あなたの「好き」を拡張する、読書の沼へようこそ

リリース日:2022/07/20 更新日:2024/10/17
Dain(スゴ本の中の人)
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Dain(スゴ本の中の人)

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

ブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」の中の人。気になる本を全て読んでる時間はないので、スゴ本(凄い本)を読んだという「あなた」を探しています。

年間120冊も本を読んでいる書評ブログ『スゴ本』の中の人が、読書の魅力を紹介します。読書を通じて自分の「好き」が広がり、普段の生活までもが楽しく変化したという筆者。読書で興味のあるもの、気になるもの、楽しいものを広げる方法を解説します。

  1. はじめに
  2. 自宅と図書館の間で、年間500冊の本をぐるぐる回す
  3. 「量は質に転化する」大量の本で選書眼を鍛える
  4. 通勤時間を読書時間に。路線に合わせて短編も大作も読む
  5. 仕事の困りごとを本に出会うことで解決する
  6. レシピ本ではない本で「料理好き」から「料理上手」へ
  7. 「好き」を広げる結節ポイントとしての読書会
  8. 「好き」を広げるために本を読む

わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」という書評ブログをやっているDainと申します。

ここでは、読書を通じて自分の「好き」を広げる方法について、わたしの経験を踏まえて語ろう。

はじめに

書評ブログを運営していると、「さぞかし蔵書があるんでしょうね? 何冊ぐらいですか?」と訊かれることがある。

先に答えを言っておくと、200冊ぐらい(およそ20万円)だ。

そう答えると、かなり驚かれる。膨大な蔵書に囲まれているイメージがあるらしい。だが、わたしの場合、本という「モノ」にはあまり執着しない。もちろん巨大な書棚に憧れるが、それは「あればいいな」という程度。なぜなら、本を読むのは「好き」を広げるためにすることだから。

「好き」を広げるとは、本から新たな知見を得るとか、これまでにない感情を体感するとか、人や知識のつながりが増えていくことだ。当たり前といえば当たり前なんだけど、これを意識してやるとやらぬとでは、大きな違いが出てくる。

この話をするとき、『アンパンマンのマーチ』の2番を引き合いに出したくなる。幸せとは、どんなモノを持っているかではなく、どんなコトをして喜ぶかにある。そして、わたしにとって喜びとなるコトは、読書を通じて「好き」を広げることなのだ。

わたしが「好き」になるコトは、実はたくさんあるはずにもかかわらず、知らないまま通り過ぎてしまう。ひょっとすると一生かけて「大好き」になる出来事・物事・体験になるのに、気づかないうちに一生を終えてしまう。そんなのはいやだ!

その「好き」には、必ず詳しい人がいる。わたしが第一人者として開拓した分野でない限り、必ず先達がいる。そして、その先達たちは、必ずしも会いに行けるとは限らないし、今生きているとも限らない。そんな場合は、先達たちが書いた本を手にする。

だから、必要に応じて本にアクセスできればよい。図書館の利用でもいい。結果、本という「モノ」を集めるのはどうしても二次的になる。蔵書が充実しているのは良いことだが、それは目的ではないのだ。

自宅と図書館の間で、年間500冊の本をぐるぐる回す

しかし、昔からこのように考えていたわけではない。

以前は、バリバリの「本は買う派」だった。開高健をまねて、身銭を切って買わないと、本の良し悪しの目利きは身に付かないと考えていた。独身時代は月に4~5万円を書籍代に使っていた。

買った本はどうなるか?

まず、本棚に2段、3段と詰め込むのはデフォルト。奥に単行本を置き、手前に文庫本を入れて、両方が見えるようにしていた。棚から溢れたら床に積み、床の積読が山脈を成す頃にはドアが開かなくなる。ドアを開閉するために、押し入れにカラーボックスを横倒しに2つ入れて、そこに詰め込むとサイズがピッタリ。

そのうち、ちょっとした地震で本が凶器となる。本棚と天井の間には本を積んではいけないことを身をもって知る。やがて押し入れの床が抜けることで、「そもそも押し入れは本を入れる場所ではない」ことに気づく。

蒐集(しゅうしゅう)が閾値(しきいち)を超えると、収拾がつかなくなる。その時に読みたくなった本をすでに持っていることは分かっているし、「だいたいあの辺」に埋もれていることも知っているが、山脈から掘り出そうとすると、その中から欲しくて買った本がザクザク見つかるので、探索そっちのけで本を読み出す。最終的にはサルベージがめんどくさくなり、同じ本を買い直す。

積読の山脈は、「徳」ではなく「業」が積まれている状態だった。そして、ついに当たり前のことを悟る。わたしはこの山を読み切ることはないだろうし、積むスピードの方が読むスピードをはるかに上回るため、いずれわたしの居場所がなくなるということだ。

そんな「積読山」から「本は借りる」派に転向した契機は、結婚だった。わたしの2倍も本を読む嫁さんは図書館のヘビーユーザーで、毎週借りられる上限まで目いっぱい借り、読み、返却していた。嫁さん曰く「買ってたら家がつぶれる」。嫁さんの影響で、わたしも図書館に通うようになった。

その結果、トータルで手にする本の数は飛躍的に増えた。家の近所の図書館と、会社の近くの図書館、それぞれ10冊が上限で、借りられる期間は2週間。最大20冊を2週間で読むことになる。少しでも気になる本は予約する。予約した本が借りられる頃には、手元の本の返却期限が迫っている。「返却しに行くのが面倒」だと思っていたが、予約した本を受け取るついでであれば問題はない。

すべてを読む必要はない。まずはざっと目を通し(小説なら最初の数ページをじっくり読み)、気に入ったら腰を据えて読めばよい。

すべてを期限内に読む必要もない。期限が来たら、返せばいい。

そして、(ここ重要)まだ読みたいと感じる本なら、期間を延長するなり、借り直しすればいい。人気のある本は、次の人が予約している場合もある。そんな時は天秤にかけよう。次の人が読んだ後まで待てるのか、「いま」読みたいのかと。後者であれば素直に買ってしまえばよい。

このペースで単純計算にすると年間におよそ500冊、図書館と家とで本をぐるぐる回すことになる。何百冊のぐるぐる回しのフローの中で、分かってくる。「この本は、何度も借りては返しを繰り返しているな」とね。そんな「借り直しを繰り返している本」が見つかれば、それこそが手元に置いて再読を必要とする本であり、その時点で書店に行くなり、ネットで買うなりすればよい。

そして、ネットで買う場合、図書館との合わせ技もある。「この本をチェックした人はこの本もチェックしてます」とお薦めをしてくるだろ? そして思わず一緒に買っちゃうだろ?(わたしがまさにそう)。これ、「2千円も3千円も同じだ」と気が大きくなっている時で、まさに手元にカードがあれば衝動買いとなる瞬間である。ここでお財布のピンチを避けるため、一緒にお薦めされている本は、いったん図書館で予約する。そして、図書館と家とのぐるぐる回しのフローに入れることで、クールダウンする。ネットの紹介で見た時と、実物を手にしたときの印象は、かなり違うはずだ。それでも欲しけりゃ、今度こそネットで買うのである




「量は質に転化する」大量の本で選書眼を鍛える

「量は質に転化する」という言葉がある。もともとは哲学的命題だったらしいが、わたしは開高健から学んだ。彼のエッセイ『白いページ』によると、開高健は、きだ・みのるに教わったという。

いつかきだ・みのる氏が、オレはナマコが食いたいと思ったらナマコ、カキが食べたいと思ったらカキ、朝、昼、晩、三度三度食べに食べ、徹底的に食べるのだ。四日、七日、十日、そればかり食べてすごすのだ。そうしないとモノの核心はつかめないのだぞ、と私に教えてくれたことがあった。

開高健『白いページI』(角川文庫)p.33
白いページ I(開高健著、角川文庫)

開高健は、もっぱら「食」の分野において「量は質に転化する」を実践してきた。わたしは、これを「本」の分野において実践してきた。

本は大量にある、ありすぎるぐらいだ。その中から、わたしの「好き」を広げる質の良い本を手に入れたい。重要なのは、最初から質の良い本に出会えるわけではないことだ。一定の物量の本を読み、取捨選択を繰り返す必要が出てくる。

身銭を切って、本屋に行ってピンときた本を買う方法もある。そして、買っただけで満足し、読まずに積むことになる。あるいはパラパラ見ただけで読んだつもりになり、そのまま積むことになる。その「積む」で選書眼を養うのもいいが、お財布にはキツい。

しかし、図書館は違う。本屋でピンと来た本、ネットやクチコミでお薦めされた本を、とりあえず借りる。すぐに読まずとも、借りて「積む」のだ。つまり、「量は質に転化する」における「量」の部分をよりお財布に優しくカバーできるのが図書館だ。

買って積んでも、借りて積んでも、「積む」には変わりない。借りる・返すの回転の中で「それでも欲しい」ものが浮かび上がってくる。それこそが、本当に買うべき本なのである。

「本は買う派」と「本は借りる派」の両方をまんべんなく実行してきたからこそ言える。どちらでも選書眼を鍛えることはできる。ただし、鍛えるには大量の本を手にする必要がある。

通勤時間を読書時間に。路線に合わせて短編も大作も読む

結婚を機に変わったのはもうひとつ、通勤時間だ。家から仕事場までかなり遠くなり、乗り換えの時間を除いて、片道1時間、合計2時間の満員電車に揺られるようになった。

この時間をどうするか?

スマホを触ったり瞑想したりするのもありだし、実際のところ乗り合わせた周りの人はそうしてる。だが、わたしにとっては読書のための時間になった。理由は2つ。完全なる現実逃避が必要だということと、毎日必ずある「まとまった時間」を何もしないに等しいことに費やすのが、なんとももったいなかったからだ。

ぎゅう詰めだとスマホも出せないが、腕を天井に突き出せば本が読める。扉から最も遠い、連結エリアの上の空間は比較的すいているため、そこへ腕を伸ばして本を読むのが日課になった。

読むものは、乗り換えに合わせて選んだ。乗り換えが多く、ページに目を落とす時間が短いことが分かっている路線では、短編集や箴言集を選んだ。1編が完結していて、サクっと読んで反すうできるやつだ。

例えば『ラ・ロシュフコー箴言集』(岩波文庫)は毎日のお供だったし、『通勤電車で読む詩集』(小池昌代著、NHK出版)は、まさに通勤電車向きのものばかりだ。このテの本は一気に読むのではなく、「あの乗り換え駅までの間に読む」ものとして、カバンに常備するものだね。

ラ・ロシュフコー箴言集(二宮フサ訳、岩波文庫)

そういうちょこちょこ読みと併せて、「次の乗り換えまで30分」の路線では、ボリュームのあるやつを準備する。河出書房新社から全30巻で出ている「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」シリーズからの1冊や、新潮社の「トマス・ピンチョン全小説(全12冊)」からの1冊など、ゴツいのを選ぶのである。

例えばピンチョンの『メイスン&ディクスン』なんて、思わず逃げ出したくなるようなボリューム&パワーだ。だから、逃げ場のない通勤電車で向き合うにはもってこいといえる。現実逃避先で自分を追い込んで、普段なら手を出しにくい大作に挑戦するのだ。

仕事の困りごとを本に出会うことで解決する

読書は、現実から逃げるためだけのものではない。現実から生じる「困ったこと」を解決するための本もある。わたしが仕事を進める上で困ったことと、それを乗り越える手助けとなった本を紹介しよう。

たいていの困りごとは、初ではない。わたしが直面する前に、既に誰かが向き合っており、何らかの打ち手を施している。その結果も出ており、それは本に書いてある。後はその本に出会うだけである。

わたしが直面した「困ったこと」は、いわゆる「問題プロジェクト」だった。上司から指名され、「ちょっと2週間ほど手伝ってやれ」と飛ばされた先が、絶賛炎上中のプロジェクト、というやつ。管理者はいるがマネジメント不在の現場で、存在しない予算を確保し、消えた仕様を解き明かし、なかったはずの期間を捻じ込み、場合によっては戦略的撤退も辞さずの構えで突破する、いわば火消し役をやった。

同じ轍は踏みたくないという動機から、さまざまな本を経た後、PMBOK(Project Management Body of Knowledge、ピンボック)にたどり着く。PMBOKとは、プロジェクトマネジメントに関するノウハウや手法を体系立ててまとめたものだ。プロジェクトを成功させる「考え方」が書いてある

PMBOKにまつわる本はたくさん出版されている

そこで、プロジェクトを始めるにあたり、最重要なのは「計画」のプロセスであることを学んだ。俗に「ダンドリ8割」とか言われるやつで、準備がほぼすべてということである。では、どんな準備が必要か、その準備をする上で何をしなければならないか、そもそも「準備ができている」ことは、どんな観点でチェックすれば良いか? これらが体系立てて書いてあるのがPMBOKなのだ。

準備で必要なのは、次の3つだ。

1. そのプロジェクトのゴール(達成すべきこと)を明確にすること
2. そのゴールの期限とそこから逆算した踏むべき手順とスケジュールが定まっていること
3.手順とスケジュールに応じたリソースの手はずが整えられている必要がある

これらは、それぞれ、「品質」、「納期」、「予算」に読み替えることができる。そして、重要なのは、これらの3つが承認を得られていることだと書かれている。前の3つはよく聞くが、「ちゃんと承認を得ろよ(その承認の得る方法も決めておけよ)」と念押ししているのがPMBOKなのだ。

わたしはシステム開発の現場における実際の困りごとから、本という手段でPMBOKにたどり着いたが、実はあらゆる仕事にこの考えを適用できる。この考え方は、一生モノだろう。「困ったこと」を何とかしたいという動機から、得難い経験を身につけることができたのは、本を読むという習慣のおかげである。

レシピ本ではない本で「料理好き」から「料理上手」へ

一生モノの経験を得る一方で、「好き」を広げることで現実を変えていった読書もした。

その例として、「料理」を挙げてみよう。ここ10年で、わたしの料理のウデは飛躍的に上がった。

これは、ほとんど料理本のおかげ。急いで付け加えなければならないのだが、別にプロ級の料理ができるようになったという意味ではない。ここで言う「料理のウデ」とは、「旬の(安い)食材や、冷蔵庫のありあわせを使い、限られた予算・時間の中で一定のクオリティの食事ができる」ことだ。

これに加えて、家族の好みと体調+季節の変化に合わせた料理の温冷を選び、下ごしらえの順番と、シンク・コンロ・電子レンジをどのタイミングで使うかも考える。料理が出来上がった時点で洗い物も最小限になるように工夫したり、食材とレシピのローテーションを組み立てるのも含めた、いわば、「家事としての料理」だ。

この、「家事としての料理」は、レシピ本だけでは身につかない。もちろんレシピ集にもお世話になったが、料理の作り方を知るだけなら、レシピサイトを見るでもいい。

単なる作り方ではなく、料理のキモとなる部分だけを押さえ、その他のバリエーションを創意工夫で献立にする考え方は、そういう発想を基にして書かれた本を読まないと、分からない。

この発想は、小林カツ代のエッセイで知った。肝心なところを押さえておけば、他は適当であっても、きちんと料理になる。「適当」という言い方はテキトーかもしれないが、手を抜くというよりもこだわらないという意味である。

例えば『小林カツ代のお料理入門』(文春新書)を読むと、料理は楽に楽しくするもの、というポリシーが見える。カレーから「炒める」プロセスを省略した「ヒラヒラカレー」なんて象徴的だ。市販のカレールーの箱に書いてある「野菜と肉を炒める」を省き、代わりに野菜だけ煮て、ルーを溶かす。肉は、ルーがフツフツしてから、一枚ずつ広げて「ヒラ~リ、ヒラ~リ」と入れてゆく。これによって、炒めて煮込んでダシガラになったお肉ではなく、ふっくらとしたお肉がいただける。

小林カツ代のお料理入門(小林カツ代著、文春新書)

「その料理の何を楽しんでもらうか?」 という発想と、「その料理でどこを楽するか?」という着眼点の両方を考えながら、レシピを組み立てる。そのアイディアになるもの(レシピだけでなく調理、調味のバリエーション)を、先達から学ぶのだ。

「好き」を広げる結節ポイントとしての読書会

「量は質に転化する」とはいうものの、手当たり次第に読むのも大変だ。料理関係の本と一口に言ってもすごい数になる。

では、もっと効率よく「好き」を広げられないか? そこでお薦めしたいのが、読書会だ。たいていの人は読書会というと、ある本、例えば「小説」について語り合う場というイメージを持つ。そういう形式は一般的だが、この場合は「小説」という好きを広げる場になる。

この考えを拡張して、好きな「何か」を広げる場を探すのだ。自分の「好き」なもの──料理でも旅行でもスポーツでも音楽でも──を調べようとすると、必ず誰かが書いており、誰かの知識や情報は「本」という形に集積されている

もちろんその「本」を書いた本人と会って話したり、SNSでつながって情報交換できれば最高だ。だが、同じ国にいる人とは限らないし、同時代に生きている人とも限らない。そんなときは、その「本」を結節ポイントにして、人を探すのである。

つまりこうだ。好きな「何か」について気になる本を見つけたら、その「本」を好きな人を探すのだ。ネットを検索して、その「本」について好意的につぶやいている人を見つけたら、その人が呟く「他の本」を探すのだ。その「他の本」をさらにネットで検索したり図書館で借りてくることで、「好き」の世界をもっと広げてゆくことができる。本を結節ポイントとみなすことで、そこから人→本→人→本といったふうに、本と人をつなげてゆくのである。

もちろんこれ、ひとりでやると大変だ。しかし、読書会なら手軽にできる。ネットであれリアルであれ、気になる本について「この本が好き!」と表明するのだ。そして、「それ知ってる! 私も好き!」という人とつながることができる。

読書会も、本を決めるものとテーマを決めるものがある。わたしが主催している「スゴ本オフ」は、テーマを決めて、それについてお薦めの本を紹介する読書会である。これまで、「SF」「戦争」「愛」「料理」「旅行」といったさまざまなテーマを扱ってきたが、その度ごとに趣味を同じくする人と出会い、図書館から借りる本が激増し、そこから質に転化した本を買うことになった。

例えば、オフ会で知り合ったある女性は、上記で挙げたテーマすべてに共通して、「児童書」のジャンルからお薦めをしてくれる。おかげで、自分がいかに素晴らしい児童書を見落としてたかに気づいて、あらためて読み直している(アーシュラ・K・ル=グウィン『ゲド戦記』は大人になって読んで震えた!)。彼女に出会うまで、「児童書は子どものもの」として見ていたが、その見方がいかに狭い世界を作っていたか、よく分かる。

「好き」を広げるために本を読む

わたしの手元にある200冊は、こうして出来上がった。冒頭でも申し上げたが、そこに掛けた金額はおよそ20万円。本の金額としてだけ見ると高く感じるかもしれないが、わたしが得られた体験を考えればまったくそんなことはない。

「読書が好き」というよりも、興味のあるもの、気になるもの、楽しいものを広げるために本を読んでいる。本をダシにして人とつながり、人をきっかけとして、さらに本を読む。

この繰り返しによって、この世界の片隅に、わたしが喜ぶものを増やしていく。その意味では、読書は目的というよりも、むしろ「好き」を広げ、現実を変えてゆく手段なのだ。「アンパンマンのマーチ」で例えるなら、いわば幸せになるために本を読んでいることになる。

ここまで読んだ方は、まずは自分の「好き」に関連した本を、近くの図書館から借りてみてはいかが? そこで気になったタイトルを、ネットで検索するのだ。検索結果で見つけた人は、あなたの知らないスゴい本を読み、あなたの「好き」を広げることについて熟知しており、あなたの気になることをつぶやいているかもしれない。

良い本で、「好き」を広げよう。

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