睡眠コンサルタント・友野なおさんの実体験から学ぶ「睡眠の質」向上メソッド

リリース日:2021/04/08 更新日:2022/06/22

夜、何時間眠っていますか?仕事に家事に恋愛に、忙しい日々を過ごすなか、ついつい睡眠時間を削ってしまう。週末の「寝だめ」で挽回を試みるけれど…。そんな方も多いのではないでしょうか。自身の睡眠を見直した結果、長年悩み続けてきた心身のトラブルが改善し、生活の質そのものがボトムアップした経験を持つ「睡眠コンサルタント」の友野なおさん。友野さんに、睡眠の大切さや質向上の方法についてお話を伺いました。

  1. 今より体重は+15kg、とにかく不調続きだったアラサー時代。母の一言をきっかけに見つめ直した「眠ること」
  2. 「22〜2時の睡眠ゴールデンタイム」は都市伝説!? まずは7時間睡眠を確保することからはじめよう
  3. 昼は元気に、夜ぐっすり。その秘訣は「朝食」にあり
  4. 優秀なビジネスパーソンほど睡眠を重視。「睡眠力」は立派なビジネススキル

今より体重は+15kg、とにかく不調続きだったアラサー時代。母の一言をきっかけに見つめ直した「眠ること」

マネ活編集部:友野さんは「睡眠コンサルタント」として活動されていますが、どのようなお仕事なのでしょうか。

 

友野:おもに法人を対象にした睡眠全般に関するコンサル業になります。例えば、睡眠の質の向上にまつわる商品開発や、顧客企業の社員の健康を守るためのノウハウ、顧客企業の生産性向上を睡眠の面からサポートするメソッドなど、睡眠に関連するあらゆる事柄ですね。株式会社SEA Trinityとして事業を展開しています。

 

マネ活編集部:睡眠は個人的なものですが、法人がお客様なのですね。

 

友野:はい。ただ、コロナ禍において、個人の方からの問い合わせ件数が増えているんですね。時間が許す限り、個人の方へも対応している状況です。

 

マネ活編集部:友野さんが「睡眠」を仕事にしようと思われたきっかけがあるんですか?

 

友野:睡眠を見直すことで心身の変化を大きく感じた、私自身の経験からです。アラサー時代の私は、重度のパニック障害があり、体重も今より15kgほど重く、皮膚トラブルも抱えているといった具合で、とにかく不調続きだったんです。

 

どうにか治したいと思いながらも改善の糸口が見えないなか、母からの「いいから、ちゃんと寝なさい」という一言が、睡眠に意識を向けるきっかけになりました。

 

まずは「きちんと寝る」という、一見、単純に見えることに取り組んだおかげで、規則正しい生活を送れるようになりました。何より心が安定したこと、そして体そのものも整い、体重も1年で10kg落ちたんです。

 

マネ活編集部:お母様の一言がある以前、友野さんはどんな睡眠状況だったのでしょう?

 

友野:平均4時間くらいしか眠れていませんでした。さらに、眠る時間帯も夜ではなく、明け方の4~5時。パニック障害の発作が寝ているときに出ることがあったので、その恐怖心も寝つけない要因のひとつでした。とにかく睡眠の質が悪くて、眠れた感覚があまりなかったですね。

 

マネ活編集部:それでは疲れが取れないですよね…。まずどこから睡眠の改善に取り組みましたか。

 

友野:まずは「夜に寝よう」ということですね。睡眠時間を増やしたほうがいいだろうと思ったので、夜8時にベッドに入るようにしたんですが、余計に体がだるくなってしまったんです。次は、短時間でしっかり寝てみようと2~6時に寝るようにしたのですが、それもダメで。

 

いろいろ自分の体で試した結果、24時くらいから7時間ほど眠ると一番調子がいいという結論に達しました。その睡眠リズムが習慣化していったら、一気に心身の状態が改善されたんです。それが本当に不思議で。そこで、睡眠についてきちんと学術的に学んでみようと、大学院に入り学び始めたんです。

 

講演中の様子。近年、睡眠に対する意識は法人・個人を問わず高まりをみせている

「22〜2時の睡眠ゴールデンタイム」は都市伝説!? まずは7時間睡眠を確保することからはじめよう

マネ活編集部:体質は人それぞれなので、適した睡眠時間も違うものなのでしょうか。

 

友野:個人差はありますが、多くの人にとって理想の睡眠時間は7時間と言われています。極端に短くても平気なショートスリーパーや、反対に長時間眠る必要があるロングスリーパーと呼ばれる人もいますが、割合としてはごくごくわずかです。

 

日本人のショートスリーパーは、「エセショートスリーパー」であるケースが多くて、大丈夫と思っていても全然大丈夫じゃなかったり、気合いや、若さのパワーで乗り越えているだけの人が実は多いんです。

 

ご存知の方も多いかもしれませんが、睡眠の「寝だめ」はできません。日々の睡眠不足は蓄積される一方なので、不規則で質の悪い睡眠は、いずれボディーブローのようにじわじわとダメージが出てきます。

 

マネ活編集部:自覚のない睡眠不足の方がいるということですね。そのような場合、どのような体のサインが出てくるのでしょうか。

 

友野:体・脳・心・行動、これら4つに何らかしらのサインが出てくると、睡眠不足の可能性があります。

 

体のサインとしては、イライラやだるさをはじめとした不定愁訴と呼ばれる病名のつかない不調の他、現在では、睡眠時間が足りないと太りやすくなるという科学的な研究結果が出ています。

 

寝不足になると、食欲を高めるホルモンがたくさん出るようになり、逆に食べ過ぎを防ぐ満腹中枢に働きかけるホルモンが減ってしまうんです。寝不足だとホルモンレベルからアプローチされて、総摂取カロリーが増えてしまうということなんですね。

 

さらに、ただ食欲が増えるだけではなく、脂質や糖質といった太りやすいものを欲するようになるのも、体重が増えやすくなる原因です。「ダイエットのスタートは睡眠の見直しから」ということをぜひ意識していただきたいですね。

 

マネ活編集部:脳や心に出てくるサインとなると?

 

友野:脳のサインには、数字の打ち間違えやメールの誤送信、ミスや時間の勘違いを人から指摘されやすくなるなどが該当します。

 

落ち込みやすかったり、イライラしがちになるのが心のサイン。そして行動のサインとしては、人と会うのが億劫になったり、やる気が湧かなかったりといった変化です。行動の変調は意外と見落としがちですので、忙しい時でも変調には敏感でありたいですね。

 

マネ活編集部:7時間の規則的な睡眠が保てるよるになると、こうした不調が治まるかもしれないんですね。睡眠時間が保てれば眠る時間帯はいつでもいいのでしょうか。

 

友野:理想は24~6時に被せた7時間程度です。ホルモンの分泌や自律神経、太陽のリズムなど総合的に考えると、その時間帯が理想なんですね。ただ、夜勤の方をはじめ、この時間に寝るのが難しい方は、ご自身のライフスタイルに合った時間帯で7時間寝ることを、まずは心がけていただけたらと思います。

 

マネ活編集部:「22~2時が睡眠のゴールデンタイム」と聞くことがあるのですが、24~6時なんですか?

 

友野:22~2時がゴールデンタイムというのは、実は睡眠都市伝説なんです(笑)。24時間社会が稼動していなかった昭和時代の価値観からきているようです。

 

睡眠で特に重要なのは、成長ホルモンの分泌から最初の3時間といわれています。ただ、その後の時間も大切になりますので、「24~6時が睡眠のゴールデンタイム」というのが現在のスタンダードになっています。

 

マネ活編集部:女性は月経周期によって過眠や不眠になりがちですよね。辛いという声も多いですが、対策はあるのでしょうか。

 

友野:月経前に襲われる強い眠気には、体温変化が関係しています。内臓の温度、深部体温が下がると眠くなるのが睡眠のメカニズムなのですが、女性は月経前から体温が上昇するため、そもそもが眠りづらい状態になるんです。

 

そこにホルモンの作用によるイライラや落ち込みなどメンタル面の不調が加わり、質の良い睡眠がさらに取りづらくなる。つまり、夜の睡眠の質の低下が、昼間に強烈な眠気を引き起こすわけです。

 

月経前でもできるだけ質の良い睡眠を取るためには、深部体温を下げることが大切です。体内の熱を上手に逃がすには、放熱される手先・足先をしっかり温めて血流を良くしておくことが重要です。女性は月経前は特に手や足を冷やさないようにしてほしいですね。

 

また、月経前はホルモンの影響でストレスに敏感になります。ストレスも睡眠に大きく影響するので、可能な範囲で仕事のボリュームや予定を調整して、睡眠時間を確保できるように心がけたいですね。

昼は元気に、夜ぐっすり。その秘訣は「朝食」にあり

マネ活編集部:睡眠の質を下げないよう、できるだけ避けていきたいことを教えてください。

 

友野:まずは「寝る前のスマホ」ですね。正確に言うと、スマホ・テレビ・パソコンの使用を就寝1時間前までには終わらせること。いずれも睡眠を妨げるブルーライトを避けるためですが、特にスマホがNGなのは、ブルーライトの量が他よりも圧倒的に多いからです。さらに、テレビやパソコンと比べると、目との距離が近い分、受ける影響も大きいんですね。

 

また、SNSによる「心のざわつき」が睡眠を妨げているケースもあります。夜は脳が疲れている分、ネガティブな感情のループに入りやすいんです。最近では音声コンテンツもたくさんありますが、耳から入る情報にも注意が必要です。特に事件や事故などのニュースは気持ちをざわつかせやすいので、就寝前には控えたいところです。逆に、川の流れや雨などの自然界の音や音楽、落ち着いた声音のオーディオブックなどはいいですね。音がないと眠れない方は、1時間後にオフになるようにタイマーをセットするなど工夫してみてください。

 

マネ活編集部:反対に、寝る前にやっておくと良いことはありますか?

 

友野:何かしらの入眠儀式を取り入れるのはオススメです。「これさえすれば自分は眠れる」というある種のおまじないのような行動です。毎日繰り返すことで、生理前や嫌なことがあってモヤモヤする日、出張や旅行で寝る環境が変わったときなどにも入眠しやすくなります。

 

マネ活編集部:友野さんの入眠儀式、聞きたいです!

 

友野:私は「パジャマに着替える」です(笑)。これくらい非常にシンプルなことでいいんです。全身に力を入れて10秒間キープし、はーっと10秒間脱力する筋弛緩運動や深呼吸なんかもいいですよ。

 

香りが好きな方はピローミストを枕に振りかけたり、ボディオイルでマッサージをしたり、リラックスできる程度のストレッチをしたり日々お金がかからないこと、自分が苦痛を感じないこと、環境を問わずどこでもできることの3点をポイントに、ご自身に合う入眠儀式を見つけてみてください。

 

マネ活編集部:ストレッチには「◯◯を何分やりましょう」といった目安があれば教えてください。

 

友野:特にないんです。種類も程度も心地良いと思えるものでいいんですよ。ただ、意識していただきたいのは、胸を開くポーズをなるべく取り入れることと、深い呼吸。デスクワークだと、肩が内側に巻き込んだまま固まってしまい、胸を開いた深い呼吸がしにくくなっている方も多いですので。

 

深呼吸は副交感神経を優位にしてリラックスに役立ちますから、うつ伏せになって上半身を持ち上げるヨガのコブラのポーズなど、胸を開くことを意識してみてください。

 

また、ツボ押しもおすすめです。両足のかかとの真ん中あたりに、睡眠に非常にいい「失眠」というツボがあります。自分では押しにくいので、家族に押してもらったり、床に置いたゴルフボールなどを、椅子に座って足の裏でゴロゴロ転がすといいですね。

 

マネ活編集部:それなら他の作業と“ながら”でもできますね。食事面から睡眠に良いアプローチといえばどんなことでしょう?

 

友野:ぜひ朝ごはんにタンパク質を摂っていただきたいですね。タンパク質の中に含まれているトリプトファンは、日中の意欲的な活動や心の安定に役立つセロトニンというホルモンの材料になります。

 

セロトニンは、夜に脳内で睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンに変わります。つまり、朝に摂るタンパク質は、昼の元気と夜の睡眠、どちらにも作用する重要な栄養素になるんです。

 

マネ活編集部:朝しっかり食べることができない時はどうしたらいいでしょうか。

 

友野:バナナがおすすめです。バナナにはトリプトファンをはじめ、さまざまな栄養素が含まれています。手軽に取り入れられるので、朝食の時間が取りづらい方にはぜひ食べていただきたいですね。

優秀なビジネスパーソンほど睡眠を重視。「睡眠力」は立派なビジネススキル

マネ活編集部:きちんと睡眠を保つことで、仕事面にもたらされるメリットもたくさんありそうですね。

 

友野:そうですね。「ぐっすり眠れると脳の機能が高まって生産性が高くなる」というのは実証されています。お子さんの場合でも、寝ている子のほうが成績がいいとわかっています。

 

判断力、集中力、コミュニケーション能力、仕事に必要なこれらのスキルは、良質な睡眠を取ることで最大限に発揮できるものですから、睡眠スキルはビジネススキルのひとつだと認識されるようになってきました。

 

業界によって認識程度の差はありますが、世界的に見ても社会的地位の高い人ほど睡眠に対する意識が高い傾向があります。優秀なビジネスパーソンほど、睡眠の大切さに自覚的だと感じますね。

 

マネ活編集部:やはり睡眠不足だと、ビジネスシーンで必要なパフォーマンスが低下してしまうおそれがあるんですね。

 

友野:はい。例えば判断力の場合、その日だけ夜遅く起きていたとしても、大きな低下が見られます。また、夜は日中の稼働で脳が疲れ切っているので、細かい判断ができなくなりがちです。

 

ですから、夜遅い時間のメールのやり取りは控えた方がいいと思います。特に、好きな人や苦手な人など、感情が入りやすい相手へのメールは、朝に読み返してから送ることでトラブルを防ぎたいですね。

 

夜のネットショッピングも要注意です。いったん買い物かごやお気に入りに登録しておいて、購入手続きは翌朝に回しましょう。脳の疲れが回復して冷静に判断できますから、買ってしまって後悔するような無駄遣いを防げますよ。

 

マネ活編集部:睡眠を取ることがお金の節約にもつながるんですね。

 

友野:無駄遣いを減らせるだけではなく、エステ代の節約や病気の予防にも繋がります。規則正しい睡眠によって成長ホルモンの恩恵をしっかり受けられれば、肌トラブルや髪質の改善にもなりますから。「質の良い睡眠は最高のエステ」ということですね。

 

私は毎月のように体調を崩していたのですが、睡眠を改善することで生活全体の質が上がり、結果的に病院にかかる必要もなくなりました。

 

マネ活編集部:とはいえ、子育て中だったり仕事が立て込んで、睡眠がコントロールできない場合もありますよね。睡眠不足のとき応急処置としてできることはありますか?

 

友野:昼寝はとてもいいんですよ。ただ、夜の睡眠の質を低下させないためにも、昼寝は15時までに済ませたいです。ベッドには横にならず、椅子に座って壁に後頭部を付けた体勢、かつ、時間は20分程度という点を押さえていただきたいです。初めは慣れずに眠れないかもしれませんが、目を閉じているだけでも脳は休まります。慣れていくうちに、すっと眠れるようになってくるでしょう。

 

また、カフェインは摂取後30分程度で効果が出てきますから、20分程度のお昼寝前にコーヒーなどを飲むと、すっきりした目覚めを後押ししてくれますよ。

 

マネ活編集部:ありがとうございます。最後に、読者にメッセージをお願いできますか。

 

友野:7時間睡眠が大切と話してはきましたが、多少眠れない日があっても大丈夫と、楽観的に構えることも大切です。「眠らなきゃ」と思えば思うほど、ストレスになって眠れなくなってしまいますから。睡眠不足が慢性化しない程度に、睡眠とうまく向き合ってみてください。

 

睡眠の質は健康や美容の質であり、日中のパフォーマンスの質そのもの。昼間の時間を幸せに過ごすために、私たちは夜眠っています。若いからといって睡眠をおざなりにせず、できること、続けられることから睡眠の質を上げる取り組みをしていただきたいと思います。

友野なお
この記事を書いた人
友野なお

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

睡眠コンサルタント、株式会社SEA Trinity代表取締役。日本公衆衛生学会、日本睡眠学会、日本睡眠環境学会 正会員。自身が睡眠を改善したことで1年間で10kgの減量や重度のパニック障害の克服、体質改善に成功。その経験から、睡眠に関心を持ち、順天堂大学 大学院スポーツ健康科学研究科博士前期課程にて睡眠を研究し、修士号を取得。現在は先進予防医学医学博士課程にて、睡眠と健康に関する研究活動を行っている。起業した会社では、睡眠コンサルタントとして主に法人向けに睡眠関連の商品開発やコンサルテーションを行う他、全国での講演活動や執筆活動を行う。
著書
「4週間でヤセ体質に変わる きょうの睡眠ダイエット」(主婦と生活社)
「眠れないあなたを救う 睡眠ファースト」(主婦の友社)他

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