証書貸付とは?貸付の種類別の特徴やメリット・注意点を詳しく解説

リリース日:2023/10/04 更新日:2024/07/24

お金との付き合い方として、「稼ぐ」や「増やす」といったことのほかに、「借りる」ことについて知っておくのも大切です。住宅の購入や教育資金の準備などで、まとまった資金を借り入れることもあるでしょう。また、日常におけるちょっとした不足分を短期間借り入れる場面もあるかもしれません。これは事業を行ううえでも重要です。借り入れは貸す側から見ると「貸付」ということになりますが、これにはさまざまな種類があります。お金を借りる前に知っておきたいメリットや注意点などを詳しく解説していきます。

  1. 貸付とは
  2. 貸付の種類
  3. 各種貸付ごとのメリット・注意点
  4. 有担保ローンと無担保ローンの違い

貸付とは

貸付とは

貸付とは、さまざまな条件を定めたうえで、お金や権利、物品などを貸すことです。貸付の対象となるものには、権利や物品といったものもありますが、ここではお金について解説していきます。

 

お金の貸付を行うには、条件への合意が前提です。この条件には、例えば、どれだけの金額を貸すのか、貸す時には担保や保証人は必要とするのか、返済はどのようなペースで実行するのか、もし返済が滞ったらどうするのか、といった項目があります。

 

銀行は取引先に対して、一定の期日後に償還する約束で契約を交わしたうえで、お金の貸付をします。貸付の方法は、証書貸付と手形貸付、そして当座貸越の3種類です。これに手形割引を加えて「貸出」といいます。ただし、実務上は3種類の貸付と手形割引をまとめて「貸付」と呼ぶこともあり、ここでも4種類すべて「貸付」とします。

貸付の種類

貸付の種類

証書貸付

銀行などの金融機関が行う貸付のひとつが「証書貸付」と呼ばれるもの。証書貸付は、借り入れのたびに契約書を作成し、そこに記載された金額だけを借りるという融資契約です。個人向けとしては、住宅ローンや自動車ローンなどがここに分類されます。融資金額が大きめで、長期的な貸付に利用されることが多いタイプです。借り入れる金額は契約時点で決まるので、返済のスケジュールなども最初に確定することになります。

 

証書貸付で作成される証書は、「金銭消費賃借契約書」。ここに貸付についてのさまざまな条件が記されることになります。基本的な情報として契約日、さらに借入金額や利子率、返済期間や返済方法、担保の有無、遅延損害金といった条項を取り決めて記載します。また署名と押印、さらに連帯保証人の署名と押印も必要となることがあるでしょう。証書貸付では、このように貸付ごとに証書を作成するのが特徴となっています。

手形貸付

手形貸付は、借り主が銀行宛の約束手形を振り出すことで融資を受けるというものです。約束手形は、企業間での決済手段として利用されることが多く、個人にはなじみがないものかもしれません。約束手形には、振出人や受取人、金額、支払期日などが記載されています。振出人は期日までに記載された全額を支払う約束となっています。

 

手形貸付などで利用される約束手形は、有価証券の1種です。手形貸付が利用されるのは、1年以内の短期的な資金が必要な場面。企業であれば、短期的な運転資金や、つなぎ融資として利用されています。

 

手形貸付では約束手形を使いますが、この約束手形を利用するには銀行に当座預金口座を開設する必要があります。当座預金口座は普通預金口座とは異なり、事業者などが手形・小切手の決済をするのに使う銀行口座です。約束手形を振り出した場合は、期日に当座預金口座から約束した金額が引き落とされるので、それまでに入金しなければなりません。

当座貸越

前述のとおり、当座預金は企業や個人事業主などが、業務を行ううえでの支払いに使用する銀行口座です。主に、小切手や約束手形の支払いをするために開設されます。当座預金に利息は付きませんが、全額が預金保険制度の対象となっており、万が一、銀行が破綻した場合でも預けているお金は保護されます。

 

当座貸越は当座預金を利用した貸付です。当座預金の残高が不足していても、契約で取り決めた範囲内であれば、小切手や約束手形の支払いを銀行が立て替えてくれるというものです。事前に銀行と契約を結んでおく必要があります。

 

個人向けの総合口座においても似たようなサービスがあり、これは口座貸越と呼ばれています。例えば、クレジットカードの引き落としなどで残高不足が起こった場合、定期預金の残高を担保に普通預金の不足分を立て替えてくれます。

手形割引

手形貸付は、事業者が取引銀行宛に約束手形を振り出して融資を受けるというものです。それに対し、手形割引は自分宛の約束手形を期日前に現金化する方法です。事業者間の支払いに約束手形が使われた場合、約束手形を受け取った事業者は期日が来るまでそれを現金化できません。しかし、まだ期日が来ていない約束手形を銀行などに持ち込むことで、現金化するのが手形割引です。

 

約束手形の期日は、3~4カ月先などに設定されていることがあります。代金として約束手形を受け取っても、それが現金になるのは数カ月先ということになります。しかし期日が来る前の約束手形は、銀行などで手形割引料を支払うことで、買い取ってもらえるのです。手形割引料を支払わなくてはならないため、受け取れる現金はその分減ることになるでしょう。割引料は、約束手形を振り出した事業者の信用度や、期日までの残存日数などで変化します。




各種貸付ごとのメリット・注意点

各種貸付ごとのメリット・注意点

証書貸付

メリット

証書貸付のメリットは、大きめの資金を長期的に借りられるという点です。短期的に小さめの資金が必要、というケースとは違ったところでそのメリットが感じられるということになります。例えば事業を行ううえでの資金としては、日々の運転資金をやりくりするというよりも、新たな事業を始めるための設備など、長期的な視点から投資を行う場合などに有効です。また、返済方法をあらかじめ決めておくため、将来の資金計画が立てやすくなります。

注意点

貸付にはいくつかの種類がありますが、中でも証書貸付は時間がかかる手続きとなっています。すぐに資金が必要という場合には向いていないでしょう。担保や保証人を設定する場合には、その確認に時間が必要となります。また証書貸付では契約書を作成します。返済方法や借入利率、遅延損害金などの取り決めが記されるものです。その内容については、思い違いがないか、よく確認しなければなりません。

手形貸付

メリット

手形貸付のメリットは、手続きのスピードが速く、資金調達までの時間が短くて済むことです。提出する書類も少なく、審査を完了するまでの時間も長くかかりません。短期的にすぐ資金が必要という時に、役立つ貸付となっています。証書貸付などと比べて、印紙税が安いこともメリットになるでしょう。

注意点

手形貸付は企業の信用をもとに成り立つ制度です。まず融資を受ける時点で、企業の信用度がある程度必要です。約束手形の期日までに入金ができないと不渡りとなり、企業の信用を著しく下げてしまいます。

 

なお、紙の約束手形は2026年に廃止される予定です。同等の機能を持つ、電子記録債権への移行が進むでしょう。電子記録債権の場合、印紙税は不要となります。

当座貸越

メリット

1度契約を結ぶと、取り決めた範囲内で借り入れをすることができます。そのため、借り入れをするたびに契約を結ぶ必要がありません。口座残高が不足すると自動で借り入れが実行されるため、利用者にとっては便利といえるでしょう。売掛金を回収した時など、資金に余裕があれば返済に充てられ、機動的なお金の活用が可能です。

注意点

ただ、当座貸越ができるようになるためには、銀行の審査を通らなければなりません。信用状況に左右されるということです。当座貸越の審査は厳しめといわれており、さらに金利が高いというのも注意点です。資金のやりくりの中で利用されるシステムではありますが、早めに返済する必要があります。

手形割引

メリット

手形割引は期日が来る前の約束手形を現金化することです。信用度の高い手形であれば、換金するまでの時間は短く済むでしょう。支払う割引料は、手形割引を実行した日から約束手形の期日が来るまでの日数をもとに計算するため、期日によっては利息の負担が小さくて済む可能性があります。

注意点

手形割引では割引料を支払うのですが、これが高くなる可能性もあります。高い割引料を繰り返し支払うと、自社の資金繰りに悪影響をもたらす可能性があるでしょう。また、約束手形が不渡りになり、銀行が資金を回収できない場合は、手形割引依頼者に手形買い戻しの義務が生じます。

有担保ローンと無担保ローンの違い

有担保ローンと無担保ローンの違い

有担保ローン

お金を借り入れるローンには、担保が必要なものとそうでないものがあります。有担保ローンは文字どおり、担保が必要なローンのことです。例えば、自動車を購入するために担保が必要なローンを利用するとしましょう。家などの不動産を担保にすると、それに抵当権が設定されます。ローンの利用者が返済できなくなった場合には、担保となっている資産を売却して、資金が回収されるということになります。貸し手にとってはリスクの低い方法です。

無担保ローン

一方、無担保ローンでは担保となる資産は必要ありません。担保なしでお金の借り入れができます。お金を借りる側にとっては、手続きが簡単で便利かもしれません。しかし貸す側にとっては、返済されない場合のリスクが大きくなるため、有担保ローンに比べて金利が高くなる傾向があります。

お金を借りるにはさまざまな方法があります。利用している金融機関が、どのような貸付を行っているか確認してみると良いでしょう。例えば楽天銀行では、不動産を担保としてお金を借りられる「楽天銀行不動産担保ローン」や、担保を必要とせずにお金が借りられる「楽天銀行スーパーローン」などを取り扱っています。金利や借りられる金額などに違いがあるので、自分に合った借り方を選択できるようになっています。お金を稼ぐ・増やすことと合わせて、借りることについても知識を広げておきましょう。

 


※この記事は2023年10月時点の情報をもとに作成しております。

このテーマに関する気になるポイント!

  • 貸付とは?

    さまざまな条件を定めたうえで、お金や権利、物品などを貸すということです。

  • 銀行の貸付の種類は?

    証書貸付、手形貸付、当座貸越、手形割引の4種類があります。

  • 各種貸付ごとのメリット・注意点は?

    証書貸付は大きな金額を借りられますが、時間がかかります。手形貸付は短期間の融資に向いていますが、不渡りを出さないよう注意しましょう。当座貸越は便利な契約ですが、企業には信用が必要です。手形割引は早めに現金を手に入れられますが、割引料が高くなることがあります。

  • 有担保ローンと無担保ローンの違いは?

    有担保ローンで担保にされやすいものの代表が不動産です。不動産を担保にした場合、その不動産に抵当権が設定されます。抵当権とは、ローンが返済されない場合、強制的に不動産を売却し資金回収する権利です。無担保ローンでは担保が不要な代わりに金利が高くなる傾向があります。




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黒川ヤスヒト
この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー(AFP)
黒川ヤスヒト

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

証券会社でリテール営業を経験し、AFP資格を取得。現在ライターとして、パーソナルファイナンスに関する情報の発信を手がけています。 関心分野は、ライフプランに関する意識調査や最新の金融商品・サービスなど。

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