家事育児のアウトソースは投資 株式会社MANABICIA代表・池原真佐子さんに聞くワンオペ育児とキャリアの両立

リリース日:2021/02/10 更新日:2022/06/06

キャリアを築いていきたいと考えている女性の場合、夫が単身赴任になったから、仕事を辞めて夫についていくというわけにはいきません。自分の仕事を続けるためにワンオペ育児を余儀なくされたとき、どうすれば仕事と育児を両立させられるのでしょうか。 株式会社MANABICIA代表の池原真佐子さんは、臨月のときに夫の海外赴任が決定。会社の経営とワンオペ育児を両立することになりました。どのようにして激動の日々を乗り越えてこられたのか、事前準備やアウトソースの活用方法について伺いました。

更新日:2021/2/10
  1. 臨月のときに夫が海外赴任に。「互いの価値観への理解」があったから送り出せた
  2. ワンオペ育児を支えたのは「妊娠初期から夫婦で進めた準備」
  3. 家事育児をアウトソースすることは「キャリアへの投資」
  4. 自分の人生の主導権を自分で持つことが、女性のキャリア構築の秘訣

臨月のときに夫が海外赴任に。「互いの価値観への理解」があったから送り出せた

マネ活編集部:池原さんの会社は、どのような事業をされているのですか?

 

池原:2018年から始めた「Mentor For(メンターフォー)」が主な事業です。女性のキャリアに精通したメンターの育成や企業へのメンター派遣を行っています。仕事とライフイベントで迷いがちな女性社員を支え、女性リーダーの育成や管理職輩出のお手伝いをしています。

 

マネ活編集部:メンターに着目したのはなぜですか?

 

池原:私自身がメンターを求めていたからですね。遠距離結婚をして3年ほど経った頃に、会社を立ち上げ、その2年後に出産をしたのですが、臨月のときに夫が海外赴任になったんですよ。
夫と離れて暮らすことへの抵抗感はありませんでしたが、さすがにひとりで会社の経営と育児をしていると悩むことが出てきて...。まわりにワンオペ育児をしている人があまりいなかったため、子育てやキャリアの相談をできる人がいなかったんです。「じゃあ、自分でつくろう」と、事業を立ち上げました。

 

Mentor Forを始めて数ヵ月後、夫がドイツへ異動になり、そのタイミングで、子どもを連れて夫の元に拠点を移しました。当時はリモートワークがあまり浸透していなかったため、私は毎月1、2回日本に帰国して対面の仕事をこなし、残りはドイツでリモートワークをしていました。現在は、新型コロナウイルスの感染拡大で日本とドイツとの移動が困難になったため、2020年12月に私と子どもだけ帰国。夫が帰任するまでは、またワンオペになるだろうと思っています。

 

マネ活編集部:「夫婦になるのだから、一緒に住んだ方がいいのでは」と悩み、仕事を辞めて夫の元に行く女性や、結婚したら自分の元に来てくれるだろうと思っている男性もまだまだいるのではと思います。遠距離結婚を決めるにあたり、夫婦でどのような話し合いをされましたか?

 

池原:結婚前にパートナー同士の価値観をすり合わせる「婚前カウンセリング」に半年ほど通い、互いの価値観について、とことん話す機会を設けました。金銭感覚や仕事観、自分や相手の両親との付き合い方、結婚後の異性との付き合い方など、さまざまなことに関する互いの考えを話し合うことで、お互いに、相手が人生において大切にしたいことを理解し合えました。
私も彼も「仕事を大切にしたい」と思っているため、遠距離結婚という選択は自然でしたね。価値観の相違はあってもいいと思っていますが、相手が何を大切にしたいのかを理解し、必要に応じて、すり合わせられることは非常に大切だと感じています。

 

結婚直後、1年間夫が海外赴任すると決まったときに送り出せたのも、彼が海外で仕事をしたいと思っていることを知っていたからです。彼が仕事を一生懸命やっていることは、私にとっても嬉しいことです。ただ応援したい半面、ワンオペ育児への不安はあるので、気持ちの共有はしっかりしていました。

 

ワンオペ育児を支えたのは「妊娠初期から夫婦で進めた準備」

マネ活編集部:ワンオペ育児が決まったあと、どのような準備をされましたか?

 

池原:経営者は国の育休産休制度を使えないため、産後復帰は産んだ瞬間からだと考え、妊娠初期から夫婦ふたりで産後に向けた準備を進めていました。産後に必要なものや手続きを手分けして書き出し、いつ誰が手配するのかも管理していたんです。

 

保育園に関しても、彼が情報収集と整理をしてくれました。地図上で家から通える範囲の保育園をマッピングして、認可無認可や料金、懸念点、保健所のサイトに書かれている情報などを整理してくれたんです。産後に出す必要のある書類も、事前に書ける欄を書いておいてくれたので、産後は私が申し込むだけの状態でした。

 

子育て初期の頃、大変なことの一つに、リサーチや事務手続きがあると思います。事前にできることを済ませておくと、産後がぐんと楽になりますよ。妊娠期間中に夫婦で準備したことで、父親としての自覚にも繋がったかもしれません。

 

マネ活編集部:出産後は遠距離でしたが、夫婦で協力できたことはありますか?

 

池原:夫が離れた場所にいても協力は仰げるんですよ。例えば、私が「家のトイレットペーパーがきれた」と連絡をしたら、彼がAmazonで注文しておいてくれるなど、遠隔でサポートしてもらっていました。他には、寝不足のつらさや子どもが発熱したときの不安など、気持ちの共有もしていました。距離がある分、ささいなことでも気持ちを共有することが大切ですね。

家事育児をアウトソースすることは「キャリアへの投資」

マネ活編集部:池原さんは家事育児をアウトソースされていましたか?

 

池原:子どもが生まれて2歳半になるまでのワンオペ期間は、フル活用していました。食事の作り置きサービスや宅配サービスを組み合わせ、ごはんを作ったり、買い物をしなくていい仕組みを作りました。掃除も、お掃除ロボットの活用や週に1回の掃除代行を活用しました。

 

なるべく私がしなきゃいけないタスクを減らすようにして、仕事や子どもに時間を割けるようにしたんです。家事育児をアウトソースすると、支出は増えますが、一方でキャリアに費やせる時間や家族と話す時間を増やすことができます。キャリアと家族との時間が私たち夫婦にとっての豊かさなんです。アウトソースすることは、私と夫にとって、優先度の高いキャリアや家族に費やせる時間を確保するための投資だと考えています。

 

マネ活編集部:いくらくらいまでならアウトソースに出費していいと判断されていましたか?

 

池原:我が家では財布を一緒にしていまして、その財布から生活に必要な費用を差し引いた残りをどう使うか、適宜決めていくスタイルです。子育てに目いっぱい手を掛ける必要がある期間は限定されているので、その期間が過ぎれば仕事に注力できる。だとしたら、その間は私の収入をすべて家事育児のアウトソースに費やしてもいいと思っていました。

 

家計の見直しは、必要に応じて行うようにしています。あくまでも「株式会社我が家」を倒産させないための話し合いで、互いの出費の粗探しをするわけではありません。コミュニケーションのベースに互いへの信頼を築けていることが、非常に大切だと思いますね。

 

キャリアや育児についてリモート取材を受けてくださった池原さん

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自分の人生の主導権を自分で持つことが、女性のキャリア構築の秘訣

マネ活編集部:母親になると、それまでと同じように仕事に力を注げなかったり、まわりに謝りながら早退することが重なって、気持ち的にしんどくなってしまいがちです。自己肯定感の低下にも繋がり、夫婦関係のバランスが崩れてしまうこともあるでしょう。
メンターの育成やメンターの派遣事業をされている中で、池原さんは女性たちの現状をどのように見ていらっしゃいますか?また、自分のキャリアをどう築いていったらいいか迷っている女性へ、アドバイスもお願いします。

 

池原:おっしゃる通り、女性の方が自己肯定感は低い傾向にあります。私も育児を夫にお願いするときに、「母親として二流なんじゃないか」と頭をよぎることもあります。
多少の申し訳なさを感じる気持ちは大切にしながら、夫に何かを頼む際はさわやかに「お願いね」と言うようにしています。変に卑屈になると、相手も上から目線になっていき、夫婦関係のバランスが崩れてしまいがちです。単に家事育児を分担するのではなく、夫がしんどそうなときは、私が代わりに対応するなど柔軟性を大切にしています。

 

今の日本では、子育て時に仕事をセーブする役目が、まだまだ女性に偏りがちです。そんな状況下で女性が自信を失わないためには、自分の人生にリーダーシップを持つことが大事ではないでしょうか。育児か仕事の二者択一ではなく、どうすれば両立できるかを考えるマインドセットが重要で、自分で道を切り拓いていく覚悟がいると思います。

 

個人的には、20代はキャリアを追求して仕事を極めた方がいいと思っています。人生にはスピードダウンせざるを得ないタイミングがやってきますから、それまでにキャリアを積んでおくことで、無形資産を増やせると思うんです。家事や育児があるからとキャリアアップを諦めずに、高い山に登ることに挑戦してみてほしいと思っています。

池原真佐子
この記事を書いた人
池原真佐子

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

株式会社MANABICIA代表。早稲田大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科修了。新卒でPR会社に就職、女性向けの製品、アート、NGOなどの広報やイベントに関わる。国際教育のNPOで異文化教育プログラムの海外教育研修の企画に従事した後、コンサルティング会社の人材開発部に転職、国内・海外のコンサルタントの育成、教育体系整備に関わる。コンサル会社在籍中からシンガポールのINSEADのExecutive Masterに国際通学し、コーチング・臨床組織心理学に関する修士号を取得。2014年、株式会社MANABICIAを設立。臨月に夫の海外赴任が決まり、産後はワンオペ育児に。家族と共にドイツで暮らした時期を経て、2020年12月コロナ禍の影響を受け母子のみ帰国、再びワンオペ育児の日々を送る。現在の主な事業は2018年に立ち上げた「Mentor For」。

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