声優デビュー41年目の島本須美が語る「自分への投資」と「チャンスの掴み方」
2019年にデビュー40周年を迎えた声優・島本須美さん。「ルパン三世 カリオストロの城」クラリス役、「めぞん一刻」音無響子役など、多くのヒロインを演じてこられました。40年間「第一線」で活躍され、今もなおご活躍中の島本さんに、「自己投資」と「チャンスの掴み方」についてお話をうかがいました!
デビュー40周年、声を維持するために欠かさずすること。
マネ活編集部:島本さんは2019年でデビュー40周年。昨年は40周年イベントや、CD『sings ジブリ リニューアル ピアノ バージョン』のリリースもあり大変お忙しかったと思います。忙しいなかでも、自分を磨くためにされていることはありますか?
島本須美さん(以下、島本):漢字が苦手だったので勉強をして、漢検準一級まで取りました。ナレーションだと現場で原稿をいただくことが多いので、読めない漢字があったりすると時間がかかっちゃうんです。あとは、その文章の途中にある単語が前後の文脈で意味が変わることもあるので、漢字だけじゃなくて読解力も必要です。だから本はたくさん読みます。色んな作家の文体に慣れた方がいいから乱読しています。
マネ活編集部:漢検準一級! 私は落ちた苦い思い出があります。他には何かありますか?
島本:肉体的な部分だと、朝の歯磨きをしながら簡単なストレッチ。夜はテレビを見ながら腹筋と背筋を100回ずつしています。毎日同じ運動をすると、その日のコンデイションが分かります。「ものさし」じゃないけども、「今日は調子がいいな」とか。やっぱりね、歳を重ねると日々高音部がきつくなったりするんです。でもできるだけこの声を維持したいので、毎日欠かさずやっています。
マネ活編集部:毎日100回! よく友人に「歯を磨くついでにお腹に力を入れたら痩せるよ」って言われるんですけど、2日目にはやらなくなってます。
島本:ついでですから、難しくないですよ(笑)。ほら、こんな感じで(立ち上がってストレッチを実演してくださいました。)
マネ活編集部:思っていたよりハードそうですよ! (真似してみましたが息が上がってしまいました。)あ、もう無理、これは本格的です。
島本:ついでに何かをやるっていう派なので、筋トレはテレビ見ながらです(笑)。
楽しいことがいっぱいあって、何でも夢中になっちゃいます。
マネ活編集部:夢中になっている趣味はありますか?
島本:ここ数年は韓国ドラマ! 毎日11本前後録画してます。外付けのハードディスクを8台つなげてるんですけど、足りないの。どこか空けなきゃ新しいのが取れないから、パズルみたいに考えてます。それがすごく楽しい(笑)。家族は呆れていますけどね、私は楽しいことがいっぱいあってすぐ夢中になっちゃいます。「ママは幸せね」って(笑)。なんでも凝っちゃうんですよ。
マネ活編集部:凝り性なんですね! 他に凝ったものは何がありますか?
島本:漢検にチャレンジしているときは中国の歴史小説に懲りました。あとは公園巡り。東京の公園を紹介する本に出会って、ふと全部行ってみようと思ったのがきっかけです。電車で行くと場所によっては不便なので自転車にしようと。遠いところだと、千葉との県境とか、多摩川の方とか。「今日中にこの辺りは全部回ろう」みたいに計画して出かけていました。近所の方に「この公園はどちらですか?」って聞くと、「分かんない」って言われたり(笑)。小さな公園だと地元の方でも名前を知らないことが多くて…帰りに雨に降られてびしょ濡れになったり…思い出がいっぱいできました。
マネ活編集部:自転車で!? ロードバイクみたいなやつでしょうか?
島本:いえいえ、ママチャリです(笑)。
マネ活編集部:ママチャリ! アップダウンもありますよね?
島本:目黒のあたりとか、坂が辛かった(笑)。地図で見るとアップダウンがないんだけど、実際に行くと坂がすごいことがよくあります。スポーツタイプのものにすればもうちょっと走れたかもしれないんだけど、それはそれでスピードが出て怖いかなって。ちょうど「自転車は路上を走りましょう」って規制が出てきた頃だったので。危険なところもいっぱいありました。大きな交差点で、渡っているちょうど真ん中ぐらいで赤になって、左折車を避けながら行かなきゃならなかったり。
マネ活編集部:道路問題が浮き彫りになりますね。案外知られていないのですが、自転車の保険が義務化されるのはご存知ですか?
島本:義務になっちゃうんですか? 自転車持ってる人みんな登録しなきゃいけない?
マネ活編集部:自治体によりますが、全国的に義務化になりつつあります。東京都は2020年4月からです。家から駅まで3分乗るだけの人も必ず入らなきゃなりません。弊社の楽天損保でも自転車保険がありますので、ぜひ(笑)。うちは月額200円ちょいのに入っています。
島本:でももう公園巡りはブームが去っちゃいました(笑)。
結果がダメだったとしても、見ていてくれる人は絶対にいる。
マネ活編集部:数々の作品で演じてこられた島本さんですが、次世代育成にも力を入れていらっしゃいます。声優としてだけでなく指導者として、これから声優を目指す人たちに思うことはありますか?
島本:今、声優になりたい人がすごく多いんです。私の頃は「声優」という職業に今ほど光が当たっていなかったんですけど、今はすごいですね。だからなのか、声優を目指している人たちは主役をやりたがる傾向が強いように思います。それは当たり前のことと言えばそうですが、声は持って生まれたものですから、主役に向かない方もいらっしゃいます。作品が輝くためには個性豊かで素敵な脇役が必要。だから脇役を狙っていけば、主役ばかりを狙うよりずっと近道だと思います。だけどみんな綺麗な声を出そうとしちゃう。いわゆる美少女や二枚目の声を作るところからスタートする人が多いので、それは遠回りだと教えています。
マネ活編集部:言われてみればその通りですが、自分に置き換えると耳が痛い話です。理想と、本当に自分に合うことは違うということでしょうか?
島本:そうですね、理想を目指すことは悪くないのですが、自分を見極めることも大切です。元から可愛い声をしている人にはやっぱり敵わない。声を作ってたとえできたとしても、それを長続きさせるのは至難の技です。だから、自分の声はどんな役が合っているのか、やりたいことと擦り合わせながら見極める。ヒロインを狙っていた人が、ちょっと視点を変えて悪役をしてみたらデビューが近くなったなんてことはあると思います。だいたい、主役ってね、そんなに長くはやれないからね(笑)。次から次へと若くて可愛い人が出てきますよ。若い頃に主役だったとしても、主役しかやれない声だと負けちゃいます。
マネ活編集部:島本さんは主役も脇役も演じられていますが、デビュー当時は主役を狙っていたのでしょうか?
島本:ぜんぜん狙っていませんでした。でも、当時の事務所の人から「主役じゃなかったら声優をやらないほうがいい」と言われてました。そういう時代だったのかなあ。そもそもは役者でしたから、声優専門というわけじゃなかったのもあるかもしれません。役者の仕事の1つとして声の仕事をしていました。一番最初にした本格的な声のお仕事は 『ザ☆ウルトラマン』という『ウルトラマン』のアニメバージョン。それの紅一点役です。富山敬さんという方が変身前、ウルトラマン本体は伊武雅刀さんでした。
マネ活編集部:富山敬さんといえば『宇宙戦艦ヤマト』、伊武雅刀さんと言えばサスペンスの名優さんですね。なんと豪華な! 野暮な質問になってしまうのですが、島本さんはオーディションに落ちたことはあるのでしょうか?
島本:もちろんありますよ! 声優として一番初めに受けたオーディションが『赤毛のアン』のアン役でしたけど、落ちました。でもこの作品の監督が高畑勲さんで、当時はスタッフのひとりだった宮崎駿さんがオーディションの声を聞いてくださっていた。まだスタジオジブリができる前でした。そこから次回作のヒロイン役オーディションを受けませんかとお声をかけていただきました。
マネ活編集部:すごい運命! その次回作とは、もしかして『ルパン三世 カリオストロの城』でしょうか。
島本:そうです、クラリス役。だからね、声優の世界に限らず何かを目指している人に言いたいんですけど、目の前の結果がダメだったとしても、見ていてくれる人は絶対にいるんです。それを信じて、いつチャンスと巡り会えるか分からないから常にベストを尽くすのが大事。ベストを尽くせば次につながるということ。めげずにやっていれば、人から人へ繋がっていきます。
写真・雨森希紀
取材・文 金延紗衣
取材協力・WeWork 半蔵門 PREX North
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