人工知能(AI)とは|基礎知識や活用事例を分かりやすく解説
金融に関する分野でも、人工知能(AI)の導入が進んでいます。住宅ローンの審査や保険商品のリコメンド、投資アドバイスなどAIを活用したサービスが増えてきました。Web上ではAIが自動で質問に答えてくれるチャットボットがあったり、クレジットカードの不正利用のチェックに活用されたりなど、見えないところでもAIが金融サービスを支えています。このように社会に広く浸透してきたAI 。ここでは、基本的な知識や、さらに幅広い活用事例を紹介していきます。
- 人工知能(AI)とは?
- 人工知能(AI)の種類
- 人工知能(AI)の歴史と進化
- 人工知能(AI)のしくみ
- 人工知能(AI)を活用した技術と活用事例
- 人工知能(AI)でなくなる仕事・なくならない仕事
- 人工知能(AI)の未来と課題
人工知能(AI)とは?
AIはArtificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)の略。人間は知能を持っていて、物事を認識したり言葉を使ったり、問題を解決したり芸術的な創造をしたりと、さまざまな活動をしています。人工知能(AI)はこうした人間の知能を、データとコンピューターの計算によって機械的に実現しようとするものです。AIの研究は1950年代から始まっていますが、現在では自動運転や医療での画像診断、翻訳などさまざまな分野で実用化されています。
ただ人工知能の定義については「人間とは」「知能とは」といった根源的なテーマになる部分もあり、1つの明確なものがあるわけではありません。開発しているのはコンピューター・サイエンスの分野です。しかしそれを活用する医学や、AIをどのように人間や社会が受け入れるのかという心理学や哲学などにおける問題にもなっています。AIの定義については、社会での存在感が増すにつれ、これからもさまざまな領域で議論になりそうです。
人工知能(AI)の種類
・汎用性AI
人間は知能を使って、多様な活動を行っています。自動車を運転して移動したり、仕事上の問題を解決したり、知人と会話したり、突然起こった危機に対応したり、挙げていくときりがありません。汎用性AIは、こうしたさまざまな出来事に、柔軟に対応できるシステムと定義されています。自分が置かれている状況を判断し、何をすればよいのか自分で考えることができます。映画に出てくる人造人間のようなものですが、こういった汎用性AIは、まだ実現していません。何でもできるAIは、これからの研究課題です。
汎用性AIは「強いAI」と呼ばれることもあります。人間から与えられたデータやプログラムに従って行動するのではなく、自意識や心のようなものを持ち、自分で考え判断して行動するAIという意味です。
・特化型AI
自動運転や画像認識、自然言語処理など、現在実用化されているAIは「特化型AI」に分類されます。自動車を運転する、画像が誰の顔なのかを認識するなど、それぞれ決まった役割だけをこなすAIとなっています。囲碁が強いなど、それぞれの分野では人間の能力を上回るものもありますが、人間のように何にでも対応できるというわけではありません。
特化型AIは「強いAI」との対比で「弱いAI」とも呼ばれ、人間から与えられたデータやプログラムに沿って、役割を果たします。何でもできるというわけではなく、人間ができることの一部分を、コンピューターによる計算で再現している状態です。想定外のトラブルが起こっても、自分で判断して柔軟に対応できるようにはなっていません。
人工知能(AI)の歴史と進化
・第1次AIブーム
1950年代後半〜1960年代に、最初のAIブームが起こりました。1956年に米国ダートマス大学で開催された会議で「人工知能」という言葉が登場しています。コンピューターを使った「推論」と「探索」が主なテーマとなった時代です。簡単なテキストによる対話が可能なプログラム「ELIZA(イライザ)」が作られたのは1964年から1966年のこと。これが人間的な会話を目指したプログラムである「人工無脳」や「チャットボット」のもとになっています。AIの実現に必要な「ニューラルネットワーク」の概念もこの時期に登場しています。
・第2次AIブーム
第1次AIブームでは、人工知能はあまり複雑な問題を解決できず、いったんブームが終わりました。その後1980年代に入り、2回目のブームが始まります。「知識表現」がテーマの時代です。この時代に開発されたのは「エキスパートシステム」。専門家の意思決定をシミュレートするAIです。医療や金融サービス、製造業、会計などの分野で利用されています。
ただ、限られた範囲の知識を人間がコンピューターに理解しやすい形で入力する必要があるという限界も見えてきて、再びブームは下火になります。
・第3次AIブーム
そして2000年代に始まり現在も続いているのが、第3次AIブームです。時代のテーマは「機械学習」。「ビッグデータ」と呼ばれるような大量のデータにより、人工知能が自分自身で知識を学んでいきます。
ブームのきっかけとなったのは「ディープラーニング(深層学習)」の登場。知識を定義する「特徴量」と呼ばれる要素を、AI自身が学習します。大量のデータから、AIが自分でルールやパターンを発見し、自動で学習していくようになったのです。画像認識の技術などに応用されています。
第1次・第2次のAIブームでは、人間を超えられないAIの限界が見えたことで、AIへの注目度が低下しました。しかし現在のAIブームでは、例えばボードゲームで人間より強くなるなど、人間の限界を超えるケースも出てきています。実用化されるAI技術のインパクトも大きく、長く続くブームとなるかもしれません。
人工知能(AI)のしくみ
・機械学習
機械学習とはコンピューターが、大量のデータからパターンやルールを自動で発見することです。学んだパターンやルールをもとに、予測や判断が可能となります。人工知能を実現する手段の1つで、学習のパターンは3つあります。1つ目は「教師あり学習」。入力データと、答えとなる出力データが事前にそろっていて、それをもとにルールやパターンを学習します。2つ目は「教師なし学習」。入力データだけがあり、それをもとにデータの背景にあるルールを発見します。
3つ目は「強化学習」。こちらはコンピューターが出力するデータに対し、価値を評価し報酬を与えます。コンピューターは報酬を最大化するために試行錯誤し、最適なアルゴリズムを見つけ出すのです。歩行ロボットの制御や、ゲーム対戦で利用されています。
・ニューラルネットワーク
コンピューターが、自分でパターンやルールを発見する機械学習。これを実現するのに必要な手法が「ニューラルネットワーク」です。入力された数字を、「重み」や「バイアス」と呼ばれるパラメータをもとに線形変換して出力する単位ユニットが、ネットワーク上につながった数理モデルです。
数多くの単位ユニットは「入力層」「中間層(隠れ層)」「出力層」に分けられ、網目状につながりながら、データを受け渡していきます。入力されたデータは、各ユニットで重みやバイアスをもとに変換して出力。これが、次の層への入力となります。
人工知能においてはこうしたモデルで、どんな入力データに対しても、正解となるデータを出力できることが求められます。そのためには、重みやバイアスと呼ばれるパラメータを、自動で調節していく仕組みが必要です。それが「誤差逆伝播法」という計算。偏微分などを使った計算で、この過程がAIの「学習」と呼ばれています。データと計算量が大きくなるため、コンピューターの処理能力が問われます。
・ディープラーニング
ニューラルネットワークでは、データを変換し入出力を行うユニットが「入力層」「中間層(隠れ層)」「出力層」に分かれていると説明しました。このうち「中間層(隠れ層)」の数が多いタイプを「ディープラーニング」と呼んでいます。一般的なニューラルネットワークでは、隠れ層は2つか3つですが、ディープラーニングでは隠れ層が100以上にも増えるのです。計算量はさらに増えるのですが、これにより画像や音声の認識、翻訳などの精度が上がり、囲碁などのゲームでも人間の能力を超えるケースが出てきました。
人工知能(AI)を活用した技術と活用事例
・画像認識
人間の脳は人の顔を見分けることができます。顔だけでなく、目で見えているものが何なのか、広く認識することが可能です。それと同じことをできるのが、AIの画像認識。ディープラーニングにより、画像から特徴やパターンを取り出していくのです。例えば「猫」というラベルを付けて、たくさんの猫画像を見せると、人工知能が学習していき、新しい猫画像を読み取ったとき、それが猫であると認識できるようになります。スマホの顔認証によるロック解除から、医療での画像診断まで、さまざまな分野で応用されています。
・音声認識
人は他人の声を聞いて、それを言葉として認識することができます。人工知能も、音声データと文字を関連付け、テキストに変換できるほどに進化しました。音声認識と呼ばれるもので、スマホのAIアシスタントや、スマートスピーカーに話しかけて利用する時など、日常でよく使われる技術です。仕事ではコールセンターでの会話をテキストデータにしたり、会議の議事録作成を自動化したり、業務の効率化に役立っています。
・自然言語処理
人間が話す言葉は、プログラミング言語と違い、曖昧な部分を多く含んでいます。そうした自然言語をコンピューターが理解できるようにするのが、自然言語処理です。AI に大量の自然言語を学習させることで、ただ文字を認識するだけではなく、さらにその意味や内容まで理解できるようになっているのです。機械翻訳や検索サイトの精度向上などに活用されています。
自然言語処理では読んで理解するだけでなく、文章を書くことも可能です。ネット上の膨大なデータを学習し、人間が作成した文章と見分けがつかないレベルになっています。
人工知能(AI)でなくなる仕事・なくならない仕事
野村総合研究所が2015年12月に公表したレポートでは、国内601種類の職業について、人工知能やロボットによる代替の可能性を試算しています。これによると10〜20年後には、日本の労働人口の49%が代替可能とのこと。代替されにくいのは、創造性・他者との協調性が求められる業務。AIやロボットに代替されやすいのは、特別な知識・スキルが求められない職業や、データの分析、体系的な操作が必要な業務だとしています。
レポートではそれぞれ100業種ずつの例を挙げています。いくつかピックアップしてみましょう。AIやロボットに代替されにくい仕事には、アロマセラピストや、ケアマネージャー、ツアーコンダクター、小学校教員、ソムリエなどが入っています。代替されやすい仕事としては、レジ係や医療事務員、データ入力係、バイク便配達員などが挙げられています。これから目指す仕事や、スキルの選択などで参考になるかもしれません。
人工知能(AI)の未来と課題
人工知能の実現には、膨大な量の計算をこなす高性能なハードウェアが必要です。将来的にはハードウェアの性能が現在よりも高くなると考えられます。より高度なAIが登場することになるでしょう。そうすると、より広い範囲で人間の仕事や生活に、入り込んでくるかもしれません。
しかしそうなると心配なのは、AIの「ブラックボックス化」です。ビッグデータを使い、膨大な計算を高速で処理するAI。その処理過程を人間が理解するのは難しいでしょう。そうなると、AIが出す答えを、どのように信用すればいいのか分からなくなってきます。「説明可能なAI」とすることで、こうした倫理的な部分を解決し、社会に受け入れやすくするのが、未来の人工知能にとっての課題です。
人工知能(AI)が活躍する分野は多く、これからもさらに増えていくと考えられます。そうなると期待できるのが、AI関連銘柄への株式投資です。金融以外でもビジネスでの自動化や、工場の効率化など大きな利益をもたらしてくれる可能性があります。まだ証券口座をお持ちでない方は、ぜひ楽天証券で口座を開設し、AI関連銘柄への株式投資のスタートを検討してみてはいかがでしょうか。AIは私たちの生活を便利にしてくれるものですが、それだけではなく投資した企業の成長にも関わるものといえるでしょう。
このテーマに関する気になるポイント!
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人工知能(AI)とは?
人間の認知や言語といった知的活動を、コンピューターの計算により再現したものです。
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人工知能(AI)の種類は?
状況に対し柔軟に対応できる汎用性AIと、決まった役割だけをこなす特化型AIに分類されます。
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人工知能(AI)の歴史と進化は?
1950年代に研究が始まり、1980年代には専門的な知識をシミュレートするエキスパートシステムが開発され、現在ではディープラーニングにより画像認識ができるまでになりました。
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人工知能(AI)のしくみは?
重みと呼ばれるパラメータにより入力データを線形変換して出力するユニットが、網目状に多数つながっています。答えとなる出力が正しくなるようにパラメータを調節して学習します。
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人工知能(AI)を活用した技術と活用事例は?
身近な例を挙げれば、画像認識によるスマホのロック解除や、音声認識によるスマートスピーカー、自然言語処理による機械翻訳などです。
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人工知能(AI)の普及でなくなる仕事・なくならない仕事は?
AIやロボットに代替されやすいのは、特別な知識やスキルが求められない業務や、データ分析、体系的な操作を行う業務。代替されにくいのは創造性や、他者との協調性が求められる業務です。
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人工知能(AI)の未来と課題は?
ハードウェアの高性能化にともなって、AIが活躍する範囲も増えるでしょう。ブラックボックス化したAIを「説明可能なAI」にして、人間からの信頼性を上げることが課題となっています。
※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。
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