ウェディング業界をドレスから改革したい―山城葉子さんが実現させた夢とは?
YOKO YAMASHIRO Designs CEO兼チーフディレクターの山城葉子さんにインタビュー。若くして自らウェディングドレスショップTHE TREAT DRESSINGを立ち上げ、独立して「Yoko Yamashiro Designs」を設立された山城葉子さんの過去から現在、そして将来についての本音をうかがいました。
ウェディング業界をドレスから改革したい
山城葉子さんが実現させた夢とは?
「そろそろ夢を実現させたい」「でも、これまでのキャリアでは不安」――そう考えて、なかなか一歩を踏み出せない人は多いことでしょう。ましてやコロナ禍で先行きは不透明。はじめたはいいけれど、失敗するのではと不安になるのも、仕方のないことかもしれません。「強いパッションを持ちつつ、ひとつずつ困難を確実に乗り越える強さを持って一歩踏み出してほしい」。そう語るのは、2020年1月にYOKO YAMASHIRO Designs CEO兼チーフディレクターとして選りすぐりのインポートウェディングドレスショップ「NUMBER 5」を立ち上げた山城葉子さんです。
なぜ山城さんは、「一歩踏み出してほしい」と勧められるのでしょうか。また、コロナ禍直前というタイミングで立ち上げたショップは成功したのでしょうか。山城さんに話を伺いました。
※インタビューはオンラインで実施
憧れていたウェディングプランナーからの転身
マネ活編集部:山城さんがウェディング業界に関わるようになったきっかけを教えてもらえますか。
山城:二十歳頃にウェディングプランナーになりたいという夢を持つようになりました。それで、まずは下積みとして花嫁の介添え(アテンド)を3年ほど行い、2001年に、全国にレストランやバンケット(ウェディング会場)を展開するPlan・Do・See(プラン・ドゥ・シー)に入社し、晴れてウェディングプランナーとしてデビューしました。
2年後の2003年、全国3位の営業成績を維持していたこともあり、本社へ呼ばれることになりました。全体のクオリティやPR周りを見てもらいたい、というのが新しい仕事でした。
プラン・ドゥ・シーは、全国に拠点があります。だから関西や福岡にも行きました。
そこで気になったのは、東京に比べ、ウェディングのクオリティの低さ、垢抜けていないということでした。
テーブルコーディネートやフラワーアレンジメントの品質改善の要望も出していましたが、ウェディングドレスという要素についても改善が必要だな、と感じたんです。東京のように、インポートもののドレスがなくて、選びたくても選べなかったので。
たまたま会社が福岡にホテルを立ち上げるという話を聞いたので、そこにインポートドレスのセレクトショップを入れては? と提案したところ、それが通り、『THE TREAT DRESSING』(ザ・トリート・ドレッシング)1号店をオープンさせることができました。
マネ活編集部:憧れていたウェディングプランナーからウェディングドレスショップの責任者へと転身したわけですね。
山城:はじめは“転身”するつもりはなくて、すぐに戻るつもりでいたんですよ(笑)。
マネ活編集部:そうだったんですね。ザ・トリート・ドレッシングがセレクトするドレスはどんなものだったんですか。
山城:イギリスやイタリアへ回って検討してみましたが、アメリカのウェディングに特に惹かれ、ニューヨークのブランドのものを扱っていました。
その後、社内でザ・トリート・ドレッシングの多店舗展開への要望が高まり、翌年には神戸、京都など関西へも進出しました。どんどんドレスの仕事が楽しくなり、メンバーも増えましたし、14年の間にショップも12店舗に増えていました。
マネ活編集部:12店舗ですか!
山城:「もっと女性に喜ばれる仕事をしたい」と思い、トリート・ドレッシングを別の者に引き継ぎ、会社を辞めました。そして自分の名を冠したデザイン事務所『YOKO YAMASHIRO Designs』を立ち上げたんです。
ショップオープン後のコロナ禍直撃――ポジティブに捉え成功へ
マネ活編集部:YOKO YAMASHIRO Designsでは、どんなお仕事をされているんですか。
山城:ウェディングドレスだけでなく、お菓子のパッケージや式場のペーパーアイテム、制服など女性心をくすぐるようなデザインをさまざまな分野で行っています。社名の最後についている「s」は複数のs。多種多様なものをデザインしたいという想いを込めています。
トリート・ドレッシングのラグジュアリーな雰囲気とは違う、もっとこじんまりとした、今の時代に合うドレスショップを持ちたいと思い、2020年1月、広尾に『NUMBER 5』をオープンしました。
マネ活編集部:コロナ禍に突入する直前ですね。
山城:そうなんです。「タイミングが悪かったか?」とさすがに不安になりました。でも、メンバーが全員ポジティブで。おかげで、オープン前にみんなで話していた「NUMBER 5が目指すブランドコンセプトとは?」「これからのウェディングの形とは?」「何で差別化していくんだっけ?」ということを深堀りできました。
ショップを開けられない時間が、無駄にならなかった、むしろその時間があったからこそ今がある、と思うんです。
マネ活編集部:他のショップとどこが違うのか、また今後目指す新しいウェディングの形が気になります。
山城:「差別化」というところでは、本物のシルクを使ったインポートブランドドレスを揃えているということ、1ブランドにつき5着をショップにそろえて、ブランドの世界観を理解した上で、ご自分たちにマッチすると思うドレスを選んでいただける、というところ。
シルクだから洗濯機にかけられないし、インポートものなのでお直しに手間がかかるなど苦労もあります。
それでも、ウェディング業界特有の事情を持ち込まないことで、より良いものを低価格で提供できる。日本ではウェディングドレスはレンタルが主流であるため、本当に素晴らしいクリエイティブのドレスを購入するとなると50%近い手数料を提携会場に支払う必要があります。レンタル価格を算出する時は1日の使用で70万円などという高額なレンタル価格を付けなければいけないことも少なくなく、心から素晴らしいと思うクリエイティブのドレスを諦めなければいけないこともありました。そのような日本のブライダルの古い慣習に対して疑問を抱き、イノベーションを起こすショップを作りたい、固定概念を持たずにもっと多様性を感じるドレスショップ、花嫁様の個性を引き出すドレスショップを作りたいという思いでNUMBER 5を作りました。
コロナ禍では、フォトウェディングが有効だろう、と考えて早い段階で写真にシフトしました。NUMBER 5の店舗は、コンゴ大使館で使っていた一軒家。その店舗で世界観を作ったウェディングフォトの案内を出したら全国から予想を超える予約をいただくことができました。
コロナ禍でできた時間を無駄にしなかったおかげで、変わりつつあるこれからのウェディングのスタイルの潮流に乗れたのではないかなと思っています。
確実に成果を積み重ね続けて夢を実現
マネ活編集部:ここからはお金やキャリアについてお話を聞いていきたいと思います。ウェディング業界では、かなりの金額が一度に動きますよね。皆さん、支払いはどうされているんですか?
山城:振り込みもありますけど、会場への支払いはクレジットカードが多いのではないでしょうか。ポイントやマイルが貯まりますからね。そこは上手に活用してもらいたいなぁと思います。
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マネ活編集部:ありがとうございます。山城さんご自身についてもお聞きしたいのですが、独立のため、どのように資金を貯められたのでしょうか。また節約術についても教えて下さい。
山城:実は全然貯められていなくて(笑)。ただ、余計な買い物はしない、タクシーは使わない、などコツコツと節約するようにしています。それから、使わなくなった持ち物は、フリマアプリで売ってリサイクルに回すようにもしています。
プラン・ドゥ・シーへは、契約社員という形で入社したんですが、徹底して自分に課していたのは“成果を上げること”。着実に確実に数字を出して成果を積み重ねたからこそ、億単位でお金が動くような大きな仕事を任せてもらえた。独立するときも、わたしの夢にかけてくれる出資者を見つけることができた。
キャリアを積み上げてきたからこそなのかなぁと感じています。今後は自分も投資をできるようにしていきたいですけどね。
マネ活編集部:実際、ザ・トリート・ドレッシングでの重い責任を伴う仕事と子育ての時期がかぶっていたかと思います。それでもキャリアを積み上げてきた。
山城:30代の頃は年中出張していたので、ほとんど子育てできていませんでしたね。海外出張や、工場に連れて行くこともありましたが、幸い、母親が近くにいたのでかなり助けてもらえました。
自分が世界中を回る仕事をしているので、英語のできる人になってもらいたい、グローバルな感覚を身に着けてもらいたいと、子どもたちにはインターナショナルスクールに通わせていますが、今、本当にいい子たちに育ってくれているので、振り返ってみれば全てが間違っていなかったかなと思います。
マネ活編集部:悩んだり不安を抱いたりされた?
山城:子育てだけじゃありません。仕事においても、最初から自信のある人なんていないんじゃないですか。
マネ活編集部:自信がないと、夢を抱いていても、なかなか一歩を踏み出すのは難しいですよね。山城さんご自身の経験も踏まえ、アドバイスをいただけたらと思います。
山城:わたしのキャリアも、ひとつひとつトライ・アンド・エラーの繰り返しで成り立っています。そうして実績を積み上げてきた。ザ・トリート・ドレッシングで経験したような、ゼロからイチを生み出すのは大変なことですが、それを確実にやり遂げる、数字を出すことが自分の力になるし、自信につながっていくと思うんですよね。
パタンナーでもお針子でもないわたしが、今こうしてドレスショップに関われているのも、熱量の高いパッションを抱いて、困難を乗り越えたいという強さを持っていたから。あきらめさえしなければ、必ず道は開けます。
だから、ぜひとも一歩を踏み出してほしい。そして、周りに流されず、自分の価値観を大切にしてほしい。
仕事での成功が幸せだと思ってワーカーホリックになっていた30代を終え、40代となった今では、プライベートが充実していることが幸せなのかな、と思い始めている自分がいるんです。価値観が、時間軸で変わったとしても、ほかの人に惑わされて変わることだけは避けてほしい。
そうすれば、夢の実現に近づけるんじゃないかなと思いますよ。
※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。
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