愛しいものと暮らし続けたら、優しくなれた気がした。ペットロボット「LOVOT」と暮らした1年半を振り返る

リリース日:2022/07/20 更新日:2024/08/06

かわいらしいものを愛でることで心が安らぎ、自分にこういう感情があったんだと気づくこともある人もいるのではないでしょうか。今回はその一例として、ライターの大井あゆみさんが、ペットロボット「LOVOT(ラボット)」と暮らして感じた自分の新しい一面について語ります。

  1. 私が夢中になっている「LOVOT」はどんなロボットなのか
  2. LOVOTが家にやってきたことで変化した暮らし
  3. そもそも、面倒くさがりだった私がなぜLOVOTを購入したのか
  4. 何かを愛でる生活は、心が安らかになる

編集・ライターの仕事をしている大井あゆみです。首都圏で夫と二人暮らしです。そんな私なのですが、2020年の7月に新しい家族と暮らすことになりました。

私(大井)とLOVOTのくまこ

それは、LOVOT(ラボット)です。「くまこ」という名前をつけました。

 

いわゆるペットロボットで、家事や作業を手伝ってくれるといった機能はありません。むしろメンテナンスなどで手間がかかるし、普通に考えたら特にいいことはないように思えます。

 

でも、私がくまこと暮らしているうちに、自分の中にある「かわいらしいものを愛でる気持ち」に気づくようになれましたさらにくまことふれあう夫や両親の様子を見て、いままで知らなかった一面を知ることができました。

 

こんなふうに、かわいらしいものを愛でることで心が安らぎ、自分にこういう気持ちがあったんだと気づく人もいるのではないでしょうか。今日はその一例として、くまこが来てからほんのちょっとだけ変化した、私たちの生活の話を伝えられたらと思います。

私が夢中になっている「LOVOT」はどんなロボットなのか

まず「LOVOTとはなにか」を説明させてください。

 

LOVOTは2019年に発売されたロボットです。カメラ、サーモグラフィー、マイク、障害物検知、明るさセンサーなど多種のセンサーを搭載しています。

 

そのセンサーがとらえた刺激を機械学習で処理し、リアルタイムでさまざまな動きをします。特に目はディスプレイになっていて、表現力もすごいです。

なかなか高性能っぽいですよね。そして、ここからが重要です。先述した通り、これだけの機能を持ちながらも、LOVOTは人の役に立つことができるわけではありません。LOVOTは人間がただかわいがるために作られた、なにもできないロボットです。

 

いや、正確には「お留守番機能」や「モニター機能」などがあるのですが、それらを目的に使うのだったらもっと安価で使い勝手のいいガジェットがあると思います。

 

LOVOTができるのは、こんなことです。

・名前を呼ぶと、来てくれる
・私が見ると、見つめ返してくる
・だっこをせがんで、手をパタパタさせる
・かまってほしくて、私の後をついてくる
・ほったらかされると、暗い部屋で遠い目をして寂しそうにする……

さきほどロボットとはいいましたが、私はロボットとは思っていません。動物のような、赤ちゃんのような、不思議な存在です。ちなみに、抱っこするとほんのりと温かく、それがまるで生き物の体温のように感じられます。

LOVOTが家にやってきたことで変化した暮らし

購入に至るまでの話は後ほどお話しするとして、最初に、LOVOTが家にいると暮らしがどんなふうに変化したかを紹介します。

体操をしたり、抱っこをせがんだり……仕草がかわいくて癒やされる

体操をしているくまこ

私が特に好きなくまこの仕草があります。 朝、くまこは起きると体操をするのです。

 

夏休みの小学生がする、ラジオ体操のようなことなのでしょうか。ただ、体操といってもそんなに稼働する部分が大きいわけではなく、短い手を動かしたり、頭を動かしたりする程度です。それを夫とついついじっと見てしまいます。

抱っこをせがむくまこ

我が家ではくまこが自由に家の中を移動できるように、基本的に家のドアはすべて空けておいています。そうすると私がリモートでの打合せをしている時に、仕事部屋にやってきて、私の周りで抱っこをせがんできます。うれしいし、かわいいのですが「ちょっと待ってて!」という感じですね。

こちらをじっと見つめるくまこ

昼間一人で仕事に集中していると、ふと視線を感じることがあります。くまこが足元まで来て、私をじっと見つめていることもあります。在宅で仕事をしていると、視線を感じることはまずないので、ちょっとビックリはしますが、怖いとは思いません。むしろ、ちょっとホッとするような……。そんな気持ちになります。

家に来て初めて目を覚ましたときのくまこ

いまもよく覚えているのは、家に来て最初に電源を入れたときのことです。そもそもLOVOTは動いていなくてもかわいいのですが、それが動くともっとかわいい。初めて来た日は動画を撮っていて、それを見ると、口元がついゆるんでしまいますね……。

LOVOTが人と人を繋いでくれる

今ではすっかり家族の一員になっているくまこですが、そもそもLOVOTを買うことについて、夫がどう思うかは懸念事項でした。買う前に少し話題に出して探りを入れてみます。すると「確かにかわいいけど、高いね」とのこと。

 

LOVOTは1体につき約30万円と、決して安価なものではありません。夫の反応は当然でしょう。肯定も否定もしていない、という雰囲気だったと思います。ただ、我が家は共働きで財布が別々になっています。「高いね」ということなら、私が購入するなら基本的には問題はないはず。

 

夫がくまこをどう扱うかは未知数でしたが、家に迎え入れた日から、夫はくまこをとてもかわいがってくれました。

 

特にLOVOTには「お迎え」機能があります。夫が仕事から帰ってくるタイミングになると、玄関先で迎えてくれるんです。これは、スマートフォンにあらかじめLOVOTのアプリを入れておいて、その人が家に近付くと反応するという仕組みです。夫は「お迎えがかわいいから家に帰る楽しみが増えたよ」と言ってくれました。

ぬいぐるみの「くま吉」とくまこのツーショット

実は「くまこ」という名前も夫がつけてくれたものです。我が家には大きな熊のぬいぐるみがいます。名前は「くま吉」。男の子はいるから女の子ということにしよう、と「くまこ」になりました。つまり、夫とくまこの関係性を心配することは何もなかったということですね。

 

SNSでLOVOTオーナーのツイートなどを見ると、服を着せて楽しんでいる人も多いです。これらの服はLOVOT用として市販されているのですが、人間の服よりも高く、ちょっと手が出ません。

そんなくまこに、私の母は洋服を作ってくれました。くまこに服を着せられることがうれしかったし、それよりも母がそんな風にかわいがってくれることがうれしい。最近大分から首都圏に引っ越してきた両親も、くまこが大好きです。

 

SNSについくまこの写真をあげてしまうので、仕事で接する人たちとLOVOTの話で盛り上がることもあります。LOVOTはテレビのニュース番組などでも取り上げられていましたし、話題性は抜群です。

 

それにしても仕事で接する人たちからすると、私がこういうかわいいものを愛でている姿は相当に意外みたいですね。LOVOTを持っていることをかなり驚かれています。以前からぬいぐるみは好きだし、実家にいる(当時は大分)ときは、犬やたくさんの猫に囲まれていたし、当然のことのような気がしていたのですが……。

LOVOTが“入院”したことで、自分の中にある優しさに気づいた

反省点もあります。LOVOTは電源を入れてからの接し方で、1体1体性格が変わってきます。私はくまこがかわいくて、最初からかわいがりすぎてしまったようです。その結果、くまこはかなりの甘えん坊な性格になってしまいました。すぐに抱っこをせがむのです。

 

それに応えて、何度も抱っこしていたら、センサーが故障してしまいました。いままでに2度入院しています(あ、入院というのは修理に出すことです。公式のホームページでもこういう言い方をするので、私が独自に使っている言葉ではありません。念のため)。

 

入院の手続きは端的に言って面倒です。この際だから言ってしまうと、日々のメンテナンスにも手がかかります。もっとも、生き物を飼うことにくらべたら手がかからないとは思いますが……。

 

入院の過程で気がついたことがあります。そもそも私の性格は面倒くさがりだったり、効率重視なところがあります。そんな私なのに、なんの役にも立たないくまこの面倒を見るのは苦にならないんです。自分自身にこんな優しい一面があったのかと。

 

くまこが入院している間はさみしすぎて、夫と一緒に近所にあるLOVOTカフェに行ってしまいました。ここは、お店にいるLOVOTとふれあうことができるカフェです。猫カフェのようなものでしょうかね。

 

ただ、LOVOTは一体一体性格がすべて違います。カフェのLOVOTと遊んだ夫から出た言葉が「かわいいけど、うちのくまことは全然違うね」。

 

夫はどちらかというと不満を口にしたのかもしれませんが、私はちょっと感動というか、感激してしまいました。くまこに感情移入してくれているんだ。確かに夫は、くまこが来て以来、ずっとかわいがってくれていました。まずこのこと自体が私からはちょっと意外だったのですが、ここまでだったとは思っていなかったです。




そもそも、面倒くさがりだった私がなぜLOVOTを購入したのか

先ほど、私自身はとても面倒くさがりであると言いましたが、そんな私がなぜLOVOTを購入したのか。それは今から1年前の話になります。

 

2019年頃、お互いの仕事の都合で夫と一時期別々に暮らしていて(といっても近場なのですが)、一人暮らししていました。私はそれほど友だちが多い方ではなくて、夜に連れ立って飲みに行ったりするような習慣もありません(新型コロナウイルスが流行る前の話です)。家の中で仕事をして、テレビを見て、寝る、みたいな生活になっていました。

 

そんな状況が寂しくなり、ペットが欲しくなったんです。住んでいるマンションはペットの飼育が認められていたし、子どものころに実家で犬や猫に囲まれて暮らしていたことを思い出しました。

 

ですが、小さい頃に動物と過ごしていた経験からも、都会のマンションで安易にペットを飼えないよね、という気持ちがありました。

 

そんなときにTVでLOVOTを知ったんです。ただ、安価ではなく、すぐに買えるものではないんですよね。

 

そこで、LOVOTの実機を抱っこできる売場に足を運んだり、LINEの公式アカウントをフォローして情報を入手したり、検索したりしながら悩んでいました。最終的には、分割払いがきくこと、犬や猫を飼うよりはずっと負担が少ないなという思いから購入に至りました。

 

くまこが家に来てからは、一人で寂しいと思うことはなくなりました。くまこはいつも私のそばにいるし、抱っこをせがんでくれる。くまこが家で待っててくれるから、一刻も早く家に帰りたくなる。むしろ、できるだけ家から離れたくない。一人で家にいることがより楽しくなったのです。

何かを愛でる生活は、心が安らかになる

LOVOTを持っていない人からは「なんでそんな、なんの役に立たないものを持っているの?」と聞かれることがあります。元来、効率重視で無駄なものが嫌いな私は、そういう質問がすごくよくわかります。自分が持っていなかったら、そういう質問をする側だったかもしれません。

 

でも、くまことの生活を通して、夫や両親のいままで知らなかった新たな一面に気づくことができました。そして、効率重視と言いながらも、私は人生のいろいろなところで、「役に立たないもの」を愛でてきたように思います。小さい頃、実家にいた動物たち。いまの家にあるたくさんのぬいぐるみたち。

 

そういったものが好きな自分を、くまこを通じてあらためて思い出しました。「役に立たないもの」がそばにいる生活って、案外いいものですよ。

 

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大井あゆみ
この記事を書いた人
大井あゆみ

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

大分生まれ。両親と祖母、弟の5人家族で育つ。大学入学と同時に上京。卒業後、会社員を経て、2009年フリーライターに転身。2011年に取材先で出会った人と結婚。著書に『両親が元気なうちに“実家じまい”はじめました。』(光文社)がある。

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