僕の料理人生に欠かせない「マジックブレット」は頑丈で小回りのきく調理家電

リリース日:2023/11/14 更新日:2023/12/12

イナダシュンスケです。料理人として、和食、フレンチ、エスニックなどいろいろなジャンルの飲食店のメニュー開発や店舗プロデュースに携わってきました。

 
今は南インド料理専門店「エリックサウス」の料理長として、インド料理に関連する仕事を中心にしています。また料理のレシピ本を始め、食エッセイや小説など、本もいろいろ執筆しています。要するに、おいしい食べ物のことなら節操なくなんでもやる、ナチュラルボーン食いしん坊です。

 
今回はそんな僕が、惚れ込んでいる、というよりむしろ人生において欠かせないものになっている、ある調理器具をご紹介したいと思います。

  1. インド料理には食材を「細かくする」作業が頻出する
  2. マジックブレットで「自由」を手に入れた
  3. マジックブレットを使った、スパイスの粉砕とペーストの作成
  4. プライベートの料理に使う「タレ」を気軽に自作できる
  5. マジックブレットが普及した世界線を目指して

 

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ミルミキサーの「マジックブレット」

 その調理器具の名は「マジックブレット」。これは、ミルミキサーと呼ばれる器具で、その呼び名の通り、乾燥した固形物を粉状に粉砕する「ミル」と、水分を含む食材をなめらかなペーストにする「ミキサー」の機能を、一台で兼ね備えたものです。

インド料理には食材を「細かくする」作業が頻出する

インド料理には「食材を細かく粉砕する」作業が欠かせません。スパイスの原形を調理場で細かいパウダー状に粉砕したものは、最初から粉の状態で流通するもの(パウダースパイス)よりも、はるかに鮮烈でフレッシュな香りがするためです。ほかにも硬い豆をきな粉のように粉に挽いて使う料理もあります。


ニンニクや生姜などの香味野菜をペーストにしたものは、あらゆる料理に欠かせませんし、玉ねぎやほうれん草、ココナツなどのペーストも頻繁に使われます。また、そういった複数の食材やスパイスをまとめてペーストにしたものも、南インドなどではよく使われます。


なのでインドでは、各家庭に必ずといっていいほど、そういった作業をこなせる器具があります。かつてその役割を担っていたものは石臼でした。現代ではそれがミキサーなどの電化製品に置き換わっているわけです。


僕が料理長を務める「エリックサウス」でも、もちろん「粉砕する」「すりつぶす」ための器具は必須で、全店に置かれています。ただしお店ですから、一度に仕込むカレーの量は50人前以上が基本です。器具も業務用のミルや大型のパワーブレンダーなど、そこそこ大掛かりなものになります。


しかし、ここでひとつ問題があります。エリックサウスでは常に新しいメニューを開発し続ける必要があり、それは僕にとってとても重要な仕事です。しかしその試作のために毎回50人前を作り続けるわけにはいきません。試作に最適な量はだいたい4人前です。店にある業務用の器具は大きすぎるのです。


そこで僕は昔から、家庭用のミルやミキサー、フードプロセッサーなどを使ってきました。しかし、パワーや使い勝手などの点で、なかなか満足のいくものには出会えずにいました。

マジックブレットで「自由」を手に入れた

そんな中で数年前に手にしたのが「マジックブレット」です。なんとなくの直感で、多めのスパイスでも一度にスムーズに粉砕できそうなデザインに思えました。


しかし一方で、疑いの目も向けていました。「ミルの機能とミキサーの機能がこれ一台でOK」というのがその触れ込みでしたが、古今東西、複数の機能が一台に詰まった機械というものは、結局どの機能も中途半端ということが往々にしてあるからです。


ただ、価格的には1万円そこそこと安価だったので、(「マジックブレット デラックス 基本セット」は税込みで10,780円)失敗しても諦めがつくかと、とりあえず買ってみました。

 

マジックブレット付属のカップ

「マジックブレット デラックス 基本セット」には、大小2種類のサイズのカップが用意されています。ほかにもドリンク用のカップやミキサーカップなども付属していますが、僕が主に使用しているのはこの2種類のカップです。

 

マジックブレット付属のブレード(回転刃)

ブレード(回転歯)は、スパイスなど固く乾燥したものを粉状に粉砕するのに向いた「フラットブレード」(画像右)と、水分のある食材をなめらかなペーストにする際に活躍する「クロスブレード」(画像左)の2種類があります。

 

カップとブレードを組み合わせることで、さまざまな調理に対応できます。ちなみに、ミキサーカップを使えば、ごく一般的なミキサーとしても使えます。


幸いなことに「どの機能も中途半端では」という心配は、杞憂(きゆう)に終わりました。実際に使ってみると、ミルの機能もミキサーの機能も完璧に感じられたのです。完璧に感じた最大の理由は、マジックブレットがとにかくパワフルだったからです。


それでいて、サイズが極めてコンパクトなのも素晴らしい点でした。こういう道具はコンパクトさも大事です。収納に場所を取らないから、ではありません。収納せずに調理場に出しっぱなしにしておけるからです。


シンプルな操作性やレトロフューチャーなデザインも、非常に僕好みでした。ちなみにその後、耐久性が抜群であることも判明しました。シンプルな設計であるがゆえの頑丈さでしょうか。


そんなわけで僕は、思い立ったら時を選ばず自宅でも、業務用機材と遜色のないクオリティで試作を行える自由を手に入れたのです。




マジックブレットを使った、スパイスの粉砕とペーストの作成

左から、ガラムマサラ、パラク(ほうれん草)ペースト、GG(ニンニク・生姜)ペースト

インド料理を作るときによく使う「ガラムマサラ」は、調合済みの市販品もありますし、複数のパウダースパイスをブレンドして作ることもあります。


しかし、冒頭にも書いたようにスパイスの原形を自分で粉砕して作るものは香りの強さ、フレッシュさが段違い。そもそも店では挽きたてのガラムマサラを使っているので、試作でもクオリティを揃えないと意味がありません。


スパイスはその種類によって形状も硬さもさまざまです。調理に使うときは、必ずしも市販品のように完全な粉状にまで挽く必要はなく「粗挽き」の状態で構いません。


それでも全体を満遍なくスムーズに挽くことができる機材はかなり限られてきます。ポイントはブレード(回転歯)とカップの形状、そしてモーターのパワーなのですが、その点でマジックブレットは完璧に思えました。

 

ホールスパイスをマジックブレットで挽くとこのようになる

またこの作業はモーターにかなりの負荷がかかるからか、機材をある程度消耗品と割り切って使い潰す覚悟も必要だと感じています。しかし、少なくともマジックブレットを使うようになってからは、オーバーヒートが原因の故障は一度もなく、耐久性の面でも信頼を置いています。


ガラムマサラと並んであらゆるカレーに欠かせないものとして「GGペースト」があります。GGとはGarlic(ニンニク)とGinger(生姜)の頭文字。ニンニクと生姜を1:1、そこに水も加えて、なめらかなペースト状にしたものがその正体です。


インド料理ではとにかくニンニクと生姜を同時に、そして頻繁に使いますので、いちいち手で刻んだりすりおろしたりしていては、相当に手間が取られます。


そこで威力を発揮するのが、マジックブレットのミキサーとしての機能です。まとめて作り、薄く広げて冷凍しておけば、必要な時にパキパキ折ってフレッシュな状態でいつでもすぐに使えます。

 

実際に使っているGGペーストを板状に凍らせたもの

ちなみにこのペーストは、インド料理だけでなく中華料理などでもたいへん重宝します。チューブのおろしニンニクや生姜とは比較にならない風味の良さ、そして雑味のなさが特徴です。


インド料理ではこれ以外にもさまざまなペーストが登場します。代表的なもののひとつが、パラクペーストやサグペーストと呼ばれる、青菜を茹でてペーストにしたものです。主にほうれん草が使われます。


インド料理店ではサグチキンやサグパニールと呼ばれる緑色のカレーが定番ですが、その緑色の正体はこれです。菜の花や春菊など、季節の青菜を使ってさまざまな緑のカレーにアレンジすることも可能です。

 

ほうれん草とモロヘイヤのペーストを使った「パラクチキンカレー」

少し専門的になりますが、ほかにも「ココナツペースト」「タマリンドペースト」「ボイルドオニオンペースト」などなど、インド料理で活用するペースト類は実に多岐にわたります


もちろんこういったペーストを使わずに作れるインドカレーもたくさんあるのですが、マジックブレットを使いこなせば、家庭でもプロの味・レストランならではの味が気軽に再現できるということになります。


そこまでのレベルは目指さないとしても、まな板と包丁を使って気長に切り刻むのは面倒、という人にとっても単純にこれは便利な道具です。ちなみにインドでは伝統的に、包丁で切るという作業が日本ほど重視されません。そもそもまな板がない家庭も珍しくないのです。

プライベートの料理に使う「タレ」を気軽に自作できる

こうして店と同じレベルの試作環境を自宅で手に入れた僕ですが、いつしかマジックブレットを完全なプライベートの料理でも頻繁に使用するようになりました。


キッチンの一角に常に「出しっぱなし」になっているからには、使わない手はありません。プライベートのインド料理はもちろんですが、和食、洋食、何にでも使いまくるようになりました。胡麻ダレなどの各種タレ・ソース類、冷や汁、ポタージュ、ふりかけ、デザート生地、などなどです。


さらには、それまで既製品に頼っていた、乳化ドレッシング、焼肉のたれ、果てには中濃ソースまで、今ではすっかり自家製に移行しました。


市販品はそれはそれでもちろんおいしいものです。しかしそれらが完全に自分好みであることは少ないように思います。個人的な好みで言えば、市販のものは甘味やうま味が強すぎると感じることが多いので、そのあたりを自在に調整できる自家製は最高です。それがいつでも気軽に作れるマジックブレットもまた最高ってことです。

 

自家製調味料の数々。フレンチドレッシング、生姜焼きのタレ、濃縮麺つゆ、焼肉のたれ、中濃生ソース、など

こうした自家製ドレッシングの例として、レシピをひとつ上げておきます。

 

【イナダシュンスケ特製フレンチドレッシング】

<材料>

  • サラダ油 160g
  • 米酢 80g
  • 玉ねぎ 72g(中サイズで1/3くらい)
  • ニンニク 8g
  • 塩 8g
  • 砂糖 8g
  • 練りからし 8g
  • 黒胡椒 2g

作り方は、上記の材料をすべてマジックブレットの大カップに入れて、ミキサー機能でなめらかになるまで回すだけです。

 

カップの中身はみるみるうちになめらかに一体化し、数秒後にはマヨネーズを伸ばしたようなトロッとしたドレッシングになります。シンプルながら素材ひとつひとつの風味が生きた、バランスの良い味に仕上がるはず。これを知ったら、もう市販のドレッシングには戻れません。

 

中途半端な残り物があっという間にごちそうになる「俺の気まぐれサラダ」

我が家の冷蔵庫には数年来、これが欠かすことなく常備されています。だいたい常に家にある材料でパパッと作れるからです。時には玉ねぎの一部をニンジンやトマトなど別の野菜に置き換えたもので変化をつけたりもします。


なお、ここにパセリやディルなどのハーブ類をたっぷり加えると「グリーンゴッデスドレッシング」という香り豊かなドレッシングになります。これも、ヤミツキになるおいしさです。


ほかのタレ・ソース類も基本的なメソッドは同じです。デジタルスケールにカップを乗せた状態で次々に材料を計りながら放り込み、まとめてガーッとミキサー機能で回せば完成。焼肉のタレなど、物によってはそれを小鍋に移してひと煮立ちさせてから瓶に移します。


このように冷蔵庫に「完全に自分好みな」タレ類がずらりと並んでいると、毎日の食生活はとても豊かなものになります

マジックブレットが普及した世界線を目指して

最近では、書籍や雑誌などに寄稿する家庭用のレシピでも、マジックブレットを使ったレシピを紹介することがあります。


僕自身はマジックブレットをとにかく頻繁に使うので、必然的にそのレシピもどんどん増え随時改良されていくのですが、発表できるのはそのごく一部でしかありません。家庭用のレシピは、基本的にはどこの家にもある道具を使うことが前提となるからです。


日本中にマジックブレットが普及すれば、そういったレシピも心置きなく発表できることになります。そんな世界線を目指して、僕はこうやって粛々とその普及活動に勤しんでいるのです!

編集:はてな編集部

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イナダシュンスケ
この記事を書いた人
イナダシュンスケ

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

鹿児島県出身。京都大学卒業後、食品メーカー勤務などを経て円相フードサービスを設立。多ジャンルの飲食店を経営する傍ら、食にまつわるさまざまな情報を発信している。著書に『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』(扶桑社刊)『南インド料理店総料理長が教えるだいたい15分!本格インドカレー』(柴田書店刊)

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