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値段以上の価値あり。東京から時間をかけてでも訪れたい「和牛」の名店4つ
和牛を愛する小池克臣さんが、値段以上の価値がある「東京から時間をかけてでも訪れたい和牛の名店」を紹介。予算別に、福岡「焼肉すどう 春吉」、金沢「ビーフステーキ専門店 ひよこ」、三重「和田金」、京都「にくの匠 三芳」について語ります。
『横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々』
和牛のおいしさに魅せられ、日々和牛を食べ歩いている小池克臣です。今回は、私が自分自身へのご褒美として訪れている「東京から時間をかけてでも訪れたい和牛の名店」についてお話したいと思います。
冒頭の1行は、私が普段から使っている自己紹介文。父親が魚屋を営んでいる関係で、子供の頃から魚が食卓に並ぶ日々を送っていた。
確かに魚はおいしいが、終わることのない魚生活に、私の中で「魚ではなく肉が食べたい」という思いがどんどん強くなっていったのも必然だったかもしれない。月に1~2回の外食は「チャンス!」とばかりに、どうしても焼肉を食べたいという想いを必死に両親に伝え、近所の焼肉屋に飛び込むのが常だった。
大学生になり、アルバイトをするようになってからは、焼肉を食べる回数が自然と増えた。大きな転機となったのは、高級店として知られる「叙々苑游玄亭」を訪れたとき。アルバイトの臨時収入を握りしめて、当時付き合っていた彼女と食べた高級な和牛だった。
高級感溢れる店内に、行き届いたサービス。今まで食べてきた焼肉よりもはるかにおいしく感じる極上の焼肉に、興奮が収まらなかった。そして、自分以上に喜ぶ彼女の姿を見て、牛肉の偉大な力を思い知った。
私自身、牛肉以外に鶏肉や豚肉も食べるし、嫌いではない。しかし牛肉には、ほかの肉にはない脳まで響くようなおいしさと特別感がある。それが私を強く魅了したのだ。
社会人になると、さらに焼肉を食べる頻度が上がり、ついに週5~6回は和牛を食べる生活に。今では焼肉や和牛がない人生なんて考えられないところまで来てしまった。
ひとりでゆっくりと、大好きな和牛を食べに行くというご褒美
そんな私にとっての贅沢は、ゆっくりと時間をかけて地方まで、大好きな和牛を食べに行くこと。
普段は仕事などでバタバタと時間に追われる生活を送り、休日は3人いる子供たちを連れて家族で過ごすことが多いので、1日を自分の好きなように使うことはなかなかできない。とはいえ、休日出勤や徹夜も混じるようなプロジェクトが終わった後は、2日ほど有休を取り、1日は家族とゆっくり過ごすようにしている。
そして残りの1日だけは、贅沢に自分だけのために時間を使う。毎日のように和牛を食べているが、足を運ぶお店は首都圏が中心。だからこそ、時間をかけてわざわざ地方まで食べに行くというところが、私にとってご褒美になっている。こんなご褒美があるから、毎日頑張れるのだ。
東京から時間をかけてでも訪れたい、和牛の名店4つ
今回は、自分へのご褒美として最高級の和牛が食べられる、全国各地の名店を4つ紹介したい。
私自身、ご褒美で焼肉を食べに行くときは、東京では出会えない、そこでしか食べることのできない特別な和牛が味わえる店を選ぶようにしている。これから取り上げる4店は、時間をかけてでも訪れたいと思えるほどの価値があるということだ。
なお、地方を訪れる際は、移動も含めて支払いの機会が多くなる。なので私の場合は、1日をスムーズに過ごすためにも、少しの現金とクレジットカードを持って出歩くようにしている。
・【予算:約1万円】飛行機に乗ってでも食べに行きたい、名店からの継承。福岡の「焼肉すどう 春吉」
・【予算:約1万2,000円】高倉健も愛した伝説的なステーキ。金沢の「ビーフステーキ専門店 ひよこ」
・【予算:約1万5,000円】本場でしか食べることのできない松阪肉の元祖。三重の「和田金」
・【予算:約5万円】和牛を追求し続ける孤高の肉割烹。京都の「にくの匠 三芳」
【予算:約1万円】飛行機に乗ってでも食べに行きたい、名店からの継承。福岡の「焼肉すどう 春吉」
東京・浜松町に、その名を知らない焼肉好きはいないほどの名店「焼肉くにもと」がある。
霜降りに固執せず、味が良くてコクのある和牛にこだわって仕入れを行い、その牛肉が最も生きるカットをすることで、焼肉好きの心をぐっと掴んでいる。素材とカットだけでなく、焼肉の肝であるタレも私の中では都内随一と思うほどのおいしさ。和牛本来の味わいを消すことなく、逆に味わいを引き立たせているのが特徴だ。
そんなくにもとで7年間修行した須藤さんが独立し、東京ではなく熊本で立ち上げたお店が「焼肉すどう」。4年後には福岡・春吉に、今回紹介したい焼肉店であり2号店の「焼肉すどう 春吉」を出店した。須藤さん自身は、この春吉店で毎日のように牛肉と向き合っている。
若き店主は、溢れだすほどの熱意と研鑽(けんさん)された技術を持ち、新たな境地を目指している。高級食材に頼ることなく、焼肉屋が扱う食材の範疇(はんちゅう)で作り出されるメニューの数々は、もはや作品のようだ。
他店の良いところは貪欲に吸収しつつも、決して単なる模倣ではなく、オリジナリティーもふんだんに盛り込まれている。中には、くにもとでの修行経験に裏打ちされた、最高峰のトラディショナルな焼肉もある。
扱っている和牛は、全国から厳選されたもの。それが驚くほど良心的な値段で提供されているのだ。
また、焼肉すどう 春吉では、肉を焼くロースターがテーブルの真ん中ではなく、通路側に設置されている。これは、コースがメインの同店では、お客さんではなくスタッフが肉を焼くというスタイルだからこそのこだわりだ。
焼肉店では自分で焼くことを楽しむ私だが、このように店主のこだわりが強い店では、あえて焼きをお店側に委ねることもある。メニューを作り上げた店側の「こう食べて欲しい」という想いを感じたいからだ。どの焼肉店でも言えるが、こうしたこだわりを抑えておくと、その店の肉をよりおいしく食べることができる。
コースの内容は日によって違うが、前菜から塩の焼き物、タレの焼き物まで、緩急をつけた見事な流れで構成されている。
前菜は見た目にも美しい盛合せで、牛刺しやユッケが並ぶ。リブ芯の牛刺しは、素材の味わいだけでなく、クルミの香りと歯応えもアクセントとして楽しめる。ユッケはタレの甘みと肉の甘みがバランスよく絡み合う。また、ユッケの手巻きはタレを受け止めたご飯を存分に味わえるうえに、海苔の香ばしさも加わる。
タンの焼きしゃぶは、一般的に見られる繊維に対して垂直にカットではなく、水平にカットされて極薄で提供される。軽く炙っていただいたものを丸めた後に柚子ポン酢と合わせると、極薄とは思えないほど、タンそのものの旨みの輪郭が浮き上がってくる。
厚切りにされたタン元も、薬味に焼きネギのパウダーを合わせるなど、随所にオリジナリティーがある。
そして、ロースの中で最もサシの入ったリブロースの巻き(牛の背中の部分にあるリブロースに巻き付いているもの)は、ミョウガ・ネギ・大葉に燻製醤油を合わせている。分厚いカットのハラミにはきっちりと火を入れ、コクのあるタマネギのペーストと共に味わえる。自家製のゴマダレで食べるサーロインのしゃぶしゃぶは、上品な旨みが引き出され、肉のおいしさが前面に出ている。
メインは、焼肉屋で食べる極上の炭火焼きステーキ。丁寧に焼かれたリブロースの芯は見事な火入れ。最高の肉質と完璧な火入れが生み出す芸術だろう。焼肉屋なのにナイフとフォークで食べるというのも、ほかではできない経験だ。
東京で修業した店主が繰り出す福岡の焼肉は、東京より進化したオリジナルの焼肉。飽くなき探求心が生み出す次の一手を体験するために、飛行機に乗り込もう。
【予算:約1万2,000円】高倉健も愛した伝説的なステーキ。金沢の「ビーフステーキ専門店 ひよこ」
東京駅から北陸新幹線「かがやき」に乗り込んで約2時間30分、金沢駅に降り立つ。近代的な駅の作りを後目にタクシー乗り場へ向かう。
15分ほどタクシーに乗ると、トラックも通る大きな道路に面して、プレハブ小屋のような小さな小さなお店が1軒立っている。それが「ビーフステーキ専門店 ひよこ」。看板には「ビーフステーキの店」と書かれており、昔ながらのビフテキを彷彿させる郷愁の味を楽しめる。
予約時間に店内に入り、店主と挨拶を交わすが、入り口をくぐった私の顔を見た瞬間から、店主の手はすでに料理の準備を始めている。野菜を鉄板に乗せ、次にサラダ油でマリネしてあるヒレのど真ん中・シャトーブリアンも鉄板に乗せる。
手元にメニュー表は見当たらないのだが、よーく目をこらしてみると、壁に小さく「ヒレステーキ」と書かれている。これがメニューらしい。選択の余地は一切なく、値段も書いていない(時価ではない)。しかし、繰り返すが、これがメニューとのこと。普段都内で足を運ぶお店と違った雰囲気に呑まれるが、それもまた楽しい。
入店から10分もしないうちに、店主は焼き上がったヒレステーキを素早く目の前に出してくれる。断面はレアだが、しっかりと中心まで熱が届いている。適当にやっているようで、熟練の火入れが行われていたのだ。
口に入れると、本当に柔らかい。サシが蕩けるような食感ではなく、シルクのような肉の繊維が1本1本ほどけていくようで、どこか儚さを感じてしまうほど。サラダ油でマリネした効果は、柔らかさだけでなく、ステーキの味に深みを与えているようにも感じる。
店主がサッと焼いてくれたステーキは、こちらも黙々と一気に食べる。お皿が空になるまで、おしゃべりは必要ない。たっぷりと注がれたステーキソースも秀逸な旨さで、ステーキを食べ終わった後に飲み干してしまいそうになる。
最後に店主とあれこれ肉談義も楽しみ、お会計を済ませる。ここまで、入店からわずか20分の出来事。ひよこのステーキは和牛業界のファストフードである。とにかく早い。しかし、雑な仕事は一切なく、むしろ丁寧。そして、何より抜群に旨いのだ。
このわずか20分のために、往復5時間新幹線に乗る。これ以上の贅沢はないかもしれない。
【予算:約1万5,000円】本場でしか食べることのできない松阪肉の元祖。三重の「和田金」
三重県松阪市。言わずと知れた松阪牛の生産地である。
松阪駅を降りると、「松阪牛」と書かれたさまざまなお店の看板や、駅のロータリーに並ぶ松阪牛の石像などが目に入り、町全体が松阪牛で賑わっているのがわかる。そんな松阪まで来たのであれば、どうしても食べたいすき焼きがある。
それは、屋号に「松阪肉元祖」の文字が輝く「和田金」。創業は明治11年で、初代店主の松田金兵衛が牛肉店を始めたのがその始まりだ。
安定して最高品質の牛肉を提供するために自社牧場まで設立している和田金は、1,000頭ほどの松阪牛を肥育し、それらすべてが兵庫県産但馬牛の雌を素牛(肥育牛や繁殖牛として飼育される前の子牛)としている。兵庫県産但馬牛を素牛とした松阪牛は、松阪牛全体の中でも約3%程度(※1)しか存在せず、希少性でも味覚の観点でも、黒毛和牛の中の最高峰と呼ぶに相応しい。
※1……平成26年度の時点で、松阪牛の生産状況は、出荷頭数6,951頭、現在の登録数は11,080頭。中でも兵庫県産但馬牛を素牛とした松阪牛の出荷は239頭と少ない(2019年10月31日時点での農林水産省のページより)
そんな和田金の松阪牛のおいしさが最も伝わるのが、すき焼きだ。和田金では「寿き焼」と呼ばれている。
コースは松・竹・梅の3種類が用意されているが、せっかく時間をかけて和田金まで来たのだから、リブロースの中でも厳選された部分しか使われない、松をオーダーしたい。
松で提供されるリブロースは小振りで、肉肌はピンクではなく濃い小豆色をしていて、兵庫県産但馬牛の特徴がしっかりと出ている。
準備が整うと、仲居さんがリブロースを1枚ずつ鍋に入れ、その上に砂糖と特製のたまり醤油をかけてくれる。決して強火で一気に焼き上げることはしない。ゆっくりと丁寧に火を入れていくと、食欲を刺激される何とも言えない香りに包まれる。柔らかさだけでなく、深みとコクのあるリブロースは、牛肉本来の香りと旨みが抜群だ。
1枚目は牛肉だけ焼いてもらい、2枚目は野菜と一緒に焼いてもらう。そうすることで、1枚目では牛肉の味をダイレクトに堪能することができ、2枚目では野菜の甘みが牛肉の旨みに絡んだおいしさを楽しめる。
美しいサシは決してしつこくなく、あっさりと上品な甘みを教えてくれる。これほどおいしい脂は、ほかのお店では滅多に出会えないだろう。元祖の名に恥じない、最高の松阪牛がここにある。
【予算:約5万円】和牛を追求し続ける孤高の肉割烹。京都の「にくの匠 三芳」
昔から「関東は豚肉文化、関西は牛肉文化」と言われているように、関西は牛肉を食べる習慣が強く、舌の肥えた肉好きが多い。
そして、京都・祇園には、究極の和牛料理を食べられるお店「にくの匠 三芳」がある。和牛はその名の通り「和」の食材である。だからこそ、日本料理の技術で昇華する食材でもある。焼肉やステーキはもちろんおいしいが、それでは味わえない繊細で奥深い肉割烹(主に牛肉を使った日本料理)を味わえば、興奮はおさまらない。
三芳では、兵庫県産但馬牛を素牛とした松阪牛や神戸ビーフといった、黒毛和牛の中でも最高級のものだけを厳選して仕入れている。
また、こだわっているのは牛肉だけではない。出汁を取る昆布や鰹節、鮑(アワビ)や松茸といった牛肉と合わせるすべての食材に対しても、一切の妥協がない。定番であるタンの昆布締めでは、薄切りにされた黒毛和牛のタンの旨みが凝縮し、昆布のふくよかな香りに包まれる。
それでいて、高級食材だけが目立つのではなく、牛肉のおいしさを前面に際立たせるのが、店主の技術。カウンターで包丁をふるう店主・伊藤さんの美しい動きに、自然と引き込まれてしまう。伊藤さんの手から作られる料理は、見た目も味も日常を忘れさせてくれる素晴らしさがある。
店主自ら定期的に訪れるという川岸牧場(兵庫)で育つ神戸ビーフのイチボは、強火で表面をさっと炙って、タタキとして提供される。サーロインのしゃぶしゃぶは、上品な出汁が牛肉の味わいを引き立てている。こだわり抜いて仕入れられたサーロインのおいしさをより味わうために、一般的なしゃぶしゃぶよりもかなり厚切りで出されるのが特徴だ。
メインは、炭火で焼かれたステーキ。ヒレかサーロインのいずれかを選ぶことができる。繊細で滑らかな食感のヒレも捨てがたいが、肉好きであればサーロインを選んでほしい。兵庫県産但馬牛の血統や、じっくりと長期間肥育された牛ならではの濃い旨み、主張し過ぎない上質な脂とのマリアージュが感じられる。ただ、私はどちらかを選ぶことができず、両方お願いするのだが。
支払額は決して安くはないが、その料理には価格以上の価値が感じられ、特別なご褒美としてもピッタリ。三芳で料理を食べるためだけに、京都に通う価値がある。究極の贅沢といえるだろう。
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おいしい牛肉を食べると、身体も心も満足する
時間をかけて、そこでしか食べることのできない牛肉を食べる贅沢。
今回ご紹介したお店以外にも、全国にはまだまだ名店がいくつもあるはずだ。山形にも、兵庫にも鹿児島にも、行きたいお店が存在する。最高の和牛を求めてこれらのお店を訪れるのが今の私の楽しみであり、忙しい毎日を送るモチベーションになっている。
身体の満足感だけでなく、心の満足感も計り知れない。そんな贅沢なご褒美を満喫することで、また翌日からも熱意を持って日々の生活に向き合うことができる。
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