過払い金の仕組み|請求の条件やリスクはある?カードローンで発生した場合について
過払い金とは2010年6月以前に借りた借金において返済時に余分に払ってしまった利息のことを言います。過払い金は返還請求の手続きを踏むことで取り戻すことが可能です。この記事では過払い金が発生する仕組みについて紹介します。
- 過払い金とは?
- 過払い金が発生する仕組み
- 過払い金がある可能性が高い借金の例
- 過払い金の対象外となる借金
- 過払い金の返還請求方法
- 過払い金返還請求のメリット、デメリット
- 過払い金を発生させないために
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過払い金とは?
過払い金とは、貸金業者から借りたお金を返す際に、余分に払った利息のことです。
借金を返済するときは、あらかじめ契約時に決められた金利に基づき利息を上乗せして返すことになっています。この金利は利息制限法によって上限が定められています。
第一条 金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一 元本の額が十万円未満の場合 年二割
二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
三 元本の額が百万円以上の場合 年一割五分
以前は上限を超えた金利でお金を貸し付けている貸金業者が多く存在していました。
利息制限法の上限を超えている利息部分は、本来支払う必要がないお金です。そうとは知らずに請求されるがまま支払ってしまった超過分が過払い金と呼ばれるものです。
過払い金が発生する仕組み
ここでは過払い金が発生する仕組みを詳しく見ていきましょう。
ポイントは「利息制限法」と「出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)」という2つの法律と、「グレーゾーン金利」というものの存在です。
まず、利息制限法と出資法はどちらも貸金業者が設定できる金利の上限を定めたものです。上でも引用し説明しているように、利息制限法では金利の上限を年率15.0~20.0%(借りた金額によって変動)としています。しかし出資法の金利上限は平成22年(2010年)まで29.2%だったため、それぞれで上限が異なっていたのです。
この「利息制限法違反だが、出資法違反ではない」20.1~29.2%までの金利のことを「グレーゾーン金利」といいます。
出資法に違反すると刑事罰がありましたが、利息制限法は違反しても行政処分止まりで実質罰則はない状態でした。グレーゾーン金利での取引は出資法の上限金利を超えていないため罰則はないので、当時多くの貸金業者が少しでも利息による稼ぎを伸ばすため、グレーゾーン金利の最高利率である29.2%での貸し付けを行っていました。
しかし2006年に最高裁判所がグレーゾーン金利での取引の違法性を認定しました。これによってグレーゾーン金利で支払った利息部分は本来払う必要のなかったお金と見なされ、過払い金として貸金業者から返還してもらうことが可能になったのです。
これを受けて2010年6月には改正貸金業法が施行され、出資法の上限金利が20.0%に引き下げられました。これによりグレーゾーン金利は廃止となりました。
過払い金がある可能性が高い借金の例
過払い金は、すべての借金において発生しているわけではありません。特に現在はグレーゾーン金利が既に廃止されているため、ここ数年以内に借り入れた借金で過払い金がある可能性は低いと言えるでしょう。
具体的に過払い金がある可能性が高いのは以下の類型に当てはまる借金です。
・2010年6月より前に借り始めた借金
グレーゾーン金利は、2010年6月の改正貸金業法の施行により廃止されました。
これより前に借金をしていた場合は、グレーゾーン金利での貸し付けになっている可能性が高く、過払い金が発生しているかもしれません。
・消費者金融やクレジットカードで借りた借金
旧出資法の金利上限である29.2%の金利で貸し付けていたのは、主に消費者金融やクレジットカード会社などの貸金業者でした。
よって消費者金融のカードローンや、クレジットカードのキャッシングを利用していた場合、過払い金が発生している可能性があります。
逆に銀行のカードローンなどでお金を借りていた場合、過払い金がある可能性は低いと言えるでしょう。銀行は貸金業者ではなく、グレーゾーン金利での貸し付けをそもそも行っていなかったためです。
過払い金の対象外となる借金
過払い金が発生している場合は請求によって取り戻すことが可能ですが、請求をするためには条件があります。
以下に当てはまる場合は過払い金請求の対象外となり、請求を行うことができません。
・借金を完済してから10年以上経過している
過払い金の請求には時効があり、借金を完済してから10年以内とされています。
仮に過払い金が発生していたとしても、完済から10年以上経ってしまっている場合はもう利息を取り戻すことはできません。過払い金に心当たりがある場合は早めに行動を起こすようにしましょう。
・銀行のカードローンやクレジットカードのショッピング枠
銀行はもともとグレーゾーン金利での取引をしていないため、銀行のカードローンでは過払い金は発生しません。
また、クレジットカードのショッピング枠は厳密には借金ではないのでこれも対象外です。ただし、クレジットカードで2010年6月以前にキャッシング枠を利用したことがある場合、過払い金が発生している可能性があります。
・貸金業者が倒産してしまっている
借金を契約した会社が倒産してしまっている場合、請求しようにも相手がいない状態ですので過払い金請求を行うことはできません。
グレーゾーン金利が廃止されて以降、相次ぐ過払い金請求への対応や市場の情勢の悪化により経営難に陥る貸金業者が多くいたようです。実際に倒産してしまった会社も多数あります。
ただし、元の会社名ではなくなっていたとしても、別会社に吸収される形で存続しているという場合は、合併先の会社に請求をすることが可能です。
過払い金の返還請求方法
過払い金の返還請求は、自分で手続きを行う方法と、法律事務所などの専門家に頼むという方法があります。どちらの場合も、請求の流れは以下のようになります。
(1)取引履歴の請求
(2)引き直し計算
(3)過払い金の返還請求書の送付
(4)貸金業者と交渉
順に詳しく見ていきましょう。
(1)取引履歴の請求
過払い金が発生しているかどうかを確認するためには、まず過去の借金の取引履歴を調べる必要があります。
取引履歴は利用していた貸金業者から取り寄せることになり、電話やインターネットなどで、貸金業者の問い合わせ窓口に取引履歴を確認したい旨を伝えます。
(2)引き直し計算
取引履歴を確認して過払い金が発生していた場合、具体的に過払い金がいくらあるのか計算しなくてはなりません。
利息制限法に則った正しい利息を計算し直し、過去に支払っていたグレーゾーン金利での利息と比べます。その差額が過払い金です。
(3)過払い金の返還請求書の送付
払いすぎた利息の金額がわかったら、過払い金返還請求書を作成し、貸金業者に送付します。
請求書には、お金を借りた年月日や借りた金額、過払い金が発生している旨とその金額、自分の名前や住所、過払い金を返還してもらう銀行口座などを明記します。
自作するのが難しい場合は、請求書のひな形を公開しているホームページもありますので、それを活用してみるのもひとつの方法です。
(4)貸金業者と交渉
貸金業者が過払い金の返還請求書を確認すると、貸金業者の担当者から連絡が来て交渉に入ります。
交渉の結果、双方が納得する返金額が提示されればそこで和解となり、口座に返還金が振り込まれて過払い金請求は終了となります。しかしお互いの希望が食い違い、話し合いで解決できない場合は、裁判で争うことになるでしょう。
実際にはこれら一連の作業を自力ですべてこなすのは大変な時間と労力が必要となります。その上、請求書を送ったとしてもすぐにお金を返してもらえるとは限らず、貸金業者と直接交渉を重ねる必要があるなど心理的なストレスも大きい手段と言えます。
よって過払い金請求を行う場合は、法律事務所などの専門家を頼ることが多いです。法律事務所では、弁護士や司法書士といった専門家が過払い金請求の相談に乗ってくれます。
専門家に頼む場合は費用がかかりますが、弁護士に過払い金の返還請求や裁判の手続きを代行してもらえるので、負担はかなり少なくなると思ってよいでしょう。
さらに過払い金請求を得意とする法律事務所は交渉のノウハウを持っているので、スムーズに交渉が進むだけでなく、より多くの過払い金を返してもらえる可能性も高くなります。
過払い金返還請求のメリット、デメリット
過払い金返還請求を行う最大のメリットは、なんといってもお金が戻ってくるということです。借りていた金額と期間にもよりますが、中には数十万円、数百万円にものぼる過払い金が存在していたというケースもあります。
デメリットとしては、過払い金返還請求をした貸金業者は今後利用できなくなるということが挙げられます。もしまたお金を借りたくなったときは、別の貸金業者を利用しないといけません。
クレジットカードについても同様で、クレジットカードのキャッシング枠利用について過払い金返還請求をした場合は、そのクレジットカードは解約となります。同じカード会社でクレジットカードを作ることもできない可能性が高くなります。
過払い金を発生させないために
現在は出資法の改正によりグレーゾーン金利がなくなっているため、過払い金が発生するリスクはかなり低くなっています。
しかし、完全に心配がないかと言えばそうではないのが現状です。利息制限法における上限金利は借り入れた金額に15.0%~20.0%と決まっていますが、出資法では現在も金利上限は20.0%としか言及されていません。
そのため、例えば200万円の借金をしているのに20.0%の金利を設定されていた場合、出資法上は合法ですが利息制限法上は無効となるので、その金利は過払いとなります。
現在は昔と違って利息制限法に違反した場合、刑事罰はないもののかなり厳しい処分が定められています。そのためこのような違反を行っている業者は極めて少ないと考えてよいでしょう。
しかし、万が一の場合もないとは言い切れないので、貸金業者からお金を借りる際には出資法の金利上限20.0%と、利息制限法の金利上限15.0~20.0%をきちんと満たしているかしっかり確認しましょう。
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このテーマに関する気になるポイント!
- 過払い金とは?
借金を返済する際に、余分に支払った利息のことです。 - 過払い金はなぜ発生したのか?
出資法が改正される前に存在した、違法な金利(グレーゾーン金利)での取引が原因で発生しました。 - 過払い金の返還請求ができる可能性が高い借金とは?
2010年6月以前に利用し始め、かつ完済から10年以内の借金です。 - 過払い金の返還請求をするのにデメリットはある?
返還請求をした貸金業者やクレジットカード会社が利用できなくなる可能性があります。
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misoさん
演奏家、ライター、FPとして活動する複業フリーランス。 お金の管理や記録が好きで、独学で簿記3級、FP2級を取得しました。 特に確定申告や税金分野への関心が高いです。お金にまつわる様々な制度や仕組みについてわかりやすく解説します。
※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。
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