忘れられない“特別な食の体験”を 人生が豊かになる「ご褒美ごはん」

リリース日:2022/07/20 更新日:2024/08/14

グルメ好きのブロガー・在華坊さんが、とっておきの「ご褒美ごはん」を紹介します。中華から南インド料理、フレンチまで、シェフの本気を感じる料理の数々。ただ美味しいだけにとどまらない、特別な食の体験が待っています。

  1. 1. 横浜中華街で、シェフの本気を感じる、自分たち専用の宴会コース
  2. 2. 知らなかった味覚に出会える、渋谷の南インド料理店
  3. 3. 結婚式の思い出とともに味わう、横浜のフレンチ

会社員をしつつ、美味しいご飯やお酒の記録、旅や美術館訪問の記録などをブログに書いている在華坊といいます。

今回のテーマは「ご褒美ご飯」。さて、あらためて「ご褒美ご飯」というと、ハタと考えてしまう。というのも、自分は普段からご褒美とかは考えずに、食べたいものを食べたいときに、飲みたいものを飲みたいときに、楽しんできてしまった人生だから……。

こう書くと、飲食に際限無くお金を投入できるお金持ちのように思われるかもしれないけれど、そういうわけではない。

それに「グルメ好き」というと、国内外のミシュラン掲載店や新進気鋭のシェフのお店を巡ったり、もしくは行列をいとわず各地の人気ラーメン店に通い詰めたりするようなスタイルを想像するかもしれないが、自分の場合はそれも違う。

自分がいつも行くのは、ひとり当たり5,000円から1万円くらいの予算感で、誰でも気軽に楽しめるようなお店。しかしすごいのは、何度も通うほどに、底なしの「本気」を見せつけてくれるところだ。

行くたびに、お店と自分とのつながりが深まるたびに、どんどん新たな食の喜びが湧いてくる。食事そのものが人生を豊かにしてくれるような、「ただ美味しく味わうだけにとどまらない体験」を得られるのだ。

ただ、そういう素敵なお店に出会うには少し工夫が必要で、漫然とグルメサイトを調べれば良いわけではない。今日はそんなちょっとした工夫もあって得られた、私の「ご褒美ご飯」の一端を、3つ紹介していきたい。

1. 横浜中華街で、シェフの本気を感じる、自分たち専用の宴会コース

160軒以上もの中華料理店がひしめき合い、日本一の規模を誇る「横浜中華街」。自分が今、その中でもいちばんヤバいと思っているお店が、広東料理の「南粤美食(なんえつびしょく)」だ。

広州出身のオーナーシェフが丁寧に腕を振るう料理は、近年ネットを中心に評判を呼び、テレビ番組でも何度か紹介されている。ただ、そこで紹介されるのはだいたい「煲仔飯(ボーチャイファン)」と呼ばれる香港風の釜飯や、旨味の塊みたいな塩蒸し鶏である。

テレビを見てやってくる人は、大抵、ご飯ものや麺類を一品だけ頼んで帰っていく。もちろん、それは美味い。とても美味いけれど、このお店の神髄はそれではわからない。というか、大概の良い中華料理屋の神髄は、そういう一品ではわからないと思う。

菜っ葉をさっと炒めただけのような見た目も地味な料理が、とんでもなく美味い……そういうのが、良い中華料理屋なのだ。

カウンターで食べていると、オーナーシェフが「今日はこの材料があるよ?」とか「団体客用に余分に作ったけど食べる?」とか声を掛けてくれて、出てきた初めて見るような料理が美味い! 南粤美食は、そんな楽しさもあるお店なのだ。

そしてやはり、中華料理屋の神髄は、少人数だとわからないだろう。大勢でやってきて、大皿がドンドンと並んで、初めて知ることができる

ひとり1万円の予算で宴会をしたら、シェフの本気を見せつけられた

自分は、Twitterと友人経由でこのお店を知った。以来何度も通い、ときには6人ほどの仲間を集めて、ひとり4~5千円の予算で宴会をすることもあった。そうするうち、来るたびに変幻自在な魅力を見せるこの底知れないお店で、ちょっと奮発したらどうなってしまうんだろう? と気になっていた。

そこで「ひとり1万円の予算で、10人で宴会しませんか」とTwitterで声を掛けたら、あっという間に人が集まった。やはり、同じように思っていた仲間が何人もいたのだ。

お店には事前に行って相談し、どんな料理を食べたいか、漠然とではあるけれど好みを伝えた。すると当日、次から次へと、自分たちの予想をはるかに上回る、シェフの本気を感じる料理が飛び出したのだ。この「美味しい」にとどまらない食事体験は、ここ数年でも夢のような時間だった。

では早速、出てきた料理の数々を紹介しよう。

まず、前菜の皿。一見、ありがちな前菜だけれど、鴨も、ハチノスも、クラゲも、ピータンもひとつひとつのクオリティーが違う。

そしてフカヒレスープは、滋味深いスープにでっかいフカヒレが1枚。お店によっては、ここまでで今回の値段ですと言われかねないレベルだ。

そのあとバカウマな和牛の炒め物を挟み、出てきたハタの蒸し物がこちら。とにかくデカい! 美味い! ハタってこんなに美味いものなのか。定番の塩蒸し鶏と腸詰、エビワンタンスープを挟みつつ、ハタをしゃぶりつくし、ハタのスープにご飯を突っ込んだらこれまた陶然とする味だった。しかしここでは終わらなかったのである……。

見たことない大きさの伊勢海老が! エビチリで! ひっくり返せば身も味噌もギッシリ。足の中にも身がギッシリ。無言で奪い合いむしゃぶりつく。

そこにカイラン菜のXO醬炒め、このXO醬も只者でない感じがするぞ……うまい、うまい……。

〆の麺は、卵だけで生地を練り、油で揚げた伊府(イーフー)麺。自分もこのお店で初めて食べた。ここにエビの卵がたっぷり入っている。もうお腹いっぱいになっているはずなのに奪い合って食べ、お皿も舐めたくなるほどだった。

デザートに出てきたココナッツ味の胡麻団子も美味しくて、大満足、正直、この値段で大丈夫なの? というクオリティーの大宴会になったのだった。

そして宴会後にTwitterで調べていると、もっと変わった、食べたことの無いような中華料理をいろいろ食べている人を発見して、次回はこんなのもお願いしてみよう、と思うのだった。

特別な食事体験のために、必要なこと

こういう体験をするために必要なのは、ちゃんと事前に何度も通って、お店の人と理解が深まってから相談することだ。特に、初めて訪れる店で、いきなり無理を言ってはいけない。予算や人数などの条件を明確にし、店側が十分な準備時間を取れるよう、また材料に無駄が出ない内容で相談することも大切だ。

理解が深まるまでの時間が、ますます、体験を特別なものにしてくれる。次から次へ新しいお店に行くのも良いけれど、「ここ」と決めたお店と深く付き合うことも、食の喜びを深くしてくれる道なのだ。

今回は「南粤美食」という特定のお店を紹介したけれど、このお店に限った話ではない。やる気のあるシェフがいれば、大抵のお店で、びっくりするくらい満足できるはずなのだ。まあでも、南粤美食はやっぱり特別なんだけどな!

そして、美味しいものにはお金を出したいと考える友人、食べることが大好きな友人、そんな人たちと過ごす時間も、やはりかけがえのないものなのだ。

2. 知らなかった味覚に出会える、渋谷の南インド料理店

昨今、スパイス中華や南インド料理など、これまであまり日本で知られていなかった分野の味を紹介する店が増えている。中でも、今が旬のイチオシが、渋谷の「エリックサウスマサラダイナー」

仕掛け人は、南インドカレー専門店「ERICK SOUTH(エリックサウス)」の中の人でもあるイナダシュンスケさん。食べることに少しでも執着のある人なら、Twitterで絶対にフォローしておいたほうが良い人物だ。そのオタク的な食への執着から紡ぎ出される名言の数々に、わかるわかる! といつもうなずいてしまう。

自分は八重洲にあるエリックサウスで南インドカレーの「ビリヤニ」「ミールス」に出会って、その奥深いスパイスの世界に魅了されて以来、南インドカレーの名店を巡るほどだった。

そんな中、イナダさんが企画する新業態のお店が渋谷にできると知り、当然行ってみることにした。それがエリックサウスマサラダイナーだ。

初来店で感じた、新たな食の喜び

食べることの喜びにはいろんな種類があると思う。お腹いっぱいに食べる喜び、舌が記憶している美味しさを味わう喜び、知っている美味しさの幅がさらに拡張される喜び。そして、エリックサウスマサラダイナーには、まったく知らなかった美味しさに出会う喜びがある。

初めてお店を訪れたときから、驚きの連続だった。スパイシー前菜5種の盛り合わせ、旨味と酸味が襲来するマサラドーサ(香辛料で炒めた具材を、クレープのような生地で包んだ料理)と続く。どんどん期待が高まり、空腹感が増すような気持ちだった。

肉を選んで焼いてもらえるマトンステーキは、一口食べるごとに、変な笑いが漏れ続けた。

前菜からデザートまで「新しい味との出会い」が続く、季節のコース

そんな同店が開店早々に始めたのが、2カ月に1度メニューが変わる「モダンインディアンのプレミアムフルコース」。このコースは今や自分の人生の楽しみにおいて、結構な部分を占めるようになった。

5,000円(税別)で前菜からメイン、デザートまで6品程度提供されるこのコースは、伝統と革新が複雑に絡み合う実験場だ。

例えば、2018年の夏の前菜。力強いナスと、オクラとビーツとブロッコリーに粗挽きキーマカレー。ここに焼いたレモンをかけると、多方面からの酸味と旨味が口の中で混ざり合い、食べるほどにお腹が空いてくる。

南インド料理は「混ぜるけど混ぜすぎない」のが特徴だ。例えば、お皿の上にごはんとカレーと各種副菜がのっている「ミールス」は、少しずつ組み合わせを変えて混ぜながら口に含むことで、いろんな味を楽しめる。

モダンインディアンのプレミアムフルコースは、その喜びのレンジが南インドを飛び出して世界に広がったようなものだ。

2018年の秋のメイン、ブラックアンガス牛タンと牛ほほ肉のマサラシチュー。ソースを舐めて笑顔、肉を食べて笑顔、薬味でまた変わる旨味に笑顔、付け合わせの根付きセロリに笑顔。

メニューの能書き通りの、旨味の拡散と凝縮が満喫できる一皿だった。このコースは、イナダさんが書く、ちょっとしつこいくらい自己主張が強いメニューを読むのも楽しい。

こちらは2019年の1~2月の1品目、和ダシと三つ葉のラッサムだ。ラッサムは南インド料理に必須のスープで、トマトやトロピカルフルーツのタマリンドなどが使われており、酸味と辛味に特徴がある。ここではかつおなどの和風だしをベースにしていながら、スパイシーさもマックス。そして三つ葉にこんな使い方があるのか、と驚きがあった。

続いては、カジキマグロの石窯レアステーキ、マラバリ・タップナード添え。「マラバリ・タップナードって何?」とほとんどの人が思うだろう。要はブラックオリーブのディップなのだが、そこはあんまり気にしなくて良い。

とにかく、レアでジューシーなカジキマグロとマラバリ・タップナードの邂逅(かいこう)には、「味の1+1は2ではない、10でも20にでもなり得る、ゆで理論(マンガ「キン肉マン」に登場する超理論)はほんとにあったんだ!!」と感動してしまった。

そして、最近のコースのデザート、苺のファルーダ。ファルーダとはインドの“飲むパフェ”といえる。葛切りやバジルシードが入っていて、スプーンのひとすくいごとに、次はどんな味がするかワクワクする謎パフェだった。

ほかにもここに書ききれないほど、新しい味に出会う驚きが、デザートまで続く。こんなに美味しくて、お腹いっぱいになれるコースが、気軽に5,000円で楽しめてしまう。こんな驚きと喜びがともなう食事があるということを、ちょっと居酒屋で奮発しましたくらいの値段で知れるのだ。

好きなお店に通い続け、体験を共有する

こんなふうに大好きなお店には、ずっと続いてほしい。だからこそ、エリックサウスマサラダイナーに限らず、行きたいお店には行けるときに行かなければならないし、お店との一期一会は大切にしなければならないと思っている。

自分はこのお店に行く度にTwitterに喜びを書いていて、それを見てお店に足を運んだという人もいる。そして自分自身も、いろんな人の呟きを参考にして、新たなお店に足を運んでいる。良かった体験を共有すると、自然と好みが合う人同士でつながっていくのが、SNSの面白いところだ。

そのおかげで自分のTwitterは、他とは比べ物にならないくらい自分好みの「グルメサイト」と化している。




3. 結婚式の思い出とともに味わう、横浜のフレンチ

最後に紹介するのは、ちょっと背伸びして出かけたいお店

私事であるけれど(ここまですべて私事であるけれど)、2018年に結婚した。結婚式は、親戚と親しい友人だけを集めてささやかに開いた。会場に選んだのは、横浜・山手の丘の上にある洋館レストラン「山手十番館」。選んだ決め手は、落ち着いた雰囲気と料理だった。

結婚式では、新郎新婦は落ち着いて料理が食べられない。なので、料理に自信のあるこのお店では、披露宴では新郎新婦に前菜とデザートだけ食べてもらい、後日別途、コースのディナーに招待するというサービスがあるのだ。

自分たち夫婦が再度このお店を訪れたのは、2019年の2月。披露宴に参列してくれた人たちが口々に料理の良さを褒めていたので楽しみにしていたが、幸せな思い出とともに美味しい料理を味わえる、素晴らしい時間だった。

上質な味と気遣いに、幸せな思い出が重なる

外国人墓地が目の前のザ・ヨコハマな洋館で、一皿一皿、上質な味わいのフレンチコースを味わう。盛り付けも、丁寧で美しい。

式の当日までいろいろ相談していたコーディネーターの人も挨拶に来てくれ、さらにはデザートに「お帰りなさい」と書かれるサプライズもあり、とても幸せな気持ちになれた。

今回は結婚式のおまけということで新たにお金を払ったわけではないが、通常8,000円(税別)のコースなので、決して手の届かない値段というわけでもない。

お店に来ている人たちは、この場所に人生のいろんな思い出が詰まっているのかもしれない。ここを結婚式の会場に選んで良かったし、何かあるごとに訪れたくなる「ご褒美ご飯」だと思う。

 

何度も言うけれど、今回紹介したのは、たまたま自分のアンテナに引っ掛かり、通うようになったお店だ。素敵なお店に出会い、深く付き合ったり、そのお店の変化を見続けたり、人生のさまざまな節目に利用したりすることで、「食べる」ということはかけがえのない体験になり得るのだ。

だから、皆さんそれぞれに、こんなふうに楽しく語れるお店を見つけてほしいのです。

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在華坊
この記事を書いた人
在華坊

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

1978年生まれ。横浜、野毛のあたりに在住。出張ついでに飲み歩くことが楽しみな会社員。横浜の話題や出張の旅先での酒場めぐり、美術館めぐりの話が多いブログ「日毎に敵と懶惰に戦う」を2004年から更新中。

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