全員が加入するもの

・国民年金
国民年金に加入するのは、日本国内に住んでいる、20歳以上60歳未満のすべての人です。

 

国民年金の被保険者は、3つの種類に分類されています。(1)自営業者など、保険料を自分で納めている人は、国民年金の第1号被保険者です。(2)そして会社員など厚生年金に加入している人は、第2号被保険者。厚生年金保険が国民年金に必要な保険料を負担しています。(3)厚生年金に加入している人に扶養されている人は、第3号被保険者。この場合も厚生年金保険が保険料を負担します。

 

老後に国民年金から受け取れるのは、老齢基礎年金。年金制度における1階部分です。保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した期間は、受給資格期間と呼ばれています。老齢基礎年金の受給には、受給資格期間が10年以上必要です。

 

受給が始まるのは、65歳から。20歳から60歳になるまでの間、全期間保険料を納めた場合、満額の年間78万900円(令和3年4月分からの年金額)を受け取ることができます。未納や免除の期間があると、これより少ない金額となります。

2. 会社員、公務員が加入するもの

 

・厚生年金
会社の従業員などが加入するのが、厚生年金です。厚生年金が適用されるかどうかは、事業所ごとに決まります。株式会社など法人の事業所や、個人の事業所でも従業員が常時5人以上いる場合などは、強制適用事業所となります。またそれ以外でも従業員の半数以上が同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受ければ、任意適用事業所になることが可能です。

 

厚生年金の被保険者となるのは、厚生年金の適用事業所に常時使用される70歳未満の人。ここで「常時使用される」とは、常用的に雇用されていることです。通常の労働者の労働時間を基準にして、その4分の3以上の時間働いているパートタイマーやアルバイトも含まれます。これに相当すれば、国籍や性別、年金受給の有無にかかわらず、厚生年金の被保険者となります。

 

厚生年金に関しては、平成28年(2016年)10月に短時間労働者に対する適用拡大が実施され、パートやアルバイトで働く人々のさらに多くが厚生年金に加入するようになりました。1週間または1カ月の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満でも、次の条件を満たす場合は厚生年金の被保険者になります。

 

(1)週の所定労働時間が20時間以上あること
(2)雇用期間が1年以上見込まれること
(3)賃金の月額が8.8万円以上であること
(4)学生でないこと
(5)特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること

 

厚生年金は年金制度における、2階の部分。厚生年金に加入すると、リタイア後に受け取る年金額が増えるため、老後資金の準備を有利にすることができます。

3. 個人事業主がプラスできるもの

国民年金の第1号被保険者となっている個人事業主などは、年金制度の2階部分となる厚生年金には加入していません。その代わりに年金にプラスできるものがあるので、紹介していきましょう。

 

・付加年金
国民年金の定額保険料に月額400円の付加保険料をプラスして納付すると、老齢基礎年金に付加年金が上乗せされます。利用できるのは、国民年金の第1号被保険者と任意加入被保険者です。

 

付加年金の年金額は、200円×付加保険料納付月数となっています。20歳から60歳までの40年間、480月納めると、9万6,000円(年額)が付加年金額として老齢基礎年金に上乗せされることになります。なお国民年金基金との併用はできません。

・国民年金基金
国民年金の第1号被保険者となっている自営業者のために、年金の2階部分として作られたのが、国民年金基金です。平成3年(1991年)に創設された、公的な年金制度となっています。厚生年金保険に加入している第2号被保険者や、その被扶養配偶者となっている第3号被保険者は加入できません。

 

国民年金基金への加入は口数制で、終身年金や確定年金など7つの型から選択できます。1口目は、終身年金A型かB型となっています。終身年金は生涯にわたって年金を受け取れるため、想定以上に長生きした場合でも安心です。終身年金には保証期間があるものとないものがあり、そのほかに受け取る期間が決められた確定年金タイプのものが選択できるようになっています。

 

国民年金基金の掛け金の上限は、月額6万8,000円と決められています。iDeCo(個人型確定拠出年金)にも加入しているという場合は、国民年金基金とiDeCoの掛け金があわせて月額6万8,000円以内になるようにしなければなりません。厚生年金に加入していない人は、国民年金基金とiDeCoの活用が、老後資金を準備する際のおもな手段となるでしょう。

 

4. 会社員・公務員がプラスできるもの

会社員・公務員は、1階部分となる国民年金、2階部分となる厚生年金に加入しています。そしてさらに3階部分となるのが、企業年金です。企業年金にはいくつかのタイプがあります。

 

・厚生年金基金
厚生年金基金は、昭和41年(1966年)にスタートした企業年金制度です。厚生年金の一部を国に代わって支給し、企業独自の上乗せ給付もおこなうという仕組みです。しかしバブル崩壊後は運用環境が悪化し、資金の確保が難しくなる基金も出てくるようになりました。

 

こうしたことから法律改正がおこなわれ、平成26年(2014年)からは新規設立が認められないことになっています。既存の基金については、解散するか代行返上をして確定給付企業年金(DB)に移行するかの選択がうながされるようになっています。

・確定給付企業年金

確定給付企業年金(DB)は、平成14年(2002年)に創設された企業年金の制度です。将来の給付額は、労使の合意によって決めます。掛け金は事業主が拠出し、外部の法人や信託会社・生命保険会などで運用されます。運用が予定通りにいかなかった場合、事業主は追加拠出して給付額を確保しなければなりません。

・確定拠出年金(企業型、個人型)
確定拠出年金は、加入者ごとに拠出された掛け金を加入者が自分で運用し、給付額はその運用結果に基づいて決まる年金制度です。企業型確定拠出年金(DC)と、個人型確定拠出年金(iDeCo)があります。

 

企業型は、事業主が掛け金を拠出するタイプ。個人型は、個人で加入して自分で掛け金を拠出するタイプとなっています。企業型の場合、マッチング拠出といって、事業主の掛け金に加入者が上乗せして拠出することも可能です。また掛け金の上限は決められていますが、企業型と個人型(iDeCo)の両方に加入することもできます。

 

厚生年金との関係でいえば、国民年金の第3号被保険者となっている主婦(夫)も、個人型(iDeCo)への加入が可能となっています。

・退職年金給付
公務員の年金は、以前は共済年金だったのですが、平成27年(2015年)に厚生年金に一元化されました。共済年金のときにあった「職域部分」という上乗せは、このときに廃止されています。代わりに導入されたのが「退職年金給付」。公務員の年金の中で、企業年金に相当する部分です。給付に必要な資金は、組合員などから徴収した保険料を積み立てる方式となっています。

企業年金に加入すると節税にお得になる?

企業年金に加入すると節税にお得になる?

確定給付企業年金(DB)の場合、事業主が拠出する掛け金は全額損金算入となり、事業主にとって節税となります。ただ確定給付企業年金(DB)でも、加入者が掛け金を拠出できる場合があり、その際は所得控除の対象となるため節税が可能です。企業型確定拠出年金(DC)では、マッチング拠出と呼ばれる、加入者による拠出ができます。この場合も掛け金は、所得控除の対象です。

 

確定拠出年金には企業型のほか、個人型(iDeCo)もあります。iDeCoの節税効果についても確認しておきましょう。iDeCoでは掛け金を自分で拠出します。その際の掛け金は、全額所得控除となり、所得税と住民税が軽減されます。

 

iDeCoでは運用をおこなうのも自分自身。運用で出た利益は非課税です。税金を引かれないまま再投資できるので、資産を効率よく増やせます。受取時には退職所得控除や公的年金控除が適用されるため、ここでも節税効果が発揮されます。

 

年金は複雑な制度です。自分や家族が加入する年金をしっかりと把握することで、老後の資金計画や、これから貯蓄しておきたい金額なども明らかになります。自分で上乗せの老後資金を準備するのであれば、楽天証券でのiDeCoを活用した資産形成がおすすめです。

 

iDeCoは税制メリットがあり、活用することで長期的に大きな差となるでしょう。自分自身の年金加入と資産の現状を把握し、iDeCoのスタートを検討してみましょう。

このテーマに関する気になるポイント!

  1. 企業年金とは?
    会社の負担により、公的年金に上乗せする形で年金を支給する仕組みのことです。

  2. 企業年金の種類は?
    確定給付企業年金(DB)・企業型確定拠出年金(DC)・厚生年金基金です。

  3. 企業年金のメリット・デメリットは?
    公的年金に上乗せして受け取れるというメリットがありますが、中途退職した場合の持ち運びが難しいというデメリットもあります。

  4. 企業年金に加入すると節税になる?
    自分で拠出する掛け金は所得控除の対象となり節税になります。

本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。なお、本コンテンツは、弊社が信頼する著者が作成したものですが、情報の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問等には一切お答えいたしかねます。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。あらかじめご了承ください。




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黒川ヤスヒト
この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー(AFP)
黒川ヤスヒト

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

証券会社でリテール営業を経験し、AFP資格を取得。現在ライターとして、パーソナルファイナンスに関する情報の発信を手がけています。 関心分野は、ライフプランに関する意識調査や最新の金融商品・サービスなど。

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