投資初心者は、何から始めればいい? 歴20年のたぱぞうさんに聞く「知識ゼロからの投資の始め方」
近年、20〜30代の若い世代で「投資」への関心が高まっています。
新型コロナウイルスの流行のように将来何が起きるかわからない時代であることに加えて、定年後に十分な年金がもらえないのではないかという不安などもあり、「若い時期からしっかりと資産形成をしておこう」と考える人が増えているようです。
しかし初心者にとって、投資には難しい印象がつきまといます。投資を始めたくても一歩を踏み出せないという人からは、「何から始めればいいのかわからない」「知識がなくて不安」といった声も聞こえてきます。
そこで今回は、投資歴20年を超える米株投資ユーザーであり、自身のブログで投資に関する情報を発信し続けているブロガーのたぱぞうさんに取材。投資のスタートラインに立つ際に「これだけは押さえておきたい」というポイントや、自分にあった投資を見つける方法を教えていただきました。
- 投資は若いうちから始めることでたくさんのメリットが
- おすすめの勉強方法は翻訳された名著を読むこと
- まずは失敗しにくいつみたてNISAとiDeCoから
- たくさんある金融機関や商品どんな観点で選ぶべき?
- 投資に使うお金は生活防衛資金を確保した上で考える
- 投資は入り口が大事。軸をぶらさない投資計画を
投資は若いうちから始めることでたくさんのメリットが
── 金融庁の調査の2015年の調査によると、20代では約27%、30代では20%以上が投資に関心を持っているというデータが出ています。近年、若い世代の投資への関心が高まっているようですね。
たぱぞう:とても良いことだと思いますね。私はできるだけ若いうちから投資を始めるべきだと考えています。
── 若いうちから投資を始めると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
たぱぞう:まず、長期間投資できるので、必然的に“勝ちやすい投資”になるということです。長期間とは、シンプルに寿命の話です。20〜30代であれば、死ぬまで投資を行うとして、残存年数が一般的に50〜60年くらいはあります。通貨の流通量は基本的に時代とともに増えてインフレします。投資はインフレを追いかけるものなので、長期間投資できればその分、インフレで利益が出るのです。
もちろん、景気は変動するので短期的に見れば落ち込むこともあります。しかし長期的に投資をすれば、そういった変動幅を吸収できるメリットもあるわけです。
逆に、定年退職してから退職金で投資を始めるとすると、運用できる年数が限られるので、変動によるリスクを吸収しきれなくなる可能性も出てきます。
── 若いうちは、あまり大きなお金を投資に回せないことが多いと思いますが、それでも構わないのでしょうか。
たぱぞう:むしろ、投資額が少ないからこそ、失敗しても経験としてその後に生かせるメリットがあるといえます。例えば、1億円を投資して20%下がると2,000万円損することになりますよね。経験を積まずに大金でスタートすると、そういったリスクがあるわけです。
でも、若いうちは一般的にそんなに大きな額を投資できません。例えば、給与から毎月3万円ずつ積み立てていくような運用から始めることが多いです。それなら、仮に20%損をしても6,000円です。そうやって少額投資のうちに失敗を重ねることで、経験と学びを得られます。そして、将来大きな額を投資する際に失敗しにくくなるのです。
── お金への意識も変わりそうですね。
たぱぞう:そうですね。例えば夫婦で毎月10万円を投資に回すとすると、10万円をどう捻出するかを考えなければなりません。自然と家計を見直して、今まで無駄遣いしていたところを削ろう、といった思考が生まれます。投資を始めることは、家計の収支を正しく把握し、無駄遣いしない習慣を身に付けるきっかけになるのです。
セミナーに登壇しているたぱぞうさん(画像奥)
おすすめの勉強方法は翻訳された名著を読むこと
── 投資に興味があっても、「知識がない」「始め方がわからない」といった理由で踏み切れない人も多いようです。初心者が投資を始めるにあたり、おすすめの情報源や勉強法などはありますか。
たぱぞう:まずは書籍を読むことをおすすめします。特に「訳書」が良いと思います。訳書は海外で出版され、高い評価を受けたからこそ日本語訳されているわけなので、基本的には良書が多いです。
中でも個人的におすすめしたいのは、まず『敗者のゲーム』(著/チャールズ・エリス)。投資で成功するための最も簡単で結果の出る方法として、インデックス投資の活用法についてわかりやすく書かれていて、実践的な内容です。
インデックス投資…経済指標に連動して動く投資信託
そしてもうひとつ、『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』(著/モーガン・ハウセル)。資産を築くためのマインドセットについて学べます。
上『敗者のゲーム』(日本経済新聞出版社)/下『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』(ダイヤモンド社)
それと、私も投資の本を6冊出しているので、そちらもぜひ読んでみてください。初心者の方には、新刊の『たぱぞう式 投資のきほん ~初めてでも儲かる!』などがおすすめです。
『たぱぞう式 投資のきほん ~初めてでも儲かる!』著/たぱぞう(きずな出版)
── 金融庁の調査によると、ブログや掲示板、SNSなどインターネットで情報収集している人も多いそうです。書籍とはどのように使い分ければいいのでしょうか。
たぱぞう:インターネットの情報は速報性に強みがあります。一方で、YouTubeやブログの中には、人を集めることで収益を上げているところも少なくありません。耳目を集めるためにセンセーショナルな話題ばかりを扱ったり、大げさな言葉で発信したりすることもありますから、信頼できる情報かどうかを見きわめる必要があります。
私もYouTubeやブログを運営していますが、しっかりとした情報発信に努めています。
── まずは書籍で投資の基本やマインドセットを学び、情報の見きわめができるようになってから、インターネットを活用すると良さそうですね。
たぱぞう:そうですね。特に投資初心者のうちは、速報性が必要な投資は避けた方が無難です。ですから、やはり書籍から入るのがいいでしょう。
まずは失敗しにくいつみたてNISAとiDeCoから
── 速報性が不要な投資から始めると良いとのことですが、具体的には何から始めるのがおすすめでしょうか。
たぱぞう:投資初心者の第一歩としては「つみたてNISA」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」がおすすめです。なぜこの2つを薦めるのかというと、そもそも長期積み立てを前提とした設計思想で作られた制度だからです。
特につみたてNISAは商品も限定されており、初心者向けではないものを買わないような仕組みになっています。投資初心者でも資産運用しやすいようにと、政府の肝いりで始まった制度ですから。やはりまずは、つみたてNISAとiDeCoから始めて堅実に資産を増やしていきましょう。
つみたてNISA…2018年1月からスタートした、少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度
iDeCo(個人型確定拠出年金)…国民年金や厚生年金と異なる方法で老後の資金を貯めるための制度。定期預金・保険・投資信託から選択し、毎月の掛け金を自分で設定した上で、60歳以降に預金を下ろすことができる
── つみたてNISAやiDeCoで投資に慣れてきたら、次のステップは?
たぱぞう:それは、何を目指すのかにもよりますね。仮に、30代や40代でFIRE(早期リタイア)したいのであれば、ある程度ハイリスク・ハイリターンな投資を行う必要があります。
でも、多くの人はそうではなく、将来に備えてお金を増やしたいわけですよね。例えば、人生の3大支出と呼ばれる、老後の支出、住宅の支出、教育の支出。こういった支出に対して備えるくらいであれば、若い頃からの積み立てだけで十分なのです。ですから、つみたてNISAとiDeCoから始めて、慣れてきたらその枠を増やしていくのが王道だと思いますね。
たくさんある金融機関や商品どんな観点で選ぶべき?
── 投資を始める際、初心者がまず迷うのが「どの金融機関で口座を開設すればいいのか」です。金融機関の選び方について教えてください。
たぱぞう:基本になるのはネット証券会社ですね。現状だと、楽天証券、SBI証券、マネックス証券の3社が軸になるでしょう。まずは、これら3社を見たうえで、自分にふさわしい金融機関を選択するといいでしょう。
── 具体的にどこを見ればいいのでしょうか。
たぱぞう:まずは取り扱っている銘柄数ですね。金融機関によって扱う銘柄数が異なるのですが、基本的には多いに越したことはありません。そのうえで、特定口座に対応しているかどうかもチェックしましょう。
また、当然ですが手数料も重要です。手数料が低ければ、その分利益になりますから。ほかにもインターフェースの使い勝手や、クレジットカードのポイント率も各社で異なります。そのあたりを確認して、自分にあった金融機関を選んでください。
── 金融機関を選んだら、次は商品です。どう選べばいいのでしょうか。
たぱぞう:やはり、S&P500かVTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)系ですね。この2つを核としてやっていくといいでしょう。
ちなみにつみたてNISAやiDeCoであれば、枠が小さいので、全部S&P500でもいいんじゃないかと思います。つみたてNISAでも商品を分ける方がいらっしゃるのですが、長期で最もリターンに優れるアセット(資産)は株式です。少ない金額をさらに分散させると運用効率は落ちてしまうので、そこはリスクを最大限取ってもいいのではと、私は思います。
口座…株や投資信託などの投資をするには、銀行の口座とは違い、証券会社の口座「証券口座」が必要になる。株を買うときは、元手になる資金を銀行口座などから証券口座に移動させて注文する
銘柄…取引の対象になる株式や商品の名称
特定口座…上場株式等の売却益にかかる課税については、原則として確定申告が必要となる。この確定申告における事務負担を軽減するために導入された制度。証券会社が保有する商品の損益を計算し、年間取引報告書を作成する
S&P500…米国の株式市場の動きを表す指数で、ニューヨーク証券取引所やNASDAQなどに上場している企業の中でも流動性がある大型株500銘柄が選ばれている
VTI系…米国株式全体に投資できる投資信託
投資に使うお金は生活防衛資金を確保した上で考える
── 積立金や掛け金など、投資に使うお金はどれくらいから始めるといいのでしょうか。
たぱぞう:積み立てに関しては、積み立て可能な上限まで使えるとベストです。ただし、前提として「生活防衛資金」はしっかり確保しておきましょう。生活防衛資金とは、何かあったときに生活できるようにしておくための資金です。会社員の場合はだいたい6カ月分の生活費、自営業なら1年分くらいの生活費が必要と考えてください。
── 仮に投資で損失を出しても、生活に影響が出ないようにしておくということですね。
たぱぞう:そうですね。まずは投資に回せる資金を確保するところからです。そのためには、先ほども申し上げたように家計の収支を把握することが重要です。
案外、思いがけないところにお金を使っていたりするものなのですよ。節約って、よく電気代とか水道代とかを気にしがちですが、それよりも大きな支出が何なのかを把握するのが大事です。例えば「車」ですね。車は生活の中で、最もお金がかかる要素ですから。
ほかにも、独身なのか家族がいるのかでも事情は変わります。独身なら思い切ってリスクを取ることもできますが、家族がいると生活防衛資金が多く必要になります。その意味でも、独身のうちに若い頃から投資に挑戦するのがおすすめです。
投資は入り口が大事。軸をぶらさない投資計画を
── 自分にあった投資計画の立て方については、どう考えればいいのでしょう。
たぱぞう:投資計画については、シミュレーションサイトがたくさんあるので、それを活用するといいでしょう。金融庁のサイトや、各証券会社のサイトなどに用意されています。月にいくら運用して、利回りはいくらなのか、といった計算をして、投資計画を立てるのがおすすめです。
── 最後に、初心者が投資を始めるにあたって知っておきたいポイントについて、ほかにもあれば教えてください。
たぱぞう:やはり入り口が一番大事で、投資の「軸」を決めることです。
投資家の中には中長期的に安定運用する「コア」と、リスクをとって高いリターンを得る「サテライト」をあわせた「コア・サテライト投資」という運用戦略を取る人もいますが、このやり方の注意点は、コアがぶれるとサテライトもぶれてしまうことです。
初心者の場合、コアをきっちり決めて、そのうえで勉強も兼ねてサテライトを選ぶといった考え方をすべきだと思います。もちろん、サテライトは無理にやる必要はありません。
── 最初にしっかりと軸を定めて、ぶらさないことが重要なのですね。ちなみに、たぱぞうさんご自身は投資初心者の頃に失敗したことはありましたか。
たぱぞう:投資金額が小さかった頃は、リスクを取って損失を出したこともありましたよ。例えば若い頃、当時の全財産だった300万円を投資して、50万円になってしまったことも。その損失は、後から取り戻しましたが。
── ハイリスク・ハイリターンを目指すと、そういうこともあるのですね。
たぱぞう:私は若い頃、こう思っていたんです。「100万円や200万円を投資して、万が一それがゼロになってしまったとしても、実は人生にはそれほど影響はない。それなら、もしかすると人生が大きく変わるかもしれない方に賭けた方がいい」と。
ただ、それはあくまでも、私がリスクを取ったからです。今回ご紹介したような初心者向けの投資であれば、よっぽど悪い銘柄を買わなければ、大きな損失が出ることはないでしょう。損失を恐れて貯金してしまうことの方が、よほどリスクだと思います。今は貯金しているだけでは増えない時代ですからね。
将来のことを考えるなら、お金でお金を生み出す投資という仕組みを活用しない手はないのです。
── ありがとうございました!
何が起きるかわからない将来に備えるためにも、しっかりと投資でお金を増やしたいもの。なるべく長く運用して利益を上げるためにも、20〜30代の若いうちから投資を始めるのが効果的、ということがわかりました。
たぱぞうさんに教えていただいた情報をもとに、ぜひ自分にあった投資計画を立て、最初の一歩を踏み出してみましょう!
取材・構成:山田井ユウキ
編集:はてな編集部
※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。
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