日本にいながら中国で食事をしているかのよう。「ガチ中華」の魅力と「入りやすさ別」お店紹介
こんにちは! 阿生(あせい)と申します。私は「東京で中華を食らう」というブログを運営しており、関東近郊のいわゆる「ガチ中華」の情報をSNSで発信しております。
このガチ中華というジャンルが、近年盛り上がりを見せていることをご存じでしょうか? 私は2017年ごろからガチ中華の魅力にとりつかれています。1日に2~3店舗程度の店に行くことも珍しくありません。2022年は200店以上ものガチ中華の店に足を運びました。
今回はそんなガチ中華の魅力を語らせていただきます。また、ガチ中華に興味を持ち始めているけど「店に入りにくい」「何を食べればいいのかわからない」という人に向けて、入りやすさのレベル別に店を紹介したいと思います!
そもそもガチ中華って何?
「ガチ中華とはなんぞや?」という方もいるでしょう。そんな方に一言で説明すると「日本人向けにアレンジされていない、まるで中国にいるかのような気分を味わえる中国人向けの料理」です。
中国の料理といえば「中華料理」という言葉を思い出す人は多いと思います。
しかし「中華料理」は、中国の料理を日本人向けにアレンジしたものに使われる言葉です。その一方で「中国料理」は中国の料理をそのまま中国人向けに出すものに使われる言葉です(厳密な定義ではなく、あくまでもそのような傾向にあります)。
さらに、近年では大衆向け中華料理を出す「町中華」が見直されるというムーブメントがありました。
このような背景のもと、「中国人向けの中国料理」が「町中華」をもじって「ガチ中華」と呼ばれるようになりました。中国人向けの中国料理店の出店が増えていることや、語感のキャッチーさから「ガチ中華」はSNSを通じて世の中に認知されていきました。
ガチ中華は、ひとりで入れる店だと1,000円程度、複数人の宴会ではひとりあたり4,000~5,000円程度です。飲み歩きや食べ歩きが好きな人には比較的安心感がある価格帯ではないでしょうか。
中国留学時代に食べたザリガニ。最近では日本で食べられる店も増えている
ガチ中華との出会い
私は2016年から2017年まで中国の上海に留学していました。その際に四川や広東、新疆(しんきょう)など20以上の都市を訪れています。そこで、日本でこれまで食べていた中華料理と中国現地の料理が、まったく異なることに感動しました。
中国留学中に食べていた貴州料理
2017年に帰国してみると、これまではなかなか食べられなかった中国料理の店が続々と日本にオープンしていました。特に高田馬場や池袋などには、中国のチェーン店が進出していることに気づきました。
2018年から日本に進出した楊國福麻辣燙(ヤングオフマーラータン)。麻辣燙(マーラータン)は一人火鍋のような料理で、中国では6,000店以上の店舗数を誇る。2023年現在、東京、大阪など7店舗を展開している。
2020年、新型コロナウイルスの流行後、ガチ中華の店は関東近辺では池袋、高田馬場、上野、新大久保、小岩、西川口を中心に増え続けています。
この背景として、居酒屋の閉店による店舗賃貸料の下落、中国からの留学生をターゲットにした店の増加、国内で気軽に「海外体験」を楽しめる場所としての需要などが考えられます。
この時に、私はこれまで訪問したお店をまとめたブログ「東京で中華を食らう」を開設しています。暇つぶし程度の気持ちで始めたのですが、すぐに大きな反響がありました。
Twitterのフォロワー数も伸び、2020年では1,000人程度だったのが、今では18,000人を超えています。人々のガチ中華への興味関心の高さが伺えます。
レベル別ガチ中華が楽しめるお店を紹介
ここからは私が実際に食べ歩いたお店の中から、最近ガチ中華の進出が盛んである東京の6店舗を紹介したいと思います。ガチ中華の店は薄暗い雑居ビルに入っていることも多く、馴染みがないと店に入りづらい雰囲気だったり、メニューが中国語しかなかったり(あるいは日本語訳が怪しかったり)する場合もあります。
「ガチ中華が流行っているらしいけど、どんな店に行ったらいいのかわからない」という人が一歩踏み出して楽しめるように「お店の入りやすさ」や「料理の親しみやすさ」を基準にして初級、中級、上級の3つにレベル分けをしてみました。
なお、初級から上級まで、どのお店も私としてはおすすめできるものです。ガチ中華が初めての方でも、あえて上級のお店に行ってみるのもおもしろいかもしれません。
【初級】1品あたりの量がほど良く、値段も手頃な「老酒舗」(御徒町)
ガチ中華を語るうえで外せないのが「味坊集団」(あじぼうしゅうだん)のお店です。
味坊は2000年から中国東北地方の家庭料理を出している、元祖ガチ中華ともいえるお店です。ほかにもいくつか系列店があり、これが「味坊集団」といわれています。
そんな味坊集団の一つ、老酒舗(ろうしゅほ)は1970年代の北京にあった大衆酒場を再現した店です。お酒にあう煮込み料理や炒めものなど、おつまみメニューが充実しています。
ガチ中華の店は客の大半が中国人であることが多いですが、老酒舗は日本人客がほとんどです。味坊集団が多くのメディアで取り上げられ、知名度が高いことや、立地が御徒町駅のガード下であることからでしょう。こうした入りやすさから初級として選びました。
中華料理の特徴の1つに「量が多い」ことがありますが、初めてだとどれを頼んでいいのかわからずに、好みでない大盛りのメニューを引いてしまうこともありえます。
しかし、老酒舗は1品あたりの量が少なめで、値段も200円台からとお手軽。いろいろな料理を少しずつ楽しめます。ぜひ、自分にもなじみ深いメニューをチョイスしつつ、未知の料理もいくつか注文してみてください。これまで食べていた中華料理とは一味違った料理があることに気づけるでしょう。
豚バラにんにくダレ。ビールにあう味付け
私が個人的によく注文するメニューは干し豆腐和えや、豚バラにんにくダレ、水餃子、発酵白菜土鍋など。1時間1,000円(税抜き)で甕(かめ)から自分で注ぐ紹興酒飲み放題があるのもうれしいポイントです。
朝7時から10時までは、お粥や油條(ヨウティアオ、中国式揚げパン)などの中華朝ごはんが食べられ、11時から15時(土日祝は12時から15時)まではランチメニューを提供しています。朝から晩まで楽しめるのも魅力です。
老酒舗でガチ中華デビューをしたら、ぜひほかの味坊集団のお店にも行ってみてください。近年では広東省で親しまれている飲茶を出す宝味八萬(ほうみはちまん)や、湖南省の発酵料理を出す香辣里(シャンラーリー)など中国各地の郷土料理を出す店をオープンしています。
【初級】中国内モンゴルの郷土料理「羊肉のシュウマイ」を出す一笹焼売(御徒町)
次に紹介するのは2022年の8月に御徒町にオープンした一笹焼売(イッテイシュウマイ)というお店です。
これまでガチ中華として多かったのが、中国東北部出身のオーナーが作る東北料理や四川料理でした。しかし近年ではガチ中華の種類も多様化しており、広西チワン族自治区や海南島など、地方の郷土料理が食べられる店も相次いでオープンしています。
この店も都内では食べられるところがまだ少ない、内モンゴル料理の店。内モンゴル自治区出身のオーナーが手作りしている羊肉シュウマイや羊肉麺(ヤンローミィエン)、塩気が効いたモンゴル式ミルクティーなどが楽しめます。
日本人にも馴染みがあるシュウマイが看板メニューなことや、オープンしたてで清潔感があり、ひとりでも入りやすい店内、という観点から初級にしました。
内モンゴルの羊肉シュウマイ
ここで食べられる内モンゴル式シュウマイは、日本人がよくイメージする中華料理のシュウマイとは少し異なります。
日本で食べられているシュウマイは、広東料理の一つである飲茶です。しかし、内モンゴルで食べられているシュウマイは、飲茶のシュウマイよりも皮が薄く、上部がシワシワになっています。餡には羊肉を使うのが特徴です。
注文が入ったあとに皮から作るという羊肉シュウマイは生姜の香りが効いていて、ジューシー。待ってでも食べたい一品です。
お得なランチセットはシュウマイ7個に漬物やフルーツ、モンゴルのビスケットとミルクティーがついて1,280円(税込み)。
ほかにもクリーミーなスープともちもち麺が特徴な羊肉麺や、ガブリとかぶりつきたい羊スペアリブの塩ゆでなどのセットもあるので、通いたくなってしまうお店です。
【中級】あっさりしていて食べやすい雲南料理が食べられる食彩雲南(池袋、湯島、四谷三丁目)
ここからはレベルを一つあげて中級の店を紹介します。食彩雲南はここ1~2年、都内で店舗を増やしている店で、その店名の通り中国・雲南省の料理が食べられます。
雲南省は中国の西南部に位置しており、ベトナムやミャンマーなどと国境を接している地域です。雲南料理として代表的なものに米線(ミーシェン)という米粉を使った麺料理があります。
多くの日本人がイメージする中華料理とはまた違った一面を持つ、特徴的な料理を提供していることから中級にしました。
ただし、米線を始めとする雲南料理は、あっさりとしていて日本人でも食べやすいものです。特に四谷三丁目店や湯島店は1~2階の低層階にあり、初めてでも入りやすいのではないでしょうか。
汽鍋鶏
おすすめは汽鍋鶏(チーグォジー)という薬膳スープです。汽鍋という真ん中に穴が空いた鍋に鶏肉とナツメやクコなどの漢方を入れ、数時間火にかけます。この鍋には水を入れていないのですが、真ん中にある穴から蒸気が入ってきて、旨味が凝縮された滋味深いスープができあがります。
最近では同じく蒸気を使った創作雲南料理も登場しました。蒸気石鍋魚(ジェンチーシーグオユィー)は、テーブル上の蒸気がでる鍋で鯛やスズキなどの魚を蒸しあげ、特製スープで煮込んだ鍋料理です。
さらには中国の沿岸部でよく食べられている、エビやシャコやカニなどの海鮮を蒸して食べる蒸気海鮮も提供しています。テーブルの上にある鍋から真っ白な蒸気がシューッと上がる様子は写真映えもよく、何人かで食べに行くのにもってこいな店です。
【中級】中国では定番の「自動串焼き機」を体験できる阿里香(東新宿)
中級2軒目は東新宿にある阿里香(ありこう)というお店です。近年、ガチ中華の店では定番メニューとなりつつあるのが羊肉串です。
中国だと羊肉串が食べられる店はほぼ全土でみられますが、特に中国西北部の新疆ウイグル自治区や、中国東北部などでよく食べられています。串に刺した羊肉に、クミンや唐辛子粉のスパイスをまぶして焼いた羊肉串は、ジューシーでスパイシー。なんともクセになる味です。
阿里香もそんな羊肉串がウリなお店。オーナーは中国東北部の吉林省の延辺出身です。朝鮮半島と接していることから少数民族である朝鮮族も多く暮らしており、彼らが作る羊肉串は中国国内だけでなく、韓国でも人気があります。
自動串焼き機で焼く羊肉串
羊肉串自体はいろいろなガチ中華の店で食べられますが、特徴的なのは、テーブルに自動串焼き機があることです。機械に羊肉串を乗せると、串がくるくると自動で回転して、串焼きを作ってくれます。
こうした自動串焼き機は、延辺ではよく見られるのですが、都内ではまだ珍しいです。また、新大久保に近く、韓国人や中国人がメイン客層である点から中級にしました。
阿里香に行ったら羊肉串はマストで頼みたいものです。羊肉串は10本からのオーダーになりますが、ノーマル版の「特製ラム串焼き」「辛口」「麻辣」の3種類から選べるので3~4本ずつ注文するのがおすすめです。
10種類のスパイスがかかった羊肉串は、とても柔らかくビールが進みます。羊肉串を食べた数日後には、スパイシーでジャンキーな味付けが恋しくなり、再び羊肉串を食べに行ってしまうことでしょう。
また、同じく東北部でよく食べられている鍋包肉(グオバオロー、中国風酢豚)も、甘酸っぱいタレがなんともたまらないメニューのひとつです。
【上級】本格的な上海料理をぜひ味わってほしい! 大沪邨(池袋)
ここからは上級。日本人には馴染みが無いメニューが多くどんな料理を頼んでいいのかわからなかったり、客層のほとんどが中国人でまるで中国に旅行に来たような気分になれる店を選びました。
まずは池袋の北口の雑居ビルにある大沪邨(ダウツン)という上海料理の店です。
上海料理というと上海ガニが思い浮かぶ人が多いかもしれません。もちろん上海ガニも上海料理の一つですが、ほかにもおいしい料理がたくさんあるのです。
長江や海に面していることからエビやカニなどの魚介類を使った料理が多く、黒酢や醤油をたっぷり使った甘めの味付けが上海料理の特徴です。
大沪邨のメニューを開くとガチな上海料理ばかりで、麻婆豆腐や回鍋肉などの日本人にも定番な料理はほとんど置いていないことに気づきます。
糖醋小排(スペアリブの黒酢炒め)
おすすめの定番メニューは、糖醋小排(タンツーシャオパイ、スペアリブの黒酢炒め)や響油膳絲(シャンヨウシャンスー、タウナギの上海風炒め)、蟹粉豆腐(シエフェンドウフ、上海カニ味噌の豆腐煮込み)、油焖茭白(ヨウメンジャオバイ、マコモダケの煮込み)などです。コクがあって甘めの味付けの料理は紹興酒とも相性抜群なのでぜひ一緒に頼んでみてください。
咸肉菜飯(シエンロウツァイファン、上海風炊き込みご飯)
主食だと咸肉菜飯(シエンロウツァイファン、上海風炊き込みご飯)や葱油麺(ねぎゆめん、ネギ油まぜそば)などもおすすめです。
料理はどれも茶色がかっていたり黒っぽかったりとちょっと地味にも思えるかもしれませんが、四川料理や羊肉料理よりも癖が少ないので日本人にもあうと思います。
店は雑居ビルの3階にあり、料理も見慣れないものが多いので躊躇してしまうかもしれません。しかし、本場の上海料理が食べられる数少ない店です。
【上級】中国で流行中のギラギラスタイルを体験できる撒椒小酒館(御徒町・大久保・池袋)
最後に紹介するのは御徒町や大久保、池袋に店がある撒椒小酒館(さんしょうこさけかん)。本場さながらの四川料理と重慶料理が食べられます。
最近ではガチ中華の流行に伴い、テレビやWebメディアでもガチ中華の紹介がされる機会が増えてきています。ギラギラした店内や唐辛子などの香辛料をたっぷり使った派手な料理も相まって、すでに何度もメディアに登場しているのが同店です。
国潮風の内装
派手な店内は中国の伝統文化を今風にアレンジした「国潮」(グオチャオ)と呼ばれるスタイル。こうした内装にこだわる店は、撒椒小酒館以外にも増えてきています。中国国内のトレンドが中華料理店にも伝播しているのです。
日本のメディアでの露出回数が増えてきているものの、いざ店にいくと客のほとんどは中国人。派手な店内で、ほとんど中国語しか聞こえない環境にいると、気分は中国旅行です。
…とはいっても、メニューは日本語にも対応していて、タブレットから注文できるので安心してください。
看板メニューの烤魚
ぜひオーダーしてほしいのは烤魚(カオユ)。ナマズに似た川魚をまるまる1匹素揚げして、香辛料がたっぷりはいったスパイシーなスープで煮込んだ料理です。
唐辛子がたっぷりと乗ったビジュアルはとても辛そうですが、意外にもおいしく食べられるくらいのちょうどよい辛さなのです(もちろん個人差はありますが)。
ほかにも、辣子鶏(ラーズージー、鶏からあげの唐辛子炒め)や夫妻肺片(フーチーフェイピェン、牛モツの麻辣和え)なども私が行くと必ず頼むメニューです。
お昼時にはお得なランチメニューもありますが、アラカルトで注文していくほうがに現地感を味わえるので複数人で食べに行くのがおすすめです。
多様な「ガチ中華」をぜひ体験してほしい
以上がレベル別のおすすめガチ中華でした。今回は東は上海、西は四川、南は雲南、北は中国東北地方や内モンゴルまで、各地方の料理を選びました。
テレビなどで取り上げられるのは、派手な四川料理の店が多いですが、四川料理以外のガチ中華も実はたくさんあることがおわかりいただけたでしょうか。
中国は広いので、一つ省をまたぐとまったく違う国の料理が出てきます(同じ省の中でも異なります)。私は中国を旅行したときに、その料理の豊富さや食の豊かさに感動してガチ中華にハマったのですが、現在の東京でもその感動が味わえるのです。
またガチ中華の魅力は、中国語が飛び交う店内で、現地に来たような疑似海外旅行体験ができることにもあると思っています。近年注目されつつあるガチ中華、ぜひ一度お試しあれ。
編集:はてな編集部
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