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ぼくが「ノンウォッシュジーンズ」の色落ちに魅了された理由
※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。
ブロガーのハルさんが、10年続けている「ノンウォッシュジーンズ」の色落ちの魅力について紹介します。手頃な価格でお気に入りの1本を探し、数年かけて「自分だけの色」に仕上げていく。長く楽しめる趣味の魅力を解説します。
- NUMBER (N)INEのジーンズと、色落ちの原体験
- Nudie Jeansに出会い、ものづくりのこだわりに触れた
- ジーンズは、穿き込むほどに「その人らしく」なる
- ジーンズには「気取らない格好よさ」がある
- ジーンズを選んで、色落ちさせるまでの流れ
- 少年よ、ジーンズを穿け
ほとんどのものは、時間を経ると劣化する。
しかし、その劣化を味と見なせるものも存在する。革製品や、ワインなどがそうだ。
革製品は人の手の脂でなじみ、光沢を増す。ワインはヴィンテージと呼ばれ、風味を豊かにしていく。
そして「ジーンズ」もまた、時間が新しい魅力を生み出すもののひとつである。
ぼくがノンウォッシュジーンズの色落ちを趣味にして、もう10年になる。
NUMBER (N)INEのジーンズと、色落ちの原体験
ぼくがノンウォッシュジーンズを初めて意識的に買ったのは、高校2年生の頃だった。
ダメージジーンズ全盛期だった当時、シーンへのカウンターとしてか、ノンウォッシュ(未加工)ジーンズがプッシュされだしたのだ。手の込んだ加工がなされた高価なジーンズに比べ、ノンウォッシュジーンズは明らかに財布に優しい。高校生にとってはありがたかった。
というわけで、ぼくは当時大人気だった「NUMBER (N)INE」のノンウォッシュジーンズを買い、ドヤ顔で穿き始めた。アメリカのロックバンド「ガンズ・アンド・ローゼズ」のボーカル、アクセル・ローズをモチーフにしたコレクションの時だ。
しかし当時は、ジーンズをどう色落ちさせるかだとか、細かいノウハウについては何も知識がなかった。というよりも、ほとんどの時間を制服で過ごしていた高校生のぼくは、そもそもジーンズが色落ちしていくものだという意識が希薄だった。
ただなんとなく穿いて、なんとなく洗った。
そんなこんなで、大学に入学する頃には、そのジーンズは変な色になっていた。変な色というと語弊があるか。格好いいとは言い難い色という方が適切かもしれない。
ただ、格好いい色落ちとは何か、ということについて説明するのは難しい。あまり濃淡のないライトなブルーが好きな人もいるし、バキバキのコントラストが好きな人もいる。
とにかく、その時のNUMBER (N)INEのジーンズは、素人目にもイマイチな色になってしまった。同時に、「ジーンズは色が落ちるもの」という実感をようやく得ることになった。これが、ぼくにとっての経年変化の原体験である。
Nudie Jeansに出会い、ものづくりのこだわりに触れた
さてその頃、ファッションはとにかく細身が流行だった。どいつもこいつもスキニージーンズ。
それまでは、ジーンズにこだわりを持っている人間というのは特異な存在で、90年代の古着ブームを通ってきた世代が中心だった。高額なヴィンテージジーンズによだれを垂らすようなカルチャーだ。
スキニージーンズが流行って以降、ジーンズの楽しみ方にも違った流れが出てきたように思う。こだわった生地で現代的なカッティングのジーンズを作るブランドがぽつぽつと現れ始めたのも、そんな流れのひとつだ。
以前はジーンズといえば、古着屋にあるヴィンテージのリーバイスか、ヴィンテージを模倣したレプリカブランドのものくらいしか、選択肢はなかった。これらのジーンズは基本的にアメリカ古着をベースに作られているので、日本人にはどうしてもオーバーサイズでだぼついた印象になりがちだ。もちろん、それが好きで穿いている人もいる。さまぁ~ずみたいな格好を想像してもらうとわかりやすい。
Nudie Jeansに惹かれたきっかけ
現代的なカッティングにこだわる新興勢力のジーンズブランドの一つが、スウェーデンのブランド「Nudie Jeans」だ。ぼくがNudie Jeansに惹かれた理由のひとつとして、プロモーションに使われている写真がとにかくクールだったことがある。
写真に写っているジーンズはNudie Jeansのスタッフが実際に穿き、年月を経て色落ちしたものである。つまり、元は店頭にあるのと同じノンウォッシュジーンズだが、もはや別物になっている。
一緒に過ごした年月が、自分だけのワン・アンド・オンリーを作り上げる。こういうものにワクワクするのが男の性(さが)じゃないだろうか?
長く愛用してほしいという、徹底したこだわり
余談になるがNudie Jeansの商売に対するスタンスも、ぼくは好きだ。
破れたりほつけたりしたときに自分で修繕できるよう、オリジナルのリペアキットを無料で送ってくれるサービスがある。Webから申し込むと、わざわざスウェーデンから送ってくれるのだ。
さらに店頭では永年無料のリペアサービスもあって、仕上がりの希望も聞いた上で修繕してくれる。
それに、ぼくが以前Nudie Jeansのジーンズを穿いてお店に行った際、新しいものを買おうと選んでいたら「まだ、そのジーンズ、穿いてあげてほしいです」みたいなことを言われ、暗に「新しいジーンズを買うのは今じゃない」と諭されたこともある。
短絡的に利益を上げるだけならば、こんなスタンスはどう考えたって無駄だ。その根底にあるのは、自分たちのジーンズを長く愛用してほしいという純粋な感情。そこにシンパシーを感じた。Nudie Jeansとの出会いをきっかけに、ぼくはジーンズにさらにハマっていった。
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ジーンズは、穿き込むほどに「その人らしく」なる
それから今までの間、ぼくはいろいろなジーンズを穿いた。Nudie Jeansは何本も買ったし、A.P.C.のプチニュースタンダードを買った際には、ジーンズについて書こうとブログも開設した。
A.P.C.は、ジーンズに力を入れているフランスのブランドだ。装飾のほとんどないプレーンなジーンズを定番として作っており、その中でも、テーパード(足首に向かって細くなるシルエット)の強い細身のモデルがプチニュースタンダードである。
濃紺のノンウォッシュジーンズを買う→1年~2年穿く→色落ちする→出来上がった色落ちを楽しみつつ、新たに濃紺のノンウォッシュジーンズを買う
というサイクルを延々繰り返して、早10年ほどになる。その中でジーンズは、自分のファッション観を随分左右したとも思う。
色落ちの「背景」にあるもの
ファッションに興味を持った頃はとにかく目立ちたいと思っていた。ぼくだけでなく、ストリートスナップでハントされるような原宿や表参道あたりの人間は、とにかく個性的で奇抜で派手なのが信条みたいなところがあったと思う。
しかし、ジーンズを穿くようになったあたりから、生活感というか、等身大を反映するファッションがクールだと思うようになった。
ジーンズに凝り始めた当時は、mixiで『ジーンズ色落ちラバーズ』的なコミュニティーに参加し、人のジーンズの写真を見て「これはかっこいい」「これはダサい」みたいなものを表面的に評価していた。
だが、ジーンズの経年変化とはそんな単純なものではないのだ。
例えば「色落ちのためにはあらゆる我慢もいとわない」みたいな、色落ちのことだけを考えるジーンズ好きがいる。真夏でも分厚いジーンズを穿いて、汗をダラダラ流した後も、洗濯しない。家の中でも穿いたままあぐらをかいて腰回りの皴(しわ)を定着させたり、色落ちを促進するべくスクワットをしたりすることもあるという。
しかし人のジーンズを見て分かるのは、色落ちした後の結果だけだ。それが自然な流れで出来上がったジーンズなのか、それとも半ば意図的に負荷をかけて作ったジーンズなのかは、本人にしか分からない。
穿く人の個性が、色落ちを作る
ただぼく自身は、我慢をするライフスタイルというのは、格好悪いと思う。格好いいものを作るために、格好悪くなるという矛盾。我慢しているところを人に見られるわけではないし、好きにしたらいいけれど、美学の問題だ。
ぼくは自転車やスケートボードが好きだ。それらは時々、ジーンズに予期しないダメージを与える。だが、それがいい(いや、よくないときもある。自転車のサドルによって削れたジーンズの臀部は、やがて穴になる)。
美容師が穿いているジーンズにはパーマ液やカラー剤が飛び散っていて、散らしたように水玉の色落ちができる。
アパレル店員が穿いているジーンズは、膝をつくような動作が繰り返されることで、膝が強く抜ける。
時間が経つにつれ穿いている人物像を浮かび上がらせるのも、ジーンズの面白い要素のひとつだ。
ジーンズには「気取らない格好よさ」がある
ジーンズは、穿くことで染料のインディゴが剥離し、洗うことでそれが飛んで色が落ちる。頻繁に洗うと落とさなくてもいいインディゴまで飛んでしまうので、全体的に色は薄くなる。洗わなければその逆で、擦れやすい箇所のインディゴがはがれて部分的に色落ちしていく。
格好いい色落ちに定義はないが、せっかくノンウォッシュから穿くのであれば、全体がアイスブルーになるよりも、ある程度のコントラストを楽しみたいとは思う。一応ここでは、そのメリハリがある程度出たものを「格好いい色落ち」としよう。
しかし実は、格好いい色落ちは、いろいろなものを犠牲にしている。
ジーンズ全体の色味が変わることを嫌って全く洗わない主義の人もいるが、そういったジーンズは雑菌の温床である。そのスタイルを貫く代償として、ジーンズ自体の生地は弱り、寿命を短くする。また、世間的な理解も失うかもしれない。「毎日同じジーンズ穿いてるとか、ありえないんだけど」と、かわいい彼女も失うかもしれない。
そもそも格好いい色落ちなんて、矛盾した言葉だと思う。同じジーンズを色落ちに期待しながら毎日穿く、という行為が、もはやファッション的な格好よさと逆行していると思う。
結局は、自分がどこで納得するかである。長時間ジーンズを穿きこむという行為をしなくとも、きれいな色落ちを再現した加工ジーンズは買えるし、そのクオリティーだってすごい。中には、加工だと分からないレベルのものだってある。日本の技術は、海外の人気ブランドからも引っ張りだこになるほどだ。
それでも、やっぱり、自分がゼロから作り上げていくという感覚は貴重なものだ。選び、買い、穿き、洗う。その中で自分が納得できれば、人がどうこう言おうが、どうでもいいのだ。
というわけで、ぼくは自然体で適当に穿くというところに落ち着いた。もちろん適当と言っても、以前と違って何の知識もないわけではないから、多少理にかなった行動をしようとはするけれど。(ちなみに、みんなが憧れるヴィンテージジーンズは、昔のアメリカ人がマジのガチで適当に穿いて適当に洗ったものだ。そもそも昔のジーンズはファッションを前提にしておらず、作業着だから)
ジーンズを選んで、色落ちさせるまでの流れ
では、ぼくがどのようなジーンズを選び、どんなふうに穿いているのかを紹介する。
ノンウォッシュジーンズの適正価格について
ノンウォッシュジーンズの適正価格は、大体15,000~20,000円くらいだと思う。岡山県の倉敷に端を発する日本のジーンズブランドの価格設定がそれくらいだ。それより安いものも高いものもあるけれど、ぼくが選ぶのはだいたいそのあたり。25,000円までいくと、高いと感じる。海外発のブランドはどうしても中間コストが増えるから、国内ブランドよりも割高になるのは仕方ないが。
とはいえ、20,000円くらいまでの値段に収まるのが、質実剛健なブランドというイメージである。それよりも高いのは、ブランドネームによる値上げが強めだと見て差し支えないだろう。
セルビッジデニムの良さ
ぼくがブログで紹介しているメインの2本が、A.P.C.の「プチニュースタンダード」とリーバイスの「501CT」。これらはちょうどストライクゾーンの価格設定だった。
セルビッジと呼ばれる生地の端の赤耳は、旧式力織機で織られたことを示している。ざっくり言えば、昔ながらの手間暇かけた生地であるということだ。
現代にはもっと効率的で機械的に生み出された生地がたくさんあるし、どちらがいいかという優劣は、正直感覚的なものになってしまう。というか、優劣なんてないかもしれない。スマホで時間が分かる現代に、アナログな機械式時計が好きな人間がいる、というのに近い。
でも、ジーンズを何本も穿いていると、セルビッジを用いた生地が感覚的に分かるようになる。店頭に並んだジーンズを裏返して耳を見なくても、手触りや雰囲気が違うことに気づく。なんとなく、クラフト感というか、粗野で、工業製品にはない不均一なムラを感じるのだ。
とはいえ、かなり自己満足度の高い部分ではある。そしてぼくは生地を抜きにしても、単純に赤耳の部分が見た目として好きだ。
半年ほど穿いて、初めて洗う
そんな感じで、気に入ったジーンズを買い、その後はひたすら穿く。難しいことは特にない。ただ、最初の半年ほどは洗わない。早期に洗うと、出来かけていた皴の癖が、生地の縮みによってずれるなどのトラブルが起きるからだ。
ぼくがそうするようになったのは、Nudie Jeansが「半年洗うな」と推奨していたというところが大きい。以前、Nudie Jeansのジーンズの腰部分には、商品と同じ生地のタグが縫い付けられていた。それを外して取っておき、ジーンズが色落ちした後に、元の色のままのタグと比較して楽しみましょう、という遊び心である。ファッショナブルなのにオタクだ。そのタグに「Do Not Wash For 6 Months」みたいなことが書いてあった。
半年ほど穿き続けたら初洗いをし、そのあとはだいたい2カ月に1度とか、気が向いたときに洗う。1度洗ったらだんだん適当になってくる。
1年以上経過するとそれなりに色は変化してくるが、残念ながら破れそうな箇所もあったりする。
そういう場合、基本は自分でリペアする。Nudie Jeansにもらったリペアキットもあるし、なんなら、裁縫道具なんて何でもいい。糸や裏地が足りなくなったら、100円ショップで買ってきて縫うだけ。素人仕事で全然かまわない。
まあプロに託してもいいんだけど、時間がかかるのが難点だ。それに、自分でやる方が愛着が湧くというのもある(面倒でもあるが)。
一度ジーンズのジッパーフライ(前開き部分)が壊れたときは、さすがに自分で直せないのでお店に持って行き、1,500円くらいで直してもらった。もともと銅褐色のジッパーだったが、オリジナリティーを加えたくてシルバーにしてもらった。加速する自己満足。
洗剤なども、特にこだわりはない。市販のもので不満を抱いた経験がないからだ。
少年よ、ジーンズを穿け
ジーンズは、あまりお金のかからない趣味だ。一度買ったらそれを1年や2年、あるいはもっと穿き続ける。一度買ったら、メンテナンスなどにお金がかかることもない。
何年か後の色落ちに期待して待つなんて、なんとも気の長い遊びだと思う。
ボロボロになり、「もうこれ人前で穿ける代物じゃねえな」という域まできても、アーカイブとして保存しておく。穿く機会はなくとも、一緒に過ごした年月を思い出すには優れたアイテムだ。
あの店で飲み明かした日も、あのバンドのライブを観た日も、あの子にフラれた日も、ジーンズが覚えている。
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