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お金がないから結婚できない?FP・稲村優貴子さんに教わる、結婚まわり6:2:2の資金計画
「お金がないから結婚できない」と漠然と不安を抱いたり諦めたりしていませんか?そもそも、結婚まわりに必要なお金とは、一体どれくらいの額を指すのでしょうか。 FP(フィナンシャルプランナー)としてさまざまなお金のお悩みにのってきた稲村優貴子さんに、結婚前から考えたいお金の話をお聞きします。
- 給料3カ月分の婚約指輪より、未来の資金? 変わりつつある結婚資金への考え方
- 結婚はスタートが肝心! お金についてのすり合わせこそ早いうちに
- 収入と配偶者控除から見る損益分岐点は? あなたの理想とする働き方を考えよう
- 目指すは6:2:2! 独身時代から身につけたいメリハリのある資金計画
給料3カ月分の婚約指輪より、未来の資金? 変わりつつある結婚資金への考え方
マネ活編集部:現在の稲村さんの活動について教えていただけますか?
稲村:損保会社勤務時代にファイナンシャルプランナー(FP)資格を取得し、現在は独立したFPとして活動しています。私は特定の保険会社などには属しておらず、独立した立場で個別の相談に応じたり、セミナーの講師をしたり、執筆活動やテレビのコメンテーターなどのメディア活動にも取り組んでいます。
マネ活編集部:今回、お伺いしたいテーマは「結婚とお金」です。共働きを選ぶ夫婦が増えるなど時代による変化があるなか、結婚する際に用意しておきたいお金も昔と今とでは違いがあるのでしょうか。
稲村:ありますね。私が学生だった頃は女性の結婚年齢が若く、24、5歳で結婚したら寿退社するのが暗黙の了解でした。女性の結婚観も「男性に養ってもらう」イメージがあったように思います。
マネ活編集部:経済的に自立しようとする意識が今ほど高くなかったということでしょうか。
稲村:はい。以前は社会構造的にも女性の経済的自立が難しい要因もありましたしね。ただ時代は変わり、今は経済的に自立した女性、もしくは自立したいと考えている女性が年々増えてきているように感じます。「結婚したら幸せ、ゴール」だから結婚を目指すのではなく、共に高め合えるパートナーと巡り合えたら結婚するという感覚を持っている人が増えてきているのではないでしょうか。
マネ活編集部:相談に来られる方において、結婚式に対しての価値観の変化を感じますか?何年か前から格安婚やライト婚など、価格を抑えた結婚式プランが登場し始めていますが。
稲村:そうですね、10年ほど前から安価な結婚式サービスが一気に増えてきましたよね。その背景として、結婚式後の生活にかかるお金を見据えている夫婦が増えているように感じます。
特に昨年はコロナの影響もあり、安心して開催できない結婚式にお金をかけるよりも、将来のことを考えたお金の使い方をしたいとご相談に来られる方もいました。本当に仲の良い数人で食事会を開いたり、コロナ禍が落ち着いたらリッチな旅行をしようとお金を貯めておいたり。できないことにこだわるより、今できることをして、できなかったことは後からしようという人も増えているように思いますね。
また、慣習に対してのこだわりも薄まっています。結婚式をするなら会社の人も招かなければとか、お色直しをしなければとか、そういった「べき」よりも自分たちが「したい」という価値観を大切にされている方が増えました。慣習で言いますと「結納」って言葉、あまり聞かなくなりましたよね。
マネ活編集部:言葉だけ聞いたことがあるけれど、詳しく知らない方もいそうです。
稲村:結納は家と家が結びつくために存在しているようなものです。水引飾りを施したものに、お給料の3カ月分ほどのお金を入れて「よろしくお願いいたします」と挨拶し合うような儀式。昔は結婚の際、普通に行われていましたが、今では結納という言葉も死語のようになりました。
マネ活編集部:給料3カ月分と聞くと、婚約指輪を思い浮かべてしまいます(笑)。
稲村:20代など若い世代では、婚約指輪も「そんなにお金をかけなくていい」と思っている人が増えているようです。また、例えば結納金、婚約指輪のお金、結婚式費用、新婚旅行、それらすべてで300万円かかるとして、そのお金が貯まるまでは結婚できない…といった認識の方も減っているのではないでしょうか。地域によって差は見られますが。
マネ活編集部:自分たちが良くても、親から口出しされてしまうケースはありますか。
稲村:こちらも地域差があるかと思いますが、全体的に親が口を出すケースも減ってきているような気がします。本人の意思を尊重される親御さんが増えてきているのでしょう。
稲村さんの講演の様子。とっつきにくいお金の話も笑いを交えながら進む
結婚はスタートが肝心! お金についてのすり合わせこそ早いうちに
マネ活編集部:結婚するにあたり、お金について二人でどこまで考えておく必要があると思われますか?
稲村:結婚式費用としてではなく、今後のライフプランとして考えておきたいですね。どう家庭のお金をやりくりしていくのかは、結婚した最初が肝心。まずは共働きを続けるならどう家計を考えるか、片方が働く夫婦なら生活費はどうするか、といった大きな方向性を話し合っておくことがとても大切です。
マネ活編集部:結婚後の生活のために用意しておきたい資金には、どういったものが挙げられますか?
稲村:まずは引っ越し資金ですよね。結婚に当たり、一方がもう一方の家に移り住むのであれば一軒分の引っ越し費用で済みます。しかし新居を用意する場合には、夫婦それぞれが引っ越すために費用が2倍に。ここは意外と盲点になります。家具や家電に関しては、最近は安価に買えるので、今あるものを処分して新しく買い揃えたほうがトータルで安くなるケースもあるんですよ。
マネ活編集部:確かに、二人それぞれが引越しで持ち寄るより安く済むかも知れませんね。
稲村:引っ越し費用はシーズンによって大きく異なるので、家具・家電の買い替えと持ち寄るのとではどちらがお得か、見積もりを取って検討してみると良いでしょう。平日と土日祝でも金額は違いますし、異動が増える3、4月と夏場とでも相場が大きく違います。引越し費用を浮かせるために籍だけ先に入れておき、引っ越し時期をハイシーズンからずらすのも一つの手です。
マネ活編集部:出産費用に関してはいかがですか?結婚を機に仕事を辞めるため、働いている間にお金を貯めておきたいといった場合、どれくらい用意しておくのがよいでしょうか。
稲村:出産に関しては、健康保険から出産一時金として現在は42万円が支給されるので、それほど不安にならなくても大丈夫です。考えておきたいのは、自分がどういった出産をしたいか。市民病院のような一般的な病院と、ホテルのような豪華な病院とでは追加費用が異なります。また、例えば無痛分娩がしたいなど、こだわりのバースプランがあるのであれば、費用を調べて一時金で足りない差額分を貯蓄しておくといいですね。
また、妊娠出産を機に女性が仕事を辞める予定なら、産後の資金繰りについても考えておきましょう。共稼ぎが一人分の収入に減るわけですから、生活のダウンサイジングが必要です。いきなり生活を変えるのにはストレスがかかりますから、徐々に縮小できるように、資金に余白を残しておくと良いと思います。
マネ活編集部:教育資金についてはいかがですか?
稲村:生まれていきなり多額の教育資金が必要になるわけではないので、必ずしも産前に準備しておかなければならないわけではありません。とはいえ「何となく教育資金が心配」という方は、まずどれくらいの費用がかかるのかを把握してみましょう。
一般的に、教育費で一番大きな負担となるのは大学費用なんですね。目安は、国公立大学に通わせるなら300万円、私立文系なら500万円。ただし、この全額を貯めなければならないわけではありません。子どもが生まれたらもらえる児童手当を全額教育資金のために貯めておくと、現時点ではおよそ200万円が工面できます。あとはその差額を大学入学までに貯めればいいわけです。貯蓄が苦手な方は学資保険などを使っても良いですね。
マネ活編集部:貯蓄の目安額がわかると、少し安心できますね。
稲村:はい。また、子どもにお金の話をすることも大切だと思っています。私は、子どもたちに「我が家で出せるのは◯◯万円まで。それ以上に費用が必要な進路を選ぶなら、奨学金を借りるなど方法を考えてね」と話しています。通帳も見せていますし、学資保険についても話していますよ。
先行き不透明な時代ですから、子どもにもお金に対する意識を高めて欲しいと思いますし、絶対に全額親が工面しなければと気負わなくていいと思っています。自分の趣味にかけるお金や老後資金も大切ですからね。
マネ活編集部:趣味への出費は、「無駄使いなのでは」と感じる方もいるのではと思います。どう考えれば良いでしょうか。
稲村:まず、結婚する際に譲れない出費について共有しておくことが大切です。「月1回のネイルにはお金を使いたい」「このアニメグッズだけは買い続けたい」といった譲れない出費は、互いに把握して認め合うことが後々の揉め事にならないポイントです。
マネ活編集部:家族のレジャー費用についてはいかがでしょうか。
稲村:世帯収入の中で、およそ2割を自由に使えるお金の目安にしてみる。その2割の中で、お互いの小遣いや家庭のレジャー費など、やりくりできる費用として回すと考えてみてください。「2割以内」さえ守れれば、その時々でその内訳については柔軟に対応すればいいわけです。
マネ活編集部:住居費についてもお伺いしたいです。賃貸か持ち家かによっても異なりますが、稲村さんの考えはいかがでしょうか。
稲村:永遠のテーマですよね。一概に「こっちが得」と言えるものではないのですが、購入する場合は団体信用生命保険(団信)という、債務者が死亡したりガンなどの大きな病気になった際に、ローンの残債が相殺される保険に加入できる点が大きなメリットです(※各金融機関で諸条件あり)。
賃貸は大黒柱が亡くなっても、大きな病気をして働けなくなっても家賃を払い続けなければなりませんから。ただ、ライフステージによってフットワーク軽く借り換えられるのは賃貸のメリット。一方、老後に新たな家が借りにくくなるリスクがあるのは賃貸のデメリットです。
マネ活編集部:「将来的に買いたい」と考える夫婦の場合、頭金などの資金についてどう考えればいいですか?
稲村:共働きの増加に伴って、夫婦二人の名義でローンを組み、それぞれが住宅ローン控除を受けられるケースが増えています。また、ローン金利も低くなっているので、頭金が貯まるまで購入を先延ばしにするという考え方は、そこまで必要でないかもしれません。
とはいえ、頭金に支払えるだけの貯蓄がまったくない状態で住宅を購入するのは、そもそも「家計のやりくり」という側面から不安が残ります。いずれ買いたいと思っているのであれば、購入価格の1〜2割程度は貯金できるように家計のやりくりをしていきましょう。
マネ活編集部:いざというときのためにも、お金は必要ですもんね。貯蓄が苦手な方は、どうすれば貯めていけるでしょうか。
稲村:余ったら貯めるのではなく「先取り」で貯蓄しましょう。共働きの場合は、共同で貯金をする習慣を作るといいですよ。二人用の預金口座などを用意しておくことで、家具・家電の買い替えなど、大きな買い物にも対応できます。特に、同棲生活からそのまま結婚生活に移っていくカップルの場合、ふたを開けてみたらどちらにも貯金がなかったというケースが起こり得ます。結婚を機に、ぜひ共同貯金を始めていただきたいですね。
収入と配偶者控除から見る損益分岐点は? あなたの理想とする働き方を考えよう
マネ活編集部:妻がパートで働くなら扶養控除内がお得、などと耳にします。「このパターンならお得度が高い」といった働き方はあるのでしょうか。
稲村:現在の税制では、収入的な大黒柱(扶養者)の扶養に配偶者が入る(被扶養者になる)と、配偶者控除と呼ばれる税金の優遇措置を受けられます。控除には何段階かの壁があり、まずあるのが「103万円の壁」。配偶者の年収が103万円を超えると、扶養者の所得税などの税負担が増えるという「税制上の扶養」に関する壁です。
次は年収130万円の壁。ここを超えると、配偶者は扶養者の社会保険の扶養に入れてもらえなくなります。配偶者は自分で社会保険に加入しなければなりません。これは、扶養者が会社員として会社から社会保障制度を受けている場合に出てくる「社会保険上の扶養」に関する壁です。被扶養者の勤務先の条件によっては、年収106万円から社会保険加入の義務が発生する場合もあります。
その次にあるのが年収201万円の壁。ここを超えると配偶者控除がなくなるため、扶養者が支払う税金額がぐっと上がってしまうんです。ただ、扶養者の年収が1,220万円以上あるのであれば、どちらにしろ控除はありません。配偶者が専業主婦(主夫)であれ、バリキャリであれ関係はなくなります。
あまり「損する」という言い方はしたくないのですが、一番収入面でウマみがないのは、被扶養者である配偶者が中途半端に年収の壁を超えてしまうことでしょう。特に社保の扶養から外れる130万円を少し飛び出す程度の年収では、実際の手取り額が130万円を下回ってしまう上に、扶養者の税金も上がってしまいます。損益分岐点をよく聞かれるのですが、おおよその目安として、130万円を超えるならフルタイムで働いて月18万円ほど、年収200万円程度は稼ぎたいですねとお話しています。
マネ活編集部:控除があるほうがいいのか、いっそ働いたほうがいいのかについてはいかがですか?
稲村:私個人は、例えば妻がバリキャリだと損をするといったことはないと思います。二馬力で収入があるのは先が読めない時代にとっては強いですし、老後にもらえる年金額も、会社員として厚生年金に加入していれば受け取れる額が高くなります。専業主婦は夫が会社員であっても、自分の年金は国民年金と自分が会社員時代だった時の厚生年金しかもらえないですからね。
また、バリキャリであっても自営業やフリーランスの方は、厚生年金ではなく国民年金への加入になるので、付加年金やiDeCoなどを使って自助努力で年金を増やすようにしたいですね。
配偶者控除で収入的に損か得かという視点は大切ではありますが、働き方の多様化は今後も進むと思いますので、まずは自分たちの理想とする働き方をパートナーと話し合うことを大事にしていただきたいと思います。
自分がどんな働き方をしていきたいのかを考えておくことが大切と話す稲村さん
目指すは6:2:2! 独身時代から身につけたいメリハリのある資金計画
マネ活編集部:先ほど「世帯収入の2割は自由に使っていい」とのお話がありました。よく項目ごとに「住居費は何割」「食費は何割」といった情報を見かけて、なかなか大変だなぁと思うのですが…。
稲村:あまり決め事が多いと苦しくなりますよね。私は「6:2:2」の黄金比をおすすめしています。収入のうち、生活費が6割、貯蓄が2割、自由に使えるお金が2割という考え方です。
マネ活編集部:「生活費が6割」といったざっくりした分け方がいいですね。気が楽になります(笑)。
稲村:お金の使い方への考えは、家庭によって異なります。住居費にお金を掛けたい人もいれば、食費にお金を掛けたい人もいますよね。ただ、いくらでもお金を掛けられるわけではないので、収入の6割以内で生活費が収まればOKと考えていただきたいと思います。
この考え方は、ぜひ独身時代から取り入れてみてほしいです。ただし、貯蓄2割については月収が少ない若い世代には苦しいと思いますので、その間は1割程度でも構いません。まずはコツコツ毎月1〜2割を蓄していく習慣を作っていきましょう。
マネ活編集部:ありがとうございます。最後に、これから貯蓄を始めようとしている方に向けて、メッセージをお願いします。
稲村:あまり気負って考えず、ハードルを低く始めていただければと思います。何か夢があるなら、そこから逆算をすると前向きにお金を貯められますよ。例えば「5年後にアメリカのディズニーワールドに行きたい。それには50万円が必要」なら、50万円を60カ月で割ってみる。すると、1カ月8,300円積み立てれば叶うとわかるんです。結婚費用に関しても、目標を持ってコツコツ貯めていけば、お金は必ず貯まります。それがお金の素敵なところだと思っています。
※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。
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