粗利についてやさしく解説。売上との違いから計算方法まで!

リリース日:2022/04/12 更新日:2024/10/24

企業の経営状況を見る数字のひとつが粗利。損益計算書における5つの利益にも含まれています。ここでは粗利の基本的な意味合いと計算方法、株を購入する際の比較方法などについて解説しています。

粗利についてやさしく解説。売上との違いから計算方法まで!

資産運用として株を購入するときには、対象となる企業についてよく調べておく必要があります。その際、重要な情報源となるのが財務諸表。なかでも損益計算書を見れば、一定期間の売上高から最終的な利益までを把握することが可能です。最終的な利益は株主への配当を行う能力に繋がるので、関心も高いでしょう。しかし企業のお金を稼ぐ力を評価する数字として、もうひとつ注目したいのが「粗利」。ここでは粗利を中心に、損益計算書の見方などをやさしく解説していきたいと思います。

  1. 粗利の読み方と意味
  2. 5つの利益
  3. 売上との違い
  4. 粗利の計算方法
  5. 儲かる=粗利が高い?

粗利の読み方と意味

粗利の読み方と意味

まずは粗利について基本的なことを確認しておきましょう。粗利は「あらり」と読みます。名前の通りシンプルに計算される数字で、売上高から売上原価を引いたものです。

損益計算書で最初に出てくるのが「売上高(うりあげだか)」だとすると、次に表示されるのが「売上原価(うりあげげんか)」。そして売上高から売上原価を差し引いた数字として、3番目に登場するのが「売上総利益(うりあげそうりえき)」です。この売上総利益のことを一般的に「粗利」と呼んでいます。

粗利の段階では、企業の販売費や一般管理費といった費用は差し引かれていません。また企業が保有する金融資産からの利益を足すこともしていません。その企業が販売する商品やサービス、そのものから得られる利益を知ることができるのです。

5つの利益

5つの利益

損益計算書は、企業が公開している財務諸表のひとつです。そのなかには粗利を含む5つの利益が登場します。売上高から様々な要素を、引いたり足したりして計算されるものです。損益計算書の上から順に、売上総利益(粗利)、営業利益(えいぎょうりえき)、経常利益(けいじょうりえき)、税引前当期純利益(ぜいびきまえとうきじゅんりえき)、当期純利益(とうきじゅんりえき)と並んでいます。

5つの利益が、どのように計算されるか見ていきましょう。

・売上総利益(粗利)は、売上高から売上原価を差し引いた数字です。

・その下の営業利益は、売上総利益(粗利)から販売費と一般管理費を引いた数字です。販売費・一般管理費には、広告費や人件費、事務所の家賃や光熱費といった費用が含まれています。

・次の経常利益を計算する際には営業利益に、営業外収益(受取利息や配当金など)をプラスし、営業外費用(支払利息、その他の営業外費用)をマイナスします。

・税引前当期純利益は、経常利益に特別利益(固定資産売却益など)を加え、特別損失(災害損失など)を差し引いた数字です。

・最後に出てくるのが当期純利益。税引き前当期純利益から、法人税等・法人税等調整額といった法人税関連の数字をマイナスすることで計算できます。これが最終的に企業が手にした利益です。

これらの利益を前期の数字と比べると、企業にどのような変化が起こったのか把握することができます。例えば粗利が前期より増えているとすると、売上高が増加していたり、売上原価が下がっていたりといった状況が考えられます。様々なニュースなどから企業の利益に起こる変化が予測できれば、将来の株価についてもある程度の予測ができるようになるでしょう。

売上との違い

売上との違い

売上と粗利の数字は、損益計算表では近い位置にあります。2つの数字にはどんな違いがあるのでしょうか。

売上つまり売上高は、企業が商品やサービスなどを販売することで手にした代金です。この段階では、商品やサービスを仕入れたり作ったりするのにかかった費用は考慮されていません。しかし粗利の段階になると、売上の金額から売上原価と呼ばれるこうした費用を差し引いた数字になっているのです。粗利の金額は、売上原価の分だけ売上の金額より小さな数字となります。

粗利の計算方法

粗利の計算方法を計算式の形で見てみましょう。基本的には次の形で表されます。

・粗利=売上高-売上原価

また商品を仕入れて販売する企業の場合、売上原価の部分を詳しく書くと、次のような式になります。

・粗利=売上高-売上原価(期首商品棚卸高+当期商品仕入れ高-期末商品棚卸高)

売上原価は、前年度に売れ残った分と当該年度に仕入れた分の金額を足して、年度末に売れ残った分の金額を引いたものです。

売上高に占める粗利の割合には、業種によって一定の目安となる数字があります。例えば卸売業では、売上高に占める粗利の割合が15%。小売業では30%、製造業では50%、飲食業では70%、サービス業では80%といった具合です。株を購入する際には、各業種における平均と比較することで、数字の良し悪しを判断することができます。

儲かる=粗利が高い?

儲かる=粗利が高い?

粗利が高いからと言って、必ず最終的に手にする儲けが大きくなるとは言えません。例えば100万円で仕入れた商品を150万円で販売することができたとします。売上高は150万円、売上原価は100万円、粗利は50万円です。実際には販売するために必要な店舗の家賃や、人を雇う場合の人件費などがかかります。

もし立地のよい店舗を40万円の家賃で借りていたら、手にする利益は10万円まで減ってしまいます。もし店舗を持たないインターネット販売で、サイトの管理費用などが5万円だったとすると、最終的な利益が45万円に増えるでしょう。粗利ですべてが決まるわけではありません。しかし粗利が高ければ、その他の費用を小さくすることで、最終的な儲けを大きくできるとは言えます。

このように粗利を見れば、売上高から仕入れ値を引いた利益を知ることができます。株を購入する際には、対象となる企業の損益計算書を含め様々な数字をチェックすることになるでしょう。その際、売上高に占める粗利の割合について、同じ業種の企業間で比較すれば、経営状況を判断する材料のひとつになるはずです。

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黒川ヤスヒト
この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー(AFP)
黒川ヤスヒト

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

証券会社でリテール営業を経験し、AFP資格を取得。現在ライターとして、パーソナルファイナンスに関する情報の発信を手がけています。 関心分野は、ライフプランに関する意識調査や最新の金融商品・サービスなど。

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