年間500冊読む文芸オタク・書評家が全部で1万円以内で選ぶ、20代のうちに読んでいて心底よかった本10冊
こんにちは、書評家の三宅香帆です。
2024年現在、30歳の私は、年間約500冊の本を読んで生活しています。今回は、自分が20代のうちに読んでおいて良かった本を紹介します! 選定条件は「トータルの金額が1万円以内」であることのみ。ジャンルや出版年は関係なし。その中で、ただただ私が「この本は20代のうちに読めて良かったな」と感じた本を選びました。
例えば高価なものを買う時に「早く買っておいたほうが、日割りで計算するとお得になる!」なんて言ったりしますよね。それと同じように、私は本を読むことに関しても「早く読んでおいたほうが、後々の人生へのプラスの影響を考えると、コスパが良いよ!」なんて思います。
今20代の方だけでなく、これから20代になる方にも、そしてそんな方が周りにいる方の参考にもなったら嬉しいです!
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20代のうちに読んでいて良かった本10冊
『オリガ・モリソヴナの反語法』米原万里/集英社文庫(税込み990円)
プラハにあるソビエト学校に通う日本人留学生・志摩を強烈に惹きつけた舞踊教師・オリガ。それから30数年後、大人になった志摩がソ連崩壊直後のモスクワで旧友と共に彼女の謎を追うことに。そこで志摩が知ったのは、オリガと恐怖政治時代のロシアをめぐる、想像を絶する歴史だった。現在の世界情勢を知るうえでも外せない作品。
『オリガ・モリソヴナの反語法』米原万里/集英社文庫(税込み990円)
ロシア語通訳者である著者が自身の経験をもとに綴った小説。ノンフィクションとフィクションの狭間にあるような本書の迫力は、ほかの本では感じたことのないものだった。
私はこの本を読んだことがきっかけで隣の大国ロシアについて考えるようになった。最近も戦争のニュースであらためて「ロシアってどんな国なんだろう」「今なぜ戦争が起きているのだろう」と考える方はいるかもしれないが、まずはこの本を読んでほしい。ソビエト連邦時代に、政府が民衆にどのような仕打ちをしてきたのか、そしてそれに対してソビエト時代の民衆がどのように考えてきたのか、よくわかるからだ。
本書を通して、ロシアという国の内情に、20代のうちに興味を持てたことは幸運だったと思っている。 私は本書を読んだことがきっかけで大学院生のときにロシアへ旅行に行った。今思うと、あの時読んで、あの時旅行できたことの幸運を感じる。
『読者ハ読ムナ(笑)~いかにして藤田和日郎の新人アシスタントが漫画家になったか~』藤田和日郎/少年サンデーコミックス(税込み815円)
「うしおととら」「からくりサーカス」などの人気漫画を生み出した藤田和日郎が明かす新人漫画家養成術。「藤田和日郎のアシスタントになった架空の新人漫画家が、連載を勝ち取るまでを描く」という体裁で、藤田氏が考える漫画創作術、新人漫画家が成長するためのコミュニケーション術を語り下ろす。 社会人にとって必須なコミュニケーションの基礎や心構えが簡潔な言葉で書かれている名著。
『読者ハ読ムナ(笑)~いかにして藤田和日郎の新人アシスタントが漫画家になったか~』藤田和日郎/少年サンデーコミックス(税込み815円)
著者は漫画家で、内容も「新人漫画家養成術」とあるが、どんな仕事においても基礎となるであろう「ほとんど知らない人と打ち解けて、仕事をやりやすくするにはどうしたらいいか?」というコミュニケーション術の基礎を教えてくれる本。わかりやすい言葉で語られているけれど「コミュニケーションにおいて重要なこと」がぎゅっと詰め込まれた1冊であることは間違いなし。漫画家志望でなくともきっと役に立つはず。
20代は基本的に仕事をするうえで若手として見られがちだが、 若手のうちにやるべきことは、とにかくいろんな人に仕事を教えてもらうことではないだろうか。私自身、会社や大学院や今の仕事など、いろんな仕事で年上の人と携わるたびに、本書で説かれていた「相手の好き嫌いを知ること」の重要性を思い出す。
『わたしを離さないで』著:カズオ・イシグロ/訳:土屋政雄/ハヤカワepi文庫(税込み1,078円)
舞台は1990年代末のイギリス。優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは奇妙な少女時代を回想しながら自分達の秘密を解き明かしていく。本編に仕掛けられた謎が解かれた瞬間、驚いて息を吞むこと必至。
『わたしを離さないで』著:カズオ・イシグロ/訳:土屋政雄/ハヤカワepi文庫(税込み1,078円)
私が20代で読んでもっとも衝撃を受けた小説。キャシーの思い出として語られる本編は、「どこが本当の記憶なのか、どこがキャシーの作り出した記憶なのか」という謎をはらんでいる。
この本は「人間とは?」 という問いを考える。本書を読まずにその議論に参加することはできないのでは、とすら思う。私自身、ロボットではなく人間が仕事をする理由をインタビューで聞かれる時、いつもこの本のことを考えてしまう。人間とは何かを知りたい、人間と、それ以外の境界線を考えたい時に、読んでほしい本である。
『ヤサシイワタシ』(1)(2)ひぐちアサ/アフタヌーンKC((1)税込み555円/(2)税込み607円)
写真部に所属する主人公・芹生弘隆が、大学の写真部で出会ったのは、年上の彼女だった。彼女に振り回されながら大学生活を送る中で、彼女の人生に隠された激情を知ってしまう。短い話なのに、忘れられないキャラクターがたくさん登場する漫画。
『ヤサシイワタシ』(1)ひぐちアサ/アフタヌーンKC((1)税込み555円)
『ヤサシイワタシ』(2)ひぐちアサ/アフタヌーンKC((2)税込み607円)
20代のうちに「自分を守るために嫌なことから逃げてしまう」 クセは直しておいたほうがいい、と思わせてくれた漫画。たまに周囲で「嫌なことから逃げようとする」他人を見るたびに、私は本書のことを思い出す。そして「自分もこうなっていないかな?」と我が身を振り返ることにしている(なかなか自分で気づくのは難しいのだが)。
「こういう人っているよね…」と共感した後、「自分もこうなっていないだろうか? 」と、どきりとさせられる。自分は自分を守るためだけに生きていないか? という問いを『おおきく振りかぶって』の作者が描いた傑作。
『坂の上の雲 一 』司馬 遼太郎/文春文庫(税込み803円)
明治維新をなしとげ、欧米列強に並ばんと近代化を急ぐ時代の日本。旧松山藩出身で軍人の秋山好古、秋山真之、そして俳人の正岡子規を中心に激動の時代である明治を描く。
『坂の上の雲 一 』司馬 遼太郎/文春文庫(税込み803円)
私は20代で「自分は人生で何をやりたいのか?」を考えておくことがなにより重要だと思っている。そのきっかけはこの小説に感銘を受けたことだった。
志を持った若い世代が、明治時代に何を考えていて、何を頑張ったのか、司馬遼太郎が爽快に綴る。主人公達が若いので、自分自身が若いときに読めて良かった、と心から感じた。日本の近代化の過程もよくわかり、歴史の勉強にもなる。とても長い小説なのに読み始めたら止まらない面白さに満ちている。暇があるうちに読んでほしい!
『存在の耐えられない軽さ』著:ミラン・クンデラ/訳:千野 栄一/集英社文庫(税込み902円)
冷戦下のチェコスロバキアが舞台。1968年に起こった「プラハの春」とその凋落の時代を背景に、プレイボーイで優秀な外科医トマーシュと田舎娘テレザ、奔放な画家サビナが繰り広げる、恋愛小説。チェコ出身のミラン・クンデラだからこそ綴ることのできる「プラハの春」描写も衝撃的。
『存在の耐えられない軽さ』著:ミラン・クンデラ/訳:千野 栄一/集英社文庫(税込み902円)
恋愛で他人と関わるとはどういうことか、を考えさせてくれる小説。他人と関係を築くうえで、「他人に対する責任を持つのが怖い」 と思っている人にこそ読んでほしい。
結婚や恋愛について考えたり、行動したりする機会が多い若いうちに読むと、人生の役に立つはず。他人と関わることは、そんなに怖いことじゃないかもしれない、と思えるからだ。あなたの身のまわりにも「他人に対する責任を持つのが怖い」という人が現れるかもしれないが、そんなときはこの本のことを思い出してほしい。
『海をあげる』上間陽子/筑摩書房(税込み1,760円)
沖縄の米軍基地問題によって葛藤する人々のことを綴ったエッセイ集。今までは遠い、新聞やニュースの中でしか見ない話だと思っていた社会問題が、身近な問題だと気づかされる一冊。
『海をあげる』上間陽子/筑摩書房(税込み1,760円)
今も国内でこんなにも「米軍」の恐怖に身近に怯えている人がいるのか、とショックを受けた。沖縄では、共通テストを受けるとき、米軍の騒音に悩まされている高校生がいる、という事実の重さ。本書を読まずに沖縄の米軍基地問題を語ることはできないのでは? とくに若い人が苦しんでいる実情を、同年代として知ってほしい。
『ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義』岡真理/大和書房(税込み1,540円)
長年パレスチナ問題に取り組んできた、パレスチナ問題と現代アラブ文学を専門とする著者が説いた、「ガザ」の講義。メディアの語り口や、イスラエル報道に関する偏向に至るまで、丁寧に教えてくれるところがとても良い。
『ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義』岡真理/大和書房(税込み1,540円)
文学研究者が直近のガザ・イスラエル戦争の背景を教えてくれる本。20代のうちに知っておいたほうが良い、 現代の世界情勢の問題がわかりやすく語られている。
年齢を重ねると自分の考えを変更することはとても難しい。若くて頭が柔軟なうちに、現代社会の問題を知っておいたほうが良い、と私は心底思っている。だから20代の方にこの本を読んでほしいのだ。とくに本書を読むと、日本のメディアが何を語っていないのか、私たちはどんな情報を手に入れづらくなっているのか、よくわかるはず。
『動物農場〔新訳版〕』著:ジョージ・オーウェル/訳:山形浩生/ハヤカワepi文庫(税込み880円)
動物たちは飲んだくれの農場主を追い出し理想的な共和国を築こうとするが、そこにはある問題があった。寓話的でありながら、現代社会のすぐれた風刺になっている、色あせない名作。
『動物農場〔新訳版〕』著:ジョージ・オーウェル/訳:山形浩生/ハヤカワepi文庫(税込み880円)
「なぜ人は人を支配したがるのか?」という問いについて書いた小説。私自身、20歳の時に読んで以来、人間関係の考え方に影響を与えた 小説だったので選出した。本書を読んだことで私は「基本的に人間は人間に言うことを聞いてほしいものだし、自分の意見に同調する人のことを好きになるのだ」と思うようになった。
出版当時オーウェルはロシア革命の風刺小説として書いたらしいが、現代でも社会の風刺としても機能し得るだろう。集団や組織の中で、自分がどう振舞うべきか? どうしたら精神を支配されないのか? 本書を20代のうちに読んで、ぜひ対策を練ってほしい。
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素晴らしい本にたくさん出会ってほしい
10冊で税込み合計9,930円、1万円以内になんとか収まりました。
若い時期に読んだ本は、やっぱり考え方や価値観に大きな影響を与えやすい、と私は思います。
自分の人生を選択したり、あるいは人間関係や仕事の悩みを解決したりするとき、本で読んだ知識や感情や思想が、私は何より役に立ちました。 仕事をしているとき、人間関係に悩んだとき、「あの本にこんな状況が書いてあったよなあ」と気づくことができました。そしてその効能を得られる人はきっと私だけではないと思うのです。
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編集:はてな編集部
※2024年3月1日に記事内容の一部を修正しました。
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