日本の実質賃金は下がっている?名目賃金との違いや景気との関係について解説

リリース日:2020/04/06 更新日:2024/11/07

実質賃金が下がるということは、景気が悪いということなのでしょうか?実質賃金と名目賃金の違いや、実質賃金について考えるときに知っておきたい事柄をまとめました。なかなか暮らしが楽にならないのはなぜなのか、考えてみましょう。

日本の実質賃金は下がっている?名目賃金との違いや景気との関係について解説

働いてもなかなか給料が上がらない……と思っている人も多いでしょう。しかし、毎年4月の昇給時期が近づくと、ニュースでは「春闘で平均○円のベースアップ」といった報道がされます。もちろん、それがすべての企業の平均値ではないとわかっていても、実際に受け取る給料とニュースとの間にギャップを感じることもあるのではないでしょうか。そこで知っておきたいのが、実質賃金や手取り額の推移についてです。日本の賃金の推移について、考えてみましょう。

  1. 実質賃金とは?名目賃金とはどう違う?
  2. 近年の実質賃金の推移
  3. 実質賃金と景気に関する様々な意見
  4. 実質賃金の推移と手取り額の推移は別

実質賃金とは?名目賃金とはどう違う?

実質賃金とは?名目賃金とはどう違う?

賃金の変化について考えるときは、名目賃金と実質賃金のふたつの違いを知る必要があります。

 

たとえば、1980年の大卒初任給の統計結果は11万4,500円、2019年は20万6,900円です。しかし、生活が倍近く豊かになったのかというと、そういうわけではありません。なぜなら1980年と2019年では物価が違うからです。

 

名目賃金は、物価を考慮しない単純な支給額によって求められるものです。一方、実質賃金というのは、物価の変化を加味した上で求められます。そのため、より実感に近いのは、実質賃金の推移ということになるでしょう。

近年の実質賃金の推移

近年の実質賃金の推移

厚生労働省の毎月勤労統計調査を見ると、実質賃金の推移を知ることができます。2015年を100とした場合の、それ以降の実質賃金について見てみましょう。

 

毎月勤労統計調査 令和元年11月分結果確報

出典:毎月勤労統計調査 令和元年11月分結果確報https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r01/0111r/0111r.html

 

2019年6月、7月の数字が非常に大きくなっているのは、ボーナスが出ているからです。前年との比較を見ると、実質賃金が下降傾向にあることがわかります。

 

2019年の年間を通しての実質賃金指数は、2020年2月現在まだ発表されていませんが、それぞれの月を見ると、増加しているのは9月の0.2%のみですから、下がる可能性が高いでしょう。

実質賃金と景気に関する様々な意見

実質賃金と景気に関する様々な意見

「実質賃金が下がる=景気が悪くなっている」という図式は成り立つのでしょうか。こちらに関しては、様々な意見があります。

 

意見1. 実質賃金が低いと暮らしは楽にならない

実質賃金が低いということは、物価の上昇幅に対して賃金の上昇が低いということです。つまり、普通に考えると、実質賃金が上がらないということは、暮らしも楽にならないということだといえるでしょう。

 

意見2. 実質賃金の下落理由を考えるべき

実質賃金の額は、統計上、支払われた賃金の合計額を支払われた人数で割ったものです。失業者が減って労働者が増えると、「賃金を支払われた人数」が増えることになりますから、それだけ実質賃金も低くなると考えられます。

 

失業率の低下は、一般的に考えて歓迎すべきものですし、景気の回復とみなすこともできます。2010年の日本の完全失業率は5.1%、2019年は2.4%ですから、失業率は順調に回復しているといえるでしょう。

 

ただし、この割合は非正規雇用を含むもので、正社員のみではありません。このことから、単純に安い賃金で働く人が増えているだけ、と見る人もいます。

 

実質賃金と景気の関係については、様々な意見があります。自分なりにデータを読み解きながら、考えてみましょう。

実質賃金の推移と手取り額の推移は別

実質賃金の推移と手取り額の推移は別

実質賃金と実際に受け取る給与から感じる印象の違いを考えるときに忘れてはならないのが、給与から控除されている税金や社会保険料の金額です。1980年度の協会けんぽ(政府管掌健康保険)の健康保険料率は8.0%でしたが、2019年度の平均保険料率(2009年から都道府県別になったため)は10.0%にアップしています。

 

さらに、2000年度からは40歳以上の人に対して介護保険料もかかるようになりました。2000年度は0.6%だった介護保険料率も、2019年度には1.73%まで増加しています。厚生年金保険料率も、1980年10月には男性10.6%、女性8.9%でしたが、2019年は男女とも18.3%です。

 

このように、社会保険料や税金が上がることで、賃金が上がっても手取り額が思ったほど上がらないといったことが起こります。こうなると、実質賃金の推移と実際に働く人の実感はどんどんずれてしまうでしょう。

 

実質賃金の減少と現状が合致しているかどうかはさておいて、今現在「給料が増えない」「将来もあまり大きな年収アップは期待できない」と感じているのであれば、会社以外のところで収入を得るか、もらった給料を無駄なく使うことを考える必要があります。

 

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平林恵子
この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー
平林恵子

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

人事労務関係の仕事からライターへ転身。経験を活かしてコラム執筆を行っています。2017年、見識を深めるためにFPの資格を取得しました。税金や給与計算などに詳しくない方にもわかりやすい解説を心がけています。

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